黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
155話 贈り物
「……計画はどうなった?」
「はっ、滞り無く進んでおります。ゲルテリウスもいつでも大丈夫との事です」
「そうか。ゼファー将軍よ。此度の戦争はお主に任せる。何としても我が領地を取り戻すのだ!」
「はっ! 命に代えましても!」
◇◇◇
「……何だこの書類の量は」
俺は終わりの見えない書類の山に、辟易としていた。なぜこんなに俺の印鑑が必要な書類があるのだ? 全部、クリスチャンが押せば良いのに。
「ダメですよ、レディウス様。ここにある書類は、私が精査して、その中で領主の了が必要な書類が残っておるのですから」
まるで俺の心を読んだかのように、俺の前に立つクリスチャンがそんな事を言って来る。まあ書類を見ると、税の事や工事の事が書かれている。
「ふふ、仕方ありませんよ、レディウス。領主の仕事は見た目以上に地味なものです。お父様も殆どは執務室にこもりっぱなしですし」
そこに、飲み物を持って来たヴィクトリアが部屋へと入って来る。普通は侍女たちの誰かがするのだが、執務中はヴィクトリアが持って来るようになったのだ。やりたいからやっているのだと。
「ありがとう、ヴィクトリア……うん、美味い」
俺の率直な感想に微笑むヴィクトリア。ヴィクトリアとヘレネーと結婚して1年。毎日がこんな感じだ。
この1年間は、この領地を治めるのに力を注いだ。まずは領主不在の間に悪化していた治安を落ち着かせるために、盗賊を討伐し、魔獣を減らして来た。
盗賊は、国が犯罪奴隷として買い取ってくれて、魔獣の素材は、他の領地が買い取ってくれるので、そのお金で兵士たちの給料や、領地に使うお金を捻出した。
その結果、周りの貴族からは、傭兵まがいの貴族なんて言われたりしているが。偶に、他の領地からの依頼で、盗賊や魔獣の討伐をしに行っているせいだな。
でも、その結果、アルノード子爵領は、昔に比べて格段に景気が良くなった。子爵領の人口も増えて、活気溢れる街になって来た。人口が増えるにつれて、店も増えて来たおかげだ。
まあ、その殆どを考えたのが、クリスチャンだが。
「ほら、そこ! 動きが遅い!」
「はい!」
おっ、今日もせいが出るな。窓から見える庭では、ヘレネーとロナが稽古をしていた。ロナは両手に短剣を持ち、ヘレネーへと迫る。
ヘレネーは、軽やかに動くロナの動きを完璧に目で追い、ロナの攻撃を受け止めていた。その向こうでは、ミネルバがそわそわとその光景を見ている姿がある。物凄く混ざりたそうだな。
「そういえば、陛下の誕生式の事なのですが」
俺が窓から見えるヘレネーたちを見ていたら、突然クリスチャンがそんな事を言い始める。クリスチャンの言っている事は、再来月の国王陛下の誕生会の事だろう。
当然ながら貴族は全員参加だ。国を挙げてのお祝いになるからな。
「何かあったか?」
「ええ、陛下への贈り物はどうなさるおつもりで?」
……ああ、その事か。色々考えたのだけど、良いものが中々思いつかなくてなぁ。大抵なものは陛下は手に入れる事が出来るし。
「色々と考えたんだけど、良いものが思いつかないんだよ。何かないかな?」
「そうですね……そういえば、最近貴族の間で、魔獣の剥製が人気だそうですよ」
「魔獣の剥製?」
「ええ。ほら、貴族の家には鹿の首の剥製があったりするじゃないですか。それの魔獣版です。どれだけ強い魔獣の剥製が家に置いてあるかで、自慢になるそうですよ」
魔獣の剥製ねぇ〜。でも、それなら俺でもいけそうだな。他の貴族でも同じ事を考える人はいるかもしれないが、冒険者や兵士を動かす手間を考えたら、他の物の方が良いだろうし。
「良し、それにしようか。剥製ってどれぐらいかかるんだ?」
「魔法を使えば3日ほどだそうですよ」
「3日か……この辺で強い魔獣が出るとすれば」
「ケストリア子爵領より向こうにある大平原か魔山ですね」
やっぱりそうだよな。ケストリア子爵領まで、ここから3週間ほど。魔獣を探して倒すのに1週間と考えて、そこから王都まで1ヶ月。そして剥製に3日ほど。丁度良いぐらいか。
「クリスチャン、直ぐにグリムドを呼んでくれ。メンバーを決める」
「わかりました」
俺の言葉にクリスチャンは直ぐに部屋を出て行く。俺はヴィクトリアに向き
「ヴィクトリアには申し訳ないが俺の代理をしてほしい。それから、誕生会の準備も頼むよ」
「はぁ〜、仕方ありませんね。レディウスのいない間は任せてください」
そう言って微笑んでくれるヴィクトリアを、俺は抱きしめる。ヴィクトリアも抱きしめ返してくれる。
それから、グリムドが部屋にやって来て、つれて行くメンバーを決める。行くのは俺とグリムド、ロナにグレイブたち部下を20人ほど。
あまり連れて行っても、それが原因で他領の領主と問題を起こす事になるのは面倒だからな。
俺がいない間の領主代理がヴィクトリア、軍団長がヘレネー、ミネルバたちに任せる事になる。待っている間に、誕生会へ行く準備をしてもらおう。
「それじゃあ、今日は準備して明日行く事にする。グリムド、準備を頼む」
「了解しました」
さてさて、何を狙おかな。
「はっ、滞り無く進んでおります。ゲルテリウスもいつでも大丈夫との事です」
「そうか。ゼファー将軍よ。此度の戦争はお主に任せる。何としても我が領地を取り戻すのだ!」
「はっ! 命に代えましても!」
◇◇◇
「……何だこの書類の量は」
俺は終わりの見えない書類の山に、辟易としていた。なぜこんなに俺の印鑑が必要な書類があるのだ? 全部、クリスチャンが押せば良いのに。
「ダメですよ、レディウス様。ここにある書類は、私が精査して、その中で領主の了が必要な書類が残っておるのですから」
まるで俺の心を読んだかのように、俺の前に立つクリスチャンがそんな事を言って来る。まあ書類を見ると、税の事や工事の事が書かれている。
「ふふ、仕方ありませんよ、レディウス。領主の仕事は見た目以上に地味なものです。お父様も殆どは執務室にこもりっぱなしですし」
そこに、飲み物を持って来たヴィクトリアが部屋へと入って来る。普通は侍女たちの誰かがするのだが、執務中はヴィクトリアが持って来るようになったのだ。やりたいからやっているのだと。
「ありがとう、ヴィクトリア……うん、美味い」
俺の率直な感想に微笑むヴィクトリア。ヴィクトリアとヘレネーと結婚して1年。毎日がこんな感じだ。
この1年間は、この領地を治めるのに力を注いだ。まずは領主不在の間に悪化していた治安を落ち着かせるために、盗賊を討伐し、魔獣を減らして来た。
盗賊は、国が犯罪奴隷として買い取ってくれて、魔獣の素材は、他の領地が買い取ってくれるので、そのお金で兵士たちの給料や、領地に使うお金を捻出した。
その結果、周りの貴族からは、傭兵まがいの貴族なんて言われたりしているが。偶に、他の領地からの依頼で、盗賊や魔獣の討伐をしに行っているせいだな。
でも、その結果、アルノード子爵領は、昔に比べて格段に景気が良くなった。子爵領の人口も増えて、活気溢れる街になって来た。人口が増えるにつれて、店も増えて来たおかげだ。
まあ、その殆どを考えたのが、クリスチャンだが。
「ほら、そこ! 動きが遅い!」
「はい!」
おっ、今日もせいが出るな。窓から見える庭では、ヘレネーとロナが稽古をしていた。ロナは両手に短剣を持ち、ヘレネーへと迫る。
ヘレネーは、軽やかに動くロナの動きを完璧に目で追い、ロナの攻撃を受け止めていた。その向こうでは、ミネルバがそわそわとその光景を見ている姿がある。物凄く混ざりたそうだな。
「そういえば、陛下の誕生式の事なのですが」
俺が窓から見えるヘレネーたちを見ていたら、突然クリスチャンがそんな事を言い始める。クリスチャンの言っている事は、再来月の国王陛下の誕生会の事だろう。
当然ながら貴族は全員参加だ。国を挙げてのお祝いになるからな。
「何かあったか?」
「ええ、陛下への贈り物はどうなさるおつもりで?」
……ああ、その事か。色々考えたのだけど、良いものが中々思いつかなくてなぁ。大抵なものは陛下は手に入れる事が出来るし。
「色々と考えたんだけど、良いものが思いつかないんだよ。何かないかな?」
「そうですね……そういえば、最近貴族の間で、魔獣の剥製が人気だそうですよ」
「魔獣の剥製?」
「ええ。ほら、貴族の家には鹿の首の剥製があったりするじゃないですか。それの魔獣版です。どれだけ強い魔獣の剥製が家に置いてあるかで、自慢になるそうですよ」
魔獣の剥製ねぇ〜。でも、それなら俺でもいけそうだな。他の貴族でも同じ事を考える人はいるかもしれないが、冒険者や兵士を動かす手間を考えたら、他の物の方が良いだろうし。
「良し、それにしようか。剥製ってどれぐらいかかるんだ?」
「魔法を使えば3日ほどだそうですよ」
「3日か……この辺で強い魔獣が出るとすれば」
「ケストリア子爵領より向こうにある大平原か魔山ですね」
やっぱりそうだよな。ケストリア子爵領まで、ここから3週間ほど。魔獣を探して倒すのに1週間と考えて、そこから王都まで1ヶ月。そして剥製に3日ほど。丁度良いぐらいか。
「クリスチャン、直ぐにグリムドを呼んでくれ。メンバーを決める」
「わかりました」
俺の言葉にクリスチャンは直ぐに部屋を出て行く。俺はヴィクトリアに向き
「ヴィクトリアには申し訳ないが俺の代理をしてほしい。それから、誕生会の準備も頼むよ」
「はぁ〜、仕方ありませんね。レディウスのいない間は任せてください」
そう言って微笑んでくれるヴィクトリアを、俺は抱きしめる。ヴィクトリアも抱きしめ返してくれる。
それから、グリムドが部屋にやって来て、つれて行くメンバーを決める。行くのは俺とグリムド、ロナにグレイブたち部下を20人ほど。
あまり連れて行っても、それが原因で他領の領主と問題を起こす事になるのは面倒だからな。
俺がいない間の領主代理がヴィクトリア、軍団長がヘレネー、ミネルバたちに任せる事になる。待っている間に、誕生会へ行く準備をしてもらおう。
「それじゃあ、今日は準備して明日行く事にする。グリムド、準備を頼む」
「了解しました」
さてさて、何を狙おかな。
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