世界に復讐を誓った少年
15.連れてこられた場所は
「……ここが聖都」
私は初めてくる聖都に驚きを隠せなかった。高さ20メートルを超える強固な壁。それを抜けると全て白を基調とした建物が立ち並ぶ。そして、なにより驚いたのが、見渡す限り人、人、人。人で溢れかえっているのだ。
「きょ、今日は何かお祭りでもあるのですか?」
と、隣にいる美青年、アルノード・スライスサーさんに思わず尋ねてしまったほどだ。
アルノードさんは2ヶ月前に村に聖女である私を迎えに来た聖王国の聖騎士だ。村が死霊系の魔物に襲われて、リーグも危険になった時に助けてくれた人だ。
そして、アルノードさんに教えてもらい知った事なのだけど、私たちの村は瘴気に汚染されていたみたい。原因はわからないかと聞かれたけど、思いつくの1つしか無かった。
ハルトの事を話しても良いのか迷っていたけど、村の
人たちが皆口を揃えてハルトの事を話してしまったので、隠す事が出来なくなってしまった。
村の人たちの話を聞いたアルノードさんは連れて来た兵士の大半をこの村に残してくれる事、更に瘴気を浄化させるための神官を来させる事を約束してくれた。その代わりに私が聖王国に行く事を約束させられたけど。
私の両親は諸手を挙げて喜んだ。理由は私が聖女として国の役に立てるから……ではなくて、アルノードさんから莫大なお金を渡されたから。しかも、毎月送られてくるとか。
それを貰った両親たちは目の色を変えて私に聖王国へ行くように行ってきた。正直に言うと自分の両親なのに気持ち悪いと思ってしまった。
でも、丁度良かったと思ってしまう私もいる。この村にいればどうしてもハルトにした事を思い出してしまうから。一旦村から出て落ち着いてからまたハルトの事を考えようと思う。
そのためにはまずは、聖王国で神官が言っていた聖王国に攻めた悪魔の事を調べようと考えた私は、アルノードさんに行く事を伝えて、そして2ヶ月かけてやって来たのだ。
本当は私たちが住む国、アンデルス王国から1月ほどで行けるのだけど、旅に慣れていない私たちの為にゆっくりと進んでくれたのだ。
因みに私たちというのは、私が聖王国に行くのにリーグも付いて来たからだ。まあ、リーグが来るのは当然なのかもしれない。リーグの職業は聖騎士。同じ職業を持つアルノードさんに付いて来たかったのかもしれない。
少し前の事を思い出しながらアルノードさんを見ると、何故か物凄く笑いを堪えていた。わ、私何か変な事言ったかしら?
「いや、すみません。聖都ではこの人の多さが普通なのですよ。こればかりは慣れてもらうしかありませんね。それに、聖女様のお披露目の時はもっと人は増えますよ」
そう言って微笑んで来るアルノードさん……それよりも、お披露目って何? そんなの聞いてないんだけど。
「それでは、聖王様もお待ちしていますので行きましょう」
私の疑問をよそに馬車を進めるアルノードさん。はぁ、なんだか色々と不安だなぁ。ハルトがいたら落ち着くのに……駄目だわ、弱気になったら。それに、私がハルトの事を思う資格なんてないのだから。
「ステラ、おばさんたちの元を離れて不安だと思うが、俺が付いている。だから、俺を頼れ」
そんな私の表情を見て何を思ったのかリーグがそんな事を言ってくる。慣れてない女性ならカッコいいのかも知れないけど、リーグの悪いところ嫌なところを知っている私としては響かない。
私はリーグに軽く返事して、馬車から見える景色に意識を逸らす。ところどころに教会があったり、神官の人が演説したりとしていた。
その中で時折聞こえて来るのが、悪魔の出現と聖女の降臨という言葉だ。明らかに私とハルトの事を言っているのがわかる。
ハルトの事は名前は出て来ていないけど、古の時代、聖王国を襲った悪魔と同じ力を持つ者が現れた、と声を高らかにし叫んでいた。そして、その悪魔を封じる為に聖女が降臨したと。
その中で驚いたのが、3日後に聖王と共に聖女のお披露目があると、国中に発表しているのだ。さっきアルノードさんが言っていたお披露目というのはそういう事なのだろう。
少し憂鬱な気分になるけれども、馬車は止まってくれない。いつの間にか一際大きな神殿のような場所に辿り着いた。こんなの見た事ない。途中で立ち寄ったアンデルス王国の王宮ですらこんなに立派ではなかった。
神殿の入り口にはシスターたちが立ち並びその向こうから豪華な服を着た老人が歩いて来る。ニコニコと笑みを浮かべているけど、何を考えているかわからない目をしている。
「ようこそ、聖女様。私は聖王様の補佐をしております、マリンテ・エルマノールと申します。聖王様より枢機卿を賜っております。以後お見知り置きを」
「は、初めまして、ステラと申します。よろしくお願いします」
「ホッホ、何、そこまでかしこまる事はありませぬぞ。ここは我が家だと思ってくつろいでくだされば。それではまず聖王様に謁見する前に長旅で疲れたでしょう。湯浴みの準備が出来ております。お前たち、ご案内して差し上げろ」
「はい。それでは聖女様、ご案内致します」
マリンテ枢機卿がそう言うと、何人ものシスターが私の元へやって来る。持って来た荷物は全てシスターが運んでくれて、私はただ後を付いていくだけみたい。
「おっと、君はこっちだよ」
「なっ!? 離せ、アルノード! 俺はステラを守る為に来たんだ!」
「アルノード。なんだそやつは?」
「彼は新しい聖騎士です。悪魔との戦いに役に立つでしょう」
「ほう、新たな聖騎士か。うむうむ、今年は中々豊作のようじゃな。アルノード、そやつも身を綺麗にさせてから連れて来るのだ。一緒に聖王様に合わせる」
「わかりました」
私たちが何かを言う前に話が次々と決まっていく。そのまま、案内されて神殿に向かう私。とても煌びやかな神殿なのに、まるで怪物の口の中に入ろうとしているように感じるのは何故なのだろうか。それだけが物凄く不安だった。
私は初めてくる聖都に驚きを隠せなかった。高さ20メートルを超える強固な壁。それを抜けると全て白を基調とした建物が立ち並ぶ。そして、なにより驚いたのが、見渡す限り人、人、人。人で溢れかえっているのだ。
「きょ、今日は何かお祭りでもあるのですか?」
と、隣にいる美青年、アルノード・スライスサーさんに思わず尋ねてしまったほどだ。
アルノードさんは2ヶ月前に村に聖女である私を迎えに来た聖王国の聖騎士だ。村が死霊系の魔物に襲われて、リーグも危険になった時に助けてくれた人だ。
そして、アルノードさんに教えてもらい知った事なのだけど、私たちの村は瘴気に汚染されていたみたい。原因はわからないかと聞かれたけど、思いつくの1つしか無かった。
ハルトの事を話しても良いのか迷っていたけど、村の
人たちが皆口を揃えてハルトの事を話してしまったので、隠す事が出来なくなってしまった。
村の人たちの話を聞いたアルノードさんは連れて来た兵士の大半をこの村に残してくれる事、更に瘴気を浄化させるための神官を来させる事を約束してくれた。その代わりに私が聖王国に行く事を約束させられたけど。
私の両親は諸手を挙げて喜んだ。理由は私が聖女として国の役に立てるから……ではなくて、アルノードさんから莫大なお金を渡されたから。しかも、毎月送られてくるとか。
それを貰った両親たちは目の色を変えて私に聖王国へ行くように行ってきた。正直に言うと自分の両親なのに気持ち悪いと思ってしまった。
でも、丁度良かったと思ってしまう私もいる。この村にいればどうしてもハルトにした事を思い出してしまうから。一旦村から出て落ち着いてからまたハルトの事を考えようと思う。
そのためにはまずは、聖王国で神官が言っていた聖王国に攻めた悪魔の事を調べようと考えた私は、アルノードさんに行く事を伝えて、そして2ヶ月かけてやって来たのだ。
本当は私たちが住む国、アンデルス王国から1月ほどで行けるのだけど、旅に慣れていない私たちの為にゆっくりと進んでくれたのだ。
因みに私たちというのは、私が聖王国に行くのにリーグも付いて来たからだ。まあ、リーグが来るのは当然なのかもしれない。リーグの職業は聖騎士。同じ職業を持つアルノードさんに付いて来たかったのかもしれない。
少し前の事を思い出しながらアルノードさんを見ると、何故か物凄く笑いを堪えていた。わ、私何か変な事言ったかしら?
「いや、すみません。聖都ではこの人の多さが普通なのですよ。こればかりは慣れてもらうしかありませんね。それに、聖女様のお披露目の時はもっと人は増えますよ」
そう言って微笑んで来るアルノードさん……それよりも、お披露目って何? そんなの聞いてないんだけど。
「それでは、聖王様もお待ちしていますので行きましょう」
私の疑問をよそに馬車を進めるアルノードさん。はぁ、なんだか色々と不安だなぁ。ハルトがいたら落ち着くのに……駄目だわ、弱気になったら。それに、私がハルトの事を思う資格なんてないのだから。
「ステラ、おばさんたちの元を離れて不安だと思うが、俺が付いている。だから、俺を頼れ」
そんな私の表情を見て何を思ったのかリーグがそんな事を言ってくる。慣れてない女性ならカッコいいのかも知れないけど、リーグの悪いところ嫌なところを知っている私としては響かない。
私はリーグに軽く返事して、馬車から見える景色に意識を逸らす。ところどころに教会があったり、神官の人が演説したりとしていた。
その中で時折聞こえて来るのが、悪魔の出現と聖女の降臨という言葉だ。明らかに私とハルトの事を言っているのがわかる。
ハルトの事は名前は出て来ていないけど、古の時代、聖王国を襲った悪魔と同じ力を持つ者が現れた、と声を高らかにし叫んでいた。そして、その悪魔を封じる為に聖女が降臨したと。
その中で驚いたのが、3日後に聖王と共に聖女のお披露目があると、国中に発表しているのだ。さっきアルノードさんが言っていたお披露目というのはそういう事なのだろう。
少し憂鬱な気分になるけれども、馬車は止まってくれない。いつの間にか一際大きな神殿のような場所に辿り着いた。こんなの見た事ない。途中で立ち寄ったアンデルス王国の王宮ですらこんなに立派ではなかった。
神殿の入り口にはシスターたちが立ち並びその向こうから豪華な服を着た老人が歩いて来る。ニコニコと笑みを浮かべているけど、何を考えているかわからない目をしている。
「ようこそ、聖女様。私は聖王様の補佐をしております、マリンテ・エルマノールと申します。聖王様より枢機卿を賜っております。以後お見知り置きを」
「は、初めまして、ステラと申します。よろしくお願いします」
「ホッホ、何、そこまでかしこまる事はありませぬぞ。ここは我が家だと思ってくつろいでくだされば。それではまず聖王様に謁見する前に長旅で疲れたでしょう。湯浴みの準備が出来ております。お前たち、ご案内して差し上げろ」
「はい。それでは聖女様、ご案内致します」
マリンテ枢機卿がそう言うと、何人ものシスターが私の元へやって来る。持って来た荷物は全てシスターが運んでくれて、私はただ後を付いていくだけみたい。
「おっと、君はこっちだよ」
「なっ!? 離せ、アルノード! 俺はステラを守る為に来たんだ!」
「アルノード。なんだそやつは?」
「彼は新しい聖騎士です。悪魔との戦いに役に立つでしょう」
「ほう、新たな聖騎士か。うむうむ、今年は中々豊作のようじゃな。アルノード、そやつも身を綺麗にさせてから連れて来るのだ。一緒に聖王様に合わせる」
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