黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
200話 爆発
「ごめんな、ブランカ。無理させて」
「ブルゥ」
気にするな、といった風に首を横に振るブランカ。こいつは本当に男前……いや、雌だから女前……女前も変だな。まあ、どっちでもいいか。
ヴィクトリアの事を聞いてから今日で4日目。ようやく王都に着いた。本当なら馬でも2週間近くはかかる距離を、夜も寝ずに、休みも食事をする時ぐらいだけしか取らずに、ブランカは無理して走ってくれた。
王都は御者や商人など必要な人以外は馬を走らせる事が出来ないため、ブランカは門を入ったところにある馬小屋に預ける。店主にはかなり金を渡したため、ブランカをゆっくりと休ませてくれるだろう。
それから俺は王宮へと向かう。迷う事なく真っ直ぐと。多分今の俺の顔は酷く醜くなっているだろう。今の俺の頭にあるのは怒りしかないからな。住民たちが避けているのがわかる。
だけど、今はそれが有り難かった。住民たちが避けてくれるから道が空いてくれる。周りが怯えた表情で俺を見てくるが、今はそれを気にしている暇は無かった。
しばらく歩くと、ようやく王宮に辿り着いた。俺は懐から貴族なら誰もが貰えるバッジを取り出し、門兵へと見せる。これがあれば自由に王宮へと入れるのだ。勿論、爵位によって形や色も変わるため、時と場合によっては入れない時もあるが。
俺のは伯爵位のバッジのため、問題無く入る。王宮の入り口で要件を聞かれたため、王子に会いに来たと伝える。
兵士は俺の言葉を信じ、そのうちの1人が王子に伝えに行った。王子と当然ながら約束しているわけではないので、疑問は持つだろうが、伯爵が会いに来たとなれば無下には出来ない。ほんの少しでも良心があれば、ヴィクトリアの事だとわかるはずだ。
……まあ、そんなものがあるとは微塵も思っていないが。
そして、俺の予想通り会う許可が下りた。兵士に案内されて、王子がいるという部屋へと向かう。
迷路のように広い王宮の中を進むと、豪華な扉の前へと案内された。この部屋の中に王子がいるという。兵士が扉を叩き来た事を伝えると、中から声が聞こえてくる。
扉を開けて中へと入ると、偉そうに踏ん反り返って椅子に座るウィリアム王子……ウィリアムが座っていた。いつも一緒にいる2人もだ。
案内し終えた兵士が出て、中は4人だけ。沈黙が続く中、初めに口を開いたのは思った通りウィリアムだった。
「ふん、誰かと思えば下賎な黒髪の伯爵ではないか。私に何か用か?」
「おい」
「ウィリアム、それは流石に」
ウィリアムの言葉に2人が止めるが、ウィリアムは気にする事も無く、ニヤニヤと俺を見てくる。俺は黙ったままウィリアムへと近づく。
「もしかして、謝りにでも来たか? それもそうだろうな。お前の妻が王子である私を叩いたのだ。それ相応の罰を受けるのだ。少しでも恩赦が欲しければ、地面に頭をつけて謝れば、考えない事もないぞ? しかし、ふざけた女だ。あれが元婚約者だったと思うと、怖気が走る。婚約破棄しておいてよかったわ」
「おい!!」
飄々とふざけた事をぬかすウィリアムの後にグラモアが怒鳴る。しかし、これはウィリアムに対して言ったものではなく、俺に対して言ったものだ。
ブルックズ騎士団長の息子であるグラモアは、俺の体に巡る魔力に気が付いたようだが、もう遅い。
グラモアが怒鳴り声を上げた頃には俺はウィリアムの前に移動していた。右手を強く握りしめ、ウィリアムの顔に向かって振り下ろす。へらへらと笑っているウィリアムは気付く事なく、俺の拳はウィリアムの左頬へと減り込む。
叫ぶ暇もなく吹き飛んでいくウィリアムは、壁へと激突した。壁は思ったよりも薄かったようで隣の部屋へと突き破った。
「あああぁぁぁぁあああ!!! ががが、がお、がおがぁぁぁぁ!!!」
「うるせえよ!」
殴られた頰が痛むのか叫ぶウィリアム。普通なら耳を塞ぎたくなるような叫び声だが、今の俺には届かない。あの子に比べたら……。
俺は再びウィリアムの側に迫り、蹲っている腹を蹴り上げる。ウィリアムは血を吐くが、ウィリアムの喉元を掴み、床へと思いっきり叩きつける。床も割れ、半分ほど沈み込んで気を失っているウィリアムを引っ張り出す。
両手両足はそれぞれ向かない方へと向き、歯はボロボロ、骨格も変わっている。内臓も傷が付いているのか、血を吐いていた。
その頃になってようやく動き始めたグラモアたち。俺が怖いのか近づいては来ないが、離れたところから何か喚いている。
俺はそれを無視したまま、ウィリアムの喉元を掴んでいる右腕に力を入れる。ギリギリとウィリアムの首の骨が悲鳴をあげ、もっと力を込めようとした時、バタンッ! と勢い良く開けられる扉と同時に、剣を振り下ろしてくる影。
仕方なくウィリアムを話す……事なく、盾にするようにして下がる。部屋に入って来たのはレイブン将軍にブルックズ騎士団長、それにミストリーネ騎士団長、他にも兵士がやって来た。俺の殺気や音に気が付いたって事か。
「……これはどういう事かな、アルノード伯爵。なぜ、君がウィリアム王子を傷つける?」
レイブン将軍が尋ねてくるが、俺は無視したまま腰の剣を抜こうと……するが、気が付いたブルックズ騎士団長、ミストリーネ騎士団長が俺の体を押さえる。その時にウィリアムを手から離してしまい、目の前にはレイブン将軍が俺に剣を向けていた。
「……離せ」
「それは出来ない。これ以上暴れれば実力行使も……」
「離せっ!!」
俺は怒りに任せて魔力を限界まで使い体を強化する。俺を掴んでいたブルックズ騎士団長とミストリーネ騎士団長を振り払い、ウィリアムの元へと向かおうとするが
「明水流、天流」
レイブン将軍が邪魔をするように前に立ち、俺の体を切っていく。魔力を元から切られ、俺の体から魔力が霧散する。一気に力が抜けてバランスを崩すが、掴んでいた剣をウィリアムに向けて投げる。
それも、レイブン将軍に弾かれ、俺は再び取り押さえられてしまった。
「事情はわからないけど、アルノード伯爵。王族を狙った罪で君を捕らえる」
その言葉と同時に頭に衝撃が走る。俺はそのまま気を失ってしまった。
「ブルゥ」
気にするな、といった風に首を横に振るブランカ。こいつは本当に男前……いや、雌だから女前……女前も変だな。まあ、どっちでもいいか。
ヴィクトリアの事を聞いてから今日で4日目。ようやく王都に着いた。本当なら馬でも2週間近くはかかる距離を、夜も寝ずに、休みも食事をする時ぐらいだけしか取らずに、ブランカは無理して走ってくれた。
王都は御者や商人など必要な人以外は馬を走らせる事が出来ないため、ブランカは門を入ったところにある馬小屋に預ける。店主にはかなり金を渡したため、ブランカをゆっくりと休ませてくれるだろう。
それから俺は王宮へと向かう。迷う事なく真っ直ぐと。多分今の俺の顔は酷く醜くなっているだろう。今の俺の頭にあるのは怒りしかないからな。住民たちが避けているのがわかる。
だけど、今はそれが有り難かった。住民たちが避けてくれるから道が空いてくれる。周りが怯えた表情で俺を見てくるが、今はそれを気にしている暇は無かった。
しばらく歩くと、ようやく王宮に辿り着いた。俺は懐から貴族なら誰もが貰えるバッジを取り出し、門兵へと見せる。これがあれば自由に王宮へと入れるのだ。勿論、爵位によって形や色も変わるため、時と場合によっては入れない時もあるが。
俺のは伯爵位のバッジのため、問題無く入る。王宮の入り口で要件を聞かれたため、王子に会いに来たと伝える。
兵士は俺の言葉を信じ、そのうちの1人が王子に伝えに行った。王子と当然ながら約束しているわけではないので、疑問は持つだろうが、伯爵が会いに来たとなれば無下には出来ない。ほんの少しでも良心があれば、ヴィクトリアの事だとわかるはずだ。
……まあ、そんなものがあるとは微塵も思っていないが。
そして、俺の予想通り会う許可が下りた。兵士に案内されて、王子がいるという部屋へと向かう。
迷路のように広い王宮の中を進むと、豪華な扉の前へと案内された。この部屋の中に王子がいるという。兵士が扉を叩き来た事を伝えると、中から声が聞こえてくる。
扉を開けて中へと入ると、偉そうに踏ん反り返って椅子に座るウィリアム王子……ウィリアムが座っていた。いつも一緒にいる2人もだ。
案内し終えた兵士が出て、中は4人だけ。沈黙が続く中、初めに口を開いたのは思った通りウィリアムだった。
「ふん、誰かと思えば下賎な黒髪の伯爵ではないか。私に何か用か?」
「おい」
「ウィリアム、それは流石に」
ウィリアムの言葉に2人が止めるが、ウィリアムは気にする事も無く、ニヤニヤと俺を見てくる。俺は黙ったままウィリアムへと近づく。
「もしかして、謝りにでも来たか? それもそうだろうな。お前の妻が王子である私を叩いたのだ。それ相応の罰を受けるのだ。少しでも恩赦が欲しければ、地面に頭をつけて謝れば、考えない事もないぞ? しかし、ふざけた女だ。あれが元婚約者だったと思うと、怖気が走る。婚約破棄しておいてよかったわ」
「おい!!」
飄々とふざけた事をぬかすウィリアムの後にグラモアが怒鳴る。しかし、これはウィリアムに対して言ったものではなく、俺に対して言ったものだ。
ブルックズ騎士団長の息子であるグラモアは、俺の体に巡る魔力に気が付いたようだが、もう遅い。
グラモアが怒鳴り声を上げた頃には俺はウィリアムの前に移動していた。右手を強く握りしめ、ウィリアムの顔に向かって振り下ろす。へらへらと笑っているウィリアムは気付く事なく、俺の拳はウィリアムの左頬へと減り込む。
叫ぶ暇もなく吹き飛んでいくウィリアムは、壁へと激突した。壁は思ったよりも薄かったようで隣の部屋へと突き破った。
「あああぁぁぁぁあああ!!! ががが、がお、がおがぁぁぁぁ!!!」
「うるせえよ!」
殴られた頰が痛むのか叫ぶウィリアム。普通なら耳を塞ぎたくなるような叫び声だが、今の俺には届かない。あの子に比べたら……。
俺は再びウィリアムの側に迫り、蹲っている腹を蹴り上げる。ウィリアムは血を吐くが、ウィリアムの喉元を掴み、床へと思いっきり叩きつける。床も割れ、半分ほど沈み込んで気を失っているウィリアムを引っ張り出す。
両手両足はそれぞれ向かない方へと向き、歯はボロボロ、骨格も変わっている。内臓も傷が付いているのか、血を吐いていた。
その頃になってようやく動き始めたグラモアたち。俺が怖いのか近づいては来ないが、離れたところから何か喚いている。
俺はそれを無視したまま、ウィリアムの喉元を掴んでいる右腕に力を入れる。ギリギリとウィリアムの首の骨が悲鳴をあげ、もっと力を込めようとした時、バタンッ! と勢い良く開けられる扉と同時に、剣を振り下ろしてくる影。
仕方なくウィリアムを話す……事なく、盾にするようにして下がる。部屋に入って来たのはレイブン将軍にブルックズ騎士団長、それにミストリーネ騎士団長、他にも兵士がやって来た。俺の殺気や音に気が付いたって事か。
「……これはどういう事かな、アルノード伯爵。なぜ、君がウィリアム王子を傷つける?」
レイブン将軍が尋ねてくるが、俺は無視したまま腰の剣を抜こうと……するが、気が付いたブルックズ騎士団長、ミストリーネ騎士団長が俺の体を押さえる。その時にウィリアムを手から離してしまい、目の前にはレイブン将軍が俺に剣を向けていた。
「……離せ」
「それは出来ない。これ以上暴れれば実力行使も……」
「離せっ!!」
俺は怒りに任せて魔力を限界まで使い体を強化する。俺を掴んでいたブルックズ騎士団長とミストリーネ騎士団長を振り払い、ウィリアムの元へと向かおうとするが
「明水流、天流」
レイブン将軍が邪魔をするように前に立ち、俺の体を切っていく。魔力を元から切られ、俺の体から魔力が霧散する。一気に力が抜けてバランスを崩すが、掴んでいた剣をウィリアムに向けて投げる。
それも、レイブン将軍に弾かれ、俺は再び取り押さえられてしまった。
「事情はわからないけど、アルノード伯爵。王族を狙った罪で君を捕らえる」
その言葉と同時に頭に衝撃が走る。俺はそのまま気を失ってしまった。
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