黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
182話 アルバスト防衛戦(11)
連合軍の駐屯地から次々と撃ち込まれる魔法。俺たちアルバスト軍は兎も角、奴らは味方のはずのゲルテリウスの獣人部隊を巻き込んで魔法を放って来た。
今はローデン隊長たちも何とかしないでいるが、ここでも数の差がきている。こちらが崩れるのも時間の問題だ。それに、いくら敵だからと言っても、目の前で裏切りを見るのは、あまり気持ちの良いものでも無い。
「ローデン隊長、ここは任せる」
「えっ、アルノード子爵はどうされるので?」
「俺は囮になってあそこに突っ込む。突然近づいてくる敵がいれば、奴らも俺に集中するしか無いだろう。相手の魔法が弱まった後に来て欲しい」
「し、しかし、それではアルノード子爵が危険に晒されます!」
心配してくるローデン隊長に俺は苦笑いをする。まあ、大丈夫だ。師匠との修行に比べたらこの程度は。
「まあ、任せた。俺は行くから。纏・天!」
右手にレイディアント、左手にシュバルツを持ち、一気に駆け出す。隊を任されている者がこのような事をするのは本来いけないのだろうが、まあ、許して欲しい。
俺は一気に駐屯地へと迫る。距離は300ほど。当然向こうも気が付いて俺に魔法を放ってくる。だけど、纏・天をして全身を限界以上に強化した俺には全て丸見えだ。
今まで見えていた魔力の少ないところは当然、魔法が飛んで来ることによって空気中の魔力も動く。それを見てある程度予想をつける。
石飛礫を弾き、火の矢を避け、風の刃を切り裂く。次々と降り注ぐ魔法だが、その中でも落ちてこない部分はある。そこを正確に判断し、走り抜ける。
「な、何だあいつは!? もっと魔法を放て!近づかせるな!」
隊長ぽい男の命令で、より激しく降り注ぐ魔法。良し良し、より俺の方に意識が向いて来た。その分激しく降り注ぐ魔法。
俺は走りながら俺だけに当たりそうな魔法を全て切る。もうすぐで駐屯地というところで、目の前が一気に明るくなる。また、範囲魔法か!
俺は魔法が発動される前に、魔力を一気に両足に集まる。そして踏み出す。土を踏み潰して足跡が付くほど力を込めて、発動前に範囲を通り抜ける。
背後では魔法が大きく爆発する。危ねえな! 俺が魔法を逃れたのを見た兵士たちは、それぞれが武器を構える。この近くで魔法を放つと自分たちにも被害が出るかもしれないとわかっているのだろう。
魔法を使わずに後ろで待機をしていた部隊が出て来た。数は100程だろうか。先頭は槍を持つ部隊が走って来て、背後から矢が放たれる。
俺は明水流矢流しを発動。体に纏わせる魔力で矢を逸らす。纏・天をしている今なら、普通の矢は当たらない。そのまま突き抜ける。
少し走ると槍部隊とぶつかる。槍部隊は槍を一斉に突き出して来るが、それを跳んで避け、更に槍を足場に跳ぶ。前転しながら俺は槍を突き出して来た先頭の槍部隊の頭上を飛び越える。その時に、俺の真下にいた敵兵の頭を切る。
頭を縦に割られ倒れ込む兵士を他所に、俺は着地し、回転して背後にいる槍部隊を切る。
「死ねぇ!」
背後から槍を突いてくる敵兵。俺はそのまましゃがみ上を通り過ぎる槍を回転しながら、左脇で抱え込むように挟み、槍を上に上げる。
敵兵が持っていた槍は手から離れて石突きが敵兵の顎を打ち上げた。そのまま空いているレイディアントで切る。
シュバルツを一旦鞘に戻し、さっきの槍を片手で持つ。そして向かってくる敵兵へと投げると、何人かは避けたが、3人ほど頭を貫いて飛んで行った。思ったよりグロいな、これ。
その死体を踏みつけるように新たに迫る敵兵たち。槍を突き出してくるの避けると、別の奴がそこに槍を振り下ろしてくる。シュバルツで振り下ろされる槍を弾き、突き出してきた奴はレイディアントで下から切り上げる。
そのまま、シュバルツとレイディアントに魔力を集めて魔力刃を作る。魔力の刃により先の伸びた2剣を使い、回転
「旋風流、風車!」
俺が1回転し終えると、周りの敵兵は動きを止めて動かなくなっていた。いや、これだと言葉がおかしいな。動かなくなったんじゃなくて、動けなくなったのだ。もう既に死んでいるから。
少しすると体が腰からずれて地面へと落ちる。辺りには臓物と血で赤く染まり、戦場独特の血の匂いが辺りを漂う。
この光景を見た敵兵たちは足を止めてしまう。ビビって動かないようだ。
「どうした、お前たち? 来ないのか? 敵は俺1人だぞ?」
俺は出しえる殺気を放ち一歩一歩近づいていく。俺が近づくにつれて敵兵たちは一歩、また一歩と後ろへ下がっていく。時折「悪魔」だの「死神」など聞こえてくるが無視だ。
「来ないならこっちから行こうか?」
俺が笑いながら言うと、1人の敵兵が叫びながら向かって来た。剣を振り下ろしてくるので、レイディアントで弾き、シュバルツで胸元を突き刺す。
剣を落として刺された胸元を見る男は、涙を流しながら掠れた声で「アイナ」と呟いて死んでいった。
死んだ敵兵の首元にはロケットペンダントがつけられており、偶然なのか必然なのかわからないが、蓋が開いていた。
そのロケットペンダントの中には1人の女性の絵が入っていた。当然赤の他人なわけがない。この男の恋人か妻だろう。
……戦争なんてこんなものだろう。殺し殺され、結局は残された者が悲しむだけだ。俺はヴィクトリアやヘレネーにそんな事はさせたく無いから、相手に大切な人がいようとも、絶対に手は抜かない。
油断して殺されるくらいなら、俺は悪魔だろうが死神だろうが言われようとも敵を殺す。絶対に2人の元に帰るため。
「お前たち、この兵士みたいに帰りを待つ者がいるのならここから逃げろ。それなら見逃してやる。しかし、向かってくるのなら容赦はしない。覚悟しろよ」
今はローデン隊長たちも何とかしないでいるが、ここでも数の差がきている。こちらが崩れるのも時間の問題だ。それに、いくら敵だからと言っても、目の前で裏切りを見るのは、あまり気持ちの良いものでも無い。
「ローデン隊長、ここは任せる」
「えっ、アルノード子爵はどうされるので?」
「俺は囮になってあそこに突っ込む。突然近づいてくる敵がいれば、奴らも俺に集中するしか無いだろう。相手の魔法が弱まった後に来て欲しい」
「し、しかし、それではアルノード子爵が危険に晒されます!」
心配してくるローデン隊長に俺は苦笑いをする。まあ、大丈夫だ。師匠との修行に比べたらこの程度は。
「まあ、任せた。俺は行くから。纏・天!」
右手にレイディアント、左手にシュバルツを持ち、一気に駆け出す。隊を任されている者がこのような事をするのは本来いけないのだろうが、まあ、許して欲しい。
俺は一気に駐屯地へと迫る。距離は300ほど。当然向こうも気が付いて俺に魔法を放ってくる。だけど、纏・天をして全身を限界以上に強化した俺には全て丸見えだ。
今まで見えていた魔力の少ないところは当然、魔法が飛んで来ることによって空気中の魔力も動く。それを見てある程度予想をつける。
石飛礫を弾き、火の矢を避け、風の刃を切り裂く。次々と降り注ぐ魔法だが、その中でも落ちてこない部分はある。そこを正確に判断し、走り抜ける。
「な、何だあいつは!? もっと魔法を放て!近づかせるな!」
隊長ぽい男の命令で、より激しく降り注ぐ魔法。良し良し、より俺の方に意識が向いて来た。その分激しく降り注ぐ魔法。
俺は走りながら俺だけに当たりそうな魔法を全て切る。もうすぐで駐屯地というところで、目の前が一気に明るくなる。また、範囲魔法か!
俺は魔法が発動される前に、魔力を一気に両足に集まる。そして踏み出す。土を踏み潰して足跡が付くほど力を込めて、発動前に範囲を通り抜ける。
背後では魔法が大きく爆発する。危ねえな! 俺が魔法を逃れたのを見た兵士たちは、それぞれが武器を構える。この近くで魔法を放つと自分たちにも被害が出るかもしれないとわかっているのだろう。
魔法を使わずに後ろで待機をしていた部隊が出て来た。数は100程だろうか。先頭は槍を持つ部隊が走って来て、背後から矢が放たれる。
俺は明水流矢流しを発動。体に纏わせる魔力で矢を逸らす。纏・天をしている今なら、普通の矢は当たらない。そのまま突き抜ける。
少し走ると槍部隊とぶつかる。槍部隊は槍を一斉に突き出して来るが、それを跳んで避け、更に槍を足場に跳ぶ。前転しながら俺は槍を突き出して来た先頭の槍部隊の頭上を飛び越える。その時に、俺の真下にいた敵兵の頭を切る。
頭を縦に割られ倒れ込む兵士を他所に、俺は着地し、回転して背後にいる槍部隊を切る。
「死ねぇ!」
背後から槍を突いてくる敵兵。俺はそのまましゃがみ上を通り過ぎる槍を回転しながら、左脇で抱え込むように挟み、槍を上に上げる。
敵兵が持っていた槍は手から離れて石突きが敵兵の顎を打ち上げた。そのまま空いているレイディアントで切る。
シュバルツを一旦鞘に戻し、さっきの槍を片手で持つ。そして向かってくる敵兵へと投げると、何人かは避けたが、3人ほど頭を貫いて飛んで行った。思ったよりグロいな、これ。
その死体を踏みつけるように新たに迫る敵兵たち。槍を突き出してくるの避けると、別の奴がそこに槍を振り下ろしてくる。シュバルツで振り下ろされる槍を弾き、突き出してきた奴はレイディアントで下から切り上げる。
そのまま、シュバルツとレイディアントに魔力を集めて魔力刃を作る。魔力の刃により先の伸びた2剣を使い、回転
「旋風流、風車!」
俺が1回転し終えると、周りの敵兵は動きを止めて動かなくなっていた。いや、これだと言葉がおかしいな。動かなくなったんじゃなくて、動けなくなったのだ。もう既に死んでいるから。
少しすると体が腰からずれて地面へと落ちる。辺りには臓物と血で赤く染まり、戦場独特の血の匂いが辺りを漂う。
この光景を見た敵兵たちは足を止めてしまう。ビビって動かないようだ。
「どうした、お前たち? 来ないのか? 敵は俺1人だぞ?」
俺は出しえる殺気を放ち一歩一歩近づいていく。俺が近づくにつれて敵兵たちは一歩、また一歩と後ろへ下がっていく。時折「悪魔」だの「死神」など聞こえてくるが無視だ。
「来ないならこっちから行こうか?」
俺が笑いながら言うと、1人の敵兵が叫びながら向かって来た。剣を振り下ろしてくるので、レイディアントで弾き、シュバルツで胸元を突き刺す。
剣を落として刺された胸元を見る男は、涙を流しながら掠れた声で「アイナ」と呟いて死んでいった。
死んだ敵兵の首元にはロケットペンダントがつけられており、偶然なのか必然なのかわからないが、蓋が開いていた。
そのロケットペンダントの中には1人の女性の絵が入っていた。当然赤の他人なわけがない。この男の恋人か妻だろう。
……戦争なんてこんなものだろう。殺し殺され、結局は残された者が悲しむだけだ。俺はヴィクトリアやヘレネーにそんな事はさせたく無いから、相手に大切な人がいようとも、絶対に手は抜かない。
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「お前たち、この兵士みたいに帰りを待つ者がいるのならここから逃げろ。それなら見逃してやる。しかし、向かってくるのなら容赦はしない。覚悟しろよ」
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