異世界で彼女を探して何千里?
54.vs魔王(2)
振り下ろされる魔王レグルスの手刀。避ける事が出来ずに真っ直ぐと振り下ろされると思われた手刀は、俺を切り裂く事は無かった。それは
「……ぐぅっ……がはっ!」
俺の前に立つクリアさんがレグルスの手刀を体で受け止めていたからだ。その手刀の斬撃で切り裂かれたローブは落ち、クリアさんの素顔が露わになる。
「……まさか、エルフだったとはな。敵対関係であるエルフが人間を庇うとは」
レグルスはそう言いながらも、今度は貫手でクリアさん毎俺を貫こうとする。しかし、そうなる前に、大きな氷塊が俺たちとレグルスの間に落ちた。フリューレが放った氷塊だった。
「ぐぶっ!」
「クリアさん!」
俺たちの前にフリューレや、フランたちが来ると、限界が来たのかクリアさんが血を吐きながら後ろに倒れてくる。俺はそれを背から抱きかかえる。
左肩から右脇腹まで斜めに残る傷痕。そこから止めどなく血が溢れ出てくる。かなり深い傷だ。このままじゃあ!
「クリアさん、直ぐに治癒が出来る人のところへ連れて行きますからねっ!」
俺が彼女を抱き上げようとした瞬間、俺の手を力強く握られた。握ったのは血を吐きながらも真っ直ぐと俺を見てくるクリアさんだった。
「ま……て……」
「クリアさん?」
「お……れは……もう……た……す……から……ねぇ……」
「そんな事言わないで下さい! 早く! 早く治療すれば!」
「き……いて……くれ」
俺が何とか連れて行こうとするが、俺の腕をより力強く握るクリアさん。俺を見る真剣な目に俺はそれ以上動く事が出来なかった。
「はぁ……はぁ……私は……人族が……嫌いだった。じじい以外、は……信じるつもりは……なかった。初めてゼストが来た、時だって……殺すつ……もりだった」
息を切らし、痛みに顔を歪め、血を吐きながらも、俺に話してくれるクリアさん。
「……そうですよね。あの時は本気で死ぬかと思いましたよ」
「……へっ、おま……えの、実力が……無いからだよ。……はぁ……はぁ……でも、そんな俺に……おまえは……普通に接し……て……くれた……」
「……」
「はじ……め……は、どう……せ……俺を……こわが……って……関わ……らねぇ……と思って……いた。だけど……おまえは……変わらずに……俺に……接してくれた。それが……嬉しかった!」
「クリア……さん」
俺を見ながら微笑むクリアさんの目から涙が流れていく。それを見ると気が付けば俺も涙を流していた。
「俺の……よう……な、混ざり……は、どの……大陸で……も……異端……だから……な。そんな……俺……を……受け入れて……くれて……ありがとう」
「……俺はただ姉弟子を尊敬しているだけですよ」
「ははっ……ありがとうよ……そんな……おまえに……1つだけお願いがあるんだよ」
「……何でしょうか? 何でも聞きますよ?」
「……はっ、調子に……乗るんじゃねえよ。……おまえ……大陸を回るんだろ? その時にさぁ……俺みたいなハーフを……助けてやって欲しいんだ。絶対……辛い思いをしている……だろうからさぁ。出来る範囲で……いいから……見てやってくれねぇか?」
「わかりましたから。わかりましたから、もう喋らないでください!」
「うるせぇよ……最後ぐらい……好き……に……話させてくれ。もちろん……タダ……じゃねえ。おまえに……とっておきのを……やる」
「とっておき?」
「……ああ……俺の……空間魔術……を……やるよ」
クリアさんがそう言うのと同時に、クリアさんの体が輝きだした。そして、クリアさんから暖かい光が俺の体へと流れて来た。だが、それと一緒にクリアさんの体が薄くなっていく。
「クリア……さん?」
「……ハーフでも……エルフって……事か。使えるか……不安……だったんだがな。まぁ……本当は……使う気は……無かった……んだが……この状況で……おまえなら……良いと……思って使った」
その言葉を聞いて、どう言う意味なのかを悟ってしまった。多分、これを使うと死んでしまうんだ。
「ゼスト……俺は……おまえと会えて……良かった」
「……俺もですよ、クリアさん。俺もクリアさんに会えて良かったです」
俺の言葉に微笑んでくれたクリアさん。クリアさんの体は光が増すにつれて透けていき、そして、俺の中へと入ってくる。
『負けるなよ、ゼスト』
はい、負けませんよ、クリアさん。
クリアさんの光が俺の体に全て収まったと同時に、吹き飛ばされた氷塊。その向こうには、ほんのかすり傷しか負っていないレグルスと、少し大きくなっているが、横たわっているフランたちの姿があった。
「怒りで成長したようだが、まだ俺には届かなかったな。殺しても良いが、貴重な魔物たちだ。連れて帰っても良いだろう」
「させねえよ」
「なに……っ!」
ふざけた事を抜かすレグルスの前に転移した俺は、腰に差してある白銀の剣を抜き、切りかかる。レグルスは魔力で強化して防ぐが、魔力を纏った俺の剣で、少し傷を付けることが出来た。
「お前……その魔術は……」
「悪いが、俺の大切な家族をこれ以上はやらせねえぞ!」
「……ぐぅっ……がはっ!」
俺の前に立つクリアさんがレグルスの手刀を体で受け止めていたからだ。その手刀の斬撃で切り裂かれたローブは落ち、クリアさんの素顔が露わになる。
「……まさか、エルフだったとはな。敵対関係であるエルフが人間を庇うとは」
レグルスはそう言いながらも、今度は貫手でクリアさん毎俺を貫こうとする。しかし、そうなる前に、大きな氷塊が俺たちとレグルスの間に落ちた。フリューレが放った氷塊だった。
「ぐぶっ!」
「クリアさん!」
俺たちの前にフリューレや、フランたちが来ると、限界が来たのかクリアさんが血を吐きながら後ろに倒れてくる。俺はそれを背から抱きかかえる。
左肩から右脇腹まで斜めに残る傷痕。そこから止めどなく血が溢れ出てくる。かなり深い傷だ。このままじゃあ!
「クリアさん、直ぐに治癒が出来る人のところへ連れて行きますからねっ!」
俺が彼女を抱き上げようとした瞬間、俺の手を力強く握られた。握ったのは血を吐きながらも真っ直ぐと俺を見てくるクリアさんだった。
「ま……て……」
「クリアさん?」
「お……れは……もう……た……す……から……ねぇ……」
「そんな事言わないで下さい! 早く! 早く治療すれば!」
「き……いて……くれ」
俺が何とか連れて行こうとするが、俺の腕をより力強く握るクリアさん。俺を見る真剣な目に俺はそれ以上動く事が出来なかった。
「はぁ……はぁ……私は……人族が……嫌いだった。じじい以外、は……信じるつもりは……なかった。初めてゼストが来た、時だって……殺すつ……もりだった」
息を切らし、痛みに顔を歪め、血を吐きながらも、俺に話してくれるクリアさん。
「……そうですよね。あの時は本気で死ぬかと思いましたよ」
「……へっ、おま……えの、実力が……無いからだよ。……はぁ……はぁ……でも、そんな俺に……おまえは……普通に接し……て……くれた……」
「……」
「はじ……め……は、どう……せ……俺を……こわが……って……関わ……らねぇ……と思って……いた。だけど……おまえは……変わらずに……俺に……接してくれた。それが……嬉しかった!」
「クリア……さん」
俺を見ながら微笑むクリアさんの目から涙が流れていく。それを見ると気が付けば俺も涙を流していた。
「俺の……よう……な、混ざり……は、どの……大陸で……も……異端……だから……な。そんな……俺……を……受け入れて……くれて……ありがとう」
「……俺はただ姉弟子を尊敬しているだけですよ」
「ははっ……ありがとうよ……そんな……おまえに……1つだけお願いがあるんだよ」
「……何でしょうか? 何でも聞きますよ?」
「……はっ、調子に……乗るんじゃねえよ。……おまえ……大陸を回るんだろ? その時にさぁ……俺みたいなハーフを……助けてやって欲しいんだ。絶対……辛い思いをしている……だろうからさぁ。出来る範囲で……いいから……見てやってくれねぇか?」
「わかりましたから。わかりましたから、もう喋らないでください!」
「うるせぇよ……最後ぐらい……好き……に……話させてくれ。もちろん……タダ……じゃねえ。おまえに……とっておきのを……やる」
「とっておき?」
「……ああ……俺の……空間魔術……を……やるよ」
クリアさんがそう言うのと同時に、クリアさんの体が輝きだした。そして、クリアさんから暖かい光が俺の体へと流れて来た。だが、それと一緒にクリアさんの体が薄くなっていく。
「クリア……さん?」
「……ハーフでも……エルフって……事か。使えるか……不安……だったんだがな。まぁ……本当は……使う気は……無かった……んだが……この状況で……おまえなら……良いと……思って使った」
その言葉を聞いて、どう言う意味なのかを悟ってしまった。多分、これを使うと死んでしまうんだ。
「ゼスト……俺は……おまえと会えて……良かった」
「……俺もですよ、クリアさん。俺もクリアさんに会えて良かったです」
俺の言葉に微笑んでくれたクリアさん。クリアさんの体は光が増すにつれて透けていき、そして、俺の中へと入ってくる。
『負けるなよ、ゼスト』
はい、負けませんよ、クリアさん。
クリアさんの光が俺の体に全て収まったと同時に、吹き飛ばされた氷塊。その向こうには、ほんのかすり傷しか負っていないレグルスと、少し大きくなっているが、横たわっているフランたちの姿があった。
「怒りで成長したようだが、まだ俺には届かなかったな。殺しても良いが、貴重な魔物たちだ。連れて帰っても良いだろう」
「させねえよ」
「なに……っ!」
ふざけた事を抜かすレグルスの前に転移した俺は、腰に差してある白銀の剣を抜き、切りかかる。レグルスは魔力で強化して防ぐが、魔力を纏った俺の剣で、少し傷を付けることが出来た。
「お前……その魔術は……」
「悪いが、俺の大切な家族をこれ以上はやらせねえぞ!」
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