異世界で彼女を探して何千里?

やま

33.シロネコヤマト商会

 両肩にフランとフリューレを乗せた俺は、クリアさんと一緒に、目的であったシロネコヤマト商会へと入る。


 入って見て初めに思ったのが……スーパーみたいだな、って事だ。入り口から入ったところには野菜や果物が置かれており、そこから順に魚介類に肉類、他には日用雑貨などが置かれていた。主婦が助かる1階だな。


 その奥には2階に上がる階段と地下に降りる階段がある。しかも、地下の方にはこの世界の成人年齢である『15』と書かれて、斜めに線が入った暖簾がかけられていた……あれってアレって事だよな? そういう部屋って事だよな?


 ……少し気になるな。昔、学友たちとレンタルビデオ店でコソコソと覗いたのを思い出す。3人で行ったのだが、その中の1人がテンション上がり過ぎて変な声を出して、店員に見つかったりとかしてたなぁ〜。


 そんな階段を見ていると、焦れて来たのかクリアさんがつかつかと暖簾を超えて行ってしまった。ちょっ、そこは!


 俺が止める間も無くクリアさんは階段を下って行き、そして数分後、物凄い勢いで戻って来た。顔を赤くし、息は荒げていた。


 そして、俺と目が合うと俺に向かってくる。ここで俺が普通に接していれば良かったのだけど、多分気不味い顔をしていたのだろう。クリアさんは


「お前、知っていたな?」


 と、尋ねてくる。隠すのもあれだったので、俺がゆっくりと頷くと、クリアさんの顔は益々赤くなって、何かを言おうとしたが、口をぱくぱくとさせただけで終わった。


 流石に俺に何かを言うのは違うと思ってくれたのだろう。クリアさんはそのまま黙って階段を登って行って……あっ、躓いた。振り返って俺を見てから勢い良く登って行ってしまった。その後ろ姿を可愛いと思いながらも俺も2階へと上がって行く。


 クリアさんは2階をチラッと見てから興味が無かったのか3階へとそのまま登っていった。3階は確か洋服だったような。本当に何でもあるな。


 俺が残った2階はインテリアや雑貨物、おもちゃなどが売っていた。中には水洗トイレなんてものまである。なんでも作っているんだな。


 前世でみなみが興味を持っていた異世界転生して、物作りで成り上がって行くものみたいだな。


 おもちゃの方には、話に聞いていた将棋があり、他にはけん玉、ベーゴマ、野球セットに自転車なんかまであった。なんでもありだな。


 大人たちは将棋についている説明書のようなものを見て買って行き、子供たちは体験コーナーで、置いてあるおもちゃを手に持ち実際に遊んで見て、楽しければ親にねだっている。父親からは将棋、子供からはベーゴマを強請られる母親。


 子供には仕方ないといった感じで、父親にはお小遣いから引くという厳しい一言を浴びせて店員のところへと向かっている。少ししょんぼりしている父親の背中がなんとも言えない。


 そんな後ろ姿を見ていたら


「お客様は何かお探しですか?」


 と、女性店員が話しかけて来た。歳は成人したばかりだろう栗毛の髪をした女性だった。ニコニコしながら俺を見てから、俺の両肩にぶらーんとぶら下がるフランとフリューレを見て目を輝かせる。


「いや、特に何か探していると言うわけではないですが、ここにある物は誰も珍しいものばかりですね?」


「はい! これら全てはシロネコヤマト商会のオリジナルですからね。私も聞いた話ですが、全て商会長が考えたものらしいんですよ」


「へぇ〜、それは凄い方ですね。ぜひお目にかかりたいところですが……」


「はは、そういう方は多いのですが、何分お忙しい方なので。今も会議に出たりと……」


「あまり、内部の事を話すのは感心しないわね、ケーリ」


「ふ、副商会長!?」


 女性店員、ケーリさんと話をしていたら、彼女の背後から、これまた綺麗な女性が出て来た。黒髪のロングでメガネをかけた知的系美女。副商会長らしい女性は、メガネをくいっとしながら俺たちを見ていた。


「ほら、ケーリは仕事に戻りなさい。申し訳ございません、お客様。店の者がお手間を取らせてしまいまして」


「いえ、構いませんよ。それよりもその商会長さんって凄いんですね。さっきの方の話では全て考えられたのだとか」


「ふふ、そうですね。あの方は天才ですよ。私もずっとついて行きたいと思っていますからね」


 商会長の事を話すと嬉しそうに微笑んでくれる副商会長。その商会長に何とかして会う事は出来ないだろうか。


 しかし、普通にお願いしたぐらいでは会わせてはくれないだろうし。どうしたものか。


「それでは、私は失礼します。何か購入する予定であれば、店員がいますのでそちらへお声掛け下さい」


 考えていると、副商会長はその場から立ち去ろうとする。おっと、このチャンスを逃すわけにはいかない。


「副商会長、1つ勝負しませんか?」


 俺の突然の言葉に、怪訝そうに振り向く副商会長。俺は近くにあった将棋盤を手に取り、空いた手でコンコンと叩きながら副商会長をみる。


「勝負? もしかしてそれでですか?」


「ええ、そうです」


 俺が頷くと、副商会長はくすくすと笑いだした。


「あなたはそれが何か知っているのですか? それは……」


「将棋だろ? 縦横9マスの中の駒を使って、相手の王を取るゲームだ。そうだろ?」


「……ええ、その通りです。説明書を読んだのですか? とても頭が良いのですね」


「まあまあだな。それで俺が勝ったら商会長に会わせてくれ。俺が負けたらこの店の商品の商品1つ何でも買ってやるよ」


 俺の言葉にニヤリとする副商会長。あの人の頭の中では既に俺に何を買わせるかで悩んでいるところだろう。億が一負けたとしても、副商会長側には殆ど痛手は負わないしな。


 だけど、残念な事にこっちは前世で漫画を読んで将棋にハマったみなみに嫌ってほどやらせられたんだよ。だから勝つ自信はある。


「わかりました。そこまでいうのであれば相手になりましょう」


「そうこなくっちゃ」


 さて、商会長さんに合わせてもらおうかな。

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