異世界で彼女を探して何千里?
8.遭遇
「グギャギャギャ!」
俺たちに向かって走って来る木の棒を持った小鬼。その後ろには続くように走る何も持っていない小鬼に、石を投げる構えをしている小鬼たち。
俺たちはまず、1番前にいる木の棒を持った小鬼たちに、エマとメアリーが魔法を放つ。2人ともガッチガチに固まっているが、杖を小鬼向けて構えそして
「風よ、切り裂け、ウィンドカッター!」
「土よ、穿て、ロックバレット!」
エマは風の刃を、メアリーは土の弾を放つ。風の刃は一体の小鬼の顔を切り裂くが、どうやら浅かったようで顔を押さえて叫んでいる。
メアリーの土の弾は、数弾小鬼の腹に突き刺さり小鬼は後ろへと吹き飛んだ。その吹き飛んだ小鬼に引っかかってこける、後ろを走っていた小鬼たち。
その隙を突くため、俺は駆け出し、こけて地面でジタバタしている小鬼に迫る。後ろの方にいてこけずに大丈夫だった石を持った小鬼が、俺に向かって石を投げて来るが、そんなに速くなかったので、空いている手で掴む。そして投げ返してやった。
「グギャン!?」
石をぶつけられた小鬼は、顔を押さえて跪く。それとは別に先ほどまでこけていた小鬼たちが立ち上がろうとするが、既に俺は目の前だ。
フラフラと立ち上がろうとする小鬼の喉元に剣を突き刺す。手に柔らかい物に刃物を突き刺す感覚が残るが、そのまま横に振り払う。
小鬼の首は半ばで千切れかけ、そこから血が噴き出す。俺はそれを見る暇もなく、後ろにいる石をぶつけた小鬼に向かって走る。
どこから拾うのかわからないが、常に持っておかれるのは面倒だ。大した威力は無いとはいえ、ちょこちょこ投げられても邪魔なだけだしな。
ようやく痛みが引いて来たのか顔を押さえながら上げる小鬼に向かって、蹴りを入れて仰向けに倒れさせる。そして喉元を踏みつけて、首の骨を折る。
その踏む感触が足裏から、背筋を伝って脳へと伝わって来る。俺は無理矢理その感触を忘れ、振り向くと
「セヤァ!」
小鬼に向かってハルバートをティリアの姿が見えた。ハルバートは小鬼の頭へと振り下ろされるが、途中でバキッ! と音がして、ハルバートが小鬼の頭の途中で止まる。頭蓋骨で止まってしまったようだ。
小鬼は死んでいるが、変な食い込み方をしているのが、ハルバートにぶらーんとぶら下がっている。ティリアが振り落とそうと何度もハルバートを振るが、落ちる気配が無い。そこに別の小鬼が迫る。
俺が助けに行こうと思ったが止めた。理由は行く必要が無くなったからだ。
「シッ!」
ティリアに近づく小鬼に、後ろから剣を横振りにするディッシュの姿があった。小鬼の首は簡単に体から離れて、体は少しの間ティリアに向かって走り倒れてしまった。
残っていた2体の小鬼もエマとメアリーが魔法で倒していた。これで俺たちの前に現れた小鬼は全部倒したか。
俺は自分の手を見る。初めて生き物を殺したが、思ったより動けたな、っていうのが率直な感想だ。戦う前は出来るのか悩んだが、少し罪悪感が芽生えただけで、それ以上に襲って来るなら倒さなければ、と思ってしまった。
これは、元々のゼストの記憶のおかげなのか、それとも、せいなのかはわからないが、俺も戦える事がわかった。殺す事を楽しむのは駄目だが、必要であれば出来るって感じだな。
「みんな怪我はないか?」
俺がみんなに尋ねると、みんなは頷いてくれた。ただ、初めての戦闘だったせいか、女子たちは少し疲労が見える。精神的に疲れたのだろう。
「ゼスト、魔石を取ったら一旦どこかで休もう。3人とも辛そうだ」
「ああ、そうしよう。取り敢えずディッシュは3人に魔石の取り方を教えてやってくれ。俺は3人分以外のやつを取って来るから」
「わかった」
俺はみんなから1番離れている小鬼の自体の元に行く。魔石は基本的に心臓の近くにある事が多いので、腰に下げていたナイフで、心臓付近をグサリ。体を切って体内に手を突っ込む。
そして、体の中で骨以外に硬いものを掴む。そのまま引っこ抜くと赤黒い石が出てくる。これが魔石だ。
魔石にも位があって小鬼ぐらいだと、黒に近い赤色で、位が上がって行くにつれて、魔石の色は透き通るような赤色に変わって行く。
国が管理している魔石だと、まるで宝石のような綺麗さで、見る人全員を魅了するらしい。俺は見た事がないが。
そんな魔石を集めてみんなの元に戻ると、先ほどより顔を青くさせている女子たちがいた。まあ、魔獣の体の中に手を突っ込んだらそうなるわな。俺は記憶のおかげでどんな感じか知っていたけど。
「メアリー、悪いが血を流してくれないか?」
「あ、う、うん、わかったよ。みんなも手を出して」
俺たちは全員血まみれの手を出す。そして、メアリーが魔術を発動すると水がメアリーの指先から流れてくる。
手を洗い終えた俺たちは、死体を燃やしてからその場を離れる。死体をそのままにしておくと、アンデッド化するらしいから、そうならない為に焼くのが暗黙のルールだ。それに、血の匂いで他の魔獣が寄って来ないとも限らないしな。
そして、俺たちは戦った場所から離れて、みんなで休めるところにやって来た。そこにみんな座り、各々が持っている水筒で喉を潤す。
ディッシュ以外はやはりしんどそうだな。グレル先生の1人1個のノルマはこれも関係しているのだろう。このまま中は進まず村へ帰ろうかと、考えていたら
「おっ、当たりじゃねえか」
と、声がする。みんなが声のする方を見ると、そこには赤髪の男が立っていた。そして俺たちと目が合うとニヤリと笑う。
その瞬間、俺の背筋にゾワリと悪寒が走った。こいつはヤバイと。ディッシュも同じ様に感じた様で、剣に手をかける。何とか女子たちだけでも逃さないと。
……まさかこいつに出会ったせいで、俺の目的が決まるとは、この時は全く想像していなかった。
俺たちに向かって走って来る木の棒を持った小鬼。その後ろには続くように走る何も持っていない小鬼に、石を投げる構えをしている小鬼たち。
俺たちはまず、1番前にいる木の棒を持った小鬼たちに、エマとメアリーが魔法を放つ。2人ともガッチガチに固まっているが、杖を小鬼向けて構えそして
「風よ、切り裂け、ウィンドカッター!」
「土よ、穿て、ロックバレット!」
エマは風の刃を、メアリーは土の弾を放つ。風の刃は一体の小鬼の顔を切り裂くが、どうやら浅かったようで顔を押さえて叫んでいる。
メアリーの土の弾は、数弾小鬼の腹に突き刺さり小鬼は後ろへと吹き飛んだ。その吹き飛んだ小鬼に引っかかってこける、後ろを走っていた小鬼たち。
その隙を突くため、俺は駆け出し、こけて地面でジタバタしている小鬼に迫る。後ろの方にいてこけずに大丈夫だった石を持った小鬼が、俺に向かって石を投げて来るが、そんなに速くなかったので、空いている手で掴む。そして投げ返してやった。
「グギャン!?」
石をぶつけられた小鬼は、顔を押さえて跪く。それとは別に先ほどまでこけていた小鬼たちが立ち上がろうとするが、既に俺は目の前だ。
フラフラと立ち上がろうとする小鬼の喉元に剣を突き刺す。手に柔らかい物に刃物を突き刺す感覚が残るが、そのまま横に振り払う。
小鬼の首は半ばで千切れかけ、そこから血が噴き出す。俺はそれを見る暇もなく、後ろにいる石をぶつけた小鬼に向かって走る。
どこから拾うのかわからないが、常に持っておかれるのは面倒だ。大した威力は無いとはいえ、ちょこちょこ投げられても邪魔なだけだしな。
ようやく痛みが引いて来たのか顔を押さえながら上げる小鬼に向かって、蹴りを入れて仰向けに倒れさせる。そして喉元を踏みつけて、首の骨を折る。
その踏む感触が足裏から、背筋を伝って脳へと伝わって来る。俺は無理矢理その感触を忘れ、振り向くと
「セヤァ!」
小鬼に向かってハルバートをティリアの姿が見えた。ハルバートは小鬼の頭へと振り下ろされるが、途中でバキッ! と音がして、ハルバートが小鬼の頭の途中で止まる。頭蓋骨で止まってしまったようだ。
小鬼は死んでいるが、変な食い込み方をしているのが、ハルバートにぶらーんとぶら下がっている。ティリアが振り落とそうと何度もハルバートを振るが、落ちる気配が無い。そこに別の小鬼が迫る。
俺が助けに行こうと思ったが止めた。理由は行く必要が無くなったからだ。
「シッ!」
ティリアに近づく小鬼に、後ろから剣を横振りにするディッシュの姿があった。小鬼の首は簡単に体から離れて、体は少しの間ティリアに向かって走り倒れてしまった。
残っていた2体の小鬼もエマとメアリーが魔法で倒していた。これで俺たちの前に現れた小鬼は全部倒したか。
俺は自分の手を見る。初めて生き物を殺したが、思ったより動けたな、っていうのが率直な感想だ。戦う前は出来るのか悩んだが、少し罪悪感が芽生えただけで、それ以上に襲って来るなら倒さなければ、と思ってしまった。
これは、元々のゼストの記憶のおかげなのか、それとも、せいなのかはわからないが、俺も戦える事がわかった。殺す事を楽しむのは駄目だが、必要であれば出来るって感じだな。
「みんな怪我はないか?」
俺がみんなに尋ねると、みんなは頷いてくれた。ただ、初めての戦闘だったせいか、女子たちは少し疲労が見える。精神的に疲れたのだろう。
「ゼスト、魔石を取ったら一旦どこかで休もう。3人とも辛そうだ」
「ああ、そうしよう。取り敢えずディッシュは3人に魔石の取り方を教えてやってくれ。俺は3人分以外のやつを取って来るから」
「わかった」
俺はみんなから1番離れている小鬼の自体の元に行く。魔石は基本的に心臓の近くにある事が多いので、腰に下げていたナイフで、心臓付近をグサリ。体を切って体内に手を突っ込む。
そして、体の中で骨以外に硬いものを掴む。そのまま引っこ抜くと赤黒い石が出てくる。これが魔石だ。
魔石にも位があって小鬼ぐらいだと、黒に近い赤色で、位が上がって行くにつれて、魔石の色は透き通るような赤色に変わって行く。
国が管理している魔石だと、まるで宝石のような綺麗さで、見る人全員を魅了するらしい。俺は見た事がないが。
そんな魔石を集めてみんなの元に戻ると、先ほどより顔を青くさせている女子たちがいた。まあ、魔獣の体の中に手を突っ込んだらそうなるわな。俺は記憶のおかげでどんな感じか知っていたけど。
「メアリー、悪いが血を流してくれないか?」
「あ、う、うん、わかったよ。みんなも手を出して」
俺たちは全員血まみれの手を出す。そして、メアリーが魔術を発動すると水がメアリーの指先から流れてくる。
手を洗い終えた俺たちは、死体を燃やしてからその場を離れる。死体をそのままにしておくと、アンデッド化するらしいから、そうならない為に焼くのが暗黙のルールだ。それに、血の匂いで他の魔獣が寄って来ないとも限らないしな。
そして、俺たちは戦った場所から離れて、みんなで休めるところにやって来た。そこにみんな座り、各々が持っている水筒で喉を潤す。
ディッシュ以外はやはりしんどそうだな。グレル先生の1人1個のノルマはこれも関係しているのだろう。このまま中は進まず村へ帰ろうかと、考えていたら
「おっ、当たりじゃねえか」
と、声がする。みんなが声のする方を見ると、そこには赤髪の男が立っていた。そして俺たちと目が合うとニヤリと笑う。
その瞬間、俺の背筋にゾワリと悪寒が走った。こいつはヤバイと。ディッシュも同じ様に感じた様で、剣に手をかける。何とか女子たちだけでも逃さないと。
……まさかこいつに出会ったせいで、俺の目的が決まるとは、この時は全く想像していなかった。
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