英雄の妹、最強を目指す!

やま

35話 暴走

「……凄い。体の奥底から溢れて来る力! この力が私にあったのね! うふふっ……あはははははっ!」


 凄い、凄いわ! 今まで感じた事のなかった力がドクンッ、ドクンッと体の奥底から溢れて来る! なんて魔力なの! あぁっ! こんな密度の高い魔力が体中に流れたら……疼いちゃうじゃない!


『もう、ちゃっかり力に飲み込まれちゃって。まあ、仕方ないわね。今まで受けた事のない魔力の量だもの。これから慣らしていくしかないわね。クリシア、さっきも言った通りこの力は今のあなたでは3分ぐらいが限界だから気をつけるのよ』


 何か頭の中に響くけど今はそんな事より早くこの力を使いたい! そう思った瞬間、私に向かって巨大な火の球が降ってきた。私は避ける暇はなかったけど、体の奥底から溢れる魔力が壁となって防いでくれる。


 火の球が飛んできた方を見ると、私に手を向けて苛立ちげ気に睨んで来る男が立っていた。


「ちっ、急に変わりやがって。気持ちの悪い女だな!」


 男はそんな酷い事を言いながら剣を構えて走って来た。もう、レディー相手に気持ち悪いなんて、どうかしてるわ! そんな酷い事を言う男は


「死になさい」


 私がそう言いながら手を男へと向けると、周りに渦巻いていた黒い魔力が鞭のようにしなり男へと向かう。男は手に持つ剣に炎を纏わせ私の魔力の鞭を切っていく。むっ、やるわね。


 男は魔力の鞭を全て避けると、私に向かって突きを放って来た。突きを放つと同時に剣先から炎も噴き出す。


 私は体を魔力で覆い横に避ける。その時に下から大鎌へと変わった黒賢杖の柄の部分を振り上げ、男の剣を上へ弾く。


 黒賢杖をくるりと回して大鎌で男の首を狩るように横に振る。男は上に剣を打ち上げた体勢のまま体を後ろに逸らして避けるけど、それは予想済みだわ。


 そのまま鎌を振り抜いた勢いを使い私は大鎌を上から男へ向けて振り下ろす。男に大鎌の切っ先を刺すように振り下ろすけど、男は横に飛んで避ける。でも


「ぐっ!? 体が進まない!?」


 男は突然動きを止める。まあ、私が動けなくしているのだけど。私の新しい魔法、闇魔法で。


 ふふっ、お兄様の奥さんの1人に影を使うお義姉様がいて、その方の技をを見ていて良かったわ。まさか使える日が来るなんて。


 私がやったのは闇魔法の影縫と言う技。相手の影を縛り動けなくする技。お義姉様は自身の影を使っていたけど、私はそこまで出来ないので、大鎌の先端に魔力を付与し、男の影へと刺したのだ。その結果男は動けなくなった。


 そして、動けなくなった男へと魔力の鞭を再び放つ。影縫で動きを封じられている男は当然避ける事が出来ずに


「があああああぁっ!」


 男の脇腹へと突き刺さる。あぁっん! 良いわ! 良い声で鳴くじゃない! もっと! もっと聞かせなさい!


 私は何度も何度も鞭を手元に戻しては男の傷のない箇所へと突き刺す。男が死なないように手加減をして。ふふふっ! 楽しいわね! 痛みで顔をぐしゃぐしゃにする男。さっきまではブサイクだったのに、可愛らしくなったじゃない!


「ぐうぅっ……や、やめ……てくれ。お、俺たちはゴールドモンスターを諦めるから、に、逃がしてくれ」


「……仕方ないわね」


 私が大鎌の黒賢杖を抜くと、影縫の効果が切れて男は動けるようになる。男は何度も手足が動くのを確かめると


「馬鹿が! 死ね!」


 と、右手を前にかざして魔法を放って来た。馬鹿はあなたよ。そんな事が予想出来てないと思っているのかしら? 男が魔法を放とうとした瞬間、地面から黒い棘が男の右腕へと伸び突き刺さる。


 そして、突き刺さった男の腕の中で棘は枝分かれして、右腕の中から複数の小さな棘が生えた。右腕で生えていないところはないぐらいに。


「えっ? あぁぁ……ぎゃぁああああああっ! う、腕が! 俺の腕がぁぁぉ!」


 男は棘を抜こうとするけど、そんな枝分かれしている棘が抜けるわけもなく。不味いわ。良い声を聞きすぎて吐息が荒くなる。ふふっ、物凄く興奮しているのがわかる。ああっ、物凄く慰めたいけど、まだ楽しみたい気持ちもあるわ!


「貴様!」


 泣き叫ぶ男を見ていると後ろから斧を持った男と短剣を持った男が襲って来る。だけど、私は見向きもしないまま大鎌の石突きで地面を叩く。


 すると、私を中心に半径10メートルほどの黒い円が出来る。その黒い円に男たちが踏み込んだ瞬間、目の前の男と同じように棘が地面から飛び出した。


 また、同じように刺さった箇所から枝分かれし、男たちの足を潰す。男たちの叫び声が木霊する森の中、ああ、もっと! もっと聞きたい! そう思った時、ドクンッ! と、心臓が鳴る。


 そして、今まで私を覆っていた大量の魔力が霧散してしまった。その瞬間私の魔力は空っぽになり、その場に立っている事も出来なくなった。


『時間切れよ、クリシア。もう、気を付けなさいって言ったのに限界まで使って! この力の後遺症であなたは当分魔力を使う事は出来なくなるわ。それに」


 頭の中の声が言い終わる前に周りから気配を感じる。私は朧げな中周りを見ると、周りにはデルスにリリーナ、それからロイさんが立っていた。他にはロイさんと同じ鎧を着た兵士たちが、私たちを囲んでいた。


「お前たちは怪我人を集めよ。残りの者たちはクリシア・ランウォーカーを捕らえろ」


 私はその声を最後に気を失った。


 ◇◇◇


「レイさん」


「わかっている。既にロイは向かわせているから大丈夫だ。そろそろ話す時が来ただけだ」

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