悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!

やま

14.本屋

「それではジーク様、何か欲しいものはありますか?」


 馬車に揺られる事20分。思った以上に快適だった馬車に満足していると、メルティアがそんな事を聞いてくる。


 今俺たちがいるのは商店通りと呼ばれる、様々な店が集まった通りになる。王宮、貴族街に近いほど、店としての格が高いところが多く、平民街に近くなる程一般的に買われる物が多く集まっていると言われている。


 馬車が6台横に並んでも悠々と走る事が出来るほどの道幅で、様々な馬車や人々が行き来している。様々な店も馬車の窓から見る事ができ、色々と目移りしてしまうのだが、俺が欲しいものか。


 うーん、迷ってしまうな。いざ聞かれるとあまり思いつかない。理由は色々とあるが、やはり、ある程度のものは今の普通の生活で揃ってしまうからだろう。


 言えば何でも、ってわけじゃないけど、頼むと揃ってしまうからな。こういうのが欲しいというのあまり無いのだ。


 1人でうーん、うーんと唸っていると


「ぶ、武器なんてどうですか? 今もレイチェル様と訓練をされているようですし、自身の身にあった武器を買うのは?」


 そこで提案を出したのが、今日俺の護衛を務めてくれるテルマだった。ふむ、武器か。確かに憧れるなぁ、俺専用の武器。そういうの持ってみたいけど……チラッと左に座るレイチェルさんを見ると


「それは難しいな。まだ、ジーク様は鍛え始めて1ヶ月そこらしか経っていない。まだ、武器の扱いに慣れていないのに持たせるのはあまり薦めたくない」


 との事。確かにまだまだ技術が無いのに、本物の武器を持つのは危ないか。少し期待したのだが残念。


「それなら、本などどうでしょうか? ジーク様は読書をよくされます。何か新しい本を探してはどうでしょうか?」


 と、メルティアの案。本かぁ〜。確かに毎日読んでいるな。色々と情報を集めるために書庫のンディバさんから色々と話を聞いて読み漁っている。


 体は鍛え始めたばかりで直ぐに効果は現れないけど、知識は理解すれば力になる。それに、ありがたい事に書かれている本は全て平仮名だ。色々逆になっていて読むのに少し苦労するけど、全て読めるのが助かる。


「でも、書庫にない本って売っているの?」


 それが俺の疑問だった。王宮の書庫には高い天井まである書棚にぎっしりと仕舞われた本たちを思い出すと、そんな事を思ってしまった。


「国内に制作されている物についてはあの書庫にあると思います。ただ、国外になると無い物の方が多いでしょう。国によっては国外に流出を禁止している国もありますし。
 個人の書店だと独自の販売ルートを持っていたりして、偶にこの国では見られない本が売っていたりする事もあるんです」


 へぇ、そんな事があるんだ。国外の本かぁ。少し興味があるな。ゲームの中だとこの国以外は殆ど出てこなかったからな。少し興味がある。


「それなら両方行こうよ。何か良いものが見つかるかもしれない」


 俺の提案にみんなが了承してくれる。それから馬車を走らせてまず行ったのが本屋だった。結構大きめの本屋で、全て新品らしい。


 こういうお店を見ると、この世界の技術って歪だなと感じてしまう。車やバイクなどはなく馬車なのに、製紙技術や印刷技術はあり、お風呂やトイレも水洗式だ。


 香辛料なども普通に普及しており、ラノベのように飯テロなどは出来ない。マヨネーズやプリンも普通に売っているからな。美味しかったです。


 お店に入ると、書庫ほどではないけど、棚に敷き詰められた書籍。おおっ〜、色々な本がある! 色々と目移りしているところに


「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」


 と、女性の店員さんがやって来た。服装とかから貴族だと思って接客に来たのだろう。うーん、何かあるかな? と、考えて店の中を見ていると、ガラス内に仕舞わられている本があった。


 魔法を使うようになってわかるようになったけど、あのガラスの中にある本全部に魔力があるのがわかる。


「あのガラスの中にある本は何ですか?」


「あぁ、あのガラスの中にある本は全て魔導書グリモワールですよ。内容はかなり難しいですが、読む事が出来ると適性関係なく魔法が使えるようになります」


 おおっ! あれがゲームの中でもあった魔導書か! でも、ゲームの中よりはあまり使われてなさそうだな。ゲームの中だとヒロインが手に入れて使うと直ぐに魔法が使えるようになっていた。ポ◯モンにある技◯シンみたいな物だ。


 ヒロインに覚えさせたライトニングレインって魔法強かったな。防御貫通に広範囲攻撃というトンデモ魔法でかなり重宝した。


 ただ、ゲームの中だと物凄く高かったんだよな。誰でも使えるから。ここの本も……うわぁ、安いものでも1冊10万イェンもする。


 因みに『マジカルサーガ』の中の通貨はイェンだ。まあ、円と同じ価値になる。だから10万イェンはかなりの額になるのがわかる。


 武器はレイチェルさんがあまりお勧めしなかったから、予算を聞いてこの中から選ぼうかな?

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