異世界で彼女を探して何千里?

やま

24.VSオーガ(2)

 俺の姿が変わった事に、俺の両手両足から溢れる魔力に警戒するオーガ。剣を構えて唸り声を上げる。俺も悠長に構えていられない。今の俺には、そこまでこの状態を保っていられないからだ。


「行くぞッ!」


 俺は足の風精ノ蓮脚に魔力を流す。蓮脚に風がまとわりつき、俺の速度は上がる。


 俺は小細工無しにオーガへと真っ直ぐ進む。俺が真っ直ぐと突っ込んで来た事で、オーガの警戒が薄れる。真っ直ぐ突っ込む俺に、オーガも真っ直ぐ剣を振り下ろして来た。


 当然、俺は縦に振り下ろされる剣を、右側にステップして避ける。オーガも避けられるのは承知の上なのか、腕力任せに横振りに変えて来た。


 俺は横に振られる剣を、跳んで避ける。それを見たオーガは、ニヤリと笑みを浮かべた。もう、それ以上逃げる事の出来ない空中に逃げた俺を、嘲笑っているのだろう。


 オーガは、剣の持たない右腕で殴りかかって来た。本来なら、空中で身動き出来ず、このままオーガに殴り飛ばされているところだろう。だけど、次にオーガの表情は、驚愕へと変わる。


 その理由は、俺が空中で再度跳んだからだ。そのため、避けられるとは思っていなかった自分の拳が、避けられた事にオーガは驚いているのだ。


「次は俺の番だ!」


 俺は、オーガの拳を避けた勢いのまま、オーガへと殴りかかる。オーガは俺の拳ならくらわないと思っているのか、剣を戻すのに力を入れている。


 確かに、何もしていない俺の拳なら、オーガの皮膚にダメージを通す事なんて一生無理だろう。だけど、今は創造魔術で創り上げた武器がある。


 そのまま、オーガの顔面を殴ると


「グガァ!?」


 オーガは体を仰け反らせる。オーガは何とか踏ん張るが、後ろに数歩たたらを踏む。まさか俺の拳程度でダメージをくらうとは思っていなかったのだろう。顔に広がる痛みに驚いて固まってしまっているが、俺は止まらない。


「はぁぁぁぁ!」


 地面に降り立った俺は、固まっているオーガの腹へと連打を浴びせる。オーガの体がくの字に曲がると、今度は殴りやすくなった顔面を殴る!


 オーガの体からは、あちこちから血が流れ出す。このまま押し切って倒してしまいところだけど、当然オーガもやられっぱなしではない。


「グル、ガァァァァァッ!」


 オーガが咆哮を上げると、オーガの黒い肌に赤い線が走る。目も血走ったように赤くなり、俺を睨みつけてくる。


 オーガは、攻撃してくる俺を、自分から離すために、剣を地面に線を引くように振ってくる。俺は土精ノ籠手で受け止めようと思ったが、俺の勘が止めろと言っている。


 俺は勘を信じて、オーガから離れる。それと同時に俺がいた場所を通り過ぎる剣。地面スレスレに通り過ぎた剣を振り終えた瞬間


「なっ!」


 地面に斬撃が走った。触れてもいないのに。オーガは離れた俺を睨み付けると、足に力を入れて跳んでくる。ちっ、さっきまでとは大違いじゃねえか!


 さっきまででも速かったのに、それ以上に速くなってやがる。だけど、俺も負けてねえ!


 振り下ろされるオーガの剣を、土精ノ籠手で横を殴り、逸らさせて、蓮脚で蹴りを放つ。蓮脚の周りに渦巻く風により、かまいたちが起きているので、蹴られたオーガの腹には傷跡が大量に付く。


 傷跡が大量に付いているはずだが、オーガの動きに変化はない。それどころか、痛みが増えるにつれて、オーガの速度や力が速くなってやがる。こいつ、怒りを力に変えているのか?


「グルゥア!」


「ぐっ!」


 オーガが空いている左手で地面を殴ると、地面が大きく陥没する。それと同時に起きる衝撃波から避けるために、俺は離れるが、気が付けばオーガは目の前にいた。


 こいつ、俺が離れるのと同時に迫ってきたのか!? さっきまではあんな事をすれば、次に動き出すまで間があったのに。


 そして下から振り上げられる剣。これは間に合わない。そう思った俺は、風精ノ蓮脚から溢れる風を、防壁に変える。


 何層にも重なった風の防壁を切り裂くオーガ。防壁でも防ぎ切れなかった剣は俺に迫るが、今度は剣の横を殴る。これで少しは剣を逸らす事が出来たが……完璧には無理だな。


 迫る剣は、俺の右胸を切り裂く。そして剣の能力が発動。俺の胸元で爆発が起きる。爆発により俺の顔の右側、右腕、胸元が大きく焼けて爛れる。


「がぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


 あまりの激痛に、俺は周りを気にする事なく叫ぶ。直ぐにでもポーションを使わなければいけない程の傷だが、それよりもやらないといけない事がある。


 俺は激痛に苛まれながらも、開く左目で、オーガを見据えている。俺の魔力を左足へと集める。放てるのは今の魔力だと、これっきりだろう。お前にも同じ痛みを味あわせてやる!


「がぁぁぁっ、くらえ! 烈脚斬!」


 俺は思いっきり、左足を振り上げる。そして左足から放たれる風の斬撃が、オーガの顔へと迫り、オーガの右目から上の頭少しを切り取った。


 オーガは、剣を落として、両手で痛む顔を押さえる。顔からは止めどなく血が溢れて、地面を赤く染めていく。


「ぐっ!」


 俺は、至近距離で放ったため、風に吹き飛ばされて地面を何度も転がる。ぐうぅっ、痛すぎる。右半身は爆発のせいで火傷をして、右の胸元は切られた上に、爆発で抉れているせいで、少しでも動くとやばい。


 さっきの一撃で魔力も使い果たしたため、籠手も蓮脚も消えてしまった。


 ……これはやばいぞ。全身、痛みと魔力欠乏のダルさのせいで、体が動かねえ。ポーションを取りたくても取れない。


 俺が転がりながら何とかポーションを取ろうと、もぞもぞとしていると、ドシンッ、と、音がする。音のする方を見てみると、そこには、一歩一歩ゆっくりだが、俺に向かってくるオーガの姿があった。


 何であいつ、頭の一部が無くなってんのに動いてるんだよ。普通死ぬだろう!


 オーガは、ゆっくりと近づいてきて、拳に力を入れる。こいつ、俺を道連れにしようって魂胆か? くそ、動けよ、俺の体!


「グルルルルアアア!」


 オーガは両手で握り拳を作り、大きく振り上げて、ハンマーのように振り下ろしてくる。くそっ、こんなところで終わんのかよ! まだ、誰にも出会っていないのに!


 俺は目を離さず、迫るオーガの拳を見ていたせいで、気が付かなかった。そいつがオーガへと迫っている事に。


「グルルゥ!」


 そいつは、オーガが反応出来ない速さで迫り、オーガの首へとかぶり付いた。オーガは突然の首の痛みに暴れ出す。


 その隙に噛み付くのをやめて、俺の前に降りるそいつ。俺を守るように立つそいつは


「……お前、あの時の」


「ワォーーーーン!!!」


 あの時助けた子狼だった。

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