黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
156話 三年ぶりのケストリア子爵領
「……ここも久しぶりだな。3年ぶりぐらいかな?」
俺は久しぶりに訪れたケストリア子爵領を見て呟く。あの時は、滞在期間は数週間しかいなかったが、それでも懐かしく思う。
短い期間ではあったが、色々とあったからな。アレスと初めて出会ったのもこの街だし。
「レディウス様、通行の許可が下りました!」
俺がブランカの背から見える景色を眺めていたら、ロナが隣に馬を並べて報告してくれる。ロナもこの1年で女性らしくなった。
アルノード子爵領の中で彼女を黒髪と蔑む者はもういない。黒髪の部分も含めて綺麗な女性になったからだ。偶に一目惚れした男に告白された、という話を噂で聞くほどだ。全て断っているそうだが。
旋風流も上級に近い中級で、アルノード子爵領の兵士の中でも上位の強さまで成長した。
残念な事に胸は成長しなかったが。たまにヴィクトリアの胸を羨ましそうに見ているのを何度か見た事がある。
「レディウス様、どうなさいましたか?」
俺が変な事を考えていると、ロナが俺の顔をじっと見て尋ねてくる。俺は何でもないと、答えて門を潜る。うん、やっぱり変わっていない。まあ、そう簡単には変わらないものか。
「グリムド、ケストリア子爵に連絡は?」
「はい、既に終えています。ケストリア子爵はいつでも構わないそうです」
俺は右側のロナとは反対側の左側の斜め後ろで付いてくるグリムドに尋ねると、そんな答えが返って来た。それならこのままケストリア子爵の屋敷に向かった方が良いな。そう思っていたら
「お待ちしておりました、アルノード子爵。お迎えにあがりました」
ケストリア子爵の兵士が迎えに来てくれた。
「それは申し訳ないな。悪いが案内を頼むよ」
「はっ、それでは我々の後について来てください」
俺たちはそう言う兵士の後に続く。その光景を見る住民たちが、何事かと俺たちを見てくる。黒髪の俺が堂々としているのが、不思議なようだ。
そんな視線に晒されながらも、屋敷に辿り着いた俺たちは、他の兵士に馬を預けて、中へと入る。中には
「よくぞ、いらしてくださいました、アルノード子爵よ」
と、恰幅の良い茶髪の男の人が頭を下げてくる。そういえば初めて出会うな。この人がケストリア子爵か。
「初めまして、ケストリア子爵。私の名前はレディウス・アルノードと申します。よろしくお願いします」
「ええ、私はベンク・ケストリアと申します。これからもよろしくお願いいたしますぞ」
そう言い合い握手をする俺とケストリア子爵。何だか偉く低く接してくるな。
「ケストリア子爵。若輩者の私にそこまでかしこまらなくても良いですよ」
「何をおっしゃいますか。アルノード子爵は、貴族の中でも今1番注目されている出世頭。あなたと縁を結びたい貴族はかなり多いと聞きます。私もその1人と言う事です」
出世頭ねぇ。確かに結婚式が終えてからは、貴族からの招待状がかなり増えたのを覚えている。やっぱりあれは陛下が参加したのが効いているのだろう。
それに俺がヴィクトリアと結婚したのも。その結果、後ろ盾にセプテンバーム公爵がいると思われているからな。
「まあ、よろしくお願いします。私たちはこれから2週間ほど子爵領に滞在します。まあ、殆どは魔獣を探して森に入っているでしょうから、あまり気にしないで下さい」
「わかりました。それで泊まる場所はお決まりですか? もしよろしければ私どもの方で用意いたしますが」
宿か。そういえばあの人たちに挨拶しておかないと。空いているかわからないが一度行って見るか。
「候補があるのでそちらを伺って無理そうでしたら、お願いしてもよろしいですか?」
「それは構いませんが、どこかお決まりで?」
「ええ。昔お世話になったところです」
◇◇◇
「レディウス様、どちらに向かうのですか? グリムド様たちも置いて」
「ん? ちょっとな」
俺はロナだけを連れて、ケストリア子爵領の街の中を歩く。ロナは俺の後ろを付いてくる。ケストリア子爵の屋敷から歩く事20分。辿り着いたのは
「……『風鳴亭』ですか?」
「ああ、昔お世話になったところだ。ここは安いし、料理は美味いし、部屋は綺麗だしと良いとこ三昧なんだよ」
俺はロナに言いながら風鳴亭に入ると、中は昼頃のせいか人はあまりいなかった。元々いないのか、それとも出て行っているのかはわからないが。
「いらっしゃいませ〜、何名かしら〜?」
俺とロナが宿に入ると、チリンと音が鳴る。扉が開くと鈴が鳴るようになっていた。その音を聞きつけて、奥からそんな声が聞こえてきた。
そして現れたのが、3年前と変わらず金髪のウェーブのかかった髪で、優しそうな雰囲気があり、ヴィクトリアに負けない程の胸を持っている女性だ。
そして、俺を見ると、少し首を傾げてから、あっ! と、声を上げて
「あなた、もしかしてレディウス君かしら?」
まさか、俺の事を覚えていてくれたとは。
「お久しぶりです、メルさん」
「ええ、お久しぶり。あなたの事は覚えているわ。なにせ、あの子に似ているのだもの」
俺は久しぶりに訪れたケストリア子爵領を見て呟く。あの時は、滞在期間は数週間しかいなかったが、それでも懐かしく思う。
短い期間ではあったが、色々とあったからな。アレスと初めて出会ったのもこの街だし。
「レディウス様、通行の許可が下りました!」
俺がブランカの背から見える景色を眺めていたら、ロナが隣に馬を並べて報告してくれる。ロナもこの1年で女性らしくなった。
アルノード子爵領の中で彼女を黒髪と蔑む者はもういない。黒髪の部分も含めて綺麗な女性になったからだ。偶に一目惚れした男に告白された、という話を噂で聞くほどだ。全て断っているそうだが。
旋風流も上級に近い中級で、アルノード子爵領の兵士の中でも上位の強さまで成長した。
残念な事に胸は成長しなかったが。たまにヴィクトリアの胸を羨ましそうに見ているのを何度か見た事がある。
「レディウス様、どうなさいましたか?」
俺が変な事を考えていると、ロナが俺の顔をじっと見て尋ねてくる。俺は何でもないと、答えて門を潜る。うん、やっぱり変わっていない。まあ、そう簡単には変わらないものか。
「グリムド、ケストリア子爵に連絡は?」
「はい、既に終えています。ケストリア子爵はいつでも構わないそうです」
俺は右側のロナとは反対側の左側の斜め後ろで付いてくるグリムドに尋ねると、そんな答えが返って来た。それならこのままケストリア子爵の屋敷に向かった方が良いな。そう思っていたら
「お待ちしておりました、アルノード子爵。お迎えにあがりました」
ケストリア子爵の兵士が迎えに来てくれた。
「それは申し訳ないな。悪いが案内を頼むよ」
「はっ、それでは我々の後について来てください」
俺たちはそう言う兵士の後に続く。その光景を見る住民たちが、何事かと俺たちを見てくる。黒髪の俺が堂々としているのが、不思議なようだ。
そんな視線に晒されながらも、屋敷に辿り着いた俺たちは、他の兵士に馬を預けて、中へと入る。中には
「よくぞ、いらしてくださいました、アルノード子爵よ」
と、恰幅の良い茶髪の男の人が頭を下げてくる。そういえば初めて出会うな。この人がケストリア子爵か。
「初めまして、ケストリア子爵。私の名前はレディウス・アルノードと申します。よろしくお願いします」
「ええ、私はベンク・ケストリアと申します。これからもよろしくお願いいたしますぞ」
そう言い合い握手をする俺とケストリア子爵。何だか偉く低く接してくるな。
「ケストリア子爵。若輩者の私にそこまでかしこまらなくても良いですよ」
「何をおっしゃいますか。アルノード子爵は、貴族の中でも今1番注目されている出世頭。あなたと縁を結びたい貴族はかなり多いと聞きます。私もその1人と言う事です」
出世頭ねぇ。確かに結婚式が終えてからは、貴族からの招待状がかなり増えたのを覚えている。やっぱりあれは陛下が参加したのが効いているのだろう。
それに俺がヴィクトリアと結婚したのも。その結果、後ろ盾にセプテンバーム公爵がいると思われているからな。
「まあ、よろしくお願いします。私たちはこれから2週間ほど子爵領に滞在します。まあ、殆どは魔獣を探して森に入っているでしょうから、あまり気にしないで下さい」
「わかりました。それで泊まる場所はお決まりですか? もしよろしければ私どもの方で用意いたしますが」
宿か。そういえばあの人たちに挨拶しておかないと。空いているかわからないが一度行って見るか。
「候補があるのでそちらを伺って無理そうでしたら、お願いしてもよろしいですか?」
「それは構いませんが、どこかお決まりで?」
「ええ。昔お世話になったところです」
◇◇◇
「レディウス様、どちらに向かうのですか? グリムド様たちも置いて」
「ん? ちょっとな」
俺はロナだけを連れて、ケストリア子爵領の街の中を歩く。ロナは俺の後ろを付いてくる。ケストリア子爵の屋敷から歩く事20分。辿り着いたのは
「……『風鳴亭』ですか?」
「ああ、昔お世話になったところだ。ここは安いし、料理は美味いし、部屋は綺麗だしと良いとこ三昧なんだよ」
俺はロナに言いながら風鳴亭に入ると、中は昼頃のせいか人はあまりいなかった。元々いないのか、それとも出て行っているのかはわからないが。
「いらっしゃいませ〜、何名かしら〜?」
俺とロナが宿に入ると、チリンと音が鳴る。扉が開くと鈴が鳴るようになっていた。その音を聞きつけて、奥からそんな声が聞こえてきた。
そして現れたのが、3年前と変わらず金髪のウェーブのかかった髪で、優しそうな雰囲気があり、ヴィクトリアに負けない程の胸を持っている女性だ。
そして、俺を見ると、少し首を傾げてから、あっ! と、声を上げて
「あなた、もしかしてレディウス君かしら?」
まさか、俺の事を覚えていてくれたとは。
「お久しぶりです、メルさん」
「ええ、お久しぶり。あなたの事は覚えているわ。なにせ、あの子に似ているのだもの」
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