異世界で彼女を探して何千里?

やま

39.最悪の厄介事

「取り敢えず子供たちを探しましょう、チェルシュさん。ロックバインド」


 俺は桜木が掴んで張り倒しているチュースを魔術で縛る。チュースは無理矢理地面に縛り付けられて、変な声を出すが無視だ。こんな奴に情けをかけてやる必要も無い。


「そうね。早く見つけてあげないと」


 桜木はそう言うとそれぞれの檻を覗いて行く。しかし、色々な人がいるな。年齢層はやはり若い人が多くて、基本は女性ばかりのようだ。


 男は20代が最高で、下は一桁代だな。そっち系の趣味のある金持ちには小さい男の子は需要があるらしいからな。


 しばらく地下を歩いていると


「あっ、おばちゃん!」


「誰がおばちゃんよ!? って、あなたたち!」


 おばちゃんと呼ばれた桜木は怖い顔をするが、それを言った相手が誰かわかった瞬間檻に慌てて近寄る。その中には、男の子が2人、女の子が4人いた。小さい子は7歳ほどか。上は9歳ぐらいになる。


 話を聞いている限りこの子たちが攫われた子供たちなのだろう。所々汚れてはいるが怪我とかは無さそうだな。その様子を見ていたら


「あ、あなたたちはそいつの仲間……じゃ無いわよね?」


 と、背後から恐る恐る話しかけられる声。振り返るとそこには金髪の女性が檻にしがみついて俺を見ていた。隣には彼女の事を「お嬢様」と呼ぶ黒髪の女性もいる。どちらも15歳ぐらいだろう。


「あなたは?」


「私はこのゼスティア帝国の貴族であるクリストフォン・アインツベルグ侯爵の娘、セルティシーア・アインツベルグよ。早く私を助けなさい!」


 そう言ってギロリと睨んでくる女性……これはまたとんでもない人が捕まっていたな。助け出すのは当然なのだがこの物言いがあまり好きじゃ無い。それを思ったのは俺だけでは無く


「なんだよこの女。助けてもらう側なのに偉そうによ!」


 ガツン! と女性がいる檻を蹴るクリアさん。当然近くでそんな事されれば、女性……セルティシーアさんは「ヒィッ!?」と悲鳴を上げる。


「ちょっ、クリアさん!」


「俺はこのなんでも言えば通ると思っている貴族が嫌いなんだよ。この地下なら誰がやったかなんてわからねえ。その生意気な首、切り落としてやろうか?」


 殺気を放ちながらそんな事を言うクリアさん。クリアさんの殺気をモロに受けたセルティシーアさんはガタガタと体を震わせ、涙を流す。座り込んでいた床にはじわぁ〜と水溜りが出来る。


「あぁ、もう、クリアさん、怒るのはわかりますが、殺気を出すのはやめて下さい! 周りも怖がっているじゃないですか!」


「……ちっ」


 クリアさんは舌打ちをすると階段を上っていってしまった。はぁ、難しいなぁ。俺はクリアさんの背を見ながら頭を掻いていると


「カミ……ゼスト君。少し檻の鍵を探してくるわ。このままじゃ開けられないみたいだから」


 桜木がそう言って来る。俺は1番近く、セルティシーアさんがいる檻の扉を動かす。この程度なら切れるかな? 俺は腰に挿している風魔の短剣を抜く。魔術で風を纏わせて


「チェルシュさん、少し下がっていて。君たちも下がっていてね?」


 俺が言うと素直に離れてくれる子供たち。俺は短剣を振り上げて鍵に向けて振り下ろす。鍵は殆ど抵抗なく切り落とすことが出来た。扉を開けてあげると、扉から子供たちが勢いよく出て来て、みんなが桜木に抱き付く。


 桜木は涙を流しながらみんなを抱きしめていた。やっぱり子供好きなところは変わっていないな。


 それから俺は順番に檻の鍵を壊していき、扉を開ける。次々と捕らえられていた人たちは檻から出て来て、桜木が纏めている。


「本当に何人捕らえているのよこいつは。人数多過ぎるでしょ!」


 チュースに悪態をつきながらも人数を数える桜木。全員で50人近くはいるもんな。 セルティシーアさんも桜木と何かを話している。この国の貴族の息女なだけあって、桜木とも知り合いのようだ。


 その様子を見ていたら、くいくいと袖を引っ張られる感覚がある。感覚のある方を見てみると6歳ぐらいの女の子2人が俺を見上げていた。俺は2人の視線に合わせるようにしゃがんで


「どうしたんだ、2人とも。早くお姉さんのところに行かないと」


 尋ねてみると、2人は顔を見合わせてから、地下の奥を指差す。彼女たちが指差す先は何も無いただの壁なのだが。


「あっちの向こうにりゅうちゃんがいるの!」


「助けないと可哀想なの!」


「りゅうちゃん?」


 りゅうちゃんってなんだ? 彼女たちの友達が何かか?


「うん、小さいかごに入っていた!」


「悪い人たちが連れて来たの!」


 子供たちは必死に説明をして来るがいまいち要領が掴めない。一体どう言うことなのだろうか? 俺が首を傾けながら、少女たちの必死の説明を聞いていると


「あの壁の向こうに小竜が捕らわれているのよ」


 と、セルティシーアさんと桜木が俺の方にやって来た。2人の顔は青くなっていたが。俺は何も言わないまま少女たちが指差した方へと向かい、壁を風魔の短剣で切り裂く。


 すると、壁が崩れた先には別の部屋があり、その奥では弱り切った白い小竜が寝そべっていた。マジかよ。俺はチュースにかけていた魔術を解除し、襟元を掴み持ち上げる。


「お前、いつ小竜をここへ連れて来た! いつだ!?」


「ぐっ、ぐ、るじ、い……ぐ……」


「ちっ、ささっと言いやがれ!」


「あ、あいつ、を、つれ、てきたのは、3日前、だ」


 チュースの言葉を聞いた瞬間、俺はチュースを檻へと叩き込む。チュースは咳き込んでいるが無視だ。くそっ、よりにもよって竜の子供を連れて来るなんて。


 再び小竜が閉じ込められている檻に戻り開けようとした瞬間、バチッ電気が走る。くそ、檻に魔術がかけられている。それのせいで小竜も逃げる事が出来なかったのか。


 面倒だが再びチュースの元に戻り鍵を奪い取る。大事な鍵ならこいつが持っていると思っていたが、予想通りだった。


 そして檻の鍵を開けて小竜を連れ出す。かなり弱っているが、俺を見る力はあるようだ。


「直ぐに親の元に返してやるからな」


「……キュァ」


「ゼスト君、その子をどこに連れて行くの?」


「最低でもこの帝都から離れないと。そうじゃ無いと……」


 親が来てしまう、と言葉を続けようとしたのだが、その瞬間、ドバァン! と、大きな爆発音と共に地面が大きく揺れた。


 地下にいた俺たちは直ぐに地面に手をつき揺れが収まるのを待つ。崩れる心配は無さそうだが、早く上に上がらないと!


 桜木が先導して上に上がる。チュースは捕まっていた人たちが縛り上げて担いでくれた。放っておいても良かったのだが、証言者が必要だからな。


 そして、店まで戻り外に出ると、外は阿鼻叫喚となっていた。燃え上がる建物、逃げ惑う人々たち。そして、空には怒りの咆哮を上げる白竜の姿があった。

「異世界で彼女を探して何千里?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く