黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
60話 お願い
「それで私に話とは何でしょうか?」
ヴィクトリア様に付いていく事10分程。合同学科の校舎の中にある一室に案内された。鍵は何故かヴィクトリア様の侍女が持っていた。
そしてヴィクトリア様に促されるまま席に着き、ヴィクトリア様にそう聞かれる。ヴィクトリア様の後ろには2人の侍女が俺を睨むように立つ。怖え〜。
「ええっとですね。実はヴィクトリア様にお願いがあってやって来たんです」
それから、俺たちの現状をヴィクトリア様に話した。ランバルク・リストニックと対抗戦で賭けをしている事。その賭けの対象がティリシアである事。ティリシアたちとチームを組むが4人しかいない事。ランバルクの脅しで5人目が誰も入ってくれない事。その事を全てヴィクトリア様に話した。
「……なるほど。それで私に最後の5人目として入って欲しいと?」
「はい。ヴィクトリア様はセプテンバーム公爵家の方です。さすがにランバルクも侯爵家といえども脅すことは出来ないと思ったので」
「確かに私のところには彼は来ていませんね」
「それなら……」
「でも、だからと言って私が加わる理由にはなりません」
……まあ、そうだよな。彼女からすれば俺たちのチームに入る理由は無いのだから。
「……どうすれば入ってくれるのでしょうか?」
俺が尋ねると、ヴィクトリア様は少し考えるそぶりを見せ、俺の方を見て微笑む。そして
「それならあなたがここで這い蹲って私に土下座でもすれば考えて上げましょう。私がグレモンド男爵家の事が憎い事は知っていますよね?」
「お、お嬢様!?」
「さすがにそれは!?」
後ろの2人はヴィクトリア様の発言に驚いたような声を出す。予想外のことなのだろう。だけど、その程度の事でチームに入ってくれるなら俺の頭ぐらい下げる。
俺は座っていた椅子から降り、床に膝をつく。それを見て驚きの表情を浮かべるヴィクトリア様と侍女の2人。
「えっ? ちょっ、ちょっと!?」
ヴィクトリア様が何かを言ってくるが今は無視だ。そしてそのまま手を地面につき頭を下げようとした時
「や、やめて下さい!」
と肩を掴まれ顔を上げさせられる。目の前には綺麗だけど、必死な形相をしているヴィクトリア様の顔がある。ち、近い。
「ヴィクトリア様? どうしたんです?」
「どうしたんじゃありません! どうして頭を下げようとするんですか! 私のはただの八つ当たりですよ!? あなたもわかっているでしょう!」
「知りませんね」
「え?」
「さっきも言いましたが、俺は既にグレモンド男爵家から勘当されています。そして今はチームに入ってもらうためにヴィクトリア様にお願いしているところです。その条件が土下座してお願いする事とヴィクトリア様はおっしゃいました。だから頭を下げているのです」
「……どうしてそこまでするのです」
「大切な仲間の為です」
俺が頭を下げれば、ヴィクトリア様が入ってくれるのなら頭を下げるくらいどうって事はない。
「……わかりました。さっきのは取り消しますので座って下さい。話をしましょう」
そう言って俺を立たせてくるヴィクトリア様。体が全て近い。さすがにこれ以上近いと後ろの侍女たちが表情を般若のような顔へと変わっていくので直ぐに立つ。そして自分の席に戻る。そして
「はぁ〜、心臓が……」
と言いながら胸を押さえ始めた。だ、大丈夫か!?
「ヴィクトリア様。慣れない事をするからです」
その後ろから金髪の方の侍女がヴィクトリア様の前に紅茶の入ったカップを置き、次に俺の前にも置いてくれる。さっきまで俺たちを見ていたのにいつの間に……。
「そうね。それならええっと……すみません。名前を聞いてなかったですね」
そういえば、この前ヴィクトリア様のイヤリングを渡した時も名乗って無かったな。
「失礼しました。俺の名前はレディウスと言います」
「レディウスですね。私も改めて、ヴィクトリア・セプテンバームと申します。セプテンバーム公爵家の長女になります。家族は4人で上に兄がいます。後ろの2人は私のは侍女をしてくれています、金髪の方がマリー、茶髪の方がルシーと言います」
ヴィクトリア様が紹介すると後ろの2人も俺に頭を下げてくる。しかし、なぜ家族構成を話したんだ? よくわからないな。
「まずは先ほどの事を謝ります、レディウス様、申し訳ございませんでした。私の八つ当たりのせいで不快な思いをさせてしまって」
ヴィクトリア様はそう言い俺に頭を下げる。さすがにこれはまずい!
「ヴィクトリア様! 頭を上げて下さい! こんな俺に頭を下げる必要はありません!」
「しかし!」
「俺は気にしていませんから。それにこんな事を言ったらヴィクトリア様には申し訳ないのですが、少しわかるんです、ヴィクトリア様の気持ちが。俺も捨てられた身なので」
「レディウス様……」
「だから気にしないで下さい。それから俺の事は呼び捨てで構いません」 
俺が微笑みながら言うと、ヴィクトリア様も少しは肩の力が抜けたのか、微笑みながら、はい、と返事をしてくれた。笑うと絵になる人だ。
「わかりました。これからはレディウスと呼ばせていただきましょう。それからチームの事ですが、私も例の事があったせいで、誰もチームに入ってくれないのです。だから、レディウスの話を受けても良いと思っています」
「それなら……」
「ええ。よろしくお願いします」
よっしゃ! これでチームが作れる! 対抗戦まで後2ヶ月。楽しみなってきた!
ヴィクトリア・セプテンバーム。これが、俺と彼女との長い縁の始まりだった。
ヴィクトリア様に付いていく事10分程。合同学科の校舎の中にある一室に案内された。鍵は何故かヴィクトリア様の侍女が持っていた。
そしてヴィクトリア様に促されるまま席に着き、ヴィクトリア様にそう聞かれる。ヴィクトリア様の後ろには2人の侍女が俺を睨むように立つ。怖え〜。
「ええっとですね。実はヴィクトリア様にお願いがあってやって来たんです」
それから、俺たちの現状をヴィクトリア様に話した。ランバルク・リストニックと対抗戦で賭けをしている事。その賭けの対象がティリシアである事。ティリシアたちとチームを組むが4人しかいない事。ランバルクの脅しで5人目が誰も入ってくれない事。その事を全てヴィクトリア様に話した。
「……なるほど。それで私に最後の5人目として入って欲しいと?」
「はい。ヴィクトリア様はセプテンバーム公爵家の方です。さすがにランバルクも侯爵家といえども脅すことは出来ないと思ったので」
「確かに私のところには彼は来ていませんね」
「それなら……」
「でも、だからと言って私が加わる理由にはなりません」
……まあ、そうだよな。彼女からすれば俺たちのチームに入る理由は無いのだから。
「……どうすれば入ってくれるのでしょうか?」
俺が尋ねると、ヴィクトリア様は少し考えるそぶりを見せ、俺の方を見て微笑む。そして
「それならあなたがここで這い蹲って私に土下座でもすれば考えて上げましょう。私がグレモンド男爵家の事が憎い事は知っていますよね?」
「お、お嬢様!?」
「さすがにそれは!?」
後ろの2人はヴィクトリア様の発言に驚いたような声を出す。予想外のことなのだろう。だけど、その程度の事でチームに入ってくれるなら俺の頭ぐらい下げる。
俺は座っていた椅子から降り、床に膝をつく。それを見て驚きの表情を浮かべるヴィクトリア様と侍女の2人。
「えっ? ちょっ、ちょっと!?」
ヴィクトリア様が何かを言ってくるが今は無視だ。そしてそのまま手を地面につき頭を下げようとした時
「や、やめて下さい!」
と肩を掴まれ顔を上げさせられる。目の前には綺麗だけど、必死な形相をしているヴィクトリア様の顔がある。ち、近い。
「ヴィクトリア様? どうしたんです?」
「どうしたんじゃありません! どうして頭を下げようとするんですか! 私のはただの八つ当たりですよ!? あなたもわかっているでしょう!」
「知りませんね」
「え?」
「さっきも言いましたが、俺は既にグレモンド男爵家から勘当されています。そして今はチームに入ってもらうためにヴィクトリア様にお願いしているところです。その条件が土下座してお願いする事とヴィクトリア様はおっしゃいました。だから頭を下げているのです」
「……どうしてそこまでするのです」
「大切な仲間の為です」
俺が頭を下げれば、ヴィクトリア様が入ってくれるのなら頭を下げるくらいどうって事はない。
「……わかりました。さっきのは取り消しますので座って下さい。話をしましょう」
そう言って俺を立たせてくるヴィクトリア様。体が全て近い。さすがにこれ以上近いと後ろの侍女たちが表情を般若のような顔へと変わっていくので直ぐに立つ。そして自分の席に戻る。そして
「はぁ〜、心臓が……」
と言いながら胸を押さえ始めた。だ、大丈夫か!?
「ヴィクトリア様。慣れない事をするからです」
その後ろから金髪の方の侍女がヴィクトリア様の前に紅茶の入ったカップを置き、次に俺の前にも置いてくれる。さっきまで俺たちを見ていたのにいつの間に……。
「そうね。それならええっと……すみません。名前を聞いてなかったですね」
そういえば、この前ヴィクトリア様のイヤリングを渡した時も名乗って無かったな。
「失礼しました。俺の名前はレディウスと言います」
「レディウスですね。私も改めて、ヴィクトリア・セプテンバームと申します。セプテンバーム公爵家の長女になります。家族は4人で上に兄がいます。後ろの2人は私のは侍女をしてくれています、金髪の方がマリー、茶髪の方がルシーと言います」
ヴィクトリア様が紹介すると後ろの2人も俺に頭を下げてくる。しかし、なぜ家族構成を話したんだ? よくわからないな。
「まずは先ほどの事を謝ります、レディウス様、申し訳ございませんでした。私の八つ当たりのせいで不快な思いをさせてしまって」
ヴィクトリア様はそう言い俺に頭を下げる。さすがにこれはまずい!
「ヴィクトリア様! 頭を上げて下さい! こんな俺に頭を下げる必要はありません!」
「しかし!」
「俺は気にしていませんから。それにこんな事を言ったらヴィクトリア様には申し訳ないのですが、少しわかるんです、ヴィクトリア様の気持ちが。俺も捨てられた身なので」
「レディウス様……」
「だから気にしないで下さい。それから俺の事は呼び捨てで構いません」 
俺が微笑みながら言うと、ヴィクトリア様も少しは肩の力が抜けたのか、微笑みながら、はい、と返事をしてくれた。笑うと絵になる人だ。
「わかりました。これからはレディウスと呼ばせていただきましょう。それからチームの事ですが、私も例の事があったせいで、誰もチームに入ってくれないのです。だから、レディウスの話を受けても良いと思っています」
「それなら……」
「ええ。よろしくお願いします」
よっしゃ! これでチームが作れる! 対抗戦まで後2ヶ月。楽しみなってきた!
ヴィクトリア・セプテンバーム。これが、俺と彼女との長い縁の始まりだった。
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