異世界で彼女を探して何千里?
29.森での修行
「うおおおっ!」
俺は迫り来る黒狼たちを、風魔の短剣で切り裂く。喉笛を切り裂かれた黒狼は、そのまま頭から地に落ちる。
その死体を避けて左右から分かれて攻めてくる黒狼たち。噛み付こうと大きく口を開けてくるが、俺は黒狼の顎を下から殴る。
牙を何本も折られ怯んでいるところに、風を纏わせた右足で、黒狼の脇腹を蹴り上げる。 骨がメキメキと折れる感触とともに吹き飛ぶ黒狼。
その隙を狙うかのように反対側の黒狼が噛み付こうとしてくるが、それをしゃがんで避け、腹部を短剣で切り裂く。ぶしゃ、と血が噴き出すが、纏っている風で俺にはかからない。
ふぅ、取り敢えず襲ってきたのは黒狼が20程か。全部倒したが、魔力がギリギリだ。俺はギルアンさんから預かったポーチを開ける。
このポーチはギルアンさんの魔術が付与されており、見た目以上に中に物が入るという便利な魔道具だ。いわゆるアイテムボックスってやつだな。
ギルアンさんは様々な魔術が使えるが、中でも固有術である空間魔術を使える人だ。昔には他にも何人か使えたみたいだけど、今では数少ない1人らしい。
空間魔術は便利なもので、このポーチのように空間を広げて容量を大きくしたり、別の場所へ移動したりと出来るらしい。俺がこの山まで一瞬で来たのもその力のおかげだそうだ。
俺はそんなポーチからギルアンさんお手製のマナポーションを取り出す。ギルアンさんから出された課題、常時創造魔術を発動しておくには、時折マナポーションを飲まないといけない。そうじゃないと持たないからな。
「ワウッ!」
「コンッ!」
そこに、森の中に遊びに行っていたフランとフリューレが戻って来た。どこも怪我は無いようだ。そして2匹は自分たちが狩ってきた魔獣を見せ合っている。どうやら競っているようだ。
フランが狩って来たのは俺より大きい熊だ。体調2メートルほどだろうか。手には鋭い爪が輝いている。
一方、フリューレが狩って来たのは、どこから見つけたのかわからないが蟹だった。大きさは俺の腰ほどの大きさで、爪は俺の上半身ほどのデカさだ。俺なんて真っ二つにされるだろう。
2匹は「ワウ」「コン」と鳴きあって、そして何故か喧嘩し始めた。何でだよ。もしかしてどちらも引かなかったのか?
どちらの魔獣も確かに大きい。だけど、大きい方が違う。フランが狩って来た熊は当然縦に大きいが、フリューレの狩って来た蟹は横に大きい。多分そこで揉めているのだろう。
どうしたものかと考えていると
「おい、小僧、何を遊んでやがる。さっさと行くぞ、ったく」
俺の修行に同伴してくれている褐色の女性、クリアさんが、木の上から俺を呼んでくる。いつも通りの敵意むき出しで。
彼女はギルアンさんから、俺のサポートと万が一の時のために付けてくれた。どうやら彼女もギルアンさんと同じように空間魔術が使えるらしく、いつでも帰られるから無茶してこいと言われたり。
他には、この森の中をある程度熟知しているらしく、道に迷う事も無いだろうという理由でだ。下手すれば死んでしまうからな。
「わかりました、ほらフラン、フリューレ、喧嘩するなよ。行くぞ」
「ワウ〜」「コ〜ン」と2匹は渋々といった風に俺の側に寄ってくる。
さて、この修行を始めて1週間が経ったが、俺の思っていた以上にこの山は大きく、ここに住む魔獣の種類も多い。
多分、まだ半分もいってないだろう。しかも残っているのはオーガ以上の魔獣だろうし。ここからは骨が折れそうだ。
「次に戦うのは、ジャイアントマンティスだ。下手すれば真っ二つでお陀仏だ。魔力には気を付けろよ。お前が死んだらじじいに小言を言われるからな」
クリアさんは敵意むき出しで話しかけてくるけど、一応は心配もしてくれる。そんなクリアさんを先頭に森の中を進むと、バサササササと羽音が聞こえてくる。この先に目的のやつがいるようだ。
俺たちが森を抜けるとそこには、どでかいカマキリがいた。ジャイアントマンティスっていうぐらいだからどのくらいかと思っていたら、3メートルぐらいの大きさはある。体の長さだけなら5メートル近くはあるぞ。
その上鎌は6本持っており、どれも鋭く輝いている。ジャイアントマンティスは俺たち気が付いたのか、グリンと顔を180度回転させて、俺たちを見てくる。
そして自分の体に緑魔術の風を纏わせ始めた。ここまで風が吹いてくる。これは近づくのも容易では無いな。
「ここからは、お前1人での戦いだ。私はもちろん、フランやフリューレにも手は出させない。死にかけたら助けてはやるが」
「わかりました。それじゃあ行ってきます」
俺はジャイアントマンティスの風に対抗するため、風精ノ蓮脚を発動。もちろん、風魔の短剣も発動したままだ。
「行くぜ!」
◇◇◇
「よく来たの」
「じいさん、なんで俺を呼んだんだ? なんか用か?」
「ああ、お主を呼んだのは、今鍛えている者の手伝いをしてもらいたくての」
「珍しいじゃねえか、じいさんが弟子をとるなんて」
「ほっほ、面白そうな少年じゃったからな。彼は魔力の増加の訓練をしている。ただ普通の訓練ではそこまでの成果は見込めないのでな。お主に手伝ってもらいたい。頼めるかの『蘇りのアルス』よ」
俺は迫り来る黒狼たちを、風魔の短剣で切り裂く。喉笛を切り裂かれた黒狼は、そのまま頭から地に落ちる。
その死体を避けて左右から分かれて攻めてくる黒狼たち。噛み付こうと大きく口を開けてくるが、俺は黒狼の顎を下から殴る。
牙を何本も折られ怯んでいるところに、風を纏わせた右足で、黒狼の脇腹を蹴り上げる。 骨がメキメキと折れる感触とともに吹き飛ぶ黒狼。
その隙を狙うかのように反対側の黒狼が噛み付こうとしてくるが、それをしゃがんで避け、腹部を短剣で切り裂く。ぶしゃ、と血が噴き出すが、纏っている風で俺にはかからない。
ふぅ、取り敢えず襲ってきたのは黒狼が20程か。全部倒したが、魔力がギリギリだ。俺はギルアンさんから預かったポーチを開ける。
このポーチはギルアンさんの魔術が付与されており、見た目以上に中に物が入るという便利な魔道具だ。いわゆるアイテムボックスってやつだな。
ギルアンさんは様々な魔術が使えるが、中でも固有術である空間魔術を使える人だ。昔には他にも何人か使えたみたいだけど、今では数少ない1人らしい。
空間魔術は便利なもので、このポーチのように空間を広げて容量を大きくしたり、別の場所へ移動したりと出来るらしい。俺がこの山まで一瞬で来たのもその力のおかげだそうだ。
俺はそんなポーチからギルアンさんお手製のマナポーションを取り出す。ギルアンさんから出された課題、常時創造魔術を発動しておくには、時折マナポーションを飲まないといけない。そうじゃないと持たないからな。
「ワウッ!」
「コンッ!」
そこに、森の中に遊びに行っていたフランとフリューレが戻って来た。どこも怪我は無いようだ。そして2匹は自分たちが狩ってきた魔獣を見せ合っている。どうやら競っているようだ。
フランが狩って来たのは俺より大きい熊だ。体調2メートルほどだろうか。手には鋭い爪が輝いている。
一方、フリューレが狩って来たのは、どこから見つけたのかわからないが蟹だった。大きさは俺の腰ほどの大きさで、爪は俺の上半身ほどのデカさだ。俺なんて真っ二つにされるだろう。
2匹は「ワウ」「コン」と鳴きあって、そして何故か喧嘩し始めた。何でだよ。もしかしてどちらも引かなかったのか?
どちらの魔獣も確かに大きい。だけど、大きい方が違う。フランが狩って来た熊は当然縦に大きいが、フリューレの狩って来た蟹は横に大きい。多分そこで揉めているのだろう。
どうしたものかと考えていると
「おい、小僧、何を遊んでやがる。さっさと行くぞ、ったく」
俺の修行に同伴してくれている褐色の女性、クリアさんが、木の上から俺を呼んでくる。いつも通りの敵意むき出しで。
彼女はギルアンさんから、俺のサポートと万が一の時のために付けてくれた。どうやら彼女もギルアンさんと同じように空間魔術が使えるらしく、いつでも帰られるから無茶してこいと言われたり。
他には、この森の中をある程度熟知しているらしく、道に迷う事も無いだろうという理由でだ。下手すれば死んでしまうからな。
「わかりました、ほらフラン、フリューレ、喧嘩するなよ。行くぞ」
「ワウ〜」「コ〜ン」と2匹は渋々といった風に俺の側に寄ってくる。
さて、この修行を始めて1週間が経ったが、俺の思っていた以上にこの山は大きく、ここに住む魔獣の種類も多い。
多分、まだ半分もいってないだろう。しかも残っているのはオーガ以上の魔獣だろうし。ここからは骨が折れそうだ。
「次に戦うのは、ジャイアントマンティスだ。下手すれば真っ二つでお陀仏だ。魔力には気を付けろよ。お前が死んだらじじいに小言を言われるからな」
クリアさんは敵意むき出しで話しかけてくるけど、一応は心配もしてくれる。そんなクリアさんを先頭に森の中を進むと、バサササササと羽音が聞こえてくる。この先に目的のやつがいるようだ。
俺たちが森を抜けるとそこには、どでかいカマキリがいた。ジャイアントマンティスっていうぐらいだからどのくらいかと思っていたら、3メートルぐらいの大きさはある。体の長さだけなら5メートル近くはあるぞ。
その上鎌は6本持っており、どれも鋭く輝いている。ジャイアントマンティスは俺たち気が付いたのか、グリンと顔を180度回転させて、俺たちを見てくる。
そして自分の体に緑魔術の風を纏わせ始めた。ここまで風が吹いてくる。これは近づくのも容易では無いな。
「ここからは、お前1人での戦いだ。私はもちろん、フランやフリューレにも手は出させない。死にかけたら助けてはやるが」
「わかりました。それじゃあ行ってきます」
俺はジャイアントマンティスの風に対抗するため、風精ノ蓮脚を発動。もちろん、風魔の短剣も発動したままだ。
「行くぜ!」
◇◇◇
「よく来たの」
「じいさん、なんで俺を呼んだんだ? なんか用か?」
「ああ、お主を呼んだのは、今鍛えている者の手伝いをしてもらいたくての」
「珍しいじゃねえか、じいさんが弟子をとるなんて」
「ほっほ、面白そうな少年じゃったからな。彼は魔力の増加の訓練をしている。ただ普通の訓練ではそこまでの成果は見込めないのでな。お主に手伝ってもらいたい。頼めるかの『蘇りのアルス』よ」
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