黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
159話 金色の光のリーダー
「く、くそっ! ぶっ殺してやる!」
店から放り出された男は、懐からナイフを取り出し、店から出て来た金髪の男へと切りかかる。
隣で抱き付いていた茶髪の女性は、ナイフを持って向かってくる男に悲鳴をあげるが、後ろの奴隷たちと金髪の男は呆れた表情を浮かべて立っているだけだ。
ナイフを持った男が目の前まで迫り、金髪の男をナイフで突こうとした時、ナイフを持った男が吹き飛んだ。男は吹き飛ばされ、反対側の建物へと突っ込んで行った。
あの一瞬で、ナイフを持った右腕と男の顔を殴ったのか。しかも左側には女性が抱き付いているので、右手だけで。Aランクは伊達じゃ無いってわけか。
「まったく。白けちまったぜ。飲み直すとするか。エルカ、また酒頼んでくれ。アルーシャ、ヘレティア、セイラはお酌なー」
金髪の男は後ろの奴隷たちに指示を出すと宿屋に戻ろうとする。突然の乱闘騒ぎに呆然としていたケイマルさんだが、直ぐに金髪の男へと話しかける。
「レイグ殿、お待ちを!」
「あん? おおっ、ケイマルのおっさんじゃねえか。どうしたんだよ? また依頼か? おっさんの依頼は楽なのに報酬が良いからな。いつでも受けてやるぜ」
おや。さっきまでの雰囲気とは一変して、ケイマルさんに対しては、人当たりの良い笑顔を向けている。ケイマルさんとは仲が良いようだ。
「まあ、依頼といえば依頼なのですが、とある方を魔山の中まで案内してもらいたいのですよ」
「とある方?」
レイグという男が尋ねると、ケイマルさんは俺を見てくる。当然レイグも俺を見てくる。
「この方は、レディウス・アルノード子爵です。魔山にいる魔獣の剥製が作りたくて、中を案内して欲しいそうです」
ケイマルさんの言葉に再び俺をジロジロと見てくるレイグ。そして鼻で笑われた。その事に後ろでロナがイラっとして睨んでいるけど、レイグは更に話を進める。
「悪いが断らせて貰うぜ。弱い貴族様を守って進めるほど、魔山は甘くねえからな。黒髪の野郎が分不相応の事はするもんじゃねえぜ?」
レイグがそう言った瞬間
「貴様っ!」
ロナが我慢出来ずに飛び出してしまった。両手にはいつの間にか抜いていた短剣が握られている。あの馬鹿。
ロナは、右手の短剣でレイグへと切りかかるが、レイグは体を逸らして避ける。ロナはその場で回転し、逆手に持った左手の短剣を、レイグへと突き刺そうとするが、左手首を掴まれて防がれる。
だけど、ロナの攻撃はそこでは止まらず、その場で跳躍し、レイグの顔へと回し蹴りを放つ。だが、その回し蹴りも、レイグの空いている左手で防がれた。
そして、そのままロナは地面に叩きつけられる。ロナは背中から地面に打ち付けられ、肺から空気を漏らす。苦しそうに呻いているところに
「悪いが、女好きの俺でも、刃物を向けられちゃあ手加減は出来ねえんでな!」
レイグは右手を振り上げ、拳をロナへと振り下ろそうとする。流石にそれをさせるわけにはいかない。俺は直ぐに魔闘脚を発動し、レイグへと迫る。そして、振り下ろされるレイグの拳を掴む。
「流石にそれを見過ごすわけにはいかないな」
「……ただの貴族の坊ちゃんじゃねえようだな?」
俺はその言葉に反応せずに、ロナを抱えて離れる。いつの間にか宿屋から出て来たレイグの奴隷たちは武器を構えていた。
「お前ら武器を下げろ」
「ですが……」
「良いから下げろ。ちょっと面白そうな相手なんだからよ!」
レイグは、奴隷たちを見る事なく俺へと迫って来た。ちっ、こんな街中で剣を抜くわけにもいかないし。無手は一応は習っているが、こいつみたいに本業じゃないからな。何とか避けなければ。
レイグは、俺に迫ると、軽く殴ってくる。魔闘眼で見ると、拳にうっすらと赤い魔力が纏っている。火魔法を纏わせているようだ。見た目程軽いものでは無さそうだ。
殴りかかってくるレイグの拳を、なんとか逸らすが、やはりレイグの方が上手だ。こちらは逸らす度に手に火傷を負っていく。火魔法のせいだ。
「かっはっは! どうした、腰の剣は飾りかよ!?」
レイグはそう言うと、更に速度を上げて来た。こっちは防戦一方だ。体にも少しずつ火傷が増えていく。俺がそんな防戦的なのがイライラするのか、レイグは
「ちっ、本気で来ねえなら、この辺吹っ飛ばしてでも本気を出させてやる! 豪炎脚!」
こいつ、こんな街中で視覚化できる程の魔力を放ちやがった。その赤い魔力は、レイグの右足へと集まり、レイグは上に飛び、一気に足を振り下ろしてくる。
仕方ない。こんなところで、あんな攻撃をさせるわけにはいかない。俺は腰のレイディアントに手を掛け、
「明水流……魔消」
俺はレイグの足に向かってレイディアントを振り上げる。しかし、レイグの足と俺のレイディアントがぶつかる事はなく、レイグの足はそのまま振り下ろされた。
しかし
「なに? 魔法が……ぐっ!」
困惑な表情を浮かべるレイグへと、俺は魔闘拳をした左手で殴る。レイグは直ぐに反応して両手を交差させて防ぐが、上にしていた左手は折れたな。
「……てめぇ、俺の魔力だけ、切りやがったな」
流石にわかるか。レイグが言っている通り俺は魔力だけを切った。明水流の中級に位置する技、魔消。武器や自分の体の先にとんでもなく薄い魔力を纏わせる。触れてもわからないほどの。
触れてもわからないほどなので、傷などは負わないが、魔力は切る事が出来る。体を切らずに魔力だけって、いうのはかなり難しいんだけどな。乱戦とかでは全く使えない。1対1の、それもさっきみたいな大技を出す前じゃないと。
俺は腰にある鞘にレイディアントを戻す。これ以上は戦う必要が無いと、感じたからだ。
「これで、俺が良いところの坊ちゃんでない事はわかってくれたか?」
「……けっ、取り敢えず話は聞いてやるぜ。俺たちに礼儀なんか求めんなよ」
レイグはそれだけ言うと、宿屋に向かう。1番背の低い奴隷の女の子が、レイグに近づいて魔法を発動する。回復魔法を使っているようだ。これなら、レイグの骨折も治るな。
さてと、ようやく話し合いが始められる。俺は、申し訳無さそうにするロナと、何故か興奮しているケイマルさんを連れて、宿屋へと入って行ったのだった。
店から放り出された男は、懐からナイフを取り出し、店から出て来た金髪の男へと切りかかる。
隣で抱き付いていた茶髪の女性は、ナイフを持って向かってくる男に悲鳴をあげるが、後ろの奴隷たちと金髪の男は呆れた表情を浮かべて立っているだけだ。
ナイフを持った男が目の前まで迫り、金髪の男をナイフで突こうとした時、ナイフを持った男が吹き飛んだ。男は吹き飛ばされ、反対側の建物へと突っ込んで行った。
あの一瞬で、ナイフを持った右腕と男の顔を殴ったのか。しかも左側には女性が抱き付いているので、右手だけで。Aランクは伊達じゃ無いってわけか。
「まったく。白けちまったぜ。飲み直すとするか。エルカ、また酒頼んでくれ。アルーシャ、ヘレティア、セイラはお酌なー」
金髪の男は後ろの奴隷たちに指示を出すと宿屋に戻ろうとする。突然の乱闘騒ぎに呆然としていたケイマルさんだが、直ぐに金髪の男へと話しかける。
「レイグ殿、お待ちを!」
「あん? おおっ、ケイマルのおっさんじゃねえか。どうしたんだよ? また依頼か? おっさんの依頼は楽なのに報酬が良いからな。いつでも受けてやるぜ」
おや。さっきまでの雰囲気とは一変して、ケイマルさんに対しては、人当たりの良い笑顔を向けている。ケイマルさんとは仲が良いようだ。
「まあ、依頼といえば依頼なのですが、とある方を魔山の中まで案内してもらいたいのですよ」
「とある方?」
レイグという男が尋ねると、ケイマルさんは俺を見てくる。当然レイグも俺を見てくる。
「この方は、レディウス・アルノード子爵です。魔山にいる魔獣の剥製が作りたくて、中を案内して欲しいそうです」
ケイマルさんの言葉に再び俺をジロジロと見てくるレイグ。そして鼻で笑われた。その事に後ろでロナがイラっとして睨んでいるけど、レイグは更に話を進める。
「悪いが断らせて貰うぜ。弱い貴族様を守って進めるほど、魔山は甘くねえからな。黒髪の野郎が分不相応の事はするもんじゃねえぜ?」
レイグがそう言った瞬間
「貴様っ!」
ロナが我慢出来ずに飛び出してしまった。両手にはいつの間にか抜いていた短剣が握られている。あの馬鹿。
ロナは、右手の短剣でレイグへと切りかかるが、レイグは体を逸らして避ける。ロナはその場で回転し、逆手に持った左手の短剣を、レイグへと突き刺そうとするが、左手首を掴まれて防がれる。
だけど、ロナの攻撃はそこでは止まらず、その場で跳躍し、レイグの顔へと回し蹴りを放つ。だが、その回し蹴りも、レイグの空いている左手で防がれた。
そして、そのままロナは地面に叩きつけられる。ロナは背中から地面に打ち付けられ、肺から空気を漏らす。苦しそうに呻いているところに
「悪いが、女好きの俺でも、刃物を向けられちゃあ手加減は出来ねえんでな!」
レイグは右手を振り上げ、拳をロナへと振り下ろそうとする。流石にそれをさせるわけにはいかない。俺は直ぐに魔闘脚を発動し、レイグへと迫る。そして、振り下ろされるレイグの拳を掴む。
「流石にそれを見過ごすわけにはいかないな」
「……ただの貴族の坊ちゃんじゃねえようだな?」
俺はその言葉に反応せずに、ロナを抱えて離れる。いつの間にか宿屋から出て来たレイグの奴隷たちは武器を構えていた。
「お前ら武器を下げろ」
「ですが……」
「良いから下げろ。ちょっと面白そうな相手なんだからよ!」
レイグは、奴隷たちを見る事なく俺へと迫って来た。ちっ、こんな街中で剣を抜くわけにもいかないし。無手は一応は習っているが、こいつみたいに本業じゃないからな。何とか避けなければ。
レイグは、俺に迫ると、軽く殴ってくる。魔闘眼で見ると、拳にうっすらと赤い魔力が纏っている。火魔法を纏わせているようだ。見た目程軽いものでは無さそうだ。
殴りかかってくるレイグの拳を、なんとか逸らすが、やはりレイグの方が上手だ。こちらは逸らす度に手に火傷を負っていく。火魔法のせいだ。
「かっはっは! どうした、腰の剣は飾りかよ!?」
レイグはそう言うと、更に速度を上げて来た。こっちは防戦一方だ。体にも少しずつ火傷が増えていく。俺がそんな防戦的なのがイライラするのか、レイグは
「ちっ、本気で来ねえなら、この辺吹っ飛ばしてでも本気を出させてやる! 豪炎脚!」
こいつ、こんな街中で視覚化できる程の魔力を放ちやがった。その赤い魔力は、レイグの右足へと集まり、レイグは上に飛び、一気に足を振り下ろしてくる。
仕方ない。こんなところで、あんな攻撃をさせるわけにはいかない。俺は腰のレイディアントに手を掛け、
「明水流……魔消」
俺はレイグの足に向かってレイディアントを振り上げる。しかし、レイグの足と俺のレイディアントがぶつかる事はなく、レイグの足はそのまま振り下ろされた。
しかし
「なに? 魔法が……ぐっ!」
困惑な表情を浮かべるレイグへと、俺は魔闘拳をした左手で殴る。レイグは直ぐに反応して両手を交差させて防ぐが、上にしていた左手は折れたな。
「……てめぇ、俺の魔力だけ、切りやがったな」
流石にわかるか。レイグが言っている通り俺は魔力だけを切った。明水流の中級に位置する技、魔消。武器や自分の体の先にとんでもなく薄い魔力を纏わせる。触れてもわからないほどの。
触れてもわからないほどなので、傷などは負わないが、魔力は切る事が出来る。体を切らずに魔力だけって、いうのはかなり難しいんだけどな。乱戦とかでは全く使えない。1対1の、それもさっきみたいな大技を出す前じゃないと。
俺は腰にある鞘にレイディアントを戻す。これ以上は戦う必要が無いと、感じたからだ。
「これで、俺が良いところの坊ちゃんでない事はわかってくれたか?」
「……けっ、取り敢えず話は聞いてやるぜ。俺たちに礼儀なんか求めんなよ」
レイグはそれだけ言うと、宿屋に向かう。1番背の低い奴隷の女の子が、レイグに近づいて魔法を発動する。回復魔法を使っているようだ。これなら、レイグの骨折も治るな。
さてと、ようやく話し合いが始められる。俺は、申し訳無さそうにするロナと、何故か興奮しているケイマルさんを連れて、宿屋へと入って行ったのだった。
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