黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
112話 集落発見
「それでは、頼むぞアルフレッド」
「ええ、お任せ下さいギルドマスター。調査なんて直ぐに終わらせてきますよ」
そう言って、金髪の老人に笑いかける男、アルフレッド。親善戦で戦う相手だが、どうしてギルドの職員用の扉から? それに話している相手がギルドマスターって。
「それじゃあ行こうぜアルフレッド。親善戦までには戻って……て、お前らなんでここにいるんだ?」
3人の男たちの中で一番背の大きくて巨体な男、ロンドルが俺とガウェインに気が付いて声をかけてきた。アルフレッドたちも気が付いて俺たちの方を見る。向こうは5人全員揃っている。
「やあ! 君はアルノード男爵だったかな? 王都は楽しんでいるかな?」
「ええ、楽しませてもらっています」
離宮はアルバスト王国の参加者しか使っていないため、アルフレッドたちとは親善戦までは会えないと思っていたが、まさかこんなところで出会うとは。
「はは、そんなかしこまる事は無いよ。普通にタメ口で話してくれていい」
そう言いながらアルフレッドは、女性なら見惚れるほどの笑顔を見せてくる。当然周りにいた受付嬢や女冒険者も頰を赤く染めている……仲間のビーンズも頰を赤く染めていた。お前、男だよな?
「それで、アルフレッドたちはここで何してたんだ?」
「君はガウェインだったね? 私たちはギルドマスターから依頼を受けていたのさ?」
へえ〜、指名依頼か。ギルドマスターから直々になるとよほど信頼されているんだろう。
「何受けたんだ?」
「ちょっと、あなた馬鹿ですの? 関係のないあなたにそんな事話すわけないじゃないですの!」
ガウェインが興味本位で尋ねると、それに噛み付く女性、確かシャルン・マクシリア。侯爵家の令嬢だったっけ?
「あぁん? 誰が馬鹿だって言うんだよ! このドリル金髪女!」
「はぁ!? この私の完璧な髪型を侮辱するなんて! 許せませんわ!」
……おいおい、何で喧嘩になるんだよ。
「落ち着けよガウェイン。それにあなたも」
「何よ、下賎な黒髪が! 私に指図しないでくださる!?」
「てめえ!」
俺が下賎と言われた事に怒るガウェイン。気持ちは嬉しいがその拳は収めよう。俺は殴りかかろうとする腕を掴む。
「レディウス、なんで止めるんだよ!」
「俺のために怒ってくれるのは嬉しいが、一回落ち着けよ。周りにも迷惑だから、な?」
俺がなだめると、ガウェインも落ち着いてきたのか振り上げていた拳を下ろす。
「シャルン、君もだよ」
向こうはアルフレッドが止めてくれた。ふぅ、一触即発になりかけたのを何とか押さえることが出来たな。
「シャルン、別に隠すような事じゃないから話すよ。私たちはこれからオークの集落の調査に向かうんだ」
「オークの集落?」
「ああ、ここから馬車で3時間ほど走らせたところに山があってね。その麓に住む村の人たちが教えてくれたんだよ。その山でオークが集落を作っているのを」
なるほど。それで調査か。大方集落の大きさの規模や数などを調べに行くのだろう。
「調査だけならCランクの私たちでも出来るからね。ギルドマスターから頼まれたのさ」
「ふん、オークごとき私たちだけでも倒せますわ!」
「まあまあ、落ち着いてくださいシャルンさん」
「そうだぜ。調子に乗って何かあってからじゃあ遅いんだ。慎重になり過ぎるぐらいが良いんだよ」
やれやれと肩をすくめるロンドル、リーダー的な役割はアルフレッドで、彼は縁の下の力持ちってところかな。苦労してそうだ。
「そうだ、もしよければ君達も来るかい?」
「はっ?」
「何を言っているのです、アルフレッド! 彼らは今度の親善戦の敵ですよ! それ以前に実力もわからないのに!」
「なに、親善戦に出る程だ。彼らがここにいるという事は、あのリストニック兄弟を倒した事になる。それほど実力があるなら大丈夫だろう。どうする、アルノード男爵?」
「はは、俺の事もレディウスで構わないよ。家名で呼ばれるのは慣れてないんだ。それから俺たちで良ければ行きたいが。な、ガウェイン」
「…………ああ」
うわぁ、顔は物凄く嫌そうな顔をしている。
「良し、それなら行こう!」
その後、アルフレッドがギルドマスターに説明をしてくれて、ランクの低い俺でも特例で許可をもらえた。やはり親善戦に参加する事を話したら直ぐに話が済んだ。
それからシャルンの馬車に乗って俺たちは山を目指したのだ。
◇◇◇
「ふぅ、やはり村人から聞いた通りオークの集落があるようだな。こんなにオークが現れるなんて」
俺たちが山に入って1時間ほどか。ここまでて20体ぐらいのオークを倒した。確かにこれだけの数なら集落があると考えるべきだろう。
「どうする、アルフレッド。一旦戻るか?」
ロンドルは戻るかどうするか、相談してきた。だけど、アルフレッドは首を横に振る。
「いや、数がある程度確認出来るまで調査を続けよう。もし私たちで倒せるようなら討伐したいし、数が多いようなら、一旦戻って対策を立てないといけないからね」
どうやら、もう少し進むようだな。まあ、オークの集落なら俺も何度か潰した事はある。万が一数が多くも逃げる時間は作る事が出来るだろう。
「お疲れさん、レディウス。新しい剣の調子はどうだ?」
「おう、お疲れガウェイン。かなり良いぞ。本当に使いやすい」
俺は右手に持つ黒剣を軽く振る。手にしっくりきて良い感じだ。オークも抵抗なく切る事が出来たしな。そんな話をしながらも、俺たちは山の中を進む。
ある程度進むと、動物の骨や残骸が落ちているのが目に付くようになってきた。少しずつオークの集落に近づいてきたようだ。周りに注意して進んでいたら
「ストップ!」
と、先頭を歩いていたロンドルが片手を上げて立ち止まるように言う。俺たちはその指示に従って立ち停まる。
「どうしたんだい、ロンドル?」
「……あれを見ろ」
俺たちはロンドルの指差す方を見るとそこには1つの洞窟があった。そして、その前には2体のオークが立っていた。まるで見張りをするかのように。腰には錆びているが剣を差している。
「ここが、どうやらオークの集落のようだね。入り口からしてかなりの大きさだけど」  
オークの集落と思しき場所の入り口は高さが6メートルほど、幅が15メートルほどだ。多分奥に行くにつれて広がっているのだろう。これはかなり大きな集落では無いのだろうか。何故これほどのものが今まで気がつかなかったのだ?
「あっ、あれを見て」
俺たちが集落を観察していたら、今まで黙っていたメイリーンがとある方向を指差す。その先には
「んっ、んっ、んんっ!」
猿轡をされた女性がオークに担がれていた。あれは……装備からして冒険者のようだ。大方この山に依頼か何かで来ていたところを狙われたのだろう。1人でいたのか、それとも仲間がいたのか。もし仲間がいたのなら、1人しかいない事を考えると、もう……。
「オークたちめ! 女性を!」
「あっ、あの馬鹿、やっぱり行きやがった!」
そんな風に観察をしていると、捕まっている女性を見たアルフレッドが飛び出して……はっ?
ロンドルが驚きの声を上げるが、慣れているのか直ぐに武器を構えて飛び出す。アルフレッドの後を追いかける。
「ふふ、腕がなりますわ!」
シャルンは自分の武器である鞭をパチン! と引っ張り同じように飛び出す。
「……どんまい」
「あわわ、待ってくださいよぉ〜!」
その後ろ姿を呆然と眺めている俺たちに哀れみの声をかけて飛び出すメイリーンに、慌てて後に続くビーンズ。……俺とガウェインは顔を見合わせる事しか出来なかった。
「ええ、お任せ下さいギルドマスター。調査なんて直ぐに終わらせてきますよ」
そう言って、金髪の老人に笑いかける男、アルフレッド。親善戦で戦う相手だが、どうしてギルドの職員用の扉から? それに話している相手がギルドマスターって。
「それじゃあ行こうぜアルフレッド。親善戦までには戻って……て、お前らなんでここにいるんだ?」
3人の男たちの中で一番背の大きくて巨体な男、ロンドルが俺とガウェインに気が付いて声をかけてきた。アルフレッドたちも気が付いて俺たちの方を見る。向こうは5人全員揃っている。
「やあ! 君はアルノード男爵だったかな? 王都は楽しんでいるかな?」
「ええ、楽しませてもらっています」
離宮はアルバスト王国の参加者しか使っていないため、アルフレッドたちとは親善戦までは会えないと思っていたが、まさかこんなところで出会うとは。
「はは、そんなかしこまる事は無いよ。普通にタメ口で話してくれていい」
そう言いながらアルフレッドは、女性なら見惚れるほどの笑顔を見せてくる。当然周りにいた受付嬢や女冒険者も頰を赤く染めている……仲間のビーンズも頰を赤く染めていた。お前、男だよな?
「それで、アルフレッドたちはここで何してたんだ?」
「君はガウェインだったね? 私たちはギルドマスターから依頼を受けていたのさ?」
へえ〜、指名依頼か。ギルドマスターから直々になるとよほど信頼されているんだろう。
「何受けたんだ?」
「ちょっと、あなた馬鹿ですの? 関係のないあなたにそんな事話すわけないじゃないですの!」
ガウェインが興味本位で尋ねると、それに噛み付く女性、確かシャルン・マクシリア。侯爵家の令嬢だったっけ?
「あぁん? 誰が馬鹿だって言うんだよ! このドリル金髪女!」
「はぁ!? この私の完璧な髪型を侮辱するなんて! 許せませんわ!」
……おいおい、何で喧嘩になるんだよ。
「落ち着けよガウェイン。それにあなたも」
「何よ、下賎な黒髪が! 私に指図しないでくださる!?」
「てめえ!」
俺が下賎と言われた事に怒るガウェイン。気持ちは嬉しいがその拳は収めよう。俺は殴りかかろうとする腕を掴む。
「レディウス、なんで止めるんだよ!」
「俺のために怒ってくれるのは嬉しいが、一回落ち着けよ。周りにも迷惑だから、な?」
俺がなだめると、ガウェインも落ち着いてきたのか振り上げていた拳を下ろす。
「シャルン、君もだよ」
向こうはアルフレッドが止めてくれた。ふぅ、一触即発になりかけたのを何とか押さえることが出来たな。
「シャルン、別に隠すような事じゃないから話すよ。私たちはこれからオークの集落の調査に向かうんだ」
「オークの集落?」
「ああ、ここから馬車で3時間ほど走らせたところに山があってね。その麓に住む村の人たちが教えてくれたんだよ。その山でオークが集落を作っているのを」
なるほど。それで調査か。大方集落の大きさの規模や数などを調べに行くのだろう。
「調査だけならCランクの私たちでも出来るからね。ギルドマスターから頼まれたのさ」
「ふん、オークごとき私たちだけでも倒せますわ!」
「まあまあ、落ち着いてくださいシャルンさん」
「そうだぜ。調子に乗って何かあってからじゃあ遅いんだ。慎重になり過ぎるぐらいが良いんだよ」
やれやれと肩をすくめるロンドル、リーダー的な役割はアルフレッドで、彼は縁の下の力持ちってところかな。苦労してそうだ。
「そうだ、もしよければ君達も来るかい?」
「はっ?」
「何を言っているのです、アルフレッド! 彼らは今度の親善戦の敵ですよ! それ以前に実力もわからないのに!」
「なに、親善戦に出る程だ。彼らがここにいるという事は、あのリストニック兄弟を倒した事になる。それほど実力があるなら大丈夫だろう。どうする、アルノード男爵?」
「はは、俺の事もレディウスで構わないよ。家名で呼ばれるのは慣れてないんだ。それから俺たちで良ければ行きたいが。な、ガウェイン」
「…………ああ」
うわぁ、顔は物凄く嫌そうな顔をしている。
「良し、それなら行こう!」
その後、アルフレッドがギルドマスターに説明をしてくれて、ランクの低い俺でも特例で許可をもらえた。やはり親善戦に参加する事を話したら直ぐに話が済んだ。
それからシャルンの馬車に乗って俺たちは山を目指したのだ。
◇◇◇
「ふぅ、やはり村人から聞いた通りオークの集落があるようだな。こんなにオークが現れるなんて」
俺たちが山に入って1時間ほどか。ここまでて20体ぐらいのオークを倒した。確かにこれだけの数なら集落があると考えるべきだろう。
「どうする、アルフレッド。一旦戻るか?」
ロンドルは戻るかどうするか、相談してきた。だけど、アルフレッドは首を横に振る。
「いや、数がある程度確認出来るまで調査を続けよう。もし私たちで倒せるようなら討伐したいし、数が多いようなら、一旦戻って対策を立てないといけないからね」
どうやら、もう少し進むようだな。まあ、オークの集落なら俺も何度か潰した事はある。万が一数が多くも逃げる時間は作る事が出来るだろう。
「お疲れさん、レディウス。新しい剣の調子はどうだ?」
「おう、お疲れガウェイン。かなり良いぞ。本当に使いやすい」
俺は右手に持つ黒剣を軽く振る。手にしっくりきて良い感じだ。オークも抵抗なく切る事が出来たしな。そんな話をしながらも、俺たちは山の中を進む。
ある程度進むと、動物の骨や残骸が落ちているのが目に付くようになってきた。少しずつオークの集落に近づいてきたようだ。周りに注意して進んでいたら
「ストップ!」
と、先頭を歩いていたロンドルが片手を上げて立ち止まるように言う。俺たちはその指示に従って立ち停まる。
「どうしたんだい、ロンドル?」
「……あれを見ろ」
俺たちはロンドルの指差す方を見るとそこには1つの洞窟があった。そして、その前には2体のオークが立っていた。まるで見張りをするかのように。腰には錆びているが剣を差している。
「ここが、どうやらオークの集落のようだね。入り口からしてかなりの大きさだけど」  
オークの集落と思しき場所の入り口は高さが6メートルほど、幅が15メートルほどだ。多分奥に行くにつれて広がっているのだろう。これはかなり大きな集落では無いのだろうか。何故これほどのものが今まで気がつかなかったのだ?
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俺たちが集落を観察していたら、今まで黙っていたメイリーンがとある方向を指差す。その先には
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猿轡をされた女性がオークに担がれていた。あれは……装備からして冒険者のようだ。大方この山に依頼か何かで来ていたところを狙われたのだろう。1人でいたのか、それとも仲間がいたのか。もし仲間がいたのなら、1人しかいない事を考えると、もう……。
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そんな風に観察をしていると、捕まっている女性を見たアルフレッドが飛び出して……はっ?
ロンドルが驚きの声を上げるが、慣れているのか直ぐに武器を構えて飛び出す。アルフレッドの後を追いかける。
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