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落とされた勇者 悪霊たちと最強になる

やま

2話 異世界転移

「……ここは」


 辺り一面真っ白な光に包まれて何も分からなくなった次の瞬間、目の前には先ほどまでいた教室とは違う光景が広がっていた。


 黒板も無く、木の机も無く、掃除用具入れも無い。地面にはよくわからない図形が書かれており、あたりは石の壁。そして、鎧を着た人たちが俺……いや、俺たちを囲んでいたのだ。


「……ここは」


「陽奈! 大丈夫か?」


 今まで焦点の合っていなかった陽奈が、辺りを見回し始めた。そして俺が声をかけると、ホッとした顔を浮かべる陽奈。近くにいた翔輝や凛さんも気が付いたのか辺りを見渡す。


 俺たちだけじゃない。俺たちがいたクラスのクラスメイトたちがこの部屋に連れて来られたんだ。なんせ、床が光った瞬間教室にいた先生までいるのだから。


 全員が全員、突然の事に戸惑っていると


「よくぞ参られた。我が国を救いし勇者たちよ」


 と、若いながらも威厳のある重みのある声が部屋の中に響いた。俺たちが全員声のした方へ顔を向けるとそこには、俺たちと歳の変わらない青年が立っていた。


 周りの鎧を着た人たちとは違う雰囲気。煌びやかな服装に、俺たちの世界ではあり得なかった剣を帯刀し、そして何より、男の俺からしてもかっこいいと思うほどのイケメンがそこに立っていた。翔輝といい勝負だな。


 それだけじゃない。そのイケメンの隣には隣に並んでも見劣りしない程綺麗な女性が立っていたのだ。こちらもおれたちと年齢はそう変わらないだろう。


 2人とも光に当たって輝く金髪をしており、どちらも輝いて見える。男の方はショートで睨む様に鋭い目をしているが、笑みを浮かべて俺たちを見ていた。


 女性の方は肩甲骨辺りまでの長さをしており、頭にはティアラを乗せていた。2人とも顔が似ているので兄弟なのだろう。


「突然の事で戸惑っているだろうが、まずは我々の自己紹介をしよう。私の名はエルライト・ヴァン・ヘンドリクス。ヘンドリクス王国の第1王子だ。隣に立つのが私の妹であるアルジェラ・ヴァン・ヘンドリクスだ。第1王女である。突然の事で戸惑っていると思うが、私たちの話を聞いてほしい」


 そう言いエルライト王子が話し始めた内容は、日本で住んでいた俺たちからしたら何処かで聞いたことのある話だった。


 俺はあまり漫画やアニメにゲームはする方では無いが、陽奈がそういうのが大好きなため、たまに俺の家まで持って来て見せられた事がある。


 その中に、今回みたい俺たちに起きた異世界転移の話もあった。まさにその話がエルライト王子の口から話されていた。


 内容は、早い話が魔王が現れる兆しがあるから、勇者を召喚して倒して欲しいというものだった。魔王には特別な力があるらしく、異世界から召喚した者か、ステータスの中でチームを組んでいる者にしか倒せないのだという。百数年前に現れた魔王も、勇者を召喚して倒したのだとか。


「本来ならこの世界の住人である我々がやるべき事なのだが、我々の力ではどうしようも出来ないのだ。申し訳ないがこの通り力を貸してはもらえないだろうか?」


 そう言って頭を下げるエルライト王子とアルジェラ王女。あまりにも突然な事に俺たちは返事も何も出来なかったが、そこに


「そ、そんな危険な事、教師として子供たちにさせる事は出来ません! わ、私たちを元の世界に帰してください!」


 俺たちの前を出てそう叫ぶのは、4限目の授業が偶々俺たちのクラスで教室にいた平山ひらやま 秋穂あきほ先生だ。


 身長は150後半で黒髪のセミロング。綺麗より可愛い系の容姿をしており、俺たちの高校に赴任してまだ1年目で担任では無いが、俺たち生徒のために色々と頑張ってくれる先生である。


 その平山先生の言葉に困ったような表情を浮かべるエルライト王子。そして


「……すまないが、今現状、君たちを元の世界に返す事は出来ない」


 と、告げられたのだ。その言葉に当然俺たちは呆然とする。そしてその後すぐに怒鳴りだした生徒たち。それはそうだろう。突然別の世界に連れて来られたと思ったらもう元の世界には帰られないと言うのだから、誰もが怒るに決まっている。


「ただし!」


 しかし、クラスメイトたちの怒声を遮るように、エルライト王子の声が部屋の中に響く。良く通る声だな。


「我々も元の世界に戻るための方法は探すつもりだ。そして、この世界にいる間の身分は我が国が保証する。勿論衣食住とすべて我々が負担しよう」


 という、言葉に先程まで怒鳴っていたクラスメイトたちが声を落としていく。しかし中には当然直ぐには帰られない事に悲しんでいるクラスメイトもいる。陽奈だって凛さんだって。一人暮らしの俺でさえショックを受けているのに。


 翔輝はどうなのか、そう思い翔輝の方を見ると……少し笑みを浮かべていた翔輝の姿があった。今まで見た事のない表情で俺は思わず目を擦って確かめてしまった。しかし、次の瞬間には何時もの表情に戻っていた。見間違いか?


 疑問に思っていると、翔輝が立ち上がりみんなの前に立つ。何をするつもりだ?


「俺はエルライト殿下の言葉に従おうと思う! 確かに突然この世界に連れて来られて戦って欲しいなんて言われても、正直言って嫌だと思うのが普通だと思う。
 だけど、これはこの人たちだってやりたくてやったんじゃ無いのだと思う。それに、俺たちの生活を保障してくれるのなら……そして、元の世界に戻る方法を探してくれるのなら! 俺はこの世界のために戦おうと思う! 
 ただ、俺1人だと厳しいのはわかっている。だから、みんなも手伝って欲しい!」


 エルライト王子に負けないぐらい通る声で自分の意志を告げる翔輝。その言葉を聞いたクラスメイトたちは、初めは戸惑ってはいたが、次第に翔輝の言葉に、次第にクラスメイトたちも賛同していった。


 その光景を見ていたエルライト王子は、近くにいる鎧を着た男性に指示を出させると、俺たちやクラスメイトたちの前に鎧を着た男たちがやって来た。剣を腰に携えているので少し警戒したが、何やら板のような物を渡して来た。材質は石のようなプラスチックのような謎の物質だった。


「それは、自身の能力を表示出来るステータスプレートと言われるものだ。自分の身分を証明する物になるので無くす事の無いように。
 そのプレートを握ったまま『オープン』と唱えると自分のステータスが現れて、『クローズ』と唱えるとステータスが消える。やってみてくれ」


 俺たちは戸惑いながらもプレートを握ったままオープンと唱える。そして、プレートに表示されたのは


「……何だよ、これ」


 俺の予想していなかったものだった。

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