黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
129話 目を覚ますと
「……うぅん? ……ここ……は?」
眩しい光が目に入り目が覚めてしまった。体の鈍い痛みを全身に感じながらも目を開けると、そこは見覚えの無い天井だった。ここはいったいどこなのだろうか。
そう思いあたりを見ようとしたら、にょき、と丸い小さな顔が俺を覗いているのに気が付いた。
「くろぉ、起きた?」
俺を覗いていたのはベアトリーチェ様だった。俺が無言で頷くと、ベアトリーチェ様はベッドから降りて、たたたた、と部屋を走って出て行ってしまった。誰かを呼びに行ったのだろうか。
そして、その後すぐに扉が開かれる。そして入って来たのはレグナント王太子とフローゼ様、その後ろから涙目のヴィクトリアだった。
「目が覚めたかい、アルノード男爵?」
「はい、おかげさまで」
さすがにこのままの姿勢では不味いので、体を起こそうとするのだが、両手に痛みが走って上手い事起き上がれない。
「あっ、駄目よレディウス! まだ、完璧には治って無いんだから!」
そこにヴィクトリアが少し怒りながらやって来た。俺が起きれる様に体を支えてくれた。助かる。
「ふふ、必死ねヴィクトリア」
俺を助けてくれるヴィクトリアの後ろでフローゼ様がニヤニヤと笑う。ヴィクトリアは顔を赤くするが、フローゼ様の言葉を無視して、俺の体が完全に起き上がるまで手伝ってくれた。
「ありがとう、ヴィクトリア」
「ううん、良いのよ。それより体の調子はどう? どこかおかしなところは無い?」
おかしなところか。体全身痛いが特に両腕が痛い。両腕を見て見ると包帯でぐるぐるに巻かれていた。
「あなたが運ばれて来た時は結構酷い状況だったのよ。体中火傷が酷くて、両腕は千切れかけていたんだから。特に左腕が。それを見たヴィクトリアはもうレディウス君しか見えてなくて、無理矢理魔法で気を失わせるしか無いほどだったんだから」
そこまで酷かったのか。ヴィクトリアも俺が酷かった時の姿を思い出したのか涙を流す。
「心配かけて悪かったよ、ヴィクトリア。俺は大丈夫だから」
「……グスッ……はい」
俺はヴィクトリアの綺麗な髪を撫でながら
「俺はどのくらい寝ていましたか?」
どのくらい寝ていたかを尋ねる。フローゼ様は顎に人差し指を当てて考えるそぶりを見せる。その間にベアトリーチェ様はベッド上によじよじと登って俺の足を枕にして眠ってしまった……良いのかこれ?
「ざっと3日ほどかしらね。ねえ、あなた」
「そうだね。本当であれば明日にアルバスト王国の皆が帰る予定だったんだ。でも、王宮で事件が起きたし、それを防いでくれた君も眠っているから帰還は1週間伸びたんだ」
それはなんと言うか申し訳ない気になるな。俺が倒れたせいで帰るのが伸びたってことだろ。俺が気にしている事に気付いたのか、ヴィクトリアがふんわりと微笑んでくる。
「レディウスが気にする事はありませんよ。レディウスが行かなければアルフレッド君は死んでいたのですから。でも、レディウスが大怪我した姿を見た時は物凄く辛かったです……」
「うっ、わ、悪かったよ、ヴィクトリア。これから気をつけるから、な?」
ヴィクトリアの悲しそうな顔を見るのは物凄く辛い……良し、話を逸らそう。
「そ、それでアルフレッドはどうなったのですか? 侵入者たちも」
「アルフレッドは無事だよ。所々に火傷を負ったけど、もう魔法で治療済みだ。侵入者たちは全員爆発に巻き込まれて死んでしまった。兵士は1人が重症、5人ほどが火傷を負ったけど死者はいない。君が叫んでくれたおかげで間に合ったって言っていたね」
あの時は無我夢中だったからな。それで助かったのなら良かった。でも、侵入者たちが全員死んだのは辛いところだな。これでは犯人がわからない。そう思っていたが
「犯人ならおおよその見当は付いたよ。というよりか、侵入者たちはアルフレッドを狙っていたからね。口封じに来たのだろう」
アルフレッドが口封じされる理由と言えば……
「魔剣ですか?」
「そうね。私もそう思うわ。そして、アルフレッドは助かって、誰からあれを貰ったのかもわかったわ」
「誰だったのですか?」
俺が尋ねると、フローゼ様はレグナント王太子を見る。レグナント王太子は頷いてくれたので
「あの魔剣をアルフレッドに渡したのは……マンネリーよ」
◇◇◇
「マンネリー代表よ。今すぐ出頭を願いたい」
くそくそくそ! 何が侮るな、だ! しっかりとお膳立てをしたというのに、失敗しているでは無いか! 王宮からも兵士がやって来て、このままでは私の人生も終わりだっ!
「け、ケインズ! な、何か手は無いのか!?」
「うーん、後はこの国を諦めるぐらいですかね」
そんな事をすれば結局今までの努力が水の泡では無いか! だが、捕まって殺されるよりかは……
「くそぉっ! 逃げるにしても面の兵士はどうする気だ?」
「それなら、ご安心を。ミネルバに行かせますので」
くっ、仕方あるまい。せっかく手に入れた女だが、私の命には変えられん。あの女が時間を稼いでいる間に私は出来る限り逃げなければ。
「ミネルバ1人で私が逃げる時間を稼げるのか?」
「大丈夫でしょう。ミネルバには魔槍を持たせていますので。それに……」
それなら行けるか。ミネルバには悪いが犠牲になってもらうぞ。そう思い逃げる準備をしようと思ったら
グサッ
「なっ!? き、きさ……ま……」
背中が急に熱くなる。そこからじわりと熱が広がりそれが次第に痛みへと変わっていく。振り向くとそこにはケインズが私の背に短剣を突き立てていた。
「あなたがここで死ねば追っては来ないでしょう。私の逃げる時間を稼いでもらいます」
「がっ、う……うらぎ……るの……か?」
私は激痛で立っている事が出来ずに机に倒れ込む。後ろからは笑い声が
「ええ、あなたはもう用済みだ。私にも帰還命令が出ていますしね。ではさようなら」
私が最後に見たのは、私に振り下ろされる短剣だった。
眩しい光が目に入り目が覚めてしまった。体の鈍い痛みを全身に感じながらも目を開けると、そこは見覚えの無い天井だった。ここはいったいどこなのだろうか。
そう思いあたりを見ようとしたら、にょき、と丸い小さな顔が俺を覗いているのに気が付いた。
「くろぉ、起きた?」
俺を覗いていたのはベアトリーチェ様だった。俺が無言で頷くと、ベアトリーチェ様はベッドから降りて、たたたた、と部屋を走って出て行ってしまった。誰かを呼びに行ったのだろうか。
そして、その後すぐに扉が開かれる。そして入って来たのはレグナント王太子とフローゼ様、その後ろから涙目のヴィクトリアだった。
「目が覚めたかい、アルノード男爵?」
「はい、おかげさまで」
さすがにこのままの姿勢では不味いので、体を起こそうとするのだが、両手に痛みが走って上手い事起き上がれない。
「あっ、駄目よレディウス! まだ、完璧には治って無いんだから!」
そこにヴィクトリアが少し怒りながらやって来た。俺が起きれる様に体を支えてくれた。助かる。
「ふふ、必死ねヴィクトリア」
俺を助けてくれるヴィクトリアの後ろでフローゼ様がニヤニヤと笑う。ヴィクトリアは顔を赤くするが、フローゼ様の言葉を無視して、俺の体が完全に起き上がるまで手伝ってくれた。
「ありがとう、ヴィクトリア」
「ううん、良いのよ。それより体の調子はどう? どこかおかしなところは無い?」
おかしなところか。体全身痛いが特に両腕が痛い。両腕を見て見ると包帯でぐるぐるに巻かれていた。
「あなたが運ばれて来た時は結構酷い状況だったのよ。体中火傷が酷くて、両腕は千切れかけていたんだから。特に左腕が。それを見たヴィクトリアはもうレディウス君しか見えてなくて、無理矢理魔法で気を失わせるしか無いほどだったんだから」
そこまで酷かったのか。ヴィクトリアも俺が酷かった時の姿を思い出したのか涙を流す。
「心配かけて悪かったよ、ヴィクトリア。俺は大丈夫だから」
「……グスッ……はい」
俺はヴィクトリアの綺麗な髪を撫でながら
「俺はどのくらい寝ていましたか?」
どのくらい寝ていたかを尋ねる。フローゼ様は顎に人差し指を当てて考えるそぶりを見せる。その間にベアトリーチェ様はベッド上によじよじと登って俺の足を枕にして眠ってしまった……良いのかこれ?
「ざっと3日ほどかしらね。ねえ、あなた」
「そうだね。本当であれば明日にアルバスト王国の皆が帰る予定だったんだ。でも、王宮で事件が起きたし、それを防いでくれた君も眠っているから帰還は1週間伸びたんだ」
それはなんと言うか申し訳ない気になるな。俺が倒れたせいで帰るのが伸びたってことだろ。俺が気にしている事に気付いたのか、ヴィクトリアがふんわりと微笑んでくる。
「レディウスが気にする事はありませんよ。レディウスが行かなければアルフレッド君は死んでいたのですから。でも、レディウスが大怪我した姿を見た時は物凄く辛かったです……」
「うっ、わ、悪かったよ、ヴィクトリア。これから気をつけるから、な?」
ヴィクトリアの悲しそうな顔を見るのは物凄く辛い……良し、話を逸らそう。
「そ、それでアルフレッドはどうなったのですか? 侵入者たちも」
「アルフレッドは無事だよ。所々に火傷を負ったけど、もう魔法で治療済みだ。侵入者たちは全員爆発に巻き込まれて死んでしまった。兵士は1人が重症、5人ほどが火傷を負ったけど死者はいない。君が叫んでくれたおかげで間に合ったって言っていたね」
あの時は無我夢中だったからな。それで助かったのなら良かった。でも、侵入者たちが全員死んだのは辛いところだな。これでは犯人がわからない。そう思っていたが
「犯人ならおおよその見当は付いたよ。というよりか、侵入者たちはアルフレッドを狙っていたからね。口封じに来たのだろう」
アルフレッドが口封じされる理由と言えば……
「魔剣ですか?」
「そうね。私もそう思うわ。そして、アルフレッドは助かって、誰からあれを貰ったのかもわかったわ」
「誰だったのですか?」
俺が尋ねると、フローゼ様はレグナント王太子を見る。レグナント王太子は頷いてくれたので
「あの魔剣をアルフレッドに渡したのは……マンネリーよ」
◇◇◇
「マンネリー代表よ。今すぐ出頭を願いたい」
くそくそくそ! 何が侮るな、だ! しっかりとお膳立てをしたというのに、失敗しているでは無いか! 王宮からも兵士がやって来て、このままでは私の人生も終わりだっ!
「け、ケインズ! な、何か手は無いのか!?」
「うーん、後はこの国を諦めるぐらいですかね」
そんな事をすれば結局今までの努力が水の泡では無いか! だが、捕まって殺されるよりかは……
「くそぉっ! 逃げるにしても面の兵士はどうする気だ?」
「それなら、ご安心を。ミネルバに行かせますので」
くっ、仕方あるまい。せっかく手に入れた女だが、私の命には変えられん。あの女が時間を稼いでいる間に私は出来る限り逃げなければ。
「ミネルバ1人で私が逃げる時間を稼げるのか?」
「大丈夫でしょう。ミネルバには魔槍を持たせていますので。それに……」
それなら行けるか。ミネルバには悪いが犠牲になってもらうぞ。そう思い逃げる準備をしようと思ったら
グサッ
「なっ!? き、きさ……ま……」
背中が急に熱くなる。そこからじわりと熱が広がりそれが次第に痛みへと変わっていく。振り向くとそこにはケインズが私の背に短剣を突き立てていた。
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「ええ、あなたはもう用済みだ。私にも帰還命令が出ていますしね。ではさようなら」
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