異世界で彼女を探して何千里?

やま

43.戦いの終わり

「な、なんでここにギルアンさんとアルスさんが?」


「ジジィ、なんでこんなところにいやがる」


「ふぉっふぉっ、逆にわしが聞きたいくらいじゃよ。じゃがそれも後でじゃ」


 突然現れたギルアンさんたちに戸惑いの声を上げる俺たちだが、ギルアンさんはそのまま金髪の男の前に行く。


「……なぜ止めるのです、ギルアン様。僕を傷付けたその悪を殺さなければ」


「ほっほ、まあ落ち着くのじゃ、レイアス皇太子。悪いが彼らはわしの弟子と孫娘でのぉ。申し訳ないのじゃがわしの顔に免じて許してはくれんかの?」


 ニコニコと笑みを浮かべているギルアンさんだが、少しばかり威圧をしている。金髪の男はそんなギルアンさんを見てはぁ、と溜息を吐き剣を鞘に戻した。


「本来であれば殺すのですが、昔魔術を教えてもらった事もあります。ギルアン様に免じて剣を収めましょう。しかし、次は無いと思え」


 ……この視線、見覚えがある。あいつが悪だと決めつけた奴に対してする視線だ。それにギルアンさんはこいつの事を皇太子と言っていた。という事はこいつが天童院か。


 俺は血が流れる脇腹を押さえながら立ち上がり、目の前にいる天童院、レイアス皇太子を睨む。俺が睨むのが気に食わないのか、レイアス皇太子は再び剣を抜こうと柄に手をかけるが


「そこまでにしろ、レイアス。暴れていた竜は討伐したのだ。これ以上暴れる事は許さんぞ。そしてお主もだ。いくらギルアンの弟子だからと言って、王族であるレイアスに敵意を向けるようなら、皇帝の名の下にお主を捕らえる事になるぞ」


 兵士を連れて話しかけてくる金髪の男性。年は40ほどでレイアス皇太子と似ている。逆だな、レイアス皇太子が似ているのだろう。って事はこの人がゼスティア帝国の皇帝なのだろう。


 レイアス皇太子は渋々といった風に皇帝に頭を下げてその場から去って行く。その後に続いて弓を背負った女性と杖を持った女性がついて行くが、俺に殺気を放ちながら睨んでいた。あの2人が竜に弓と魔術を放った人物か。


「お前たち、兵士を集めて竜の遺体を解体しろ。それから商人を呼んで鑑定もさせるのだ」


「はっ!」


 俺が去って行く皇太子の後ろ姿を見ていると、煌びやかな鎧を着た人が兵士に指示を出す姿が目に入った。指示された兵士たちは遺体となった竜の元に集まり、部位を解体していく。


 本当は止めたいところだが、魔獣の素材は倒した人の物というのが決まっている。あの竜を倒したのはレイアス皇太子だ。だからあの竜から取れる素材はレイアス皇太子、広く考えればゼスティア帝国の物だ。


 それをやめてくれとは言えない。俺はどんどん解体されていく竜の姿を黙って見ているしか出来なかった。子竜にはこの光景を見させないため、フランとフリューレに別のところへと連れて行ってもらう。


 俺は1人でしばらくその光景を黙って見ていると


「ゼスト君! 無事だったのね!」


 後ろから俺を呼ぶ声が聞こえて来た。振り向くと、こちらに走ってくる女性、チェルシュさん、桜木がだった。良かった。見る限り怪我とは無さそうだ。


 俺の側まで走って来た桜木は息を荒げながらも俺の体を見て顔を青ざめる。あっ、そういえば、俺は傷だらけだったわ。怒りで痛みも忘れていた。意識し始めると刺された脇腹が痛い。


 後でアルスさんに治療してもらうとして、応急処置だけしておこう。簡単な魔術なら使えるし。俺は脇腹を魔術で簡単に治療をして、桜木に大丈夫な事をアピールする。


「まあ、傷だらけですけど大丈夫です。それよりも、チェルシュさんたちは大丈夫でしたか?」


「え、ええ、私たちは大丈夫だったわ。皆怪我人も出ることなく、店も無事だったし」


 良かった。あの後そのまま別れてしまったから心配だったんだ。このまま桜木にあの後の事を聞こうとしたら


「お待ちしておりました、商会長殿」


 別の兵士が桜木に話しかけたのだ。彼女がここに呼ばれる理由は1つしかない。竜の部位の鑑定だろう。桜木の後ろには部下もいるし。そのまま兵士の後について行こうとする桜木を呼ぶ。当然チェルシュさんの方でだが。


 桜木は、俺の話を聞いて1つだけお願いを聞いてくれた。「安心して私に任せて」と言ってくれた桜木は、そのまま竜の元へと向かっていった。


 俺にはこれ以上手出しはできない。あの子のためにも出来れば良いが。


「色々あったようじゃな、ゼスト」


「ギルアンさん、アルスさんも……俺は何も出来ませんでした。力も及ばずにただ竜が切られているところを見ているしか」


「仕方あるまい。レイアス皇太子はゼスティア帝国が建国して以来初の転載、神童と呼ばれるほどの実力じゃからの」


 俺はさっきの光景を思い出す。竜が傷ついていくのに何も出来なかった事や、レイアス皇太子に手も足も出なかった事。


 この半年間修行したはずなのにな。俺はあまりの悔しさに血が溢れるほど手を強く握っていた。


「ゼスト……」


「クゥーン!」


「コン!」


 そんな俺を慰めるつもりなのか、フランとフリューレは俺の両肩に乗って顔を舐めてくれる。そして


「キュー」


「お前も慰めてくれるのか? お前の方が悲しいはずなのに」


 俺の前に飛ぶ子竜は2匹と同じく俺を慰めるように頰に擦り寄ってくれる。全くこいつは。こいつの方が悲しいはずなのに。


 ……もっと強くなろう。自分の力が及ばずに後悔するのはもう嫌だ。もう後悔なんてしないように。


「お主は混ざらんでいいのか? クリア?」


「なっ、なんでわ、私が混ざらないといけないんだよ。クソジジィ!」


「ほっほー、照れんでも良いんじゃぞ?」


「っ! ぶっ殺してやる!」

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