悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
27.2つ目の魔導書の魔法
「いやぁ、悪かったよ殿下。久し振りに暴れられると思ったら興奮してしまって」
俺の顔を見て苦笑いするレイチェルさん。他のみんなは倒したゴブリンの剥ぎ取りや死体の処理をしている。
彼女が俺に謝っている理由は、俺がゴブリンを1体しか倒せなかったからだ。そして、誰よりも多く倒したのがレイチェルさんだったからだ。数的に全数の半数ぐらいをレイチェルさんが倒してしまったのだ。
確かに俺のために、と来ていたわけなので何か言うべきなのかもしれないが
「まあ、仕方ないさ。俺に当てがおうとして危険になっても仕方がないからな。俺の実力が足りなかっただけだから気にする事は無いよ」
実際本当の魔物との殺し合いの空気を少しでも経験出来ただけでも有り難かったからな。
俺とレイチェルさんが話し合っていると、みんな剥ぎ取りを終えたのか集まっていた。倒したゴブリンは47体でハイゴブリンが1体いたようだ。
「やはりゴブリンの集落にしては出来立てで小さかったですね。完成したものならこの数倍はありますから」
「そうだねぇ。もしかしたら、他の集落から派生したものかもしれないから、もう少し森の中を探してみようかい」
2人が話し合い、そして俺を見て来る。俺の判断待ちって事か。他のみんなの様子を見るとまだまだ大丈夫そうだな。これなら、もう少し数の増えた集落でも大丈夫だろう。
「わかった。もう少し森の中を探してみようか」
俺の号令に再び森の中を歩き始めるみんな。隊列は初めと一緒の隊列で進む。森の中は程よく陽が差し込むほどに木々が育ち、とても歩きやすい。魔物がいなかったらピクニックに来たいぐらいだ。
「いいですねぇ、ピクニック。私も旦那様と行きたいですわ」
……俺の隣でニコニコと笑顔を見せながらそんな事を言ってくるクロエ。あれ? 今俺って口に出していたっけ? クロエの顔を見てもニコニコと首を傾げるだけ。まさか、心の声を読んだとか?
「前からオークが3体。私たちで行きます」
不思議にクロエを眺めていると、前からアルフォンスさんの声が聞こえて来た。俺たち人間を見て餌が来たと思ったのか、ヨダレをダラダラと垂らして走って来る豚顔の巨体。
体長はどれも2メートルほどで手には人の胴ほどある木が握られている。かなり肥えた巨体でドシンドシンと走って来る姿は恐ろしく感じるものだが、アルフォンスさんは慌てた様子もなく盾を構える。
腰を低くして盾を構えるアルフォンスさんへとオークは怯むことなく突っ込んでいく。アルフォンスさんの盾へと思いっきり体をぶつけるオーク。
普通なら体格的にも巨大なオークが勝ち、アルフォンスさんが吹き飛ばされると思うが、吹き飛ばされたのはオークの方だった。アルフォンスさんはピクリともしなかった。流石『盾』だな。
アルフォンスさんに突貫したオークは、体当たりの際に前に出していた右腕が折れていた。他の2体のオークたちは、跳ね返されたオークを見てアルフォンスさんを警戒していた。
アルフォンスさんはオークたちを見ると、こちらをチラッと見てきた。それに反応したのがレイチェルさんだった。そして、俺の背を叩くレイチェルさん……そういうことね。
オークの相手は俺にしろって事だろう。まあ、気負う事はないな。俺なんかより数倍強いレイチェルさんとアルフォンスさんが近くで見てくれているのだからただ、ここは本気で行こう。相手が複数なら俺も複数で行く。
「オーバードライブ! シャドウクリエイト!」
俺は魔力を半分近く使い魔法を発動する。オーバードライブで自分の能力の底上げ、そして、オーバードライブを手に入れた翌年の誕生日で買った新たな魔導書『シャドウクリエイト』で、自分の分身を作る。
シャドウクリエイトの効果は、使う魔力に応じて質量のある自身の分身を作る事ができる。能力は使った魔力が多い程、オリジナルに近づくという。
見た目は形だけ俺に似ていて、あとは色は真っ黒で表情がのっぺらとしている。でも、視覚や聴覚も共有する事が出来るので偵察などに使ったりするのは便利だ。
今は分身を6体作ってオークたちへと向かわせる。オークたちは突然増えた俺に驚きながらも木の棒を振るが、それぞれに2体ずつ向かい、1体が囮、もう1体が死角に入り急所を狙っていく。
俺はその間に父上から頂いた剣を抜き、魔力を流す。こいつの威力も確かめておかないとな。
「モードコキュートス」
文字を読んだ瞬間、剣身に氷が纏い、辺りの気温が一気に下がる。そして、俺の分身に足止めされているオークたちに向かいそれぞれ切りつける。
オークたちはそれだけで傷口から凍り付いていき、1体に複数回切りつけただけで、氷の氷像へと変わってしまった。これは中々だな。もう少し使いこなせるようになれば、一切りで凍らせる事ができるかもしれない。
「まあ、及第点ってところだね。本当は殿下自身に戦って貰いたかったところだけど、分身の魔法も殿下自身の力と考えれば十分だろう。それにしても、分身の魔法は良い魔法だね。流石魔導書といったところか」
「うぅっ、良いなぁ。早く私も読めるようにならないと!」
俺の魔導書の魔法を見て一応褒めてくれるレイチェルさんと、羨ましそうに俺を見てくるエンフィ。そして
「あぁっ、旦那様っ! なんてかっこいいのでしょうか!」
と、抱き着いてくるクロエ。まあ、何となく予想はしていたから良いのだけど、出来れば刀をしまってからにしてほしい。普通に危ない。
この日は、ゴブリンの集落を1つ見つけてそれを破壊して終了した。その時も何体かゴブリンを殺したけど、あまり重く感じなかったのは、この世界に染まってきたからだろうか。ただ、その日の夕食はあまり喉に通らなかった。
俺の顔を見て苦笑いするレイチェルさん。他のみんなは倒したゴブリンの剥ぎ取りや死体の処理をしている。
彼女が俺に謝っている理由は、俺がゴブリンを1体しか倒せなかったからだ。そして、誰よりも多く倒したのがレイチェルさんだったからだ。数的に全数の半数ぐらいをレイチェルさんが倒してしまったのだ。
確かに俺のために、と来ていたわけなので何か言うべきなのかもしれないが
「まあ、仕方ないさ。俺に当てがおうとして危険になっても仕方がないからな。俺の実力が足りなかっただけだから気にする事は無いよ」
実際本当の魔物との殺し合いの空気を少しでも経験出来ただけでも有り難かったからな。
俺とレイチェルさんが話し合っていると、みんな剥ぎ取りを終えたのか集まっていた。倒したゴブリンは47体でハイゴブリンが1体いたようだ。
「やはりゴブリンの集落にしては出来立てで小さかったですね。完成したものならこの数倍はありますから」
「そうだねぇ。もしかしたら、他の集落から派生したものかもしれないから、もう少し森の中を探してみようかい」
2人が話し合い、そして俺を見て来る。俺の判断待ちって事か。他のみんなの様子を見るとまだまだ大丈夫そうだな。これなら、もう少し数の増えた集落でも大丈夫だろう。
「わかった。もう少し森の中を探してみようか」
俺の号令に再び森の中を歩き始めるみんな。隊列は初めと一緒の隊列で進む。森の中は程よく陽が差し込むほどに木々が育ち、とても歩きやすい。魔物がいなかったらピクニックに来たいぐらいだ。
「いいですねぇ、ピクニック。私も旦那様と行きたいですわ」
……俺の隣でニコニコと笑顔を見せながらそんな事を言ってくるクロエ。あれ? 今俺って口に出していたっけ? クロエの顔を見てもニコニコと首を傾げるだけ。まさか、心の声を読んだとか?
「前からオークが3体。私たちで行きます」
不思議にクロエを眺めていると、前からアルフォンスさんの声が聞こえて来た。俺たち人間を見て餌が来たと思ったのか、ヨダレをダラダラと垂らして走って来る豚顔の巨体。
体長はどれも2メートルほどで手には人の胴ほどある木が握られている。かなり肥えた巨体でドシンドシンと走って来る姿は恐ろしく感じるものだが、アルフォンスさんは慌てた様子もなく盾を構える。
腰を低くして盾を構えるアルフォンスさんへとオークは怯むことなく突っ込んでいく。アルフォンスさんの盾へと思いっきり体をぶつけるオーク。
普通なら体格的にも巨大なオークが勝ち、アルフォンスさんが吹き飛ばされると思うが、吹き飛ばされたのはオークの方だった。アルフォンスさんはピクリともしなかった。流石『盾』だな。
アルフォンスさんに突貫したオークは、体当たりの際に前に出していた右腕が折れていた。他の2体のオークたちは、跳ね返されたオークを見てアルフォンスさんを警戒していた。
アルフォンスさんはオークたちを見ると、こちらをチラッと見てきた。それに反応したのがレイチェルさんだった。そして、俺の背を叩くレイチェルさん……そういうことね。
オークの相手は俺にしろって事だろう。まあ、気負う事はないな。俺なんかより数倍強いレイチェルさんとアルフォンスさんが近くで見てくれているのだからただ、ここは本気で行こう。相手が複数なら俺も複数で行く。
「オーバードライブ! シャドウクリエイト!」
俺は魔力を半分近く使い魔法を発動する。オーバードライブで自分の能力の底上げ、そして、オーバードライブを手に入れた翌年の誕生日で買った新たな魔導書『シャドウクリエイト』で、自分の分身を作る。
シャドウクリエイトの効果は、使う魔力に応じて質量のある自身の分身を作る事ができる。能力は使った魔力が多い程、オリジナルに近づくという。
見た目は形だけ俺に似ていて、あとは色は真っ黒で表情がのっぺらとしている。でも、視覚や聴覚も共有する事が出来るので偵察などに使ったりするのは便利だ。
今は分身を6体作ってオークたちへと向かわせる。オークたちは突然増えた俺に驚きながらも木の棒を振るが、それぞれに2体ずつ向かい、1体が囮、もう1体が死角に入り急所を狙っていく。
俺はその間に父上から頂いた剣を抜き、魔力を流す。こいつの威力も確かめておかないとな。
「モードコキュートス」
文字を読んだ瞬間、剣身に氷が纏い、辺りの気温が一気に下がる。そして、俺の分身に足止めされているオークたちに向かいそれぞれ切りつける。
オークたちはそれだけで傷口から凍り付いていき、1体に複数回切りつけただけで、氷の氷像へと変わってしまった。これは中々だな。もう少し使いこなせるようになれば、一切りで凍らせる事ができるかもしれない。
「まあ、及第点ってところだね。本当は殿下自身に戦って貰いたかったところだけど、分身の魔法も殿下自身の力と考えれば十分だろう。それにしても、分身の魔法は良い魔法だね。流石魔導書といったところか」
「うぅっ、良いなぁ。早く私も読めるようにならないと!」
俺の魔導書の魔法を見て一応褒めてくれるレイチェルさんと、羨ましそうに俺を見てくるエンフィ。そして
「あぁっ、旦那様っ! なんてかっこいいのでしょうか!」
と、抱き着いてくるクロエ。まあ、何となく予想はしていたから良いのだけど、出来れば刀をしまってからにしてほしい。普通に危ない。
この日は、ゴブリンの集落を1つ見つけてそれを破壊して終了した。その時も何体かゴブリンを殺したけど、あまり重く感じなかったのは、この世界に染まってきたからだろうか。ただ、その日の夕食はあまり喉に通らなかった。
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