異世界で彼女を探して何千里?
38.厄介事
店の奥で叫ぶ小柄な男性。髪の毛は薄くてかなりの出っ歯。見た目を言ってはダメなのだろうけど、ねずみを立たせたような顔をしている。
ねずみ男の大声で店の中がしーんとする中、コツコツコツと靴の音が鳴り響く。靴の音の元は桜木だ。
「チュース! あなた子供たちをどこにやったのよ!」
怒りに次第に大股になり、大きな足音を鳴らす桜木。そして、目の前にいるチュースという男の襟元を掴み持ち上げる。桜木の身長は160半ば。それに対してチュースの身長は140ちょっとしか無い。しかも、桜木は両手に魔力を流して強化している。
「ぐぅっ! な、何をす、するのだ、チェルシュ! は、離すんだ!」
「あなたがさっさと子供達の居場所を話したら離すわよ! さぁ、さっさと言いなさい!」
「くぐっ……く……くる……」
襟元で持ち上げているため、首が締まり苦しそうにするチュース。いつの間にか店員たちや買い物客はおらず、中にいるのは俺とクリアさんに桜木とチュース、それからフランとフリューレのみ。っと、周りを見ている場合じゃない。
「一旦下ろして下さい、チェルシュさん。その男、話そうにも話せませんよ」
俺が桜木の側に寄り手を掴むと、桜木は渋々といった風にチュースを下ろす。チュースは苦しそうに咳き込みながらも、俺たちを睨んでくる。
「ち、チェルシュ、貴様許さぬからな! このような事をしおって!」
「許さないのはこっちの話よ! あなた、私の大切な子供たちをどこへやったのよ! 早く教えなさい!」
「し、知らぬわ! そんな事を知ってるわけがないだろう!」
「あなたねぇ!」
怒りが限界にきた桜木は右手を振り上げる。しかし、振り下ろされる前に再び俺が止める。怒りに血が上りすぎだろ。
「一旦落ち着けよ、桜木。こいつがそう簡単に話す奴と思うか? 一旦頭を冷やせ」
「……っ! ……ふぅふぅ……これで良いかしら?」
何度か深呼吸をして落ち着いたようだ。さすが人を相手する商売人をしているだけある。どんな事があっても直ぐに自分を落ち着かせる事が出来るとは。
「それで、何か策はあるのかしら? 無いようでしたらチュースから力づくで聞くだけよ」
「策も何も、俺たちはある能力を使ってここまで来たんだろ? 最後までそれを信じろよ」
俺はそう言って足元に擦り寄るフランの頭を撫でる。フランも任せろっ! と言っているかのように吠える。
「……そうね。あなたのおかげでここまで来られたものね。ごめんなさいね」
桜木も床に膝をつき優しくフランの頭を撫でる。フランは気持ち良さそうに桜木の手のひらに頭をスリスリと擦り付けてから、ペロリと手のひらを舐める。
「さあ、フラン。さっきの匂いを辿ってくれ」
「ワウ!」
フランは俺の言葉通り床をくんくんと匂い、何かを探す仕草をする。俺はチュースが逃げないように捕まえながらフランを目線で追う。
フランは店の中をとことこ歩き店の裏側へと行ってしまう。当然その後を追いかけると、フランは床をカリカリと引っ掻いていた。
「フラン、その下に何かあるのか?」
「ガウ!」
どうやら、匂いが下へと続いているようだ。桜木にチュースを預けて床に触れる。すると
「そ、その床に触れるな、貴様! さっさと離れろ!」
と、チュースが大声をあげる。やはりここに何かあるようだ。俺はチュースの声を無視して、床を何度か叩く。すると、とある部分だけ音が違う。
俺は常に創造し腰に挿してある風魔の短剣を抜き、床に突き刺す。地面に邪魔される事なくあっさりと突き刺さる短剣。そこから止まるまで引いて床を切っていく。
切り終わった頃には、床は人が横に2人は並んで入れるほどの穴が空いていた。そして、予想通り下に繋がる階段もあった。
「さて、進むか」
俺とフランが先頭で下へと階段を降りていく。後ろには桜木、クリアさんの順に降りて来る。桜木の手にはチュースが引きづられ、何か変な事をしないようにフリューレを側に付けている。
地下は空気が少し淀んではいるが、そこまで汚いというわけではないようだ。地下にしては、という言葉が頭に付くが、綺麗にはしているようだ。
ただ、俺たちが降りた地下は物置や食料庫では無く、左右に大きな檻が備えられた薄暗い場所だった。もう、見るからに当たりだな。
「チュース、これはどういう事よ! あなたの店って奴隷販売承認なんて得ていたかしら?」
再び摑みかかる桜木だが、今回は止める気にはなれない。檻の中には子供から20代後半の大人までが入っていた。
この世界には奴隷制度がある。主に借金が返せなくなった者や犯罪を犯した者がなる事が多い。しかし、中には誘拐されて連れられた奴隷もいる。
そういう者が出ないように、基本奴隷商は国から許可をもらわなければ商売が出来ない。それに、商品として扱う間は、その者の衣食住を揃えなければならない決まりになっている。
しかし、チュースの雰囲気からして、その手続きは何もしていないように見える、というかしていないのだろう。
桜木がもう我慢の限界だったのか、チュースの顔を張り倒す。もう、俺も止めない。この光景を見てしまったら。
しかし、ただ誘拐された子供たちを探しに来ただけなのに、これは面倒な事に首を突っ込んだかもしれないな。
ねずみ男の大声で店の中がしーんとする中、コツコツコツと靴の音が鳴り響く。靴の音の元は桜木だ。
「チュース! あなた子供たちをどこにやったのよ!」
怒りに次第に大股になり、大きな足音を鳴らす桜木。そして、目の前にいるチュースという男の襟元を掴み持ち上げる。桜木の身長は160半ば。それに対してチュースの身長は140ちょっとしか無い。しかも、桜木は両手に魔力を流して強化している。
「ぐぅっ! な、何をす、するのだ、チェルシュ! は、離すんだ!」
「あなたがさっさと子供達の居場所を話したら離すわよ! さぁ、さっさと言いなさい!」
「くぐっ……く……くる……」
襟元で持ち上げているため、首が締まり苦しそうにするチュース。いつの間にか店員たちや買い物客はおらず、中にいるのは俺とクリアさんに桜木とチュース、それからフランとフリューレのみ。っと、周りを見ている場合じゃない。
「一旦下ろして下さい、チェルシュさん。その男、話そうにも話せませんよ」
俺が桜木の側に寄り手を掴むと、桜木は渋々といった風にチュースを下ろす。チュースは苦しそうに咳き込みながらも、俺たちを睨んでくる。
「ち、チェルシュ、貴様許さぬからな! このような事をしおって!」
「許さないのはこっちの話よ! あなた、私の大切な子供たちをどこへやったのよ! 早く教えなさい!」
「し、知らぬわ! そんな事を知ってるわけがないだろう!」
「あなたねぇ!」
怒りが限界にきた桜木は右手を振り上げる。しかし、振り下ろされる前に再び俺が止める。怒りに血が上りすぎだろ。
「一旦落ち着けよ、桜木。こいつがそう簡単に話す奴と思うか? 一旦頭を冷やせ」
「……っ! ……ふぅふぅ……これで良いかしら?」
何度か深呼吸をして落ち着いたようだ。さすが人を相手する商売人をしているだけある。どんな事があっても直ぐに自分を落ち着かせる事が出来るとは。
「それで、何か策はあるのかしら? 無いようでしたらチュースから力づくで聞くだけよ」
「策も何も、俺たちはある能力を使ってここまで来たんだろ? 最後までそれを信じろよ」
俺はそう言って足元に擦り寄るフランの頭を撫でる。フランも任せろっ! と言っているかのように吠える。
「……そうね。あなたのおかげでここまで来られたものね。ごめんなさいね」
桜木も床に膝をつき優しくフランの頭を撫でる。フランは気持ち良さそうに桜木の手のひらに頭をスリスリと擦り付けてから、ペロリと手のひらを舐める。
「さあ、フラン。さっきの匂いを辿ってくれ」
「ワウ!」
フランは俺の言葉通り床をくんくんと匂い、何かを探す仕草をする。俺はチュースが逃げないように捕まえながらフランを目線で追う。
フランは店の中をとことこ歩き店の裏側へと行ってしまう。当然その後を追いかけると、フランは床をカリカリと引っ掻いていた。
「フラン、その下に何かあるのか?」
「ガウ!」
どうやら、匂いが下へと続いているようだ。桜木にチュースを預けて床に触れる。すると
「そ、その床に触れるな、貴様! さっさと離れろ!」
と、チュースが大声をあげる。やはりここに何かあるようだ。俺はチュースの声を無視して、床を何度か叩く。すると、とある部分だけ音が違う。
俺は常に創造し腰に挿してある風魔の短剣を抜き、床に突き刺す。地面に邪魔される事なくあっさりと突き刺さる短剣。そこから止まるまで引いて床を切っていく。
切り終わった頃には、床は人が横に2人は並んで入れるほどの穴が空いていた。そして、予想通り下に繋がる階段もあった。
「さて、進むか」
俺とフランが先頭で下へと階段を降りていく。後ろには桜木、クリアさんの順に降りて来る。桜木の手にはチュースが引きづられ、何か変な事をしないようにフリューレを側に付けている。
地下は空気が少し淀んではいるが、そこまで汚いというわけではないようだ。地下にしては、という言葉が頭に付くが、綺麗にはしているようだ。
ただ、俺たちが降りた地下は物置や食料庫では無く、左右に大きな檻が備えられた薄暗い場所だった。もう、見るからに当たりだな。
「チュース、これはどういう事よ! あなたの店って奴隷販売承認なんて得ていたかしら?」
再び摑みかかる桜木だが、今回は止める気にはなれない。檻の中には子供から20代後半の大人までが入っていた。
この世界には奴隷制度がある。主に借金が返せなくなった者や犯罪を犯した者がなる事が多い。しかし、中には誘拐されて連れられた奴隷もいる。
そういう者が出ないように、基本奴隷商は国から許可をもらわなければ商売が出来ない。それに、商品として扱う間は、その者の衣食住を揃えなければならない決まりになっている。
しかし、チュースの雰囲気からして、その手続きは何もしていないように見える、というかしていないのだろう。
桜木がもう我慢の限界だったのか、チュースの顔を張り倒す。もう、俺も止めない。この光景を見てしまったら。
しかし、ただ誘拐された子供たちを探しに来ただけなのに、これは面倒な事に首を突っ込んだかもしれないな。
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