世界に復讐を誓った少年
11.汚染された村
「……ステラ、わかるか?」
「ええ、あれは危険過ぎる」
明らかに先程まで戦っていたゾンビたちとは雰囲気が違う。全身を血のように赤く染めて、鋭く伸びた爪。新しく現れたゾンビは、ふらふらとやって来たけど、私たちを見ると、走って向かって来た。
私たちは皆、急いで立ち上がり武器を構える。赤色ゾンビは、近くにいたレグルの取り巻きの1人に襲いかかる。取り巻きの1人は掴みかかろうとする赤色ゾンビに剣を突き出すけど、赤色ゾンビは素早い動きで、取り巻きの剣を避けた。
そして、取り巻きの腕を掴む。長い爪が腕に食い込み取り巻きは痛みに油断した隙に、赤色ゾンビは首元に噛み付いた。
「てめぇ!!」
自分の取り巻きがやられた事にレグルが怒り、赤色ゾンビへと向かっていく。他の皆もレグルについて行くけど、そんな安易に突っ込んじゃったら!
「おらっ!」
レグルは赤色ゾンビの視界を隠すように盾を突き出すが、その盾に向かって赤色ゾンビは殴りかかった。レグルの盾と赤色ゾンビの拳がぶつかると、片方が押し負けて弾かれた。
負けたのは……レグルの方だった。盾が弾かれ体がガラ空きになったレグルに、ゾンビは再び殴りかかる。あんな一撃で殴られたらレグルが!
レグルを助けるために私は光の弾を放つ。これが当たればゾンビも怯むはず。そう思っていたけど、赤色ゾンビは、私の光の弾が近づくのが分かると、レグルから離れて避けてしまった。
攻撃が当たらなかったのは悔しいけど、ゾンビをレグルから離せただけでも良しとしよう。
その間にリーグは赤色ゾンビへと迫る。赤色ゾンビもリーグは無視出来ないのか、リーグの動きを見ていた。
リーグは下から光り輝く剣を振り上げる。赤色ゾンビは左手で横に弾くけど、光が触れた箇所が音を立てながら溶けていく。
そのまま、リーグは横に剣を振ると、赤色ゾンビは爪でリーグの剣を受け止めた。そのまま、睨み合う2人。あのリーグと力を競り合うなんて。
両手で剣を握り押し込もうとするけど、赤色ゾンビは下がらない。それどころか迎え撃つように一歩踏み込んで来た。
そして、膨らむ頰。まさか! と思った瞬間、ゾンビの口から何か吐かれた。危ないっ! と、叫んだけど、リーグも膨らむ姿を見て予想が付いていたのか、競り合うのをやめて、赤色ゾンビから離れていた。
ゾンビの口から吐かれたものが地面に落ちると、音を立てて煙が吹き出る。地面を溶かしてるの?
「があっ!?」
皆がゾンビの吐いたものに気を逸らされていると、リーグの叫び声が聞こえて来た。声の方を見ると、片腕の無い赤色ゾンビがリーグの体を殴りつけていたのだ。
一体あの一瞬に何があったのかと周りに聞くと、その光景を見ていた1人が教えてくれた。距離を取ったリーグだけど、その後を追うように赤色ゾンビが迫って来たみたい。
そこに、カウンターとしてリーグは剣を振り下ろすと、反応が遅れた赤色ゾンビは避けきれずに左腕を切り落とす事が出来た、ように見えたらしいのだけど、今の光景を見ると違うのが分かる。
明らかに赤色ゾンビが意図して切られたのが分かる。そうじゃ無いと、痛みに怯んでいるのにリーグに殴りかかる事が出来るわけがない。自分から腕を切られたんだ、リーグの油断を誘うために。
殴られて吹き飛ぶリーグ。手に持っていた剣も手から離れて光を失う。赤色ゾンビは地面に倒れるリーグに走って向かう。
このままじゃあリーグが殺される。なんとかゾンビの気を引こうと、魔法を放とうと思った瞬間、ドドォン! と、ゾンビに何かが降って来た。
その勢いにリーグは吹き飛ばされ、砂煙は舞う。何が起きたのか誰もわからないまま、砂煙を睨んでいると、その中から誰かが出て来た。ゾンビかと思ったけど、現れたのは、20代くらいの爽やかな男性だった。
体中に雷を迸らせながらこちらに向かってくる男性。男性が降って来た場所の地面は抉れて、赤色ゾンビは跡形も無く消し飛んでいた。皆が呆然と男性を見る中、男性は私の前で片膝をついて
「お迎えにあがりました、聖女様」
私の手の甲に口付けをしてきたのだった。
◇◇◇
「わぁーお、凄いねあいつ」
「何見てるんだ、お前」
「ダルクスのおじさん。これは僕が作った映像装置。使い魔の見ているものを映す事が出来るんだよ」
「ああ、この前俺に頼んで外に出した使い魔か」
俺の言葉に頷くクロノ。こいつ、いつの間にそんなもん作ってんだよ。俺らの時代にはこんな天才いなかったな。もしかしたら変人と呼ばれていたあいつらがそうなのかも知れねえな。
「それで何見てんだよ?」
「ん? ボスがいた村だよ。どうせここも滅ぼすんでしょ? それなら見ておいた方が良いなと思って見ていたんだけど、この村呪われちゃってるね」
「あ〜、そりゃあ仕方ねえだろう。ハルトの奴が感情に任せて力を使ったからな。あれがなかったら俺もハルトに気がつかなかったが、魔力から漏れた瘴気に大地が汚染されている。死霊たちには至福の場所だろう」
しかし、あの程度の汚染で済んでいるのは、やはり聖女がいるからだろうな。無意識に瘴気を浄化してやがる。それでも瘴気の汚染の方が早いが。
「それに変な奴も出て来たし」
そう言いクロノの指差す先には雷を纏った騎士がいた。リーシャなら倒せるだろうが、ハルトにはまだ厳しいな。俺はハルトたちの方を見ながら思う。
「カタカタカタカタ!」
「うおっ!?」
「あっ! こら、マスター! 逃げてばかりでは無くて攻めなくては! そんなんでは敵には勝てんぞ!」
「そんなこと言ったって、剣を振りかざしているスケルトンがあばら骨飛ばしてくるなんて思わないだろ! 戦闘初心者を舐めるな!」
……まだまだ無理だな。
「ええ、あれは危険過ぎる」
明らかに先程まで戦っていたゾンビたちとは雰囲気が違う。全身を血のように赤く染めて、鋭く伸びた爪。新しく現れたゾンビは、ふらふらとやって来たけど、私たちを見ると、走って向かって来た。
私たちは皆、急いで立ち上がり武器を構える。赤色ゾンビは、近くにいたレグルの取り巻きの1人に襲いかかる。取り巻きの1人は掴みかかろうとする赤色ゾンビに剣を突き出すけど、赤色ゾンビは素早い動きで、取り巻きの剣を避けた。
そして、取り巻きの腕を掴む。長い爪が腕に食い込み取り巻きは痛みに油断した隙に、赤色ゾンビは首元に噛み付いた。
「てめぇ!!」
自分の取り巻きがやられた事にレグルが怒り、赤色ゾンビへと向かっていく。他の皆もレグルについて行くけど、そんな安易に突っ込んじゃったら!
「おらっ!」
レグルは赤色ゾンビの視界を隠すように盾を突き出すが、その盾に向かって赤色ゾンビは殴りかかった。レグルの盾と赤色ゾンビの拳がぶつかると、片方が押し負けて弾かれた。
負けたのは……レグルの方だった。盾が弾かれ体がガラ空きになったレグルに、ゾンビは再び殴りかかる。あんな一撃で殴られたらレグルが!
レグルを助けるために私は光の弾を放つ。これが当たればゾンビも怯むはず。そう思っていたけど、赤色ゾンビは、私の光の弾が近づくのが分かると、レグルから離れて避けてしまった。
攻撃が当たらなかったのは悔しいけど、ゾンビをレグルから離せただけでも良しとしよう。
その間にリーグは赤色ゾンビへと迫る。赤色ゾンビもリーグは無視出来ないのか、リーグの動きを見ていた。
リーグは下から光り輝く剣を振り上げる。赤色ゾンビは左手で横に弾くけど、光が触れた箇所が音を立てながら溶けていく。
そのまま、リーグは横に剣を振ると、赤色ゾンビは爪でリーグの剣を受け止めた。そのまま、睨み合う2人。あのリーグと力を競り合うなんて。
両手で剣を握り押し込もうとするけど、赤色ゾンビは下がらない。それどころか迎え撃つように一歩踏み込んで来た。
そして、膨らむ頰。まさか! と思った瞬間、ゾンビの口から何か吐かれた。危ないっ! と、叫んだけど、リーグも膨らむ姿を見て予想が付いていたのか、競り合うのをやめて、赤色ゾンビから離れていた。
ゾンビの口から吐かれたものが地面に落ちると、音を立てて煙が吹き出る。地面を溶かしてるの?
「があっ!?」
皆がゾンビの吐いたものに気を逸らされていると、リーグの叫び声が聞こえて来た。声の方を見ると、片腕の無い赤色ゾンビがリーグの体を殴りつけていたのだ。
一体あの一瞬に何があったのかと周りに聞くと、その光景を見ていた1人が教えてくれた。距離を取ったリーグだけど、その後を追うように赤色ゾンビが迫って来たみたい。
そこに、カウンターとしてリーグは剣を振り下ろすと、反応が遅れた赤色ゾンビは避けきれずに左腕を切り落とす事が出来た、ように見えたらしいのだけど、今の光景を見ると違うのが分かる。
明らかに赤色ゾンビが意図して切られたのが分かる。そうじゃ無いと、痛みに怯んでいるのにリーグに殴りかかる事が出来るわけがない。自分から腕を切られたんだ、リーグの油断を誘うために。
殴られて吹き飛ぶリーグ。手に持っていた剣も手から離れて光を失う。赤色ゾンビは地面に倒れるリーグに走って向かう。
このままじゃあリーグが殺される。なんとかゾンビの気を引こうと、魔法を放とうと思った瞬間、ドドォン! と、ゾンビに何かが降って来た。
その勢いにリーグは吹き飛ばされ、砂煙は舞う。何が起きたのか誰もわからないまま、砂煙を睨んでいると、その中から誰かが出て来た。ゾンビかと思ったけど、現れたのは、20代くらいの爽やかな男性だった。
体中に雷を迸らせながらこちらに向かってくる男性。男性が降って来た場所の地面は抉れて、赤色ゾンビは跡形も無く消し飛んでいた。皆が呆然と男性を見る中、男性は私の前で片膝をついて
「お迎えにあがりました、聖女様」
私の手の甲に口付けをしてきたのだった。
◇◇◇
「わぁーお、凄いねあいつ」
「何見てるんだ、お前」
「ダルクスのおじさん。これは僕が作った映像装置。使い魔の見ているものを映す事が出来るんだよ」
「ああ、この前俺に頼んで外に出した使い魔か」
俺の言葉に頷くクロノ。こいつ、いつの間にそんなもん作ってんだよ。俺らの時代にはこんな天才いなかったな。もしかしたら変人と呼ばれていたあいつらがそうなのかも知れねえな。
「それで何見てんだよ?」
「ん? ボスがいた村だよ。どうせここも滅ぼすんでしょ? それなら見ておいた方が良いなと思って見ていたんだけど、この村呪われちゃってるね」
「あ〜、そりゃあ仕方ねえだろう。ハルトの奴が感情に任せて力を使ったからな。あれがなかったら俺もハルトに気がつかなかったが、魔力から漏れた瘴気に大地が汚染されている。死霊たちには至福の場所だろう」
しかし、あの程度の汚染で済んでいるのは、やはり聖女がいるからだろうな。無意識に瘴気を浄化してやがる。それでも瘴気の汚染の方が早いが。
「それに変な奴も出て来たし」
そう言いクロノの指差す先には雷を纏った騎士がいた。リーシャなら倒せるだろうが、ハルトにはまだ厳しいな。俺はハルトたちの方を見ながら思う。
「カタカタカタカタ!」
「うおっ!?」
「あっ! こら、マスター! 逃げてばかりでは無くて攻めなくては! そんなんでは敵には勝てんぞ!」
「そんなこと言ったって、剣を振りかざしているスケルトンがあばら骨飛ばしてくるなんて思わないだろ! 戦闘初心者を舐めるな!」
……まだまだ無理だな。
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