悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!

やま

34.クラス

「……ふぅ、終わった」


 俺は教室に戻って出た第一声がそれだった。フレック先生が教室にやって来てからは、直ぐに移動する事になった。目的は入学式のためだ。


 クラス全員が揃っている事を確認したフレック先生は、俺たちを訓練塔へと連れて行き、入学式に参加させた。


 内容は、前世で体験したのと殆ど変わらなかったな。お偉い人の長い話。ただ、前世と違っていたのが、その中に新入生代表で兄上が話すのと、父上が話すのがあった事か。


 そういえば、ゲームの中でも父上が国王として、兄上が新入生代表として話すシーンがあったのを思い出す。特に興味もなかったのでスキップしていたから忘れていた。


 そんなゲームの主要人物を見たエレネはと言うと


「ぐふふっ! あれが攻略対象の1人のグルディス殿下かぁ〜。ゲームの画面越しで見るよりやっぱりイケメンだったわね!」


 と、1人で喜んでいた。まあ、好きなゲームのキャラクターを生で見る事が出来るなんて、普通では出来ないからな。


 しかも、誰かが動かしていたり、プログラミングされているわけではない、本人の意思で動いているのも嬉しいのだろう。


「全員いるか〜? 途中で迷子になった奴とかはいないな?」


 入学式が終わり、フレック先生も教室へと帰って来た。周りを見ると、どの席も埋まっているから全員揃っている。まあ、眠っている奴はいるけど……隣の奴なんか入学式ですら寝ていたぞ。起きていたのは移動の時ぐらいだ。


「寝ている奴もいるが、全員揃っているな。それじゃあ予定表を配るから前の奴から後ろの奴に回していけ」


 フレック先生は寝ている奴無視して話を進めて行く。おーい、起きないとついていけなくなるぞー。心の中で叫んでも当然聞こえるわけもなく、ぐっすりと眠る隣の奴。


 隣の奴の前の席は肩を揺らして起こそうとするが、全く起きず、諦めて隣の奴の分の予定表を机に置いて、その後ろの奴に回す。


「全員に行き渡ったな。まず、今日の予定だが、クラス全員の自己紹介をしてもらうぞ。これから一緒に切磋琢磨する仲間だ。名前すら知らないのは駄目だからな。
 その後は学園の中を見て回る。どこに何があるかわからないと授業にも行けないからな。途中で逸れると迷っちまうからちゃんとついてくるように。今日の予定はこんなもんだ」


 自己紹介に学園の中を見回るか。中々学園っぽい行事だな。


「明日からの予定は、まず皆の実力を知りたいので、訓練塔で実力を確認させてもらう。これは貴族平民問わずだ」


 そして、急にファンタジーっぽい科目がやって来たな、おい。予定表を見てみると、様々な項目にわかれていた。これ全部するのか。


「なぜ貴族もするかというと、8年前に起きたビーストアウトのような悲劇を少なくするためだ。そのため、貴族でも必要最低限、自分の身を守れるようにと国からのお達しがあってな。8年前までは自由参加だったが、その翌年からは強制となっている。知っている者もいるだろうが。苦手でも嫌でも参加はして貰う」


 フレック先生の言葉に誰も文句を言う者はいなかった。皆何かしら被害を受けて、親から言われているからだ。自分の身は自分で守れるようにと。


「1ヶ月後には他クラスとの交流試合も行う予定だ。頭に入れといてくれ。それじゃあ、自己紹介を始めようか。廊下側から1人ずつ教卓まで来て挨拶をしてくれ」


 先生の言葉に従い廊下側の男子生徒から教卓に行き挨拶を始める。挨拶を聞いていると、どうやらこのクラスは貴族と平民が半々のクラスのようだ。


「僕の名前はユータス・エヴァンゲオン。エヴァンゲオン伯爵家次期当主で学園で1番になる男さ。みんな、僕についてくるといい!」


 と、変わった奴もいる。ユータスは金髪の髪をサラッと右手でかき上げ格好をつけているけど、同時にお腹も揺れている。まるでゲームの時の俺を見ているようかのお腹をしている。


「ふふ、みんな僕の格好良さに言葉も出ないようだ。まずはこのクラスで1番になる! 覚悟するんだ!」


 ユータスはそう言うと俺の方をウィンクして来た。まるで俺をライバル視するかのように。中々濃い奴がいるもんだな。


「私の名前はユーリエ。王国一の娼婦になる女よ。みんな、5万イェンで相手してあげるわ」


 濃いユータスが終わって何人かの後にはまた濃い人物が来た。王国一の娼婦になると言うユーリエは、母親が貴族御用達の高級娼館で働いているらしく、その綺麗な姿を見て来た彼女は同じように娼婦になりたいと言う。


 ゲームでは出てこなかった裏設定だが、この世界では娼婦は前世の公務員に匹敵する立派な職業だ。男女問わず、心も体も癒してくれる職業として女性にも人気で、国も認めている。


 悪どい娼館は、他の娼館に潰されるため、衛生面でも金銭面でも良心的な娼館しかない、というより認められていない。


 ユーリエの早速改造した制服ー胸元はポッカリと空き、12歳とは思えない谷間を見せ、キュッと引き締まった腰とおへそも丸見え。パンツが見えそうなほど短いスカートで、男女問わず魅了する。


 貴族の生徒の中には平然としている者もいるのだが、大半の男子が前かがみになっている。中には鼻血を出す者も。少し刺激が強過ぎるな。


 俺は、前世で風俗などにも付き合いで通った事があるから大丈夫だけど。


「リークレットだ」


 そんな濃い彼らと違って簡素に終えたのは、俺の隣でずっと眠っていた少年だ。立ったら180ほどある身長に、鍛えられた体。見た目はワイルドな感じなので、女子生徒たちはうっとり。それを見たユータスが悔しそうに歯を食いしばっていた。


「ぼぼぼ、僕の名前はママ、マイル・ム、ムーアです! よよ、よろしくお願いします!」


 マイルは俺と話した時のように物凄く緊張していた。そんな緊張しなくても良いのに。そして


「俺の名前はジークレント・ヴァン・アルフォールだ。この国の第2王子だが学園にいる間は身分は関係ない。俺もみんなと一緒に切磋琢磨して成長したいと考えているから、これからよろしく頼む」


 俺の挨拶の番になった。俺の言葉に猜疑的な奴もいたが、概ね受け入れてもらったようだ。だから、そのさすが僕のライバル、的な雰囲気を出すのはやめろ、ユータス。


「私の名前はエレネ! みんな仲良くしてね!」


 と、エレネの挨拶も終える。明るく可愛らしいエレネに男子生徒の何人かはデレっとしていた。


 そんな挨拶が後2人続き、クラスメイトの挨拶は終わった。中々濃いメンバーが集まるクラスではあるが、俺は楽しくなりそうだと、1人ワクワクしていた。

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