異世界で彼女を探して何千里?
15.敗北
「……ゼスト、その力は一体……」
俺の両手の剣を見て、驚く父上。そういえば、家族には俺の固有魔術の事は話していなかった。前の事故も、魔術の失敗で済ましていたし。
「父上、これは俺の固有魔術になります。俺だけの力です!」
俺はそれだけ言うと、一気に父上へと迫る。風天・雷牙、俺の考えた二剣一対のこの剣は、名前の通り、風の力を持つ剣と雷の力を持つ剣になる。
2本の剣の能力はそれぞれ風と雷の属性付与がされており、俺の速度も速くなる。普段の数倍の速さになる。
まずは右手に持つ風天で、父上に切りかかる。俺の魔術を見て、少し動揺していた父上だが、直ぐに正気に戻り、俺の風天を盾で防ぐ。
これは予想通りだ。そこに俺は左手に持つ雷牙で同じように切りかかると、父上は当然雷を纏う剣で防いでくる。
先程まではあの剣に触れると雷撃をくらってしまうため、全て避けて、触れないようにしていたが、俺はそのまま雷牙を振り下ろす。
怪訝な表情をする父上だが、俺の躊躇いのない攻撃に、真っ正面から防ごうとしてくる。そして雷牙と父上の剣がぶつかると
「……雷撃が通らないだと!?」
父上は驚きの声を上げる。それも当然だ。先程までは触れると、剣を伝って俺に雷撃が来ていたのが、雷牙と触れても一切来ないからだ。
理由は簡単だ。俺も同じように雷牙に雷を纏わせて、父上の剣の雷撃と相殺させているからだ。その結果、雷撃が俺へと来ないのだ。
流石にこの事に驚いた父上は、ほんの数秒、固まってしまった。ほんの数秒。ほんの数秒だが、父上に隙ができたのだ。俺はそれを見逃すはずもなく、一気に攻める。
俺は、雷牙をそのまま振り下ろし、下から振り上げる。父上は剣を離す事は無かったが、下から打ち上げられて、上へと振り上げている状態だ。
そこに風天で突きを放つ。父上はバランスを崩した状態だが、盾で防ごうと構える。俺は縦に向かって躊躇いなく突きを放つ。
ただ、父上にとって1つ誤算だったのが、俺の突きが普通の突きではない事だ。父上の盾に俺の風天がぶつかった瞬間、父上は盾を手から離して飛んでいった。
だが、その反動として、俺の風天も耐え切れず折れてしまったのだが。理由は風天の許容以上の風を纏わせたからだ。
父上も触れた瞬間に気が付いたようだが、風天には、見えないように風を纏わせていた。その風を突きの方向に一気に放ったため、父上は耐え切れずに手を離した。風天も耐え切れずに折れてしまったのだ。
俺の創造魔術の利点は、少し無茶な使い方をして壊れても、新たに創り出す事が出来るところだ。本来であれば、無理はしたいが、折れないよう、壊れないように武器を使う。
だけど、俺の創造魔術は、魔力さえあれば、折れても壊れても創り直す事が可能だ。そのため俺は、許容量を超える風を纏わせて放つ事が出来た。
その代償に、大量の魔力と右腕が折れてしまったが。これは俺の体が耐えきらなかっただけだ。激痛が右腕から脳へと駆け巡るが、今は父上だけを見る。
雷牙に雷を纏わせて、父上へと切りかかる。父上は右手に待つ剣だけで防ぐが、少しずつ攻撃が掠るようになって来た。これなら、もう少しで手が届く! そう思い、俺は速度を上げる。だけど
「まだ、甘い」
父上がそう小さく呟いた瞬間、俺は吹き飛ばされていた。体に斜めの傷がはいり、そこから大量に血が流れていく。その上、俺の体の感覚が無い。体全身が痺れて動けないのだ。
俺は何度も地面を跳ね、転がり、再び庭の壁へとぶつかり、ようやく止まった。そして、そのまま視界が暗転してしまった。
◇◇◇
「お兄様!」
「ゼスト!」
ゼストの元へ駆けるセリーネとティリア。俺はその光景を見ながら剣を腰に戻して、先程まで盾を握っていた左手を見る。
……まさか、あれほど強くなっているとは。毎日の訓練では隠してやがったな、あいつ。
「まさか、固有魔術を使えるとはな。お前の息子は天才か、ゼクティス」
俺がじっと、手を見ていたら、ニヤニヤと笑みを浮かべて俺の隣にアルテイルがやって来た。
「当然だ、俺の息子だからな」
俺は胸を張り、自慢する。まさか、俺の防御を突破してくるとは思ってもいなかったからな。俺の部下たちにも出来る奴はいないというのに。惜しい奴はいるがな。
「しかし、ゼクティスも最後は本気だったな。久しぶりに見たぞ、雷装」
「……ここのところは使う相手がいなかったからな。体への負担も大きいしな」
アルテイルが言う雷装は、俺の必殺技だ。体の一部、または全身を雷へと変化させる、赤魔術の中でも上位に属する魔術になる。
今回は腕だけを雷に変えて、ゼストの反応以上の速度で剣を振り下ろしたのだ。ゼストも反応出来ず、雷牙といった剣もろとも切ったのだ。
今は、ミリアーナとセリーネが魔術で回復させているから、夜には目を覚ますだろう。それよりも
「アルテイル。婚約の事だが……」
「それは、子供たちに話しをさせるとしよう。ティリアが認めなければ、私たちが認めても仕方がないからな」
「それもそうだな」
俺は倒れるゼストを見る。学園を卒業してからあの人に頼もうと思ったが、今の実力でも行けそうだな。
俺の両手の剣を見て、驚く父上。そういえば、家族には俺の固有魔術の事は話していなかった。前の事故も、魔術の失敗で済ましていたし。
「父上、これは俺の固有魔術になります。俺だけの力です!」
俺はそれだけ言うと、一気に父上へと迫る。風天・雷牙、俺の考えた二剣一対のこの剣は、名前の通り、風の力を持つ剣と雷の力を持つ剣になる。
2本の剣の能力はそれぞれ風と雷の属性付与がされており、俺の速度も速くなる。普段の数倍の速さになる。
まずは右手に持つ風天で、父上に切りかかる。俺の魔術を見て、少し動揺していた父上だが、直ぐに正気に戻り、俺の風天を盾で防ぐ。
これは予想通りだ。そこに俺は左手に持つ雷牙で同じように切りかかると、父上は当然雷を纏う剣で防いでくる。
先程まではあの剣に触れると雷撃をくらってしまうため、全て避けて、触れないようにしていたが、俺はそのまま雷牙を振り下ろす。
怪訝な表情をする父上だが、俺の躊躇いのない攻撃に、真っ正面から防ごうとしてくる。そして雷牙と父上の剣がぶつかると
「……雷撃が通らないだと!?」
父上は驚きの声を上げる。それも当然だ。先程までは触れると、剣を伝って俺に雷撃が来ていたのが、雷牙と触れても一切来ないからだ。
理由は簡単だ。俺も同じように雷牙に雷を纏わせて、父上の剣の雷撃と相殺させているからだ。その結果、雷撃が俺へと来ないのだ。
流石にこの事に驚いた父上は、ほんの数秒、固まってしまった。ほんの数秒。ほんの数秒だが、父上に隙ができたのだ。俺はそれを見逃すはずもなく、一気に攻める。
俺は、雷牙をそのまま振り下ろし、下から振り上げる。父上は剣を離す事は無かったが、下から打ち上げられて、上へと振り上げている状態だ。
そこに風天で突きを放つ。父上はバランスを崩した状態だが、盾で防ごうと構える。俺は縦に向かって躊躇いなく突きを放つ。
ただ、父上にとって1つ誤算だったのが、俺の突きが普通の突きではない事だ。父上の盾に俺の風天がぶつかった瞬間、父上は盾を手から離して飛んでいった。
だが、その反動として、俺の風天も耐え切れず折れてしまったのだが。理由は風天の許容以上の風を纏わせたからだ。
父上も触れた瞬間に気が付いたようだが、風天には、見えないように風を纏わせていた。その風を突きの方向に一気に放ったため、父上は耐え切れずに手を離した。風天も耐え切れずに折れてしまったのだ。
俺の創造魔術の利点は、少し無茶な使い方をして壊れても、新たに創り出す事が出来るところだ。本来であれば、無理はしたいが、折れないよう、壊れないように武器を使う。
だけど、俺の創造魔術は、魔力さえあれば、折れても壊れても創り直す事が可能だ。そのため俺は、許容量を超える風を纏わせて放つ事が出来た。
その代償に、大量の魔力と右腕が折れてしまったが。これは俺の体が耐えきらなかっただけだ。激痛が右腕から脳へと駆け巡るが、今は父上だけを見る。
雷牙に雷を纏わせて、父上へと切りかかる。父上は右手に待つ剣だけで防ぐが、少しずつ攻撃が掠るようになって来た。これなら、もう少しで手が届く! そう思い、俺は速度を上げる。だけど
「まだ、甘い」
父上がそう小さく呟いた瞬間、俺は吹き飛ばされていた。体に斜めの傷がはいり、そこから大量に血が流れていく。その上、俺の体の感覚が無い。体全身が痺れて動けないのだ。
俺は何度も地面を跳ね、転がり、再び庭の壁へとぶつかり、ようやく止まった。そして、そのまま視界が暗転してしまった。
◇◇◇
「お兄様!」
「ゼスト!」
ゼストの元へ駆けるセリーネとティリア。俺はその光景を見ながら剣を腰に戻して、先程まで盾を握っていた左手を見る。
……まさか、あれほど強くなっているとは。毎日の訓練では隠してやがったな、あいつ。
「まさか、固有魔術を使えるとはな。お前の息子は天才か、ゼクティス」
俺がじっと、手を見ていたら、ニヤニヤと笑みを浮かべて俺の隣にアルテイルがやって来た。
「当然だ、俺の息子だからな」
俺は胸を張り、自慢する。まさか、俺の防御を突破してくるとは思ってもいなかったからな。俺の部下たちにも出来る奴はいないというのに。惜しい奴はいるがな。
「しかし、ゼクティスも最後は本気だったな。久しぶりに見たぞ、雷装」
「……ここのところは使う相手がいなかったからな。体への負担も大きいしな」
アルテイルが言う雷装は、俺の必殺技だ。体の一部、または全身を雷へと変化させる、赤魔術の中でも上位に属する魔術になる。
今回は腕だけを雷に変えて、ゼストの反応以上の速度で剣を振り下ろしたのだ。ゼストも反応出来ず、雷牙といった剣もろとも切ったのだ。
今は、ミリアーナとセリーネが魔術で回復させているから、夜には目を覚ますだろう。それよりも
「アルテイル。婚約の事だが……」
「それは、子供たちに話しをさせるとしよう。ティリアが認めなければ、私たちが認めても仕方がないからな」
「それもそうだな」
俺は倒れるゼストを見る。学園を卒業してからあの人に頼もうと思ったが、今の実力でも行けそうだな。
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