黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜

やま

245話 襲撃

「……っ! 誰か入って来た」

 いつもの様にレディウスの事を思いながら眠っていると、突然、ズキっと頭痛がして目が覚めてしまった。

 まだ、窓の外を見るとまだ暗く、深夜ぐらいの時間帯みたい。まあ、確かに侵入してくるとしたらこの時間帯の方が向こうとしてはやりやすいのかな。こっちとしてはたまったもんじゃないけど。

 私はまだズキズキする頭をさすりながらベッドから起き上がる。この結界魔法の知らせる方法には慣れないわね。悪意を持った者が入って来たらわかるようになっているのだけど、もう少し他にも知らせる方法はあると思うのだけど。

「……まあ、良いわ。ロポ、起きて。侵入者だわ」

「……グウ」

 私がヘレスティアの隣で眠っているロポを起こすと、少し嫌そうに鳴く。私だって嫌よ、こんな時間に起こされるのは。

「ロポはこのままヘレスティアの側にいてあげて。何かあれば連れて逃げる事。良いわね?」

 それでも、しっかりとヘレスティアは守ってくれるらしく、私の言葉に頷くロポ。私はベッドの側に立てかけてある剣を掴み部屋を出る。

 水色のネグリジェ姿だけど、この際は仕方ないわね。私の服の下を見た奴から切れば良い話だから。

 私は風魔法に属する察知魔法を発動しながら、屋敷の中に魔力を流す。すると、少ししてからドタバタと音がしてくる。私の魔力に反応してパトリシアとミネルバが起きてくれたようね。

 私も合流しようと進もうとした瞬間、ぞわり、と首筋に悪寒が走る。私は咄嗟に前に転がるように避けると、頭の上を鋭いものが通り過ぎた感覚を感じた。

 直ぐに距離を取って剣を抜くと、そこには黒ずくめの男が立っていた。結界が反応してから入ってくるまでが早いわね。向こうも気付かれた事に気付いたって事かしら。

 黒ずくめの男は無言のまま左手で短剣を投げて来た。私は剣で短剣を弾き距離を詰めると、男は何故か同じように距離を詰めて来た。

 そして、先ほどと同じように短剣を投げてくるけど、今度は私から大きく外して後ろへと飛んで行った。暗殺者がこんな事でミスする? と、不思議に思いながら向かっていると、突然体が動かなくなる。

 一体何故!? と、慌てそうになったけど、私の後ろから魔力を感じた。私は直ぐに魔闘眼を発動して、僅かに視線を動かす。

 辛うじて魔力を感じる方を見れたので、確認すると、さっき外れたと思っていた短剣に魔力が帯びて、私の影に刺さっていたのだ。魔力の感じからして闇魔法。そこで、ある魔法を思い出した。闇魔法の影縫を。

「死ね」

 それに気づいた時には目の前に暗殺者が迫っていたけど、私は纏を発動すると同時に、短剣に向かって風の球を放つ。

 風の球は短剣にぶつかり、短剣は影から抜けて飛んでいく。体が動くようになったのを確認してから剣を振り上げる。

 暗殺者は直様後ろに下がって私の剣を避けたけど、そこに風の刃を放つ。暗殺者を囲うように現れた風の刃が暗殺者へと降り注ぐ。

 流石に不味いと思ったのか、懐から何か石のような物を取り出して地面に叩きつけた。いくつかの風の刃が暗殺者の体を切り裂くけど、石が輝き出して暗殺者は目の前から消えてしまった。……転移系の効果がある石だったみたいね。

 捕らえて色々と聞きたかったけど……そう思っていたら、私の部屋から扉を壊して何かが飛んで来た。飛んで来たものは向かいの壁に激突して床に倒れ込む。

「グゥ」

 その後に続いて部屋から出て来たのは体を2メートルほどまで大きくしたロポだった。背には結構な大きな音がしているのに、眠っているヘレスティアを乗せていた。

 器用に毛を苦しくないようにヘレスティアのお腹にくくって落ちないようにしていた。いつの間にそんな器用な事が出来るようになったのよ。

「ぴー……ぷゅぴー……」

「……あんたは本当に」

 本当に幸せそうに寝ているわね。さすがレディウスの子供だわ。私は起きないヘレスティアの頭を撫でてから、扉から飛び出して来たものを見る。床に倒れているのは先程の暗殺者と似た格好をした男だった。寝室にも来たってわけね。

「ヘレネーさん、無事!?」

 ロポが倒した暗殺者を縛っていると、下から パトリシアとミネルバの獣人部隊の女性兵士が上がって来た。女性兵士は猫系の魔獣の獣人だから頭には耳が、お尻には尻尾が生えている。

 彼女はこの領地内ではセシルの専属の護衛の1人だ。理由はセシルが猫耳が大好きだからである。ピクピク動く耳がセシルには嬉しいらしくよく触っている。パトリシアの耳も好きらしい。

「ええ、私は大丈夫よ。そっちは?」

「私たちも無事です。ただ、夜間警備をしていた兵士2名が首を切られてもう……侵入したのは下の階からは3人でした。私とミネルバで2人、屋敷の中にいた兵士たちで1人を。ただ、私とミネルバが相手した者は殺してしまい、兵士たちは捕らえたのですが自害してしまいました」

「そう。仕方ないわね。こっちは2人襲って来て、1人は逃げられたわ。転移が出来る石を持っていたわ。この気を失っているのはロポが倒したわね」

「それなら、この暗殺者を尋問しましょう。男性の兵士を連れて来て武器や毒薬などが無いか調べさせなさい」

 猫獣人の兵士に指示を出すパトリシア。さて、誰が一体この屋敷を狙ったのかしらね。一歩間違えればヘレスティアが危なかった分、絶対に許さないわよ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品