異世界で彼女を探して何千里?

やま

21.森の中で出会ったのは

「ウホウホッ! ブラァ!」


「ちっ、うぜぇ!」


 俺は向かってくる緑色をしたゴリラの巨腕を横に避ける。しかし、避けた先に上から降ってくる緑ゴリラ。両手を合わせて振り下ろして来た。


 見るからにとんでもない力を持っている巨腕を受け止める気にはなれないので、もう1体の緑ゴリラがいた方とは別の方へ跳んで逃げる。


 緑ゴリラがそのまま巨腕を振り下ろすと、ズシン! 大きな音が鳴り響き、辺りの木々を揺らす。殴った場所は1メートルほどのクレーターが出来ていた。避けて正解だぜ、全く。


 しかし、逃げてばかりもいられない。こいつらをぶっ倒して先を進まなければ行けない。ただでさえ方向感覚がわからずに、家を探さないと行けないからな。


 俺は手に持つ剣に魔力を流す。属性は俺の1番得意な風。県の表面に薄く鋭く風を纏わせる。更に振動も加える。


 ブウォンと音を鳴らす剣に警戒しながらも、逃げてばかりだった俺は脅威で無いと思った緑ゴリラたちは、真正面から向かってくる。


 殴りかかってくる巨腕を、最小限で避けて剣を振る。風属性で強化、剣の先も伸ばした一撃は、いとも簡単に緑ゴリラの腕を切り裂く。緑ゴリラの肘から先が宙を舞うのを見届けながらも、そのまま緑ゴリラを一閃。


 切られた緑ゴリラは、そのまま斜めからずれ落ち、崩れ落ちる。突然仲間が倒れた事に戸惑う緑ゴリラだが、そこは既に俺の間合いだ。剣に魔力を更に込めて一気に突きを放つ。


 自分に迫る魔力に気が付いた緑ゴリラは、咄嗟に両手を顔の前で交差させるが、それは意味を成さない。俺の放った風属性の突きは、緑ゴリラの腕を容易く貫き、更に緑ゴリラの頭も貫いた。


 倒したのを確認してから魔力を解除、支えるものが無くなった緑ゴリラは、その場に倒れる。ふぅ。周りを警戒しつつ、腰にある水筒を手に取り、水を飲む。


 早く緑ゴリラの肉を必要数剥ぎ取ってこの場から離れるか。そうじゃないと緑ゴリラの血の匂いに新しい魔獣がやって来る。


 しかし、俺もここでの生活に少しは慣れたな。俺がこの森に飛ばされて5日が経ったが、初日にいきなり巨大な狼に囲まれた時は、何気に1番危なかった。


 初めは相手をしていたが、減らない狼の群れに、これは無理だと思った俺は、その場から退避する事に決めた。


 決めたのだが、俺の匂いを覚えたのか、体についた血の匂いを追って来たのかわからないが、狼たちは諦める事なく追いかけて来る。


 このまま逃げても俺が弱るまで追いかけて来ると思った俺は、1体1体確実に倒す方法に変えて、時間をかけて倒した。


 当然体は傷まみれなので、傷口を青魔術の水で洗い流し、回復させる。あまり青魔術はとくではないのだけど、応急処置程度なら出来る。


 その後は、狼の肉を剥ぎ取ってから、この山を彷徨っていた。それからは出会った魔獣と戦ったり戦わなかったりと様々だ。


 他に出て来たのは木の上から延々と石を投げて来る猿に、体長1メートルほどの蜂に、木に化けていた木の魔獣にと、他にもいたのだが、途中から無我夢中だったので、あまり覚えていない。


 何気に1番危なかったのは、木に化けていた魔獣だ。俺が休憩しようと木にもたれた瞬間、頭の上から「ウボォウボォウボォウボオ」と変な声が聞こえて来たのだ。


 俺は咄嗟に飛び退いて振り返ると、俺がいた場所に地面から木の根っこのようなものが飛び出していた。後少し遅れていたらケツから刺されていた。そして、先程は気が付かなかったが、木の表面に顔のようなものも浮かび上がっていたし。


 ただ、移動速度はかなり遅かったので、そのまま無視して逃げて来た。別に倒さなくても良いのなら、無駄に体力を使う必要もないし、それ以前に食べられないし。


 現在の俺の食事は、魔獣の肉か、生えている山菜と木の実ぐらいだ。山菜は万が一山で遭難した時のために父上に教えてもらっていたのが、役に立った。山での過ごし方についても。そのおかげで、この5日間は何とか生き延びている。


 水に関しては青魔術があるから、そこから補充して飲んでいる。味は普通の水と変わらないので、助かっている。


 そんなこんなで5日間過ごしたが、目的の家は全く見当たらない。ずっと続く木々の景色に軽く辟易としているところだ。


 しかも、山なので当然傾斜がある。それだけで体力が奪われるのだ。歩き回るのにも考えながら歩かなければならない。体力が途中で切れてしまうからな。


 木々のせいで、時間があまりわからないが、体感的にもう夕方ぐらいだろう。緑ゴリラ以外に、朝から、魔獣は倒しているから、今日はもう進むのをやめて休めるところを探そう。


 そして、森の中を歩いていると、木の後ろからガサガサと音がする。俺は咄嗟に剣に手をかけて、音のした方を警戒する。


 木の魔獣が動いたのだろうか? それとも、何か別の魔獣が?


 このまま無視して行けばよかったのだが、何故か物凄く気になったので、ゆっくりと木を回り込むように進む。そして木の後ろにいたのは


「クゥーン」


 全身が傷だらけの白い狼の子供だった。

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