異世界で彼女を探して何千里?

やま

53.vs魔王

「ティリア、この人を頼む」


「ゼスト、あなたは?」


「俺は奴と戦う」


 俺の言葉を聞いたティリアは、目を見開き、そして泣きそうな顔をする。そして俺の腕を掴もうと手を伸ばすけど、途中で伸ばす手を止めた。そして胸元で手を握りしめて


「必ず帰ってきてね」


 と、俺を送り出してくれた。俺は頷いて魔族の男の方へと向かう。


「別れの挨拶は済んだのか?」


「なんだ、待っていてくれたのか?」


「最愛の相手と別れるんだからな。それぐらいは待ってやるさ」


 ……実力差はかなりあって魔人の男の言う事もわかるが、それでも、舐められるのは腹が立つな。俺は土精ノ籠手を左腕にも発動し、魔族の男を睨む。


 魔族の男と睨み合っていると、突然、男の足場に氷柱が生えた。男はそれを容易く避けるが、避けた先で頭上から雷が、背後から光線が迫った。そして、再び囲うように氷柱が男に迫る。


「ほう、魔光螺旋脚」


 しかし、男は避けるそぶりを見せずに、魔力を纏った足で、迫る攻撃に向けて回し蹴りを放った。その一撃で掻き消される攻撃。同時に男たちの周りに現れた俺の大切な仲間である、フラン、フリューレ、フラム。


「これは珍しいな。雷餓狼に白零狐、そして銀光竜が集まるとは。全部、お前のか?」


「俺の大切な仲間だよ」


 俺がそう言うと、魔族の男は何故か嬉しそうに頷く。しかし、それも一瞬。直ぐにさっきの篭った視線で俺を睨んできた。


「それなら、大切な仲間が殺されないように、注意する事だ!」


 男がそう言うと同時に飛び出し、フランの方へと向かった。フランは体に雷を纏わせ、迎え撃つ姿勢だ。そこに俺たちも向かう。


 フランが男に向けて雷の矢をいくつも放つ。1つ1つがかなりの魔力を込められて作られた魔矢だ。普通の魔物なら1発で倒せる威力を持つのだが、男はそれを軽々と弾く。


 そして、フランへと拳を振り下ろそうとするが、そんな事はさせない。殴り掛かろうとする男に、横から闇生ノ魔手を振り下ろす。


 男は軽々と受け止め、俺に右足で回し蹴りを放って来た。俺はそれを左側の魔手と籠手で受け止めるが、魔手は粉々に砕かれ、籠手にはヒビが入る。ちっ、なんつう蹴りだよ!


 俺は魔手を消して、その魔力を籠手に回す。同時に、男が左手が俺の胸目掛けて迫っていた。指先は伸ばされて手刀として。


 俺は籠手を盾代わりに体の前で交差させる。男の手刀は、容易く貫かれるが、俺の胸までは届かなかった。俺は籠手を貫いている左腕を抜かれないように籠手を直して固める。


 男はちっ、と舌打ちをしながら今まで以上に魔力を込めた右手の手刀を俺はと振り下ろして来た。これはまずい! そう感じた瞬間、氷に覆われた尻尾が男の頭上に目掛けて振り下ろされ、光の球体がいくつも男へと迫る。


 男は、フリューレの尻尾を手刀にしていた右手で弾くが、フラムの光の球体は避け切れずに全弾その身にくらった。


 そこに俺とフランが迫るが、俺たちが迫る前に、見えない何かが飛んで来て俺とフランが吹き飛ばされた。その後に続いてフリューレとフラムも同じようにだ。くそっ、一体何が?


 直ぐに起き上がり、構えながら男の方を見るが、男に変わった様子はなかった。しかし、離れたところから手刀を振り下ろして来た。それを見た瞬間、背筋がゾワっと悪寒に襲われる。俺は近くにいたフランを抱えて、その場から飛び退く。


 次の瞬間、俺とフランがいたところに斬撃が通り過ぎだ。そして、気が付けば目の前に男の姿が。俺はフランを放って籠手を交差させる。


 次に来たのは途轍もない衝撃だった。籠手は両腕とも壊され、俺は何度も地面を跳ね飛ばされる。


「ぐっ……そっ!」


 俺は血反吐を吐きながらも何とか立ち上がる。気が付けば、フランたちも地面に横たわっていた。見る限り呼吸はしているので生きているが、危険な状況には変わりない。……あの一瞬で俺たちはやられたのか。


「そういえば、名乗っていなかったな。俺の名は魔王レグルス。レグルス・レオルギスだ。お前を殺す名前だ。覚えておくといい」


 そう言う男、魔王レグルスは、再び俺の目の前に現れ、手刀を振り下ろしてくるのだった。

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