黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜

やま

45話 アルバスト・ブリタリス戦争(1)

「いや〜、やっぱり俺たち貧弱っスね〜」


 俺の横でグレッグがそんな事を言う。まあ、周りを見てそんな事を思う気持ちは分からなくもないか。


 何故なら俺たちの装備は革鎧で、周りの兵士たちはちゃんとした鎧だからな。しかも、他の募兵組には兵士と同じ鎧が支給されているにもかかわらず。


 俺たちが支給されたのは革鎧と盾だろう。これに関しては、前から言われていたので驚かないが。盾は直径50センチほどの円盾だ。


 ここの隊長殿に聞けば、死にに行く奴らにそんなものは渡さないとの事。余りにもはっきり言われたので笑ってしまったぐらいだ。


 因みに隊長殿は前に募兵の時に出会ったオカマ隊長? だったか? 覚える気が無かったから忘れてしまった。そいつが俺たち死壁隊含む千人隊の隊長になる。


 残り6百ほどは、俺たちを逃さないように囲んでいる。首輪付きの犯罪者を逃さないためだ。今は結界が無いからな。首輪が爆発する事は無い。そのため逃げようと思えば逃げられる。周りを兵士に囲まれていなければ。


 全体の兵数は約3万。騎兵隊が5千、弓兵隊が5千、魔兵隊が3千、歩兵隊が1万7千になる。俺たち死壁隊もこの歩兵隊にはいる。


 しかもこれをウィリアム王子が大将とした第1軍、副将の第2軍、第3軍へとわかる。ウィリアム王子の第1軍には今回の将軍であるケイネス将軍がいる。


 俺たちはその中の第2軍になる。数は騎兵隊が5百、弓兵隊が1千、魔兵隊が5百、歩兵隊が5千の約7千の隊になる。他の第1軍が1万3千、第3軍が1万だ。


 そしてこの第2軍が、初めに攻める軍でもある。ここまで言えばわかると思うが、その中の先頭が俺たち死壁隊だ。


 その次が第3軍で、最後に第1軍だ。王子のいる第1軍が攻めて、王子が死んでも困るからだろうな。人数も1番多く後ろで指示を出している。


 俺も勉強して知ったのだが、この大陸の戦争はまず魔法、弓の撃ち合いになる。それを耐え抜いて敵陣に入れば兵士同士の斬り合いになる。魔法や弓を味方には撃てないからな。


 そして、現在はアルバスト王国とブリタリス王国の国境にある丘で対峙している。ブリタリス王国も第1軍として1万ほどの兵を出してきている。


「き、緊張しますね〜、レディウス様」


 俺が敵軍を見ていると、斜め後ろからロナがそんな事を言う。肩にはロポが乗っている。この戦争にはロナもクルトも付いてきた。王都で待っていろと言っても聞かずに。


「あ、兄貴はあんまり緊張して無さそうだな?」


 ロナの反対にいるクルトもそんな事を言って来る。クルトはガチガチだな。まあ、無理もないか。今からするのは命をかけた殺し合いなのだから。


「そんな事ないさ。俺も緊張しているよ。ただ、2人より少し慣れているだけさ」


「へえ〜、それは興味あるっスね」


 グレッグがそんな事を言って来る。周りの死壁隊も頷いている。


「そんな大した事じゃないぞ? 剣の師匠の修行で、ゴブリンやオークの集落に1人で放り込まれたぐらいだ」


「えぇ……」


 おいグレッグ。自分から聞いておいて何でそんなに引いているんだよ。まわりの死壁隊の奴らもうわぁ、って顔しているし。


 そんな風に話す俺たちをまわりの兵士は蔑んだ目で見て来る。聞こえて来る声は、戦争なのにお気楽なものだ、とか、どうせ死ぬからだろ? とか、そんな事ばかりだ。


 別に気を紛らわすためなのだから良いと思うが。死壁隊の奴らも初めよりは肩の力が抜けているし。まあ、抜きすぎると逆に危ないから程よい位置を保たなければならないが。


 そして、それぞれの軍が口上を述べて戻っていく。そんな事せずに攻めてしまえば良いのに。貴族は見栄というのを気にするからなぁ。面倒な事だ。しかし口上述べた兵士が戻ると


「放てぇぇぇぇ!!!!」


 と両軍から叫ぶ声が聞こえる。それから放たれる魔法に矢。魔法は様々な魔法が放たれる。火の矢に風の刃。水の球に石の礫。その魔法の間に矢も飛んで来る。それが両軍の先頭の方から降り注ぐ。


「ロナ、クルト、死ぬなよ!? 盾を構えろ!!!」


「「はい!」」


「「「「「おうっ!!!!!」」」」」


 距離は200メートル程。先頭にいる俺たちの上に様々な魔法や矢が降って来る。俺たちは唯一支給されて盾を構えて敵の攻撃を受ける。


 ズドドド! と盾に敵の魔法や矢が当たる。かなりの勢いが腕に響いてくる。それに押し負けて盾を落としたり、下げたりした奴は頭や体を撃たれて死んでいく。


 この撃ち合いを繰り返しながら、アルバスト王国軍は少しずつ進んでいく。そして距離が残り100を切ると


「突撃ぃ!」


 と後ろから声がする。もちろん1番初めに攻める事になるのは1番前にいる俺たちだ。全員武器を持ち走り出す。武器はバラバラだ。俺みたいな剣もいれば、槍に斧、棍棒を持っている奴までいる。


 俺も剣を抜き纏を発動する。この死壁隊の中だと一応は隊長みたいな事をしているからな。先陣を切らなければ。敵兵もここまで近くなれば武器を構えて来る。先頭は槍部隊だ。そして俺たち目掛けて槍を突き出して来る。


「魔闘装」


 俺は突き出して来る槍の切っ先を魔闘装をした剣で切り落とす。そのまま返した刃で切りかかる。その後を続くように死壁隊も攻撃を仕掛ける。さあ、ろうか!

コメント

  • ウォン

    ヤらないか?

    0
  • リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!

    支給されて盾じゃなくて支給された盾の方がいいのでは?あと殺ってください!

    1
  • エルス・ギルバート

    ???「ちょっとそこのお兄さん...殺らないか?」

    1
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