黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
50話 呼び出し
「全く、おかしいです!!」
腰に手をつけプンプンと怒るロナ。その仕草は可愛らしいのだが、一体どうしたのだろうか?
「どうしたんっスか、ロナちゃん?」
みんな同じような事を思ったらしく、グレッグが代わりに尋ねてくれる。
「みなさん、おかしいと思わないのですか!? 私たちも命を懸けて戦ったのに、王都に入る事も許されないのですよ!」
ああ、そういう事か。ロナがなんで怒っているのかようやくわかった。周りのみんなも苦笑いだ。
俺たちはブリタリス王国との戦争が終わってアルバスト王国に帰って来た。今回の戦争は被害もあったが、ブリタリス王国の一部を割譲出来、勝利する事が出来た。
そうなると、帰ってくれば当然その事を祝う訳で、今回の戦争に参加した兵士たちは現在王都でパレードをしている筈だ。ウィリアム王子を先頭にして。
しかし、俺たちは現在、戦争前まで死壁隊が入れられていた廃村の中にいる。理由は単純だ。お前たちのような犯罪者たちは連れて行けるかって訳だ。実際に言われたしな。
今、ここにいる死壁隊の人数は20人にも満たないぐらいだ。50人近くは帰って来たのだが、半数以上が首輪の付いた犯罪者だったので、王都とは別にある収容所に連れていかれた。ガラナも連れていかれた。そこで首輪が外せる者は外すらしい。
「って訳っス。だから俺たちは行けないんっスよ」
その事をロナに懇切丁寧に説明してくれるグレッグ。ロナは死壁隊の紅一点だからな。初めは襲われそうにもなったが、全員俺がぶちのめしたら、大人しくなったし。今となってはそこそこ強いから襲う奴もいなくなったしな。
「むぅ〜。それでも、頑張ったのに……」
しかし、ロナは納得が出来ないのか涙目になってしまう。全く。俺はロナに近づき優しく頭を撫でる。
「ロナがそう思ってくれるだけで、俺たちは嬉しいよ。だから気にするな、な?」
「……はいですぅ」
ロナはそのまま俺に抱き付いてくる。それを周りは囃し立てる。ヒューヒューとか言いやがって。みんなうるさいぞ! ロナも顔を真っ赤にして俯いてしまっているし。
そんな風に騒いでいると
「兄貴、なんか来たぜ?」
クルトがそんな事を言って来た。クルトが指差す方を見てみると、村の入り口の方から馬に乗った男たちが入ってくる。全部で10人程か。見た目は兵士のようだが、何の用だ?
「ここにレディウスという者はいるか?」
馬から降りた兵士の1人が辺りを見回しながらそんな事を言ってくる。どうやら目当ては俺のようだが。そして容姿が聞かされていたのか、俺の方を見たら近寄って来た。
不安そうに俺の服を掴むロナを背に隠し、俺が一歩前に出る。
「俺がレディウスですが、何の用で?」
「うむ。ケイネス様がお呼びだ。王都まで来てもらおう。ああ、先に言っておくが、何か問題があったとかではない。それだけは承知してくれ。用が済めば帰って来られる」
兵士の言葉に、みんなホッとした雰囲気になる。しかし、ケイネス将軍が一体何の用だろうか? わからないが。行くしかないよな。
「君は馬には乗れるか?」
「一応は」
ミストレアさんに教えられたからな。基本的には乗れる。他の兵士の1人が馬を引っ張ってくる。これに乗れって事か。
「……レディウス様」
「……兄貴」
馬に乗ろうとすると、不安そうな顔をしたロナとクルトがやってくる。なんでこんな不安そうな顔をしているんだよ。
「用事が終わったら帰ってくるから、ここで待っていろよ。ロポをよろしく」
俺はそう言い馬に乗る。久しぶりだから上手く乗れるかわからないが、走る分には問題なさそうだ。俺はロナたちに見送られながら兵士の後について王都に行くのだった。
◇◇◇
「なんで私が呼ばれたのかしら……」
私は案内をする侍女の後ろについて行きながらそんな事を考える。今日の朝、ブリタリス王国から戦争に行っていたアルバスト軍が帰って来た。
そのため王都は朝から大盛り上がり。戦争に出ていた兵士たちを一目見ようとみんなが大通りに集まっていた。
ウィリアム王子が先頭で、煌びやかな鎧を着た兵士たちが後ろを歩く姿に、王都の住民は歓声を上げていたのだけれど、戦争から帰ってきて直ぐなのに、どうしてあんなに綺麗なのかと私は疑問に思ってしまったり。
それから国王陛下が、民の前で戦争に行っていた兵士たちを労ったりして、パレードは終わり、後は夜の祝勝会が行われる予定のはず。
街でも、今日は国から食事が出るので大賑わい。私もミアたちと街に出ようかと思っていたら、何故か王宮から呼び出されたのよね。呼び出し人はウィリアム王子なのだけれど。私と会っている暇は無いはずなのに。
「ここでお待ちです」
私は案内された侍女にそう言われ、侍女は扉をノックする。すると中から別の侍女が出てきて、私を連れてきたので取り継ぐよう伝えている。
「では、お入り下さい」
私はそう言われたので中に入ると、思わず立ち止まってしまった。何故なら中には
「やあ、会いたかったよエリシア!」
とウィリアム王子が待っていて、他には何故か国王陛下と王妃様、それにお父様とお母様が部屋にいたのだから。
お父様とお母様はカチカチに緊張しているけど、どこか嬉しそうで、国王陛下と王妃様は少し機嫌が悪いのがわかる。物凄く嫌な予感がするわ。
腰に手をつけプンプンと怒るロナ。その仕草は可愛らしいのだが、一体どうしたのだろうか?
「どうしたんっスか、ロナちゃん?」
みんな同じような事を思ったらしく、グレッグが代わりに尋ねてくれる。
「みなさん、おかしいと思わないのですか!? 私たちも命を懸けて戦ったのに、王都に入る事も許されないのですよ!」
ああ、そういう事か。ロナがなんで怒っているのかようやくわかった。周りのみんなも苦笑いだ。
俺たちはブリタリス王国との戦争が終わってアルバスト王国に帰って来た。今回の戦争は被害もあったが、ブリタリス王国の一部を割譲出来、勝利する事が出来た。
そうなると、帰ってくれば当然その事を祝う訳で、今回の戦争に参加した兵士たちは現在王都でパレードをしている筈だ。ウィリアム王子を先頭にして。
しかし、俺たちは現在、戦争前まで死壁隊が入れられていた廃村の中にいる。理由は単純だ。お前たちのような犯罪者たちは連れて行けるかって訳だ。実際に言われたしな。
今、ここにいる死壁隊の人数は20人にも満たないぐらいだ。50人近くは帰って来たのだが、半数以上が首輪の付いた犯罪者だったので、王都とは別にある収容所に連れていかれた。ガラナも連れていかれた。そこで首輪が外せる者は外すらしい。
「って訳っス。だから俺たちは行けないんっスよ」
その事をロナに懇切丁寧に説明してくれるグレッグ。ロナは死壁隊の紅一点だからな。初めは襲われそうにもなったが、全員俺がぶちのめしたら、大人しくなったし。今となってはそこそこ強いから襲う奴もいなくなったしな。
「むぅ〜。それでも、頑張ったのに……」
しかし、ロナは納得が出来ないのか涙目になってしまう。全く。俺はロナに近づき優しく頭を撫でる。
「ロナがそう思ってくれるだけで、俺たちは嬉しいよ。だから気にするな、な?」
「……はいですぅ」
ロナはそのまま俺に抱き付いてくる。それを周りは囃し立てる。ヒューヒューとか言いやがって。みんなうるさいぞ! ロナも顔を真っ赤にして俯いてしまっているし。
そんな風に騒いでいると
「兄貴、なんか来たぜ?」
クルトがそんな事を言って来た。クルトが指差す方を見てみると、村の入り口の方から馬に乗った男たちが入ってくる。全部で10人程か。見た目は兵士のようだが、何の用だ?
「ここにレディウスという者はいるか?」
馬から降りた兵士の1人が辺りを見回しながらそんな事を言ってくる。どうやら目当ては俺のようだが。そして容姿が聞かされていたのか、俺の方を見たら近寄って来た。
不安そうに俺の服を掴むロナを背に隠し、俺が一歩前に出る。
「俺がレディウスですが、何の用で?」
「うむ。ケイネス様がお呼びだ。王都まで来てもらおう。ああ、先に言っておくが、何か問題があったとかではない。それだけは承知してくれ。用が済めば帰って来られる」
兵士の言葉に、みんなホッとした雰囲気になる。しかし、ケイネス将軍が一体何の用だろうか? わからないが。行くしかないよな。
「君は馬には乗れるか?」
「一応は」
ミストレアさんに教えられたからな。基本的には乗れる。他の兵士の1人が馬を引っ張ってくる。これに乗れって事か。
「……レディウス様」
「……兄貴」
馬に乗ろうとすると、不安そうな顔をしたロナとクルトがやってくる。なんでこんな不安そうな顔をしているんだよ。
「用事が終わったら帰ってくるから、ここで待っていろよ。ロポをよろしく」
俺はそう言い馬に乗る。久しぶりだから上手く乗れるかわからないが、走る分には問題なさそうだ。俺はロナたちに見送られながら兵士の後について王都に行くのだった。
◇◇◇
「なんで私が呼ばれたのかしら……」
私は案内をする侍女の後ろについて行きながらそんな事を考える。今日の朝、ブリタリス王国から戦争に行っていたアルバスト軍が帰って来た。
そのため王都は朝から大盛り上がり。戦争に出ていた兵士たちを一目見ようとみんなが大通りに集まっていた。
ウィリアム王子が先頭で、煌びやかな鎧を着た兵士たちが後ろを歩く姿に、王都の住民は歓声を上げていたのだけれど、戦争から帰ってきて直ぐなのに、どうしてあんなに綺麗なのかと私は疑問に思ってしまったり。
それから国王陛下が、民の前で戦争に行っていた兵士たちを労ったりして、パレードは終わり、後は夜の祝勝会が行われる予定のはず。
街でも、今日は国から食事が出るので大賑わい。私もミアたちと街に出ようかと思っていたら、何故か王宮から呼び出されたのよね。呼び出し人はウィリアム王子なのだけれど。私と会っている暇は無いはずなのに。
「ここでお待ちです」
私は案内された侍女にそう言われ、侍女は扉をノックする。すると中から別の侍女が出てきて、私を連れてきたので取り継ぐよう伝えている。
「では、お入り下さい」
私はそう言われたので中に入ると、思わず立ち止まってしまった。何故なら中には
「やあ、会いたかったよエリシア!」
とウィリアム王子が待っていて、他には何故か国王陛下と王妃様、それにお父様とお母様が部屋にいたのだから。
お父様とお母様はカチカチに緊張しているけど、どこか嬉しそうで、国王陛下と王妃様は少し機嫌が悪いのがわかる。物凄く嫌な予感がするわ。
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