世界に復讐を誓った少年

やま

14.実験(ネックレス)

「貴様ら、こんな事をして済むと思っているのか!」


 腕を縛られた老騎士が何か喚いてくる。僕はそれを無視して、ゾンビやスケルトンを新たに作って村人たちを村の真ん中に集める。女子供たちは周りをゾンビやスケルトンに囲まれて不安なのか、泣き叫ぶ者もいれば何かぶつぶつと唱えている奴もいる。


 男どもの内、戦闘に参加していた何人かはゴブリンゾンビに切られて死にかけている。まだ生きているのは僕の命令を聞いたからだろう。


 老人たちは既に諦めているのか、一様に暗い顔をしている。さっきも、僕に殺されるくらいなら自分で死ぬと暴れた老婆がいたし。面倒だからゴブリンゾンビに取り押さえてもらったけど。


「この地の領主、アトラ様がお前たちの事を放っておかないぞ! 民に優しいあの方がこの事を知ればお前たちなんぞ!」


 ……本当に煩い老騎士だ。普通に殺しても構わないのだが、ここは手下にしよう。僕は今だに喚く老騎士の喉元を掴み引きずる。


 他の村人たちは僕の行動に怯えながらも、何も言ってこない。矛先が自分たちに向かないように黙っているのだ。


 そして、村人全員が見える位置に老騎士を転がす。咳き込みながらも喚こうとするので顔を踏みつけて。めしめしと音がなっているが、老騎士が黙ったので良しとしよう。


「今からこの老騎士を殺してゾンビに変える。この老騎士を助けて欲しいか?」


 僕の言葉に頷く村人たち。だけど、次の僕の言葉に皆が顔を背ける。それは


「なら、この老騎士の代わりに誰か1人犠牲になれ。そうすればこの老騎士を助けてやろう」


 身代わりを差し出す事を提案したからだ。そうすると案の定皆が皆顔を背ける。しかし、その中でも出てきた者がいた。それは、年端もいかない女の子だった。


「ロ、ロウレイおじちゃをいじめないで!」


 そう言い俺の足を叩く女の子。当然、何も痛みは無いが……ふむ。


「なら、お前がこの老騎士の代わりになるか?」


「なっ!? ま、待ちやがれ! 俺の娘に手を出したらぶっ殺すぞ!」


「あ、あなた、やめなさい! それにルシーも戻って来なさい! お、お許しよ。許してください!」


 僕が女の子に尋ねると、女の子の親だと思われ2人の男女が叫ぶ。男の方は顔を赤くして今にも飛び出して来そうだったが、隣に座る妻の方がなんとか止めようとする。


「なら、お前たちどちらかが犠牲になるか? そうすれば助けてやる」


 僕の言葉に再度言葉を詰まらせる夫婦。所詮そんなものだ。どうせ自分の命が大切なのだから。まあ、女の子をゾンビにするのはやめておいてやる。そんな事をしても戦力にはならないからな。


 ここはネックレスの糧となって貰おうと思い、女の子に手を伸ばそうとしたその時


「や、やめろ。私が犠牲になれば良いのだろう?」


 と、足元から弱々しい声が返ってきた。下を見ると、僕が踏み過ぎて口の中が切れたのか、口から血を流す老騎士が僕を睨みつけていた。


「まあ、そういう事だね。それじゃあ、老騎士が死ぬって事で構わないかな、村の皆さん?」


 僕の再度の呼びかけにも反応しない村人たちは。僕は暗黒魔術を足を伝わらせて老騎士へと注ぐ。老騎士の体を黒い靄が覆い、口や鼻、耳から老騎士の中へと入っていく。


 今はもう踏んでいないけど、老騎士は立ち上がる事なく苦しんでいた。そしてしばらくするとピタリと動かなくなる。同時に僕は老騎士の体から魂を貰った。


 どうやら、ネックレスが勝手に吸収してくれるみたいだ。その瞬間には、老騎士の叫び声が聞こえてくる。煩いがこの程度ならそのうち慣れる。それに、まだ1人だが、魔力の量が増えたのがわかる。


「グルルゥ」


 お、完成したな。老騎士の体は青紫色に変わり、生前より一回り大きくなっている。ゾンビナイトの完成だ。ゾンビナイトは怯える村人を見つけるとすぐに襲おうとするが、命令して止める。こいつらはまだ利用価値があるからね。


 それから僕は死にかけている村人のところへと行く。人数は3人か。この3人も老騎士と同じように魔力を注ぐと、ゾンビに変わった。まあ、弱いが良いとしよう。


「ふむ、それでこれからどうするのだ、マスター。こやつらを始末するのか?」


 僕がやり終えたと思ったのか、今まで見物に徹していたリーシャが尋ねてくる。リーシャの言葉にさらに怯える村人たちだが、


「いや、こいつらは生かす。突然村人全員が消えたら騒ぎが大きくなるからな。数人程度なら魔物に襲われたと言っておけば良いし。おい、この中で村長は誰だ」


 尋ねた言葉に一斉にある方を見る村人たち。その先には怯える禿げた男がいた。あいつが村長か。周りは早く前へと出て来いと、村長を無理矢理進ませる。そして、僕の前に立つと、怯えた目で僕を見てくる。


「お前たちはこれから何も無かったように普通の生活をしろ。その間、今日の事は他言無用だ。もしこの事がバレて討伐隊でも来たら、その時はお前たちも道連れだ。こいつらは監視も兼ねているため、何かあれば僕に伝わるようになっている。わかったな?」


 僕の言葉に頷く村人たち。こうは言うが当然裏切りは想定している。それどころか裏切らないはずがない。だから、僕監視としてゾンビナイトを置いて行くことにした。


 もし、ゾンビたちが倒されても、痛手にはならないし、僕にも倒した事は伝わってくる。その時こそ、この村を滅ぼせば良いんだ。


 ゾンビナイトたちは老騎士が住んでいた家に押し込める。あんまり表立ってはいられないからな。他の村人たちもそれぞれの家へと帰っていった。暗黒魔術の催眠を軽めにかけたのも良かったのだろう。


「リーシャ、ここを足がかりとしよう。ここから北上していき、最終的には聖王国だ。どうだ?」


「良いと思うぞ。まあ、私はマスターが歩む道の後ろをついて行き、いざという時は前に立ち剣を振るうだけだ。ただ、まだまだ訓練はせねばな。なんださっきの戦い方は! 力任せ過ぎてつまらなかったぞ!」


 くっ、戦闘に関しては何も言えない。それから、リーシャの小言を聞きながらも村を後にした。今回は腕輪とネックレスの力を試せてよかった。これをもっと使いこなせるようにしなければ。

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