悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
62.起動
「……」
「……様! ジー……」
「……」
「ジーク様!!!」
「うおっ!? な、なんだよ、エンフィ」
俺の目の前で俺を呼ぶエンフィ。声に反応して前を向けば、視界一杯にエンフィの顔があってびっくりしてしまった。これがエンフィの綺麗な顔だから良かったものの、俺みたいなブ男の顔だったら卒倒ものだぞ。
「なんだよ、じゃあありませんよ。もう、夕食の時間なのに呼んでも反応が無いので、どうされたのかと焦ってしまったじゃ無いですか。慌てて部屋に入れば、本に集中して気が付いていないだけなんて」
「あー、もうそんな時間か。悪かったよ、エンフィ。魔導書を読むのに集中してしまって」
午後に商人であるバルクスから購入した魔導人形とそれを動かすための魔導書を読んでいたら、気が付けば夜になっていた。時間が経つのはあっという間だな。
「その魔導書はどのくらい読めたのですか?」
「3分の1ってところかな。中々面白い内容でさ。この魔導人形、魔王と戦うために造られたようだ。造ったのはこの大陸の3分の2を治めていた大帝国らしい。知っているか?」
「それって、お伽話や昔話で出て来るガーランド大帝国ですかね? 巨大過ぎた余り分裂して滅んだって言う」
「みたいだな。その時代に造られたものらしい」
まだ、読み切っていないため深くはわからないが、この時代に殆ど残っていない歴史は見ていて面白い。前世のゲームでもわからなかったからな。
「まあ、兎に角夕食の時間です。お待ちしていますので来て下さいね」
エンフィはそう行って部屋を出る。俺は開きっぱなしの魔導書に栞を挟んでエンフィの後を追う。今日はエンフィの日だったかな。エンフィの日は野菜が多めだからなぁ。
◇◇◇
「……魔力充填完了……起動シークエンスに入る……本体の状態確認……武器の劣化を確認。修復魔法を発動……修復までに260時間。索敵系……感度良好。マスターの魔力確認……リスト上に該当者無し、新規で登録……登録完了。周辺索敵……地図に該当無し、マップ作成。……! 索敵に反応あり……魔王因子発見。優先順位を最大とする。
修理中止……戦闘可能領域……本来の2割程度。魔王因子を持つ者と戦闘……覚醒前のため勝率上昇……第一目的、魔王因子を持つ者の殲滅」
◇◇◇
「エンフィ、美味かったんだけどこの野菜の量、もうちょっとどうにかならない?」
「なりません。これはメルティアさんと話して量を決めているのです。だから諦めて下さい」
「そうかい。それでそのメルティアは?」
「今日はもう上がられましたよ? 何かご用事でもありましたか?」
「あっ、そうか。そう言えば魔導書を読んでいる時に挨拶に来たな。悪い、すっかりと忘れていた」
正直にエンフィに謝るとじとーっと見て来る。悪かったって。最近は殆どの仕事をエンフィに任せて早く帰ることが多くなったメルティア。理由はもうすぐ結婚するからだ。
物心ついた頃から俺の唯一の侍女として働いてくれたメルティアだったが、年齢は20代の前半。この世界では既に遅れていると言われる年齢だった。理由は勿論俺のせい。俺の侍女をしていて婚期を逃してしまったのだ。
それが申し訳なかった俺は、母上に相談してメルティアの家と相手の家との縁談を見つけてもらったのだ。本当はもっと早くにしてあげるべきだったのだが、ここまで遅くなってしまった。
「これからは少しエンフィに負担がかかってしまうが、休みたい時は言うんだぞ?」
「わかっていますよ。それに、十分休ませていただいていますから」
笑顔でそう言ってくれるエンフィ。そう言ってもらえると雇っている身としては嬉しいものだ。
「それじゃあ俺はこのまま部屋に戻るよ。風呂の時間になったらまた呼びに来てくれ」
「わかりました。少しはこちらにも耳を傾けてくださいね?」
そんな皮肉を背に受けながら俺は部屋へと戻る。なるべく善処するとしよう。俺も気にするようにはしているのだが、どうしても魔導書を読もうとすると集中しなければならない。
結構面倒な書き方をしているからな、魔導書は。まあ、それでも今日と明日で読み終わりそうな気はするが。既に数冊読み終えているためか、読み進める速度が昔に比べて早くなったからな。
そんな事を考えながら部屋の前まで戻ると、部屋の中から何かが動く気配がする。一体誰かわからずに困惑する俺。
昔より丸くなったためか、メルティアやエンフィ以外の侍女がベッドメイキングや掃除、花の入れ替えなどしてくれるようにはなったが、この時間帯に来ることはありえない。
って事は何者かが侵入してきたって事か、既に王宮内にいる者が無断で入っているか。困った事に武器はこの部屋の中だ。丸腰で相手をしなければいけない。
俺は一度深呼吸をして、一気に扉を開けた。そして気配のする方を見ると
「……魔力感知……マスターの魔力と同期、マスターと判断、マスター登録中……登録完了。マスター登録完了により、行動開始」
と、言いながら窓へと向かう銀髪の美女。どこかで見たことあると思ったら、魔導人形じゃないか!? なんで動いているんだ?
そして、魔導人形は俺が何かを言う前に窓を開けて飛び出してしまった。何も纏わないまま裸のままで。……やべっ、追わないとっ!!
「……様! ジー……」
「……」
「ジーク様!!!」
「うおっ!? な、なんだよ、エンフィ」
俺の目の前で俺を呼ぶエンフィ。声に反応して前を向けば、視界一杯にエンフィの顔があってびっくりしてしまった。これがエンフィの綺麗な顔だから良かったものの、俺みたいなブ男の顔だったら卒倒ものだぞ。
「なんだよ、じゃあありませんよ。もう、夕食の時間なのに呼んでも反応が無いので、どうされたのかと焦ってしまったじゃ無いですか。慌てて部屋に入れば、本に集中して気が付いていないだけなんて」
「あー、もうそんな時間か。悪かったよ、エンフィ。魔導書を読むのに集中してしまって」
午後に商人であるバルクスから購入した魔導人形とそれを動かすための魔導書を読んでいたら、気が付けば夜になっていた。時間が経つのはあっという間だな。
「その魔導書はどのくらい読めたのですか?」
「3分の1ってところかな。中々面白い内容でさ。この魔導人形、魔王と戦うために造られたようだ。造ったのはこの大陸の3分の2を治めていた大帝国らしい。知っているか?」
「それって、お伽話や昔話で出て来るガーランド大帝国ですかね? 巨大過ぎた余り分裂して滅んだって言う」
「みたいだな。その時代に造られたものらしい」
まだ、読み切っていないため深くはわからないが、この時代に殆ど残っていない歴史は見ていて面白い。前世のゲームでもわからなかったからな。
「まあ、兎に角夕食の時間です。お待ちしていますので来て下さいね」
エンフィはそう行って部屋を出る。俺は開きっぱなしの魔導書に栞を挟んでエンフィの後を追う。今日はエンフィの日だったかな。エンフィの日は野菜が多めだからなぁ。
◇◇◇
「……魔力充填完了……起動シークエンスに入る……本体の状態確認……武器の劣化を確認。修復魔法を発動……修復までに260時間。索敵系……感度良好。マスターの魔力確認……リスト上に該当者無し、新規で登録……登録完了。周辺索敵……地図に該当無し、マップ作成。……! 索敵に反応あり……魔王因子発見。優先順位を最大とする。
修理中止……戦闘可能領域……本来の2割程度。魔王因子を持つ者と戦闘……覚醒前のため勝率上昇……第一目的、魔王因子を持つ者の殲滅」
◇◇◇
「エンフィ、美味かったんだけどこの野菜の量、もうちょっとどうにかならない?」
「なりません。これはメルティアさんと話して量を決めているのです。だから諦めて下さい」
「そうかい。それでそのメルティアは?」
「今日はもう上がられましたよ? 何かご用事でもありましたか?」
「あっ、そうか。そう言えば魔導書を読んでいる時に挨拶に来たな。悪い、すっかりと忘れていた」
正直にエンフィに謝るとじとーっと見て来る。悪かったって。最近は殆どの仕事をエンフィに任せて早く帰ることが多くなったメルティア。理由はもうすぐ結婚するからだ。
物心ついた頃から俺の唯一の侍女として働いてくれたメルティアだったが、年齢は20代の前半。この世界では既に遅れていると言われる年齢だった。理由は勿論俺のせい。俺の侍女をしていて婚期を逃してしまったのだ。
それが申し訳なかった俺は、母上に相談してメルティアの家と相手の家との縁談を見つけてもらったのだ。本当はもっと早くにしてあげるべきだったのだが、ここまで遅くなってしまった。
「これからは少しエンフィに負担がかかってしまうが、休みたい時は言うんだぞ?」
「わかっていますよ。それに、十分休ませていただいていますから」
笑顔でそう言ってくれるエンフィ。そう言ってもらえると雇っている身としては嬉しいものだ。
「それじゃあ俺はこのまま部屋に戻るよ。風呂の時間になったらまた呼びに来てくれ」
「わかりました。少しはこちらにも耳を傾けてくださいね?」
そんな皮肉を背に受けながら俺は部屋へと戻る。なるべく善処するとしよう。俺も気にするようにはしているのだが、どうしても魔導書を読もうとすると集中しなければならない。
結構面倒な書き方をしているからな、魔導書は。まあ、それでも今日と明日で読み終わりそうな気はするが。既に数冊読み終えているためか、読み進める速度が昔に比べて早くなったからな。
そんな事を考えながら部屋の前まで戻ると、部屋の中から何かが動く気配がする。一体誰かわからずに困惑する俺。
昔より丸くなったためか、メルティアやエンフィ以外の侍女がベッドメイキングや掃除、花の入れ替えなどしてくれるようにはなったが、この時間帯に来ることはありえない。
って事は何者かが侵入してきたって事か、既に王宮内にいる者が無断で入っているか。困った事に武器はこの部屋の中だ。丸腰で相手をしなければいけない。
俺は一度深呼吸をして、一気に扉を開けた。そして気配のする方を見ると
「……魔力感知……マスターの魔力と同期、マスターと判断、マスター登録中……登録完了。マスター登録完了により、行動開始」
と、言いながら窓へと向かう銀髪の美女。どこかで見たことあると思ったら、魔導人形じゃないか!? なんで動いているんだ?
そして、魔導人形は俺が何かを言う前に窓を開けて飛び出してしまった。何も纏わないまま裸のままで。……やべっ、追わないとっ!!
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
59
-
-
4
-
-
26950
-
-
59
-
-
141
-
-
20
-
-
1168
-
-
310
-
-
841
コメント