異世界で彼女を探して何千里?

やま

44.突然

「グモォォォッ!!」


 俺へと殴りかかってくるオーガ。俺は腰にある白銀に輝く剣を抜き、オーガの拳を半歩下がり、下から剣を振り上げる。


 オーガの腕の感触を感じる事なく振り上げた剣は太陽の光に汚れひとつなく輝いていた。オーガは何事も無かったかのように振り返り再び殴って来ようとするが、その瞬間、ずるりと腕がズレて落ちる。


 オーガは落ちる自分の腕と突然走る激痛に戸惑い叫ぶ。血が噴き出る切り口を右手で押さえるが、止めどなく噴き出てくる。俺はその間にオーガの懐に入り、胸元に剣を突き刺す。


 胸元も特に抵抗を感じる事なく突き刺さり、オーガは痛みを感じる事なく絶命した。ふぅ、他のみんなはっと……。


 みんなを探すために周りを見渡すと、ハッ、ハッ、と走ってくる小さい影が。


「ワウッ!」


 そして俺を見つけるとぴょんと跳んでくる可愛いやつ。俺は優しく抱きかかえて頭を撫でて上げると、もっとしろ! という風に頭をぐりぐりと押し付けてくる。


「コンッ!」


 しかし、遅れてやって来たもう1つの小さな影が抱えてる影に突撃してくる。腕の中にいる方は腕から飛び降り2つの影は睨み合う。いつもの事なのであれなのだが、出来れば仲良くしてほしい。そして


「キュー」


 空から降りて来たもう1つの影が俺の頭に乗って甘えてくるのだ。俺は頭の上の子を撫でていると、じーっと見てくる2つ視線。さっきまで睨み合っていた2つの影が俺を見ていた。


 俺の大切な相棒たち、雷餓狼のフラン、白零狐のフリューレ、そして新しく俺と契約した銀光竜のフラム。帝国の事件から1年、ずっと、俺の側にいて一緒に戦ってくれる大切な子たちだ。そして


「おい、ゼスト、帰るぞ」


 森の奥から銀髪をかき上げながらやってくる褐色の女性。俺の姉弟子であるクリアさんだ。右手には赤いオーガを引きずって来ていた。


「変異種ですか、それ?」


「あん? ああ、群れの奥にいたからな、これ以上増えられても困るから殺して来た。それよりもさっさと帰るぞ。じじいが何か話したい事があるって言っていたからな」


 クリアさんはそう言いながら足で地面をパンパンと足踏みをする。すると、それだけで地面に魔法陣が浮かび上がり、俺たちの視界が一瞬で変わる。


 目の前には木で出来た家屋、俺たちが住んでいる家だ。フランたちは目の前の家を見ると我先にと走って入っていく。いい匂いが漂ってくるからか?


 俺も彼女たちの後を追う。ちなみにフランたちは皆性別は雌だという。本人たちに聞いたから間違いない。その事をクリアさんにも伝えたら、「女誑しのハーレム野郎」なんて言われたが。


「ほら、何突っ立ってやがる。さっさと入るぞ。今日こそは勝ってやるんだからな!」


 彼女は俺の背中を叩きながら先に家に向かう。1年前に購入した将棋にハマっているクリアさん。未だにフランたち勝てないが、それでも楽しそうにやっている姿を見るのは可愛らしい。そんな事を言ったらブン殴られるが。


 家に入ると目に入ったのはナイフとフォークを物凄く器用に握るフランたちが、椅子に座ってご飯を待っている姿だ。


 魔力を使って物を掴めるようにしているのだとか。俺と一緒にご飯が食べたいと言い出して、編み出した技らしい。愛奴らめ。因みにちゃんと椅子に座る前は手足をしっかりを洗っている。


「おっ、帰ってきよったか。2人とも手を洗って席に着くのじゃ」


 そんなフランたちを眺めていると、料理を両手に持っているギルアンさんがそう言ってくる。今日の料理当番はギルアンさんだったか。


 俺とクリアさんはそのまま手を洗い席に着く。そして席に戻ってから食事となる。今日はアルスさんはいないようだ。


 みんなで楽しく食事、フランたちは何故か取り合いを始めるが。その中でギルアンさんが


「あっ、ゼストや。明日が最後の修業になるからの」


 と、突然の事を言い放って来た。

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