異世界で彼女を探して何千里?

やま

7.演習

「それじゃあ、今回俺たちがお世話になる村の村長に挨拶をしろ」


 グレル先生の号令に、頭を下げる俺たち。王子や王女であるゼリックやメイリーンも同じように頭を下げる。


 村長たちには恐縮させないために、誰が貴族とかは話していない。2泊3日もこの村に留まるのだ。それなのに、村の人たちもずっと緊張しっぱなしは辛いだろうから、との学園のやり方だ。


 昔の国王が学生の頃、この事を認めたため、他の貴族も文句は言わない。王がやっているに貴族が文句言うわけにはいかないからな。


 それから、俺たちは村の周りに野営地を作る。これもゼリックたちも同じだ。それどころか楽しそうに率先して作っていた。


 野営地は事前に決めていた班毎になる。班は俺にティリア、ディッシュにエマとメアリーだ。そのメンバーで野営地を作り、作り終えた班からグレル先生の元へと集まっていく。


「……よし、全班野営地を作ったな。それじゃあ、村の向こうにある山にこれから入り、山で探索をしてもらう。目標は1人最低1体魔獣の魔石を取って来る事だ。これを1日のノルマとする」


 グレル先生の言葉に頷くみんな。そして先生から手渡される緑色をした石。


「それは知っている奴もいるとは思うが、魔光石と言う。魔石に魔術式を書き加え、簡易の魔道具にしている。それに魔力を注ぎ、地面に叩きつければ、辺りを覆うほどの光を発する。何か事故や、危険な事になった時に使うんだ。
 ただ、本当に簡易な物だから、光の調節が出来ない。かなり光るようにはなっているため、使った瞬間は数秒目を塞げよ。目をやられるからな」


 これ、見た目はチンケな石なのに、そんな凄いのかよ。それだけ凄かったら、万が一敵に囲まれた時も目潰しに使えるってわけか。


 俺たちはグレル先生から貰った石をしまって、森へ入る準備をする。俺とディッシュは剣を、エマとメアリーは魔法を使うための杖を。そしてティリアは


「……いつ見ても凄いね、ティリアの武器は」


「本当っすねー。この前触らしてもらったっすけど、ジブンじゃあ持てなかったっすからね」


 ティリアの武器を見て苦笑いをするエマとメアリー。まあ、俺も何度か見た事はあるが、よくこんなものが持てるな、と思う。


 ティリアが使っている武器は、ティリアの身の丈以上あるハルバートなのだ。切る、殴る、突くことの出来る多様性のある武器なのだが、これがまあ扱いづらい。


 まず、色々な用途に耐えられる様に頑丈に作られているため、普通の槍などに比べたら重たいし長いのだ。


 それに多種多様に使えると言っても、それが出来るほどの技量が無ければ、ただの持ち腐れになってしまう。


 だけど、ティリアは器用に使いこなすのだ。俺も使えない事は無いが、まあ進んで使うかと言われたら使わない武器だ。


「私にはこれが1番使いやすいのよ」


「いやー、ゼスト、奥さんは力も……グフェッ!」


「力……何かしら?」


 ディッシュが、俺に下らない事を言おうとして、ティリアにハルバートの石突きで攻撃された。うわぁ、脇腹にモロに入ったぞ。痛そうだな、あれ。


 ディッシュの目の前には、ハルバートを肩に担ぎながら微笑むティリアの姿が。そして何故か後ろに面白そうにつくエマと、少し恥ずかしそうにしながら同じ様にするメアリーが、まるで子分のようについていた。


「もう一回聞くわよ? 力……何かしら、ディッシュ?」


「ち、力……強いっす、ぐほっ!」


 少し震えながら立ち上がるディッシュは、耐え切れなくなり正直に答えると、ティリアに腹パンをくらっていた。再び痛みに悶えるディッシュ。


 そして、元凶のティリアといえば、俺の方を見て物凄い笑顔をして来る。俺はそっぽを向いて見ていない事にした。


「何してんだよ、お前たちは」


 そんな事をしていたら、グレル先生が俺たちの班のところへやってきた。気がつけば他の班は既に森へと入って行ってしまった。俺たちだけがこの場に取り残されている。


「ほれ、お前らも行け。まあ、ゼストとディッシュがいるから、あまり危険は無いと思うが、油断はするなよ」


 俺たちはグレル先生に見送られながら森へと入る。俺たちが住むミストラル王国には、幾つか魔獣が発生する森や山がある。この森もそれの1つだ。


 この森は比較的弱い魔獣しか出てこないが、時折数が多く出るので、学園が学生たちの訓練のついでに、魔獣狩りをさせているのだ。それが、この外部演習の目的の1つだ。


「痛てて……ったく、そんな強く殴る事ねえじゃねえかよ」


「ふん、ゼストの前で変な事を言うからよ!」


 後ろではディッシュとティリアが言い争っている。今俺が先頭、メアリー、エマを間に、リーチの長いティリア、ディッシュを殿しんがりにして森の中を進んでいる。この陣形なら、何かあった時に対応出来ると思ったからだ。


「おっ、早速いたぞ」


 森の中を進んで15分ほど。俺たちの前に身長1メートルほどの緑色の肌をした人型の生物が現れた。記憶にあるが、こいつらが小鬼か。ファンタジー小説とかでは、よくゴブリンとか言われるやつだ。


 そいつらが、木の棒を持ったのが3体、石を持ったのが2体、何も持っていないのが3体の計8体出て来た。


「みんな、やれるな?」


 俺が軽く振り向きながら尋ねると、ディッシュ以外は頷く。ディッシュはわかっているからそれで構わない。今の言葉は自分にも尋ねている。


 前世では、虫などは殺した事はあるが、動物系、しかも人型の生物は記憶ではあっても、実際にやるのは初めてだ。しっかりとやれるのだろうか?


 ◇◇◇


「……んだよ、この騒ぎは。まさか俺の追っ手がやって来たのか? それにしては、どいつもこいつも雑魚……いや、離れたところに出来る奴が1人、あと森の中にまあまあな奴が数人か。はぁ、この森結構気に入っていたんだがな。潮時か。はぁ、めんどくせえけど動くか。あー、PCゲーム・・・・・がしたいぜ」

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