異世界で彼女を探して何千里?

やま

48.帰国

「ふぅ、ありがとうございます、クリアさん。わざわざここまで送ってくれて」


「……別に構わねえよ。じじいにも頼まれた事だからな」


 そう言ってそっぽを向くクリアさん。俺がギルアンさんの修行を終えてから1ヶ月経った今日、ようやくミストラル王国へと帰って来た。


 なぜ1ヶ月経ってから帰って来たかと言うと、まあ、最後の仕上げとギルアンさんと訓練をしていたからだ。そのおかげで、創造魔術にも幅が出来た。


「ココン!」


「ワフゥ〜」


「キュキュ!」


 当然付いて来た3頭は初めて見る景色にあっちを見たり、こっちを見たりと忙しない。しかも、自由に歩き始める。まあ、ある程度の距離からは離れないし、見える範囲にいるから良いか。


「クリアさん、俺の家に来ませんか? 父上や母上にも紹介したいですし」


「……行ってやらないこともない」


 そっぽを向いたままそう言って俺の後を付いてくるクリアさん。思わず笑いそうになったけど、何とか我慢して家へと向かう。


 久し振りの懐かしい景色を眺めながら歩いていると、俺の家が見えて来た。当たり前だけど、変わっていないな。


 門をくぐって家の前に立つ。コンコンとドアノッカーを使い音を鳴らすと、家の中で走る音が聞こえてくる。そして扉が開けられて出て来たのは


「ただいま、セリーネ。見ない間に大きくなったな」


 俺の可愛い妹であるセリーネだった。セリーネは嬉しそうな顔をするが、次第にそれも曇って行き、泣きそうな顔で俺に抱きついて来た。どうしたんだ?


 その後は、セリーネがぎゅっとしたまま動かなかったため、取り敢えず、中へと連れて行くことにした。屋敷の中を歩いて行くと気が付いた事だが、セリーネ以外に人の気配がしない。


 元々、人が多い方ではないが、それでも母上はいるはずなのだが。どこか出ているのか? 


 訳が分からないが取り敢えず屋敷の中のリビングへと辿り着いた俺たちは、セリーネをソファに座らせる。俺も隣に座り、クリアさんには向かいに座ってもらった。


 フランたちは屋敷の中を走り回りたかったのかそわそわとしているが、空気を読んだのか、俺の側でじっとしている。すまないな、みんな。


 ソファに座って頭を撫で続けてようやく落ち着いたのか、セリーネは抱きつくのをやめて顔を上げる。そこでようやくクリアさんやフランたちに気が付いた。


 驚くセリーネにフリューレが乗ってもふもふさせてあげたりしたため、警戒はあっという間になくなったけど。


 クリアさんがハーフエルフなのは驚いていたが、俺の姉弟子であり、何度も命を救ってくれた恩人だと話すと、これも警戒を薄めてくれたが、別の事に警戒していた。何度か俺の事について尋ねていたが何だったんだ?


「……取り乱して申し訳ありません、お兄様。久し振りに家族の顔を見たら安心してしまって」


「別に構わないさ。俺も久し振りにセリーネに会えて嬉しかったし。それで何があったんだ? セリーネがそんな取り乱すなんて」


 セリーネは再び顔を下げるが、ぽつぽつと話して行ってくれた。話してくれた内容は、ミストラル王国、ゼスティア帝国、魔人大陸との大陸を繋ぐ経路に1番近い国、エスティーヌ王国の三国が合同で魔人大陸へと攻め行ったという話だった。


 軍人である父上や兄上は勿論の事参加しており、もう引退したはずの母上までも駆り出されていると言う。それだけでも驚きなのに、それ以上に驚いたのが、その後続の軍の中にまだ学生であるティリアたちも従軍している事だ。


 学生全員ではなく、各国優秀な者だけとは言うが、俺がいたクラスの皆は参加しているらしく、当然担任で元軍人のグレル先生も付いて行っている。


 学生や若い者は基本後続だから危険は少ないと言うが、全く無いわけじゃない。むしろ補給としている彼らが狙われる場合もある。


 まさか、俺が修行に行っている間にそんな事になっているなんて。


「……じじいの奴、黙っていたな」


「……どう言う事ですか、それ?」


「じじいは色々な国の重鎮と顔見知りだ。前も帝国の皇帝とも知り合いだっただろ? そのじじいが知らない訳が無い。大方、お前の修行を中断させたくなかったから言わなかったのだろうよ」


 セリーネから聞いた時期的には、丁度地竜を倒した頃だ。そういえば、あれが終わった後に突然創造魔術を完成させるなんて話をし出したんだっけ。あれは、帰らせないためか?


「じじいは俺たちを送った後直ぐにでも向かったのだろうよ。俺じゃあ直ぐには戦地には行く事が出来ないのを見越して。弁護する訳じゃないが、じじいの事を恨むなよ」


「……わかっています。わかっていますけど……」


 今更俺が行ったところで何か出来るわけじゃない。だこど、ここでみんなが無事に帰ってくるのを待っている事なんて出来ない。くそっ、どうすれば……。


「……ったく、仕方ねえな。ここから魔人大陸との国境まで俺が運んでやるよ」


 俺がどうすればいいか悩んでいると、クリアさんがはぁ〜、とため息を吐きながらそう言ってきた。だけど、ここから魔人大陸との国境までかなりの距離がある。


 その距離を一気に行けなくて分けたとしても、かなりの魔力を使うはずだ。そんな事をすれば物凄く辛いはずだ。


「……俺がお前のそんな顔見ていられないだけだ。だから連れて行ってやる」


 クリアさんは顔を赤くしてそう言ってくれた。その言葉にセリーネの目つきがキツくなっているけど、俺はクリアさんに感謝しかなかった。


 俺が行って何かが変わるわけがない。たった1人の人間が参加したところで戦争は変わらないのだから。だけど、それでも、行かなくて後悔するより、行って後悔する方がマシだ。


 待っていてくれ、みんな。

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