悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
11.王の憂鬱
「……はぁ」
「あらあら、どうしたの、あなた」
「……メリセか」
俺が私室にあるソファに深く座り背を預けて深く溜息を吐いていると、部屋に入って来たメリセに声をかけられる。お風呂上がりなのか髪の毛がしっとりと濡れており、色気を漂わせている。まあ、俺が愛する妻なのだから綺麗なのは当然だがな。
我が国は一夫多妻は認められているが、私はメリセしか娶らなかった。理由は色々とあるが、やはり1番は彼女を愛しているからだろう。それに、後継が2人も生まれその事について言われなくなったのもある。
その愛するメリセは俺の向かいの席に座り笑みを浮かべながら俺を見てくる。どうしたのかと首を傾げていると
「今日の事で悩んでいるのね?」
と、見抜かれてしまった。全く、メリセにはお見通しってわけか。
「どうしてわかった?」
「ふふっ、もう何年の付き合いだと思っているのよ。あなたの考えている事は大抵の事はわかるわよ」
そう言って立ち上がったメリセは俺の隣に座り手を握ってくる。メリセの暖かい手が心地いい。
「……あまりにも俺たちの時と違っていたからな。少し悩んでいたのだ」
「……そうね、今日の顔合わせは確かに私たちと違っていたわね」
昼間の事を思い出してメリセも苦笑いを浮かべる。今日は以前から計画していたグルディスの婚約者との顔合わせを行なった。
相手は六大侯爵家の1つ、バレンタイン侯爵家の令嬢、セシリア・バレンタインとだ。今日の顔合わせの前に彼女と他の候補とも話した事はあるが、全員王妃としての素質はあったもの、セシリアには敵わないと思わせるほどの気品と風格があった。
俺とメリセ、宰相、他に数人にも見てもらったが満場一致で決まった今回の婚約の話。セシリアの父であるエンリヒト・バレンタイン侯爵も、今回の話にはかなり乗り気だった。バレンタイン侯爵家と王家はここ数十年、関わりが薄かったからな。
そして、色々と準備をして行なった今回の顔合わせだが……今日のは失敗と言っても違いないだろう。理由は、今回初めてあったはずのグルディスとセシリアの仲が既に悪かったからだ。
セシリアの方は普通に接しているのだが、グルディスの方がセシリアに対して悪感情を持っているようで、話をさせようにもムスッと黙り込んで話するのもままならなかった。
後々話を聞けば、2人を合わせる前に王宮内で出会っていたらしい。お手洗いに行っていたセシリアが王宮内で道に迷ってしまったらしく、そこでグルディスと出会ったようだ。
ただ、それだけなら良かったのだが、その場にはジークにレイチェル、そして、レイチェルが従魔するバールという魔物がいたようで、そのバールの事で揉めたらしい。
これに関しては事前にレイチェルから連れて来ていいかと相談を受けており許可を出していたので問題はない。何かあれば彼女がしっかりと対応するだろうからな。
ただ、それを知らないグルディスは王宮内に危険な魔物を連れている事に怒鳴ったらしい。間違いではないのだがなぁ。
そこで、その場にいてバールを愛でていたセシリアが、その様子が怖がっていると言って、それからは険悪な雰囲気になったという。全てその場にいたメルティアからの報告だが、簡単に想像が出来てしまう、
グルディスは確かに才能があるが、少し硬い部分がある。もう少し柔軟に考えて欲しいのだが、まだ8歳の子供にそれを求めるのは酷か。
「しばらく様子を見るしかないんじゃないのかしら? まだ、たった1回しか出会っていないのだから」
「それはそうだが、子供の時の第一印象は重要だと思うぞ。子供はそういうのに敏感だからな。その時怖いと思ったものは大人になっても怖いし、好きだと思ったものは好きだろうし」
「私たちのように?」
そう言って枝垂れかかってくるメリセ。そうだな。俺たちは本当に一目惚れだった。小さい時にジークと同じようにメリセに会わされて、出会う前は嫌々だったが、目があった瞬間、もうこの人しかいないと直感で感じたのだ。後で聞いた話だとメリセも同じような感覚になったと言う。
それからは周りが少し引くぐらい愛し合って今に至る。そのせいもあって俺は2人目を求める事もなかった。
「もう少し様子を見てみましょう。これから2人で話したりしたら変わるかもしれないし」
「……そうだな。まだ、出会ったばかりだからな」
俺の腕に抱き着くメリセの頭を撫でながらグルディスたちの事を考える。ジークの事も考えなければいけないが、ジークは評判が悪過ぎるためどこも手を上げないだろう。これに関しては自業自得のため、俺も無理矢理引っ付けるつもりはない。ジークに関してはもう少しかかりそうだな。
グルディスとセシリアの事は、このままにしておくべきだと何故か思ってしまうが、本能ではこのままでは不味いとも思っている。まるで何かに強制されているかのように。
……駄目だな。いくら考えてもこのまま行くべきだと思ってしまう。もう、なるようになるしかないか。
「あらあら、どうしたの、あなた」
「……メリセか」
俺が私室にあるソファに深く座り背を預けて深く溜息を吐いていると、部屋に入って来たメリセに声をかけられる。お風呂上がりなのか髪の毛がしっとりと濡れており、色気を漂わせている。まあ、俺が愛する妻なのだから綺麗なのは当然だがな。
我が国は一夫多妻は認められているが、私はメリセしか娶らなかった。理由は色々とあるが、やはり1番は彼女を愛しているからだろう。それに、後継が2人も生まれその事について言われなくなったのもある。
その愛するメリセは俺の向かいの席に座り笑みを浮かべながら俺を見てくる。どうしたのかと首を傾げていると
「今日の事で悩んでいるのね?」
と、見抜かれてしまった。全く、メリセにはお見通しってわけか。
「どうしてわかった?」
「ふふっ、もう何年の付き合いだと思っているのよ。あなたの考えている事は大抵の事はわかるわよ」
そう言って立ち上がったメリセは俺の隣に座り手を握ってくる。メリセの暖かい手が心地いい。
「……あまりにも俺たちの時と違っていたからな。少し悩んでいたのだ」
「……そうね、今日の顔合わせは確かに私たちと違っていたわね」
昼間の事を思い出してメリセも苦笑いを浮かべる。今日は以前から計画していたグルディスの婚約者との顔合わせを行なった。
相手は六大侯爵家の1つ、バレンタイン侯爵家の令嬢、セシリア・バレンタインとだ。今日の顔合わせの前に彼女と他の候補とも話した事はあるが、全員王妃としての素質はあったもの、セシリアには敵わないと思わせるほどの気品と風格があった。
俺とメリセ、宰相、他に数人にも見てもらったが満場一致で決まった今回の婚約の話。セシリアの父であるエンリヒト・バレンタイン侯爵も、今回の話にはかなり乗り気だった。バレンタイン侯爵家と王家はここ数十年、関わりが薄かったからな。
そして、色々と準備をして行なった今回の顔合わせだが……今日のは失敗と言っても違いないだろう。理由は、今回初めてあったはずのグルディスとセシリアの仲が既に悪かったからだ。
セシリアの方は普通に接しているのだが、グルディスの方がセシリアに対して悪感情を持っているようで、話をさせようにもムスッと黙り込んで話するのもままならなかった。
後々話を聞けば、2人を合わせる前に王宮内で出会っていたらしい。お手洗いに行っていたセシリアが王宮内で道に迷ってしまったらしく、そこでグルディスと出会ったようだ。
ただ、それだけなら良かったのだが、その場にはジークにレイチェル、そして、レイチェルが従魔するバールという魔物がいたようで、そのバールの事で揉めたらしい。
これに関しては事前にレイチェルから連れて来ていいかと相談を受けており許可を出していたので問題はない。何かあれば彼女がしっかりと対応するだろうからな。
ただ、それを知らないグルディスは王宮内に危険な魔物を連れている事に怒鳴ったらしい。間違いではないのだがなぁ。
そこで、その場にいてバールを愛でていたセシリアが、その様子が怖がっていると言って、それからは険悪な雰囲気になったという。全てその場にいたメルティアからの報告だが、簡単に想像が出来てしまう、
グルディスは確かに才能があるが、少し硬い部分がある。もう少し柔軟に考えて欲しいのだが、まだ8歳の子供にそれを求めるのは酷か。
「しばらく様子を見るしかないんじゃないのかしら? まだ、たった1回しか出会っていないのだから」
「それはそうだが、子供の時の第一印象は重要だと思うぞ。子供はそういうのに敏感だからな。その時怖いと思ったものは大人になっても怖いし、好きだと思ったものは好きだろうし」
「私たちのように?」
そう言って枝垂れかかってくるメリセ。そうだな。俺たちは本当に一目惚れだった。小さい時にジークと同じようにメリセに会わされて、出会う前は嫌々だったが、目があった瞬間、もうこの人しかいないと直感で感じたのだ。後で聞いた話だとメリセも同じような感覚になったと言う。
それからは周りが少し引くぐらい愛し合って今に至る。そのせいもあって俺は2人目を求める事もなかった。
「もう少し様子を見てみましょう。これから2人で話したりしたら変わるかもしれないし」
「……そうだな。まだ、出会ったばかりだからな」
俺の腕に抱き着くメリセの頭を撫でながらグルディスたちの事を考える。ジークの事も考えなければいけないが、ジークは評判が悪過ぎるためどこも手を上げないだろう。これに関しては自業自得のため、俺も無理矢理引っ付けるつもりはない。ジークに関してはもう少しかかりそうだな。
グルディスとセシリアの事は、このままにしておくべきだと何故か思ってしまうが、本能ではこのままでは不味いとも思っている。まるで何かに強制されているかのように。
……駄目だな。いくら考えてもこのまま行くべきだと思ってしまう。もう、なるようになるしかないか。
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