異世界で彼女を探して何千里?
13.説得
「……はっはっはっ、中々急に冗談なんか言ってどうしたんだ、ゼスト君。君にしては珍しい」
「そ、そうだぞ、ゼスト。お前がそんな事を言うなんて。でも、さすがに冗談にしてはきつすぎるぞ、それは」
父上とレグラーノ伯爵は冗談だと思って笑ってそう言ってくるが、俺が表情を変えずにいるのを見て、黙ってしまった。冗談じゃないのが伝わったのだろう。
「……ど、どうして、ゼスト? わ、私何か至らなかったかしら? どこか駄目なところがあったのなら直すから! だから……」
ティリアは立ち上がり俺の側まで来て、そう言ってくる。目からは涙が溢れている。ティリアの泣き顔なんて見るのは小さい時以来だ。
物心がついた頃からは、もう泣く事が無かったティリアが、俺と別れるのが嫌で泣いてくれるなんて。嬉しく思う反面、申し訳ない気持ちで一杯だ。
「ティリアは何も悪くないんだ。全部俺が悪いんだよ」
「……どう言う事なの?」
「そうよ、ゼストちゃん。なにも理由も話さずいきなり別れるなんて。何か訳があるなら話してちょうだい」
いつもはのほほんとしている母上も、今ばかりは真剣な表情を浮かべる。その視線には若干の殺気も混じっているら、大した事の無い理由なら許さないという感じだ。
「父上、母上、俺は国を出ようと思っています」
「……それはどういう事だ? 帝国にでも行く気か?」
「帝国には行きますが、それだけでは無く他の大陸も周りたいと思っています」
俺の言葉に、バッと立ち上がる父上。
「何を馬鹿な事を言っている! 今各大陸がどのような状況かわかって言っているのか!」
「わかっています。わかった上で俺は行く気になっているのですから」
今は停戦状態だが、いつ今の均衡が崩れるかはわからない。当然その事は、学園でも習って嫌という程知っている。
「ゼストちゃん、どうしてそこまで行きたいの?」
「それは、ある人を探すためです」
「ある人だと? 一体誰を探すというのだ?」
「わかりません」
「「「「「はっ?」」」」」
俺の発言に全員の声が揃う。そして、顔を真っ赤にして怒りを露わにする父上。ここまで怒ったのを見るのも初めてだ。
「ゼスト! お前はふざけているのか! わからないのに探しに行くとはどういう事だ!」
「すみません。本当に手がかりが無いのです。男か女かもわからない。もしかしたらこの隣の家にいるかもしれない。逆にみんなが求める小大陸にいるかもしれない。下手したら人間じゃ無いかもしれない。本当にわからないのです」
そんな俺の言葉に呆れ返る父上。父上の言いたい事はわかる。だけど、それでも俺は探しに行きたいんだ。
「ゼスト君、何故そこまでして探しに行きたいのだ? 先ほど君が言った通りなら、存在しているかもわからないのだろう? それでも君は探しに行きたいと言う。何か理由はあるのかね?」
「……そいつは、俺の人生を変えてくれた奴なんです。そいつがいなかったら今の俺はいません。だから、もう一度会いたいんです! 会ってもう一度話がしたいんです」
あんな、もう二度と動く事の無い姿なんかじゃ無くて、もう一度あいつの、みなみの笑顔が見たい。そのために俺はみなみに会いに行きたい。
「これは決意は固そうだな、ゼスト君。どうするゼクティス?」
「アルタイル! 何を言っているのだ! そんなもの駄目に決まっているだろう! 今すぐ考え直せ、ゼスト! そしてティリア嬢に謝るんだ」
「ティリアには本当に悪いと思っている。だけど、俺はどうしても行きたいんだ。父上が駄目だと言うのなら……勘当してくれてもいい」
俺の発言で、怒りが最高潮に達した父上は、席を立ち上がり、俺を殴ろうとした瞬間
パチンッ!
と、大きな音がした。それと同時に俺の頰がジーンと熱くなってくる。俺は一瞬何が起きたのかわからなかったが、落ち着いて見ると、涙目の母上が、俺の頰を叩いたのだ。
……生まれて初めて母上に叩かれた。その上、母上の涙を流す姿を見て、胸がズキンと痛む。
「勘当なんて悲しい事を言わないで、ゼスト。あなたも一旦落ち着いて。そんな頭ごなしに怒っても、ゼストの決意は変わらないわ」
「……そうだが、ゼストは他大陸の事を甘く見すぎている。大陸を渡るにしても何らかのツテが無ければ、渡る事はおろか、大陸の端までも行けんぞ。
それに、他大陸の魔獣は、この大陸に比べるとかなり強力だと聞く。そいつら相手に満足に戦えんようでは、ただの犬死だ。その辺をわかっているのか?」
「もちろんです。戦い方次第では、父上にも引けは取らないでしょう」
今の俺の実力は、普通に父上とやり合えば、厳しいだろう。だけど、そこにこの前完成した 固有魔術、創造魔術をいれた戦い方をすれば、父上にも負けないと俺は思っている。
そんな俺の言葉に、ようやく笑みを浮かべた父上は
「ほう。ならば見せてもらおうか。お前が他大陸でも通用するのかどうか」
と、部屋を出て行ってしまった。多分、準備をしに行ったのだろう。俺も無言のまま部屋を出る。やるのは庭だろう。父上に実力を見せて認めて貰わなければ。
「そ、そうだぞ、ゼスト。お前がそんな事を言うなんて。でも、さすがに冗談にしてはきつすぎるぞ、それは」
父上とレグラーノ伯爵は冗談だと思って笑ってそう言ってくるが、俺が表情を変えずにいるのを見て、黙ってしまった。冗談じゃないのが伝わったのだろう。
「……ど、どうして、ゼスト? わ、私何か至らなかったかしら? どこか駄目なところがあったのなら直すから! だから……」
ティリアは立ち上がり俺の側まで来て、そう言ってくる。目からは涙が溢れている。ティリアの泣き顔なんて見るのは小さい時以来だ。
物心がついた頃からは、もう泣く事が無かったティリアが、俺と別れるのが嫌で泣いてくれるなんて。嬉しく思う反面、申し訳ない気持ちで一杯だ。
「ティリアは何も悪くないんだ。全部俺が悪いんだよ」
「……どう言う事なの?」
「そうよ、ゼストちゃん。なにも理由も話さずいきなり別れるなんて。何か訳があるなら話してちょうだい」
いつもはのほほんとしている母上も、今ばかりは真剣な表情を浮かべる。その視線には若干の殺気も混じっているら、大した事の無い理由なら許さないという感じだ。
「父上、母上、俺は国を出ようと思っています」
「……それはどういう事だ? 帝国にでも行く気か?」
「帝国には行きますが、それだけでは無く他の大陸も周りたいと思っています」
俺の言葉に、バッと立ち上がる父上。
「何を馬鹿な事を言っている! 今各大陸がどのような状況かわかって言っているのか!」
「わかっています。わかった上で俺は行く気になっているのですから」
今は停戦状態だが、いつ今の均衡が崩れるかはわからない。当然その事は、学園でも習って嫌という程知っている。
「ゼストちゃん、どうしてそこまで行きたいの?」
「それは、ある人を探すためです」
「ある人だと? 一体誰を探すというのだ?」
「わかりません」
「「「「「はっ?」」」」」
俺の発言に全員の声が揃う。そして、顔を真っ赤にして怒りを露わにする父上。ここまで怒ったのを見るのも初めてだ。
「ゼスト! お前はふざけているのか! わからないのに探しに行くとはどういう事だ!」
「すみません。本当に手がかりが無いのです。男か女かもわからない。もしかしたらこの隣の家にいるかもしれない。逆にみんなが求める小大陸にいるかもしれない。下手したら人間じゃ無いかもしれない。本当にわからないのです」
そんな俺の言葉に呆れ返る父上。父上の言いたい事はわかる。だけど、それでも俺は探しに行きたいんだ。
「ゼスト君、何故そこまでして探しに行きたいのだ? 先ほど君が言った通りなら、存在しているかもわからないのだろう? それでも君は探しに行きたいと言う。何か理由はあるのかね?」
「……そいつは、俺の人生を変えてくれた奴なんです。そいつがいなかったら今の俺はいません。だから、もう一度会いたいんです! 会ってもう一度話がしたいんです」
あんな、もう二度と動く事の無い姿なんかじゃ無くて、もう一度あいつの、みなみの笑顔が見たい。そのために俺はみなみに会いに行きたい。
「これは決意は固そうだな、ゼスト君。どうするゼクティス?」
「アルタイル! 何を言っているのだ! そんなもの駄目に決まっているだろう! 今すぐ考え直せ、ゼスト! そしてティリア嬢に謝るんだ」
「ティリアには本当に悪いと思っている。だけど、俺はどうしても行きたいんだ。父上が駄目だと言うのなら……勘当してくれてもいい」
俺の発言で、怒りが最高潮に達した父上は、席を立ち上がり、俺を殴ろうとした瞬間
パチンッ!
と、大きな音がした。それと同時に俺の頰がジーンと熱くなってくる。俺は一瞬何が起きたのかわからなかったが、落ち着いて見ると、涙目の母上が、俺の頰を叩いたのだ。
……生まれて初めて母上に叩かれた。その上、母上の涙を流す姿を見て、胸がズキンと痛む。
「勘当なんて悲しい事を言わないで、ゼスト。あなたも一旦落ち着いて。そんな頭ごなしに怒っても、ゼストの決意は変わらないわ」
「……そうだが、ゼストは他大陸の事を甘く見すぎている。大陸を渡るにしても何らかのツテが無ければ、渡る事はおろか、大陸の端までも行けんぞ。
それに、他大陸の魔獣は、この大陸に比べるとかなり強力だと聞く。そいつら相手に満足に戦えんようでは、ただの犬死だ。その辺をわかっているのか?」
「もちろんです。戦い方次第では、父上にも引けは取らないでしょう」
今の俺の実力は、普通に父上とやり合えば、厳しいだろう。だけど、そこにこの前完成した 固有魔術、創造魔術をいれた戦い方をすれば、父上にも負けないと俺は思っている。
そんな俺の言葉に、ようやく笑みを浮かべた父上は
「ほう。ならば見せてもらおうか。お前が他大陸でも通用するのかどうか」
と、部屋を出て行ってしまった。多分、準備をしに行ったのだろう。俺も無言のまま部屋を出る。やるのは庭だろう。父上に実力を見せて認めて貰わなければ。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント