黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
66話 何故!?
姉上と再会して1ヶ月が経った。あれから一度も姉上とは会っていない。まあ、それも仕方ない。相手は王子の婚約者なのだから。それからこの1ヶ月の間に色々とあった。
まずは、国王陛下が姉上の事を国民に発表した事だ。その上、ウィリアム王子を正式に王太子になる事も一緒に発表した。これにより姉上は王太子妃になり、これから王妃になるための修行に入るらしい。
これにより、王都は再び祝杯ムードになった。まあ、未来の王妃の誕生に、ウィリアム王太子の決定というのが重なればそうなるか。
ヴィクトリアは少し辛そうにしていたが、俺の口からは何も言えない。俺も少なからず関わっているから、俺が何かを言ってもヴィクトリアを傷付けるだけだからな。
それから、姉上は王宮から出られない代わりに、手紙を送ってくるようになった。前にわかれる際に俺が今住んでいるところを伝えておいたからな。
内容は様々だ。ただの近況報告から、王宮の中の話、どの貴族が侍女に手を出したとかの裏話まで様々だ。俺も近況報告と学園の事を書いたりしている。
そしてその手紙を持って来てくれるのはミアだ。来るのは3日に1回程。週の初めにミアが村にやって来て姉上からの手紙を渡してくれる。そしてその3日後に俺が返事を返すって感じだ。
その度にミアに村まで往復してもらうのは申し訳ない気がするが、ミアも俺に会えて嬉しいと言ってくれるので、お願いしている。そしてもう1人ミアが来る事を喜んでいる奴がいる。それは
「ミアさん! もし良かったら俺が王都まで送って行くよ!」
と、ミアさんに話しかけるクルトだ。
「あら、ありがとうね、クルト君」
それにミアが笑顔でクルトの頭を撫でると、クルトも嬉しそうにする。ははぁ〜ん。そういう事な。ロナも俺の隣でニヤニヤしている。ガラナたちもだ。
前に姉上に聞いたが、ミアはまだ誰とも結婚していないらしい。ミアの年からしたら早く結婚して欲しいとは姉上も言っているが。これなら可能性はあるぞ、クルト。
それから、対抗戦に向けての訓練も順調に捗っている。前にアレスが纏を教えて欲しいと言ってきた時から、訓練の合間にみんなに教えている。
この1ヶ月でみんな魔鎧を均等にする事は出来た。それからはみんなそれぞれの特徴に合わせて纏を教えて行っている。みんな覚えるのが早かった。
そんな風に日々を過ごして行く中で、今日は学園の休みの日。俺は村で剣を抜いて構えている。右手には慣れ親しんだ剣を持ち、左手には母上の形見の剣を持つ。
俺は対抗戦に向けて練習している技、二刀流だ。俺の他の人と違う点といえば、3つの流派を使う事が出来ることだろう。
それならば、折角剣も二刀あるのだから、右手と左手を別の流派で放つ事が出来れば強いのでは、と思い練習を始めたのだ。
ただ、これが俺の想像以上に難しかった。流派が違うため、動きが違うので足さばきとかが変わって来るのだ。それに俺は右利きだ。左はやっぱり感覚が違うため物凄く難しい。
それでも、結局は体に覚えさせなければ、使えないので俺は構える。まずは右手の剣の振り下ろし。次に左手の剣で突きを放つ。右で切り上げをして、左で袈裟切り。そのまま回転して右で回転切り。うーん、やはり右とは感覚が違うな。
それから俺は一心不乱に剣を振るう。周りの目も気にせずに自分が納得するまで。
「くそっ、暑いな!」
ずっと剣を振り続けていたため、服が汗でベトベトだ。張り付いて気持ち悪い。俺は服を脱いで上半身裸で再び剣を振るう。左で列炎流を準備している間に、右で旋風流を放つ。そして、列炎流も放つ……これは何とかなりそうだな。
ただ、一番苦手な明水流は慣れている右でしか使えないのが難点だ。うまく組み合わせれば良いのだが難しい。それから振り続けたが、いまいち噛み合わなかった。
まだ納得はしていないが、あまり根を詰めても上手くいかないだろうからここら辺でやめておくか。気がついたら太陽も高く上がっているし。4時間ぐらいぶっ通しでやっていたかな?
「レ、レディウスしゃま……ど、どうぞ」
太陽を見てどれぐらい剣を振っていたか考えていたら、後ろからロナの声が聞こえる。振り向くと、汗拭き布を持ったロナが立っていた。何故か頰が上気しているが。
「ああ、ありがとうロナ。でも大丈夫か? 顔が赤いけど」
俺は何となしにロナの頰に触れると、ロナは「ひゃんっ!」と可愛らしい声で驚いた。そして何故か息が乱れている。
「大丈夫か!?」
「ひゃ、ひゃい! 大丈夫ですぅ! ……あ、危ないですよぅ。レディウス様がカッコ良すぎて私胸が痛すぎますぅ〜」
ロナは慌てて俺から離れて手を横にブンブンと振る。その後1人でゴニョゴニョと言っているが。まあ、大丈夫なら良いのだが。
「無理はするなよ? ロナに何かあったら俺が悲しいからな」
「は、はいっ! 私は何があってもレディウス様から離れませんから!」
目をキラキラさせてそんな事を言うロナ。……何だかこそばゆいな。俺はロナから貰った布で汗を拭いていると、村の外から一台の馬車が走ってきた。
2人護衛を連れて。あの鷲の紋章は……そう思っていたら、馬車は村の中に入って止まり、2人護衛がいる内の1人が俺の側に寄って来る。
金色の髪に碧眼の目。かなりのイケメンで身長は俺と変わらないぐらい。向こうの方が筋肉質でガッチリとしている。年は20ぐらいか。
そんな男が威圧感を放ちながら寄って来た。俺は気にしないけど、ロナは少し当てられて臨戦態勢に入っているから、放つのをやめて欲しいのだが。
「貴様がレディウスか?」
「そうですが、あなたは?」
「私はヴィクトリア様の護衛であるグリムド・ベイクだ。ヴィクトリア様が貴様にお会いしたいとの事だ」
ヴィクトリアが俺に? 何か用なのだろうか? そう思っていたら馬車の扉が開かれて、中から金髪の侍女、マリーさんが出て来て、俺の方を見ると慌てて馬車の扉を閉めようとする。何だあれ?
だけど、その後に続いて出ようとした女性、ヴィクトリアが怪訝顔をしながらも、無理やり出て来てしまった。そして俺の方を見て固まる。
「……」
「おはようヴィクトリア」
とりあえず挨拶はしたのだが、ヴィクトリアは何故か微動だにしない。護衛のグリムドとか言う男は俺の気安さに眉を寄せるが、何も言わない。
そのまま少し沈黙していると
「きゅう〜」
ヴィクトリアは顔を真っ赤にして倒れてしまった。何故だ!?
まずは、国王陛下が姉上の事を国民に発表した事だ。その上、ウィリアム王子を正式に王太子になる事も一緒に発表した。これにより姉上は王太子妃になり、これから王妃になるための修行に入るらしい。
これにより、王都は再び祝杯ムードになった。まあ、未来の王妃の誕生に、ウィリアム王太子の決定というのが重なればそうなるか。
ヴィクトリアは少し辛そうにしていたが、俺の口からは何も言えない。俺も少なからず関わっているから、俺が何かを言ってもヴィクトリアを傷付けるだけだからな。
それから、姉上は王宮から出られない代わりに、手紙を送ってくるようになった。前にわかれる際に俺が今住んでいるところを伝えておいたからな。
内容は様々だ。ただの近況報告から、王宮の中の話、どの貴族が侍女に手を出したとかの裏話まで様々だ。俺も近況報告と学園の事を書いたりしている。
そしてその手紙を持って来てくれるのはミアだ。来るのは3日に1回程。週の初めにミアが村にやって来て姉上からの手紙を渡してくれる。そしてその3日後に俺が返事を返すって感じだ。
その度にミアに村まで往復してもらうのは申し訳ない気がするが、ミアも俺に会えて嬉しいと言ってくれるので、お願いしている。そしてもう1人ミアが来る事を喜んでいる奴がいる。それは
「ミアさん! もし良かったら俺が王都まで送って行くよ!」
と、ミアさんに話しかけるクルトだ。
「あら、ありがとうね、クルト君」
それにミアが笑顔でクルトの頭を撫でると、クルトも嬉しそうにする。ははぁ〜ん。そういう事な。ロナも俺の隣でニヤニヤしている。ガラナたちもだ。
前に姉上に聞いたが、ミアはまだ誰とも結婚していないらしい。ミアの年からしたら早く結婚して欲しいとは姉上も言っているが。これなら可能性はあるぞ、クルト。
それから、対抗戦に向けての訓練も順調に捗っている。前にアレスが纏を教えて欲しいと言ってきた時から、訓練の合間にみんなに教えている。
この1ヶ月でみんな魔鎧を均等にする事は出来た。それからはみんなそれぞれの特徴に合わせて纏を教えて行っている。みんな覚えるのが早かった。
そんな風に日々を過ごして行く中で、今日は学園の休みの日。俺は村で剣を抜いて構えている。右手には慣れ親しんだ剣を持ち、左手には母上の形見の剣を持つ。
俺は対抗戦に向けて練習している技、二刀流だ。俺の他の人と違う点といえば、3つの流派を使う事が出来ることだろう。
それならば、折角剣も二刀あるのだから、右手と左手を別の流派で放つ事が出来れば強いのでは、と思い練習を始めたのだ。
ただ、これが俺の想像以上に難しかった。流派が違うため、動きが違うので足さばきとかが変わって来るのだ。それに俺は右利きだ。左はやっぱり感覚が違うため物凄く難しい。
それでも、結局は体に覚えさせなければ、使えないので俺は構える。まずは右手の剣の振り下ろし。次に左手の剣で突きを放つ。右で切り上げをして、左で袈裟切り。そのまま回転して右で回転切り。うーん、やはり右とは感覚が違うな。
それから俺は一心不乱に剣を振るう。周りの目も気にせずに自分が納得するまで。
「くそっ、暑いな!」
ずっと剣を振り続けていたため、服が汗でベトベトだ。張り付いて気持ち悪い。俺は服を脱いで上半身裸で再び剣を振るう。左で列炎流を準備している間に、右で旋風流を放つ。そして、列炎流も放つ……これは何とかなりそうだな。
ただ、一番苦手な明水流は慣れている右でしか使えないのが難点だ。うまく組み合わせれば良いのだが難しい。それから振り続けたが、いまいち噛み合わなかった。
まだ納得はしていないが、あまり根を詰めても上手くいかないだろうからここら辺でやめておくか。気がついたら太陽も高く上がっているし。4時間ぐらいぶっ通しでやっていたかな?
「レ、レディウスしゃま……ど、どうぞ」
太陽を見てどれぐらい剣を振っていたか考えていたら、後ろからロナの声が聞こえる。振り向くと、汗拭き布を持ったロナが立っていた。何故か頰が上気しているが。
「ああ、ありがとうロナ。でも大丈夫か? 顔が赤いけど」
俺は何となしにロナの頰に触れると、ロナは「ひゃんっ!」と可愛らしい声で驚いた。そして何故か息が乱れている。
「大丈夫か!?」
「ひゃ、ひゃい! 大丈夫ですぅ! ……あ、危ないですよぅ。レディウス様がカッコ良すぎて私胸が痛すぎますぅ〜」
ロナは慌てて俺から離れて手を横にブンブンと振る。その後1人でゴニョゴニョと言っているが。まあ、大丈夫なら良いのだが。
「無理はするなよ? ロナに何かあったら俺が悲しいからな」
「は、はいっ! 私は何があってもレディウス様から離れませんから!」
目をキラキラさせてそんな事を言うロナ。……何だかこそばゆいな。俺はロナから貰った布で汗を拭いていると、村の外から一台の馬車が走ってきた。
2人護衛を連れて。あの鷲の紋章は……そう思っていたら、馬車は村の中に入って止まり、2人護衛がいる内の1人が俺の側に寄って来る。
金色の髪に碧眼の目。かなりのイケメンで身長は俺と変わらないぐらい。向こうの方が筋肉質でガッチリとしている。年は20ぐらいか。
そんな男が威圧感を放ちながら寄って来た。俺は気にしないけど、ロナは少し当てられて臨戦態勢に入っているから、放つのをやめて欲しいのだが。
「貴様がレディウスか?」
「そうですが、あなたは?」
「私はヴィクトリア様の護衛であるグリムド・ベイクだ。ヴィクトリア様が貴様にお会いしたいとの事だ」
ヴィクトリアが俺に? 何か用なのだろうか? そう思っていたら馬車の扉が開かれて、中から金髪の侍女、マリーさんが出て来て、俺の方を見ると慌てて馬車の扉を閉めようとする。何だあれ?
だけど、その後に続いて出ようとした女性、ヴィクトリアが怪訝顔をしながらも、無理やり出て来てしまった。そして俺の方を見て固まる。
「……」
「おはようヴィクトリア」
とりあえず挨拶はしたのだが、ヴィクトリアは何故か微動だにしない。護衛のグリムドとか言う男は俺の気安さに眉を寄せるが、何も言わない。
そのまま少し沈黙していると
「きゅう〜」
ヴィクトリアは顔を真っ赤にして倒れてしまった。何故だ!?
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