黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
107話 1人増えた
「さてと、今日も図書室でも行こうかね」
朝食を食べ終えて、心地の良い日差しのせいで少し眠くなる時間帯。俺は窓から見える兵士や侍女たちの働く姿を見ながら体を伸ばしていた。そんな時
コンコンコンコン
と、扉をノックする音が聞こえて来る。誰か来たのだろうか? ガウェインでは無い。あいつはノックなどそんな殊勝な事はしない。そのまま扉を開けて来るだろう。
「……とりあえず開けてみるか」
俺は扉を開けると、そこには
「おはようございます、レディウス様」
と、綺麗なお辞儀をする金髪のサイドテールをした女性が立っていた。侍女服を着ているのでここの侍女なのだろう。顔を上げると、とても綺麗な女性だった。
陽に当たってキラキラと輝く金髪に、透き通るような青い目。物凄く無表情だけど、綺麗な人だな。ただ、そんな綺麗な人には全く似合わない無骨な首輪が付けられていた。この人は奴隷か。
「今お時間よろしいでしょうか?」
侍女は顔色を変えずに無表情なまま尋ねて来る。
「え、ええ、大丈夫ですが、何でしょうか?」
「はい。じつは王太子妃のフローゼ様がレディウス様をお呼びでして、連れて来るように仰せつかりました」
……昨日の今日で呼ばれるとは。そのうち呼ばれるかも、とは思っていたけど。要件は1つしかないよな。
「来て頂けますか?」
王太子妃の呼び出しを断る訳にはいかないからな。俺は大丈夫と返事をする。黒剣は置いて行こうか。王宮の中だから安全だと思うし、持ってはいけないだろう。
それから、軽く身支度をして部屋を出て、迎えに来てくれた侍女の後をついて行く。やっぱり王宮は入り組んでいるな。こんなのよく覚えられるな、と毎回思うのは俺だけだろうか? 少しでも王宮の道順を覚えてみようか、と思い、考えながら歩いていると、何やら周りから視線を感じる。
いるのは当然、見張りのための兵士と、仕事の途中だと思われる侍女たちだ。黒髪だから見られているのかと思ったけど、どうやら違うみたいだ。
黒髪が原因だったら、もう少し殺気や憐れみや差別といった視線が来るはずなのだが、周りからの視線は何ていうか、この視線は違う。なんて言えばいいのかわからないから口には出来ないが、敵意が無いのは確かだ。
少し居心地が悪いが、そのまま侍女の後ろをついて行く。すると他の部屋に比べたら大きな扉が付いている部屋へと辿り着いた。
扉の両端には女性騎士が立っていた。って事はここの部屋を使っている人がフローゼ様なのだろうか。俺が扉を見ていると、侍女が取り次ぐようにお願いする。
フローゼ様の呼び出しという事もあって話はスムーズに進んでいった。部屋に入る前に身体検査をされたのだが、何故か腹筋ばかり触られる。
俺はギョッとして女性騎士たちを見るのだが、気にした様子もなく身体検査を終わらせた。別に触るのは構わないのだが、何だかな……。
「では、レディウス様、お入り下さい」
おっと、いつの間にか許可が出ていたようだ。俺は侍女の人に開けてもらった扉を入る。中には当然
「よく来たわね、アルノード男爵」
扇を持って口元を隠しながら微笑むフローゼ王太子妃様が座っていた。その向かいには
「あれ? レディウスも呼ばれたのですか?」
ヴィクトリアが座っていた。まあ、別におかしな話では無いか。昨日も仲よさそうに抱き合っていたし。そんな2人を見ていたら
ボフッ! ボフッ!
と、俺の足に何かがぶつかる感触が。しかも昨日より1つ増えているし。俺は顔を下げて見て見るとそこには
「こんにちは、お兄ちゃん!」
「ん!」
俺の足下に引っ付く2人の女の子。1人は当然俺も知っている女の子で、フローゼ妃様の御子女でベアトリーチェ様。
もう1人の若草色の髪をした少女は誰だ? フローゼ様とヴィクトリアの他にはフローゼ様のご子息とお付きの侍女ぐらい。それからご子息の名前は確か、フロイスト・トルネス王子だったな。そんな風に周りを見ていたら
「ねぇ、ねぇ、お兄ちゃん遊ぼ!」
「ん!」
と、2人の少女に袖を引っ張られる。遊んであげたいのは山々なのだが、まずはフローゼ様に呼ばれた用事を終わらさなければ。どうやって断ろうか考えていたら
「こら、ベアトリーチェ、シル、レディウス君が困っているでしょ。戻って来なさい。レディウス君も気にせずに座ってちょうだい」
と、フローゼ様が声をかけてくれたおかげでベアトリーチェ様もシルと呼ばれた少女もフローゼ様の隣の席に座る。
俺もフローゼ様にそう言われたので、ヴィクトリアの隣の空いている席に座る。さてさて、何の話をされるのだろうか。
朝食を食べ終えて、心地の良い日差しのせいで少し眠くなる時間帯。俺は窓から見える兵士や侍女たちの働く姿を見ながら体を伸ばしていた。そんな時
コンコンコンコン
と、扉をノックする音が聞こえて来る。誰か来たのだろうか? ガウェインでは無い。あいつはノックなどそんな殊勝な事はしない。そのまま扉を開けて来るだろう。
「……とりあえず開けてみるか」
俺は扉を開けると、そこには
「おはようございます、レディウス様」
と、綺麗なお辞儀をする金髪のサイドテールをした女性が立っていた。侍女服を着ているのでここの侍女なのだろう。顔を上げると、とても綺麗な女性だった。
陽に当たってキラキラと輝く金髪に、透き通るような青い目。物凄く無表情だけど、綺麗な人だな。ただ、そんな綺麗な人には全く似合わない無骨な首輪が付けられていた。この人は奴隷か。
「今お時間よろしいでしょうか?」
侍女は顔色を変えずに無表情なまま尋ねて来る。
「え、ええ、大丈夫ですが、何でしょうか?」
「はい。じつは王太子妃のフローゼ様がレディウス様をお呼びでして、連れて来るように仰せつかりました」
……昨日の今日で呼ばれるとは。そのうち呼ばれるかも、とは思っていたけど。要件は1つしかないよな。
「来て頂けますか?」
王太子妃の呼び出しを断る訳にはいかないからな。俺は大丈夫と返事をする。黒剣は置いて行こうか。王宮の中だから安全だと思うし、持ってはいけないだろう。
それから、軽く身支度をして部屋を出て、迎えに来てくれた侍女の後をついて行く。やっぱり王宮は入り組んでいるな。こんなのよく覚えられるな、と毎回思うのは俺だけだろうか? 少しでも王宮の道順を覚えてみようか、と思い、考えながら歩いていると、何やら周りから視線を感じる。
いるのは当然、見張りのための兵士と、仕事の途中だと思われる侍女たちだ。黒髪だから見られているのかと思ったけど、どうやら違うみたいだ。
黒髪が原因だったら、もう少し殺気や憐れみや差別といった視線が来るはずなのだが、周りからの視線は何ていうか、この視線は違う。なんて言えばいいのかわからないから口には出来ないが、敵意が無いのは確かだ。
少し居心地が悪いが、そのまま侍女の後ろをついて行く。すると他の部屋に比べたら大きな扉が付いている部屋へと辿り着いた。
扉の両端には女性騎士が立っていた。って事はここの部屋を使っている人がフローゼ様なのだろうか。俺が扉を見ていると、侍女が取り次ぐようにお願いする。
フローゼ様の呼び出しという事もあって話はスムーズに進んでいった。部屋に入る前に身体検査をされたのだが、何故か腹筋ばかり触られる。
俺はギョッとして女性騎士たちを見るのだが、気にした様子もなく身体検査を終わらせた。別に触るのは構わないのだが、何だかな……。
「では、レディウス様、お入り下さい」
おっと、いつの間にか許可が出ていたようだ。俺は侍女の人に開けてもらった扉を入る。中には当然
「よく来たわね、アルノード男爵」
扇を持って口元を隠しながら微笑むフローゼ王太子妃様が座っていた。その向かいには
「あれ? レディウスも呼ばれたのですか?」
ヴィクトリアが座っていた。まあ、別におかしな話では無いか。昨日も仲よさそうに抱き合っていたし。そんな2人を見ていたら
ボフッ! ボフッ!
と、俺の足に何かがぶつかる感触が。しかも昨日より1つ増えているし。俺は顔を下げて見て見るとそこには
「こんにちは、お兄ちゃん!」
「ん!」
俺の足下に引っ付く2人の女の子。1人は当然俺も知っている女の子で、フローゼ妃様の御子女でベアトリーチェ様。
もう1人の若草色の髪をした少女は誰だ? フローゼ様とヴィクトリアの他にはフローゼ様のご子息とお付きの侍女ぐらい。それからご子息の名前は確か、フロイスト・トルネス王子だったな。そんな風に周りを見ていたら
「ねぇ、ねぇ、お兄ちゃん遊ぼ!」
「ん!」
と、2人の少女に袖を引っ張られる。遊んであげたいのは山々なのだが、まずはフローゼ様に呼ばれた用事を終わらさなければ。どうやって断ろうか考えていたら
「こら、ベアトリーチェ、シル、レディウス君が困っているでしょ。戻って来なさい。レディウス君も気にせずに座ってちょうだい」
と、フローゼ様が声をかけてくれたおかげでベアトリーチェ様もシルと呼ばれた少女もフローゼ様の隣の席に座る。
俺もフローゼ様にそう言われたので、ヴィクトリアの隣の空いている席に座る。さてさて、何の話をされるのだろうか。
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