世界に復讐を誓った少年
7.力
「暗黒魔術師……について?」
「ああ、そうだ。っと、言うよりもまず見てもらった方が早いな」
そう言いダルクスが骨だけの指で音を鳴らすと、ダルクスの骨だけの体に肉がつき始めた。人間の内側なんて初めてみるのだけど、正直言って気持ち悪い。自分の指が切り落とされた痕を見たりした事はあるけど、それより凄い。
でも、完全に骨に肉がつくと1人の男性の姿になった。金髪の髪をオールバックにしており、左目のところには大きな切り傷がある男性の姿だった。歳は40代ぐらいだろうか。
さっき夢で出てきた男に似ている。今目の前にいる人より少し若かったけど間違いない。
「肉体を戻したのは何年振りだろうか。なぁ、ナタリア?」
「おおよそ、2千年程でしょうか、主人様」
うおっ!? 突然後ろから声がしたから振り向くと、先程まで立っていたスケルトンも肉体をてにいれていて、侍女服を着た綺麗な女性が立っていた。腰まで伸びた綺麗な黒髪をしている。ステラと比べてもかなり綺麗だ。
「もうそんなに経つか。あいつを見送ってからずっとここにいたからな」
そう言って何か懐かしそうな表情を浮かべるダルクス。それよりも
「そういえばここってどこなんだ? なんだか落ち着くんだけど」
「落ち着くのは当然だろう。ここは生と死の狭間だからな。俺たちのみが持つ暗黒魔術師の力のみで来る事が出来る場所だからな」
……生と死の狭間。また訳のわからない事を。だけど、疑う気になれないのは本能で自覚しているからだろうか。
「……その暗黒魔術師ってなんなんだ? 色々と聞きたい事はあるけど、1番気になったのは魔術師ってところだ。僕たちが使えるのは魔法のはずだ。それなら魔法師になるはずなんだけど?」
「簡単に言うと魔術っていうのは神の力の一部だ。元々は世界に無かった力だが、とあるクソ女が元々いた神を殺して成り上がったんだよ。その結果、神の持つ力が世界に散らばった」
「そのクソ女って……」
「女神フィストリアだ。元は神の下にいる天使だったらしいが、力を欲して神の座を奪い取ったそうだ。その時、前の神が自身の力を取られないようにするために、この世界に力の一部を放ったらしい。その力の1つが魔術という力だ」
……僕が持つこの力が神の力の一部。結局は女神のせいで僕がこんな目に。
「神の座についたフィストリアだが、神が自らの力を分けて世界に放ったせいで、他の神よりは劣る存在となった。それでも、他の天使でも太刀打ち出来ないほどの力は持っていたそうだが」
「なら、なんでフィストリアは前の神を殺す事が出来たんだ? 前の神はそれ以上の力を持っていたんだろ?」
「何、簡単な話だ。色仕掛けにやられたんだよ。神と言えども男神、当然色欲も持っている。そこを狙われたんだよ」
……なんでそういうところは人間っぽいんだよ。僕が思っている事がわかったのかダルクスも苦笑いをしていた。
「魔法はな、人間たちを自分の僕にするためにフィストリアが魔術を簡単にして人間が使えるようにしたものだ。神から与えられし力としてな。ある程度の魔力と理解力があれば、誰でも使えるように魔術を簡略化したのが魔法だ」
「……なるほど。だけど、どうしてあんたはそこまで詳しいんだ? 話を聞いていると、あんたは僕と同じ人間のはずだが?」
「ナタリアに聞いたんだよ。そいつはフィストリアと同じ天使だ。暗黒魔術師の力に目覚めた俺のところに来たんだよ。フィストリアを止めて欲しいと」
僕はダルクスの言葉を聞いて振り向く。後ろではナタリアが無表情のまま頷いていた。話を聞いて思ったけど天使なんて存在したんだ。伝説のものかと思っていた。
「それで暗黒魔術師、暗黒魔術ってのはな、簡単に言うと今で言う闇系の魔法の全てを司る魔術だ。普通のものから洗脳や影操作、アンデッド系を作り、操る事も可能だ」
……あっ、さっきの夢ではそのアンデッドを作る力を使ってあの大軍を作っていたのか。
「ナタリアにこの世界の事を教えてもらった俺は、まず、強くなるために世界を回った。あの時は女神どころか、聖王国にも勝てなかったからな。旅では色々とあり、聖女とも知り合った。その時にナタリアから聖女というシステムを教えてもらった」
「聖女というシステム? どういう事だ?」
「さっきも話した通り、フィストリアは神の力を殆ど手に入れる事が出来なかった。そのため、世界に干渉するほどの力を持つ事が出来なかったんだ。それがフィストリアは嫌だったんだろう。前の神には出来ていて自分が出来ないのが。それが嫌でフィストリアは、世界に干渉するためのシステムを作ったんだよ。それが聖女という生贄だ。
聖女はフィストリアが適当に選んで力を与えている。それをするのにはかなり力がいるらしく、何百年に1回だけらしいが。そして、聖王国に聖女を保護させ、お告げという形で命令するんだ。フィストリアがしたい事をな。
しかし、当然ながら元々神の力の一部を持っている俺たちとは違って、普通の人間に神の願いなんて叶えられるわけがねえ。いくら力を与えられようとも、フィストリアの力は紛い物だ。その結果どうなると思う?」
どうなる? 僕にはわからないが、ダルクスの雰囲気からして確実に良くない事が起こるのだろう。
「聖女が生きていく上で必要な人体の機能を失うんだよ。それも、フィストリアの願いが難しいものほど」
「私が見た事があるのが、視力や、味覚、基本的な五感の一部を失うのは普通で、体の一部が無くなったり、感情が無くなったり、記憶が無くなったり。
珍しいものでは、力を使う前は普通に飲食が出来ていたのですが、力を使った後、満腹を感じさせる機能を失い、いくら食べても空腹が収まらず亡くなった方もいました」
……なんだよそれ。それじゃあ今聖女の職業を持っているステラもそうなる可能性があるのか……僕には関係無いけど。
「俺が一目惚れした聖女は、既に視力を失っていた。それが許せなかった俺は、その時はある程度力を持っていたから聖王国に攻めたんだよ。そして、聖女を取り返して、ナタリアの力を借りて、フィストリアの元へ行き殺した……はずだっだけどな」
それが、さっき夢で見た戦いなのか。その後に女神フィストリアを殺したと思っていたけど、実は生きていたってわけだ。
「その結果、この世界に散らばった神の力の一部に恐れたフィストリアは、天啓なんて力を人間どもに与えて監視していたんだろう。俺は他にも力を持った奴に出会った事があるから、俺が表舞台から消えた後もいたんだろう。そいつらが生き抜いたかどうかは……お前を見る限り厳しそうだが。
これら全ては俺たちの甘さが招いた結果だ。そのせいでお前には苦しい思いをさせてしまった。すまなかった。詫びでは無いがお前の望みを聞こう。俺を殺したいというなら殺してもいい。俺ができる範囲の事はする」
そう言って頭を下げてくるダルクス。僕がダルクスに望む事。僕が望む事は……
「ああ、そうだ。っと、言うよりもまず見てもらった方が早いな」
そう言いダルクスが骨だけの指で音を鳴らすと、ダルクスの骨だけの体に肉がつき始めた。人間の内側なんて初めてみるのだけど、正直言って気持ち悪い。自分の指が切り落とされた痕を見たりした事はあるけど、それより凄い。
でも、完全に骨に肉がつくと1人の男性の姿になった。金髪の髪をオールバックにしており、左目のところには大きな切り傷がある男性の姿だった。歳は40代ぐらいだろうか。
さっき夢で出てきた男に似ている。今目の前にいる人より少し若かったけど間違いない。
「肉体を戻したのは何年振りだろうか。なぁ、ナタリア?」
「おおよそ、2千年程でしょうか、主人様」
うおっ!? 突然後ろから声がしたから振り向くと、先程まで立っていたスケルトンも肉体をてにいれていて、侍女服を着た綺麗な女性が立っていた。腰まで伸びた綺麗な黒髪をしている。ステラと比べてもかなり綺麗だ。
「もうそんなに経つか。あいつを見送ってからずっとここにいたからな」
そう言って何か懐かしそうな表情を浮かべるダルクス。それよりも
「そういえばここってどこなんだ? なんだか落ち着くんだけど」
「落ち着くのは当然だろう。ここは生と死の狭間だからな。俺たちのみが持つ暗黒魔術師の力のみで来る事が出来る場所だからな」
……生と死の狭間。また訳のわからない事を。だけど、疑う気になれないのは本能で自覚しているからだろうか。
「……その暗黒魔術師ってなんなんだ? 色々と聞きたい事はあるけど、1番気になったのは魔術師ってところだ。僕たちが使えるのは魔法のはずだ。それなら魔法師になるはずなんだけど?」
「簡単に言うと魔術っていうのは神の力の一部だ。元々は世界に無かった力だが、とあるクソ女が元々いた神を殺して成り上がったんだよ。その結果、神の持つ力が世界に散らばった」
「そのクソ女って……」
「女神フィストリアだ。元は神の下にいる天使だったらしいが、力を欲して神の座を奪い取ったそうだ。その時、前の神が自身の力を取られないようにするために、この世界に力の一部を放ったらしい。その力の1つが魔術という力だ」
……僕が持つこの力が神の力の一部。結局は女神のせいで僕がこんな目に。
「神の座についたフィストリアだが、神が自らの力を分けて世界に放ったせいで、他の神よりは劣る存在となった。それでも、他の天使でも太刀打ち出来ないほどの力は持っていたそうだが」
「なら、なんでフィストリアは前の神を殺す事が出来たんだ? 前の神はそれ以上の力を持っていたんだろ?」
「何、簡単な話だ。色仕掛けにやられたんだよ。神と言えども男神、当然色欲も持っている。そこを狙われたんだよ」
……なんでそういうところは人間っぽいんだよ。僕が思っている事がわかったのかダルクスも苦笑いをしていた。
「魔法はな、人間たちを自分の僕にするためにフィストリアが魔術を簡単にして人間が使えるようにしたものだ。神から与えられし力としてな。ある程度の魔力と理解力があれば、誰でも使えるように魔術を簡略化したのが魔法だ」
「……なるほど。だけど、どうしてあんたはそこまで詳しいんだ? 話を聞いていると、あんたは僕と同じ人間のはずだが?」
「ナタリアに聞いたんだよ。そいつはフィストリアと同じ天使だ。暗黒魔術師の力に目覚めた俺のところに来たんだよ。フィストリアを止めて欲しいと」
僕はダルクスの言葉を聞いて振り向く。後ろではナタリアが無表情のまま頷いていた。話を聞いて思ったけど天使なんて存在したんだ。伝説のものかと思っていた。
「それで暗黒魔術師、暗黒魔術ってのはな、簡単に言うと今で言う闇系の魔法の全てを司る魔術だ。普通のものから洗脳や影操作、アンデッド系を作り、操る事も可能だ」
……あっ、さっきの夢ではそのアンデッドを作る力を使ってあの大軍を作っていたのか。
「ナタリアにこの世界の事を教えてもらった俺は、まず、強くなるために世界を回った。あの時は女神どころか、聖王国にも勝てなかったからな。旅では色々とあり、聖女とも知り合った。その時にナタリアから聖女というシステムを教えてもらった」
「聖女というシステム? どういう事だ?」
「さっきも話した通り、フィストリアは神の力を殆ど手に入れる事が出来なかった。そのため、世界に干渉するほどの力を持つ事が出来なかったんだ。それがフィストリアは嫌だったんだろう。前の神には出来ていて自分が出来ないのが。それが嫌でフィストリアは、世界に干渉するためのシステムを作ったんだよ。それが聖女という生贄だ。
聖女はフィストリアが適当に選んで力を与えている。それをするのにはかなり力がいるらしく、何百年に1回だけらしいが。そして、聖王国に聖女を保護させ、お告げという形で命令するんだ。フィストリアがしたい事をな。
しかし、当然ながら元々神の力の一部を持っている俺たちとは違って、普通の人間に神の願いなんて叶えられるわけがねえ。いくら力を与えられようとも、フィストリアの力は紛い物だ。その結果どうなると思う?」
どうなる? 僕にはわからないが、ダルクスの雰囲気からして確実に良くない事が起こるのだろう。
「聖女が生きていく上で必要な人体の機能を失うんだよ。それも、フィストリアの願いが難しいものほど」
「私が見た事があるのが、視力や、味覚、基本的な五感の一部を失うのは普通で、体の一部が無くなったり、感情が無くなったり、記憶が無くなったり。
珍しいものでは、力を使う前は普通に飲食が出来ていたのですが、力を使った後、満腹を感じさせる機能を失い、いくら食べても空腹が収まらず亡くなった方もいました」
……なんだよそれ。それじゃあ今聖女の職業を持っているステラもそうなる可能性があるのか……僕には関係無いけど。
「俺が一目惚れした聖女は、既に視力を失っていた。それが許せなかった俺は、その時はある程度力を持っていたから聖王国に攻めたんだよ。そして、聖女を取り返して、ナタリアの力を借りて、フィストリアの元へ行き殺した……はずだっだけどな」
それが、さっき夢で見た戦いなのか。その後に女神フィストリアを殺したと思っていたけど、実は生きていたってわけだ。
「その結果、この世界に散らばった神の力の一部に恐れたフィストリアは、天啓なんて力を人間どもに与えて監視していたんだろう。俺は他にも力を持った奴に出会った事があるから、俺が表舞台から消えた後もいたんだろう。そいつらが生き抜いたかどうかは……お前を見る限り厳しそうだが。
これら全ては俺たちの甘さが招いた結果だ。そのせいでお前には苦しい思いをさせてしまった。すまなかった。詫びでは無いがお前の望みを聞こう。俺を殺したいというなら殺してもいい。俺ができる範囲の事はする」
そう言って頭を下げてくるダルクス。僕がダルクスに望む事。僕が望む事は……
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コメント
ノベルバユーザー261299
心をメタメタにされてんのにものすごく冷静
凄いメンタルだ!
職業のこと憎んでるのに
すぐに話せる
凄いチョロイな