英雄の妹、最強を目指す!
38話 隠された真実(2)
私の前で神々しい力を放つお兄様の奥さん。いつもにこにこと綺麗な笑顔で、とても優しい私の義理のお姉さんが、神様? あまりにも突然な事で頭の中に入ってこない。
そんな事を考えていると、神々しい雰囲気が無くなって、いつも通りのアスナさんに戻っていた。
「あまり信じられないかもしれませんが、今のは神力という神のみが持つ力です。こればかりは言葉ではなく、身をもって体験してもらった方が良いと思ったので少し力を使わせてもらいました。体は大丈夫ですか?」
「あ、はい、なんとも無いです」
「悪いなクリシア。お前の中の事を話すにはまず俺たちの事を話すしか無いからさ。少し長くなるけど我慢して欲しい」
私は真剣なお兄様の表情を見て思わず頷いてしまった。それからお兄様が話してくれた話は、自分が思っていた以上に壮大で過酷なものだった。
お兄様は元々別の世界で生きていたらしく、そこで事故にあって死んだ魂を、アスナさん……女神アステル様がこの世界に呼んだそう。
その際に、お兄様は女神アステル様の加護を受け継いだ5人のうちの1人らしく、子供の時から女神と敵対する魔神の配下と戦ってきたらしい。死にかけたのも1度や2度では済まないほどで、何度心配したかと、エアリスお姉様は怒る。
そして、その戦いで1番大きな戦争が、歴史の授業にも出て来る魔神大戦。様々な国と魔族との世界の命運をかけた戦いでお兄様は魔神バロンと戦ったそう。
でも、いくらお兄様が強いと言っても相手は神。手も足も出ないまま追い込まれたという。今のお兄様からは想像が出来ないわ。
その時に使ったのが、神格化という人智を超えた力。一時的に神と同じ力を手に入れる事が出来るらしく、お兄様はその力を使って魔神バロンを倒したそう。でも、当然強大な力にはそれ相応の代償が必要らしく、その代償はお兄様の命だった。
お兄様は笑いながら俺は一度死んでいるんだ、なんていうけど全く笑えない。
一度死んだというお兄様がどうして目の前にいるかというと、女神アステル様が自身の力を使って生き返らせてくれたみたい。その代わり、神としての力をほとんど失った女神アステル様は、力が回復するまで地上に残っていると言う。お兄様と結婚して。
「それから、魔神バロンを封印するために俺たちはアステルの分体である神竜が眠る土地、神島に魔神バロンを封印したんだ。その封印したところが、今クリシアたちが攻略しようと登っている迷宮の塔だ。あの塔の最上階の更に上に奴の封印がある」
……だめだ。あまりにも話が壮大過ぎてついていかない。英雄とお兄様が呼ばれている理由はわかったけど、まさかあの島や迷宮の塔を使ったのもお兄様たちなんて。
「俺たちが塔を創った翌年くらいか? あまりにも他の事に気を取られていた俺たちは、クリシアが誘拐されるのに気が付かなかった」
……えっ、私誘拐されているの? あまりにも知らない事や凄い事が次々と言われてもついていけないよ。それでも、止まらない話。
「そいつらは魔神を崇める宗教団体でな。俺の妹であり、まだ幼く力の無かったお前を狙ったんだ。魔神の力を手に入れようとして」
「それってもしかして……」
「奴らの儀式は成功した。奴らは全員魔神の力を手に入れて……そして化け物になった」
「え?」
「本当なら、普通の人間にほんの一部とはいえ、神の力に耐えられるわけがないのですよ。それなのにその神の力を取り込んだ教団の人たちは、魔神の配下になったのです。勿論レイさんが全て倒しましたが」
「ただ、1つ問題だったのが、クリシアの体にその魔神の力が適合してしまった事だった」
……私の中に魔神の力が。それじゃあ、もしかして私も化け物になる可能性があるの? そう考えると体が震え始めた。ど、どうしよう。嫌だよぉ、化け物になんかなりたくない。
体が恐怖で冷えていく中、手だけがやけに暖かく感じた。瞑っていた目を開けると、私の手を握るお兄様、アステル様、エアリスお姉様。
「大丈夫だよ、クリシア。クリシアの体の中の魔神の力は俺たちが作った神具が抑えている。クリシアが化け物になる事は絶対に無い」
お兄様はそう言いながら右手の中指に付けている指輪をなぞる。昔、お兄様に頂いた指輪……お兄様たちがずっと側で守ってくれていたんだ。
「クリシアの体が魔神の力を受け入れたのは俺たちが側にいたからだろう。俺やアステルが側にいたため、神の力を他の人間に比べて受け入れやすくなっている。昔は力を抑えるのも上手くいかず、少し垂れ流していた時もあったからな。すまない」
「あ、頭を下げないでください、お兄様。結果的にこの力のおかげでエリアたちを守れたのですから」
私の言葉を聞いたお兄様はようやく頭を上げてくれた。でも、色々と疲れちゃったな。沢山話を聞いたけど、どれもすごい内容過ぎて頭がパンクしちゃいそう。
「この事は俺たちしか知らない。だから他の人には話さないようにな。ただ、クリシアのパーティーには話していいと思っている。話した後に俺たちと会って外に漏らさないようにさせてはもらうが。話すか話さないかはクリシアが決めるといい」
この事をエリアたちに話しても良いのね。それなら私は……
そんな事を考えていると、神々しい雰囲気が無くなって、いつも通りのアスナさんに戻っていた。
「あまり信じられないかもしれませんが、今のは神力という神のみが持つ力です。こればかりは言葉ではなく、身をもって体験してもらった方が良いと思ったので少し力を使わせてもらいました。体は大丈夫ですか?」
「あ、はい、なんとも無いです」
「悪いなクリシア。お前の中の事を話すにはまず俺たちの事を話すしか無いからさ。少し長くなるけど我慢して欲しい」
私は真剣なお兄様の表情を見て思わず頷いてしまった。それからお兄様が話してくれた話は、自分が思っていた以上に壮大で過酷なものだった。
お兄様は元々別の世界で生きていたらしく、そこで事故にあって死んだ魂を、アスナさん……女神アステル様がこの世界に呼んだそう。
その際に、お兄様は女神アステル様の加護を受け継いだ5人のうちの1人らしく、子供の時から女神と敵対する魔神の配下と戦ってきたらしい。死にかけたのも1度や2度では済まないほどで、何度心配したかと、エアリスお姉様は怒る。
そして、その戦いで1番大きな戦争が、歴史の授業にも出て来る魔神大戦。様々な国と魔族との世界の命運をかけた戦いでお兄様は魔神バロンと戦ったそう。
でも、いくらお兄様が強いと言っても相手は神。手も足も出ないまま追い込まれたという。今のお兄様からは想像が出来ないわ。
その時に使ったのが、神格化という人智を超えた力。一時的に神と同じ力を手に入れる事が出来るらしく、お兄様はその力を使って魔神バロンを倒したそう。でも、当然強大な力にはそれ相応の代償が必要らしく、その代償はお兄様の命だった。
お兄様は笑いながら俺は一度死んでいるんだ、なんていうけど全く笑えない。
一度死んだというお兄様がどうして目の前にいるかというと、女神アステル様が自身の力を使って生き返らせてくれたみたい。その代わり、神としての力をほとんど失った女神アステル様は、力が回復するまで地上に残っていると言う。お兄様と結婚して。
「それから、魔神バロンを封印するために俺たちはアステルの分体である神竜が眠る土地、神島に魔神バロンを封印したんだ。その封印したところが、今クリシアたちが攻略しようと登っている迷宮の塔だ。あの塔の最上階の更に上に奴の封印がある」
……だめだ。あまりにも話が壮大過ぎてついていかない。英雄とお兄様が呼ばれている理由はわかったけど、まさかあの島や迷宮の塔を使ったのもお兄様たちなんて。
「俺たちが塔を創った翌年くらいか? あまりにも他の事に気を取られていた俺たちは、クリシアが誘拐されるのに気が付かなかった」
……えっ、私誘拐されているの? あまりにも知らない事や凄い事が次々と言われてもついていけないよ。それでも、止まらない話。
「そいつらは魔神を崇める宗教団体でな。俺の妹であり、まだ幼く力の無かったお前を狙ったんだ。魔神の力を手に入れようとして」
「それってもしかして……」
「奴らの儀式は成功した。奴らは全員魔神の力を手に入れて……そして化け物になった」
「え?」
「本当なら、普通の人間にほんの一部とはいえ、神の力に耐えられるわけがないのですよ。それなのにその神の力を取り込んだ教団の人たちは、魔神の配下になったのです。勿論レイさんが全て倒しましたが」
「ただ、1つ問題だったのが、クリシアの体にその魔神の力が適合してしまった事だった」
……私の中に魔神の力が。それじゃあ、もしかして私も化け物になる可能性があるの? そう考えると体が震え始めた。ど、どうしよう。嫌だよぉ、化け物になんかなりたくない。
体が恐怖で冷えていく中、手だけがやけに暖かく感じた。瞑っていた目を開けると、私の手を握るお兄様、アステル様、エアリスお姉様。
「大丈夫だよ、クリシア。クリシアの体の中の魔神の力は俺たちが作った神具が抑えている。クリシアが化け物になる事は絶対に無い」
お兄様はそう言いながら右手の中指に付けている指輪をなぞる。昔、お兄様に頂いた指輪……お兄様たちがずっと側で守ってくれていたんだ。
「クリシアの体が魔神の力を受け入れたのは俺たちが側にいたからだろう。俺やアステルが側にいたため、神の力を他の人間に比べて受け入れやすくなっている。昔は力を抑えるのも上手くいかず、少し垂れ流していた時もあったからな。すまない」
「あ、頭を下げないでください、お兄様。結果的にこの力のおかげでエリアたちを守れたのですから」
私の言葉を聞いたお兄様はようやく頭を上げてくれた。でも、色々と疲れちゃったな。沢山話を聞いたけど、どれもすごい内容過ぎて頭がパンクしちゃいそう。
「この事は俺たちしか知らない。だから他の人には話さないようにな。ただ、クリシアのパーティーには話していいと思っている。話した後に俺たちと会って外に漏らさないようにさせてはもらうが。話すか話さないかはクリシアが決めるといい」
この事をエリアたちに話しても良いのね。それなら私は……
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