異世界で彼女を探して何千里?

やま

3.この世界での親友

『ねぇ、セイ君。高校卒業したら、同じ大学行こうよ!』


『大学ね〜。そうするにはあの家を出ないとな。それから、金無えから奨学金だし』


『ふふ、それなら勉強しなきゃね! セイ君は、勉強したら点取れるのに、普段サボっているもん!』


『それは、バイトのせいで勉強する暇が無いからだよ。でも、奨学金狙うなら、少しは真面目に勉強しないとな』


『それじゃあ、バイトのない日は、私と勉強だね! ふっふーん! このみなみ大先生に任せなさい!』


『はいはい、よろしくお願いしますよ〜、みなみ大先生』


『むっかー! セイ君のその適当な反応にむっかー!』


 ◇◇◇


「……夢か。あれは確か修学旅行前に、みなみと進路をどうするか相談していた時だな」


 ついこの前の思い出。みなみは、のほほーんとしているが、勉強は出来たからな。目指しているのも国立の大学だったし。それに一緒に行こうと言う、みなみの鬼っぷりには笑ってしまった。


 まあ、それを受けて俺も行こうと思う俺もどうかと思うけど。


「1人で何ニヤニヤしているのですか、お兄様? はっきり言って気持ち悪いですよ?」


「うおっ!? な、なんだ、セリーネか。脅かすなよ」


 俺が昔の事を思い出していたら、いつの間にか目の前にセリーネが立っていた。


「もう朝ご飯の用意は出来ていますよ。さっさと着替えて降りてきてください。洗濯物は私が後で持って行きますので、いつもの場所へ」


「ああ、わかったよ。いつもありがとうな」


 俺の言葉に反応する事なく部屋を出ていくセリーネ。両親2人共が軍人気質なせいか、自分の事は自分で出来るようにと、この家は侍女を雇っていない。


 その代わり、週に3回ほど、家政婦を雇っている。家政婦を雇うぐらいだったら侍女を雇ったら? と思うのだが、侍女を雇って、お前やゼクスが手を出したらまずいだろうが、となぜか怒られた事がある。


 父上は母上に一途だからな。別にちゃんと籍を入れるなら構わないが、それもしっかりと成人してからだと言うので、間違いが起きないように侍女は雇わないそうだ。


 因みに家政婦は、近所の奥さんたちだ。近所で手の空いている奥さんたちの小遣い稼ぎのために、週3で雇っている。


 自分の事は自分で云々より、こっちの方が重要そうな話をしていた。ちなみに料理は母上か兄上が作っている。俺は簡単な物なら作れる。


 父上は、戦時中の食事みたいな物しか作れない。焼くだけ、煮込むだけの良く言えば素材を活かした料理、悪く言えば手抜きを。


 そしてセリーネは、家事全般そつなくこなせるのだが、何故か料理だけは壊滅的だ。何を入れたらそんな色になるのかわからない料理を何度も作っている。


 一度それを食べた父上が倒れたらしく、それからは料理禁止となっている。


 俺はいい香りがする1階へと降りる。そこでは、父上は新聞を読み、母上は朝食準備をしていた。兄上は……いないようだ。兄上の分の食事がないという事は、今日は朝が早かったのだろう。


「おはようございます、父上、母上。母上何か手伝いましょうか?」


「おはよう、ゼストちゃん。うんうん、良いわよ、もう直ぐ出来るから。座っていて頂戴」


「おはよう、ゼスト。今日の放課後の事は覚えているな」


「ん? ああ、覚えているよ。放課後に第3兵団のところに行けば良いんだろ?」


 俺の言葉に頷きながら紅茶を飲む父上。それから、2階で掃除をしていたセリーネも降りてきてみんなで座る。心なし、セリーネの顔が赤い気がするが気のせいか?


 少し気になったが、別に良いかと思った俺。みんなと一緒に母上の作った朝食を食べる。美味しい。


 それから、食事を終えると、父上は先に家を出る。その後に俺とセリーネが家を出る。学園が一緒だからな、行きはセリーネも一緒だ。


「お兄様、今日は授業はどうされるのですか? 今日もさぼ……」


「いや、今日は出るよ。父上とも約束したしな。それを破ったら今度は殺されちまう」


 俺がそう言うと、何故かジッと見てくるセリーネだが、しばらくすると「わかりました」と言って、歩き始める。


 俺もその後をついていく。俺も色々と考えたい事はあるけど、授業をサボってばかりじゃな。周りに心配かけてしまう。


 そういえば、昔も家の事情とかで行けなかった時は、みなみにものすごく心配されたっけ。たった1日2日行かなかったら、携帯の着信が凄い事になっていたな。みなみには、家には近づくなって言っていたし。


 あの時は『来ないなら来ないで一言連絡が欲しい。セイ君の事が心配で授業が身に入らないじゃない!』って、怒られたっけ。


 あれも今となってはいい思い出だ。あれからは何かあって行けなくなったりしたら、みなみや知り合いに連絡するようにしたんだよな。


 そんな事を思い出しながら歩いていると、ようやく学園にたどり着いた。屋敷からは徒歩20分ほど。まあまあの距離だ。


「それでは、お兄様、今日も1日頑張って下さい」


「ああ、セリーネもな」


 俺とセリーネは校舎の入り口で別れる。学年が違うから校舎も違うんだよな。そのまま1人で教室に向かっていると


「よう、ゼスト、今日はサボらずに来たな!」


 後ろから肩に腕をかけてくる奴がいる。茶髪の短髪の男がニカっと人当たりのいい笑顔で笑ってくる。


「おはよう、ディッシュ、今日も朝練か?」


「おう、やっぱり体を動かさねえとな! なんだか気持ち悪くてよ!」


 そう言って豪快に笑う男は、ディッシュハルト。家名は無く平民だが、俺のこの世界の親友でもある。


 身長は180と高身長で、まだ成長期の来ていない俺とは15センチほど差がある。ディッシュは、学年一の剣術使いで、剣術だけの腕前なら俺以上ある。しかも誰にも習わず独学でだ。


 その腕前を早くに見つけた父上が、自らの手で教えている。卒業後は第3兵団に入る事が決まっている。


「そういえば、今日から俺も放課後兵舎に行く事になってよ。一緒に行こう」


「おっ、久しぶりに戦えるのか? 魔法ありだと、まだゼストには勝てねえからな。今日こそは倒してやるぜ!」


 そう言って、廊下で叫ぶディッシュ。みんな見ているからやめてくれよ。恥ずかしいから。そういえば今日の授業は、歴史に魔法薬学、魔法実技に魔獣学だったか。


 歴史と魔法薬学は担当の先生がいるご、魔法実技と魔獣学については担任であるグレル先生が担当する。これは昨日の事があったから、チェックが厳しそうだな。


 ただ、それ以上に、腕を組んで俺を後ろから睨んでくるティリアが怖い。振り向けないぜ。

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