異世界で彼女を探して何千里?

やま

18.発表

「……本当に良いんだな? 俺がこれを受け取ったら、もうここには戻って来れんぞ?」


「はい、構いません。家族とも話し合ったので」


 物理でだけど。俺の前で椅子に座り、腕を組んで渋い顔をするグレル先生。グレル先生は俺を睨むように見てくるが、意見が変わらないのがわかったのだろう、頭をガシガシと掻いて、ため息を吐く。


「……わかった。これは俺が受理しよう。それでクラスの奴らには?」


「自分から話します。色々と言われるでしょうから」


 俺が苦笑いで話すと、グレル先生もしれはそうだと笑っている。さて、これで学園を退学する準備は出来た。後はあいつらに話をするだけだな。特にあいつがなんて言うか。


 俺はそんな事を考えながら学園の中を歩く。もう今日で見納めなので、じっくりと学園の中を歩きながら周りを見ていると


「あら、あなたはゼスト君ですね?」


 と、豪華な服を着た若い女性が歩いて来た。俺はその人を見た瞬間、背筋を伸ばす。当然俺はこの人を知っている。というか、学園、国中が知っている人物だ。


 数十年前に国を古竜級の魔竜から救った英雄なのだから。名前はティリフィーア・アインスタイン。魔竜殺しの英雄で、この学園の学園長をしている女性だ。


「あっ、はい、覚えていただき光栄です」


 学園は結構な人数がいるというのに、まさか俺の事を知っているとは。もしかして学生全員の顔と名前は覚えています、とかそんな感じな事か?


「ふふ、学生のみんなは覚えていますからね」


 優しく微笑む学園長。近くで見ると物凄く綺麗だな。人族のようだが、まるで作られたように駄目なところが無い。身長は俺より少し低い160半ばぐらいで、金髪の髪を地面スレスレまで伸ばしている。物凄く重たそうな胸を持ち、揺れていた。


「あまり胸ばっかり見ちゃ駄目ですよ。女の子はそういう視線に敏感なのよ?」


 胸元を抑えながら悪戯っぽく微笑むと学園長。ヤバ、見過ぎだ。俺はすぐに視線を逸らすと、それを見て再び笑う。


「でも、優秀なあなたがこの学園を去ってしまうのは寂しいですね。あなたのお父さんの知り合いのところへ行くのでしょ?」


「ええ、俺もまだ誰か聞かされていないのですが」


「そう。私は学園を去ってもあなたの事を応援しているわ。死んでしまうと思うけど諦めたら駄目よ」


「……? わかっています。死ぬ気で頑張ります」


 学園長はそれだけ言うと、微笑みながら行ってしまった。最後の方はなんか話が噛み合わなかったけど。


 でも、かなり緊張したな。学園長相手だと、貴族でも頭が上がらないと聞いた事がある。俺も入学式の時に見た事があっただけで、学生になってから会ったのは初めてだ。滅多に会う事が出来ないからな。


 学園長歩くの早いな。もう廊下にはいない……そういえば、なんで俺が学園をやめる事を知っていたんだ? 俺はさっき初めてグレル先生にやめる事を伝えたのだが。


 父上が報告したのか? でも、それならグレル先生が知らないはずは無いだろう。意味がわからんな。


「っと、やべ、もう時間だ。今日最後の授業だから真面目に聞かなければ」


 俺は急いで教室へと向かう。最初っから遅刻したらグレル先生に殺されちまう。俺は誰もいない廊下を走るのだった。


 ◇◇◇


「……これで今日の授業は終わりだ。だが、少し残ってくれ。話さないといけない事がある!」


 終わりの鐘が鳴り、グレル先生の号令で騒がしくなる教室。いつもなら、ここで直ぐにグレル先生は部屋を出て行くのだが、その後に続いた言葉に、みんな元の席に戻る。それを見渡せたグレル先生は、俺の方を見て頷いてくる。


 ふぅ、緊張するな。みんなが先生を見ている中、俺は立ち上がる。事情を知っているティリアは悲しそうな顔をして、他のみんなは俺が教壇まで行くのを、不思議そうに見ている。


「ええっと、お前たちには話さないといけない事がある。ゼスト、自分で話すか?」


 グレル先生の言葉に俺は頷く。そして、みんなが見える教壇にたって、周りを見渡す。良し


「えーと、みんな、俺がなんでこんなところに立っているのか、不思議で仕方ないだろうけど、みんなに伝えたい事があって、グレル先生に時間をもらった。少し話を聞いてほしい」


 俺が真剣なのがわかったのか、先ほどまで話していたみんなが、俺をじっと見てくる。俺はみんなを見て、そしてティリアを見る。ティリアは既に泣きそうな顔をしていたが、俺の事をしっかりと見てくれる。良し、言うか。


「俺がここに立った理由は、みんなに話したい事があったからだ。その話したいという事は……俺は今日限りで学園をやめる事にした」


 俺の突然の言葉にフリーズするみんな。だけど、次第に俺の言った事が伝わってきたのか、次の瞬間


「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!???」」」」」


 と、俺たちのいるクラスだけではなく、外まで響く程の大声をクラスのみんなは出してしまった。驚き過ぎだろ。

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