黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
1話 黒髪の少年
「黒王万歳! レディウス様万歳!」
「黒王万歳!」
「アルノード王国万歳!」
新しく出来た王城のテラス。そこから見える景色には、新しく作られた街が広がり、そこに住む住民たちがそれぞれに歓声を上げる。
「……やっとここまで来たな」
俺はその光景を見ながらそう呟く。ここに来るまで様々な経験をした。苦しい事、辛い事、死ぬかと思う事、悲しい事。嬉しい事、楽しい事、様々な経験を。そしてここまで辿り着いた。
「だけど、ある意味ではここからが始まりだ」
そう、ここで終わりじゃ無い。俺の目的は国を建てる事で終わりではない。俺は自分の手を見つめしっかりと握る。ここからが本当の始まりだ。
◇◇◇
この世界グリノティアには魔法という概念が存在する。火、水、土、風、光、闇の6つの属性があり、この世界に生きる生き物たちはその内のどれかの属性を殆どの者は有している。
そしてその才能は生まれた瞬間にわかるという。その理由は髪の毛の色に出るからだ。
1属性か2属性なら茶髪、2属性か3属性は金髪で、4属性は赤髪や青髪など様々な色になり、5属性必ず紫色になる。そして全属性を持つ者は白銀の髪になる。
この世界の人間は殆どが茶髪か金髪が多い。貴族の中には稀にそれ以外の色の髪を持つ子供が生まれることがあるが、殆どはその2色だ。
属性を持っていても火種程度にしか使えなかったりする場合もあるが、必然と持つ属性が多い程、魔力の量も多くなり、4属性、5属性持ちとなれば、平民貴族問わずにその国の魔法師団に入団する事が出来る。
ただ、1属性だけでも、それを極めた者が4属性持ちを倒すという事もあったらしいので一概には言えないのだが。
生まれた時のアドバンテージが1属性持ちと4属性持ちでは全く違うので、そこでどれだけ努力するかで変わって来るみたいだ。
そしておとぎ話に出て来るような人物は大抵白銀の髪をしている。全属性もって生まれる者は殆どいなく、生まれて来るのは何百年かに一度あるかないかと言われており、大抵時代の節目に現れるらしい。
今考えると全属性持ちが現れたからこそ時代が変わっているのだと思う。それ程全属性持ちはかなりの能力を有している。
そんな歴史に残る程の白銀の髪を持つ者とは別に、忌子として扱われる者もいる。その者は……
◇◇◇
「ぐはっ!」
「おい、無能が廊下の真ん中を歩くんじゃない! 汚らわしいだろ!」
そう言い金髪の髪を揺らす少年。この屋敷、グレモンド男爵家の長男でバルト・グレモンド。年齢は9歳で周りの同年代に比べて太っており、何時も汗をかいている。魔法の適性は火と土の2属性を持っていて、事ある毎に僕を的にして魔法を放って来るんだ。
この男に僕、レディウスは殴られた。これは毎日される事なんで慣れてしまったけど、痛いものは痛い。今年で7歳になるが、気がついたら毎日殴られている。
後ろには、このバルトの家庭教師をしている男グルッカスが付いている。そのグルッカスはバルトを止める事なく、僕を冷たい目で見て来る。他の侍女たちもグルッカスやバルトと同じ様な目で見て来る。
理由は2つあり1つは僕の髪の毛にある。僕も姉上から少し習っただけだけど、この世界は魔法の属性を持つ数で髪の色が変わるらしい。
その中で僕の髪色はどれにも当てはまらない黒色になる。この色は属性を持たない者に出る色らしく、その色を持った者は無能や忌子など言われる。今の僕みたいに。
2つ目は母上がこの男爵家の当主、ゲルマン・グレモンドの妾だからだ。母上がこの家で侍女をしていた時にゲルマンが母上に手を出し生まれたのが僕だ。
そのためバルトと姉上の母親であるケリー夫人から母上は虐められ、その息子で忌子の僕も同じ扱いをされている。
この屋敷の中で僕に普通に接してくれるのは、母上と母上に付いている侍女、後は姉上だけだ。
「そうだ。こいつを的に魔法の練習をしよう。それならもっと上達するだろう!」
「おおっ! それは良い考えですバルト様。おい小僧。今すぐ立って庭に出ろ。お前はバルト様にいくら魔法を撃たれようが動いてはいけぬぞ」
そして気持ちの悪い笑みを浮かべながら僕の髪を掴むグルッカス。僕はあまりの痛さにグルッカスを睨むと
「何睨んでやがるクソガキがっ!」
そして僕のお腹を蹴るグルッカス。
「げほっ! げほげほ、おえっ、げほ」
「ちっ! こいつ吐きやがった! 汚えんだよ!」
それから何度も何度も踏まれる僕。……くそ。僕に少しでも力があれば。こんな奴らに馬鹿にされないくらいの力があれば。
そんな有り得ない事を考えながらグルッカスの暴力を耐えていると
「何しているの、あなたたちは!」
と鈴の音色の様に綺麗な声だけど、怒っているとわかる声が聞こえる。僕はあまりの痛さに起き上がる事は出来ないけど体を少し動かす事は出来た。なので声のする方に頑張って体を向けるとそこには
「バルト! あなた何をしているのっ! こんな酷い事して!」
「あ、姉上。こ、これは、その、躾と言いますか……」
「ふざけないで! こんな酷い事して何が躾よ! グルッカス! あなたも何同じ様にしているのよ! 本来なら止める役のあなたまで!」
「も、申し訳ございません。エリシアお嬢様」
俺をかばってくれる姉上、エリシア・グレモンド。今年11歳になる女性で、この家唯一の燃えるような紅色の髪をしている少女だ。
属性は火、水、風、光が使え、将来は魔法師団に入団する事が約束されている。本人もかなりの努力家なのでかなりの実力を持っているし、上の侯爵家との縁談が来る程。この家ではゲルマンですら余り口を出せないぐらいだ。
「大丈夫なの、レディウス!?」
そう言いながら俺の体をペタペタと触る姉上。痛っ! 余り触られるとそれが痛いのだけれど。僕の顔が痛みに歪んでいるのがわかったのか姉上は触るのを止め
「体を癒せ ヒール」
と魔法をかけてくれる。すると、先程まであまりの痛さで動かす事の出来なかった体を少しずつ動かせる様になってきた。
「ありがとうございます、姉上。痛みが引いてきましたのでもう大丈夫です」
「あっ……」
僕は体が動ける様になったら直様姉上から離れる。ケリー夫人から姉上とは余り話すなと言われているからだ。あまり仲良くしているところを見られると、また母上が虐められる。この家でも発言力のある姉上とは仲良くなって欲しくないのだろう。
僕が離れた事に姉上は悲しげな表情を浮かべるが、それすらも、虐めの理由になる。だから僕は正直に言うと関わりたくない。僕のせいで母上が虐められるのは嫌だからだ。
「僕は失礼します」
だから直ぐにこの場を去る。バルトやグルッカスが後ろから僕を睨んでいるのはわかるけど気にせずその場を去る。
……情けない。自分の力では自分すら守れないなんて。僕は悔しい思いで、歯を食いしばりながらその場を後にした。
「黒王万歳!」
「アルノード王国万歳!」
新しく出来た王城のテラス。そこから見える景色には、新しく作られた街が広がり、そこに住む住民たちがそれぞれに歓声を上げる。
「……やっとここまで来たな」
俺はその光景を見ながらそう呟く。ここに来るまで様々な経験をした。苦しい事、辛い事、死ぬかと思う事、悲しい事。嬉しい事、楽しい事、様々な経験を。そしてここまで辿り着いた。
「だけど、ある意味ではここからが始まりだ」
そう、ここで終わりじゃ無い。俺の目的は国を建てる事で終わりではない。俺は自分の手を見つめしっかりと握る。ここからが本当の始まりだ。
◇◇◇
この世界グリノティアには魔法という概念が存在する。火、水、土、風、光、闇の6つの属性があり、この世界に生きる生き物たちはその内のどれかの属性を殆どの者は有している。
そしてその才能は生まれた瞬間にわかるという。その理由は髪の毛の色に出るからだ。
1属性か2属性なら茶髪、2属性か3属性は金髪で、4属性は赤髪や青髪など様々な色になり、5属性必ず紫色になる。そして全属性を持つ者は白銀の髪になる。
この世界の人間は殆どが茶髪か金髪が多い。貴族の中には稀にそれ以外の色の髪を持つ子供が生まれることがあるが、殆どはその2色だ。
属性を持っていても火種程度にしか使えなかったりする場合もあるが、必然と持つ属性が多い程、魔力の量も多くなり、4属性、5属性持ちとなれば、平民貴族問わずにその国の魔法師団に入団する事が出来る。
ただ、1属性だけでも、それを極めた者が4属性持ちを倒すという事もあったらしいので一概には言えないのだが。
生まれた時のアドバンテージが1属性持ちと4属性持ちでは全く違うので、そこでどれだけ努力するかで変わって来るみたいだ。
そしておとぎ話に出て来るような人物は大抵白銀の髪をしている。全属性もって生まれる者は殆どいなく、生まれて来るのは何百年かに一度あるかないかと言われており、大抵時代の節目に現れるらしい。
今考えると全属性持ちが現れたからこそ時代が変わっているのだと思う。それ程全属性持ちはかなりの能力を有している。
そんな歴史に残る程の白銀の髪を持つ者とは別に、忌子として扱われる者もいる。その者は……
◇◇◇
「ぐはっ!」
「おい、無能が廊下の真ん中を歩くんじゃない! 汚らわしいだろ!」
そう言い金髪の髪を揺らす少年。この屋敷、グレモンド男爵家の長男でバルト・グレモンド。年齢は9歳で周りの同年代に比べて太っており、何時も汗をかいている。魔法の適性は火と土の2属性を持っていて、事ある毎に僕を的にして魔法を放って来るんだ。
この男に僕、レディウスは殴られた。これは毎日される事なんで慣れてしまったけど、痛いものは痛い。今年で7歳になるが、気がついたら毎日殴られている。
後ろには、このバルトの家庭教師をしている男グルッカスが付いている。そのグルッカスはバルトを止める事なく、僕を冷たい目で見て来る。他の侍女たちもグルッカスやバルトと同じ様な目で見て来る。
理由は2つあり1つは僕の髪の毛にある。僕も姉上から少し習っただけだけど、この世界は魔法の属性を持つ数で髪の色が変わるらしい。
その中で僕の髪色はどれにも当てはまらない黒色になる。この色は属性を持たない者に出る色らしく、その色を持った者は無能や忌子など言われる。今の僕みたいに。
2つ目は母上がこの男爵家の当主、ゲルマン・グレモンドの妾だからだ。母上がこの家で侍女をしていた時にゲルマンが母上に手を出し生まれたのが僕だ。
そのためバルトと姉上の母親であるケリー夫人から母上は虐められ、その息子で忌子の僕も同じ扱いをされている。
この屋敷の中で僕に普通に接してくれるのは、母上と母上に付いている侍女、後は姉上だけだ。
「そうだ。こいつを的に魔法の練習をしよう。それならもっと上達するだろう!」
「おおっ! それは良い考えですバルト様。おい小僧。今すぐ立って庭に出ろ。お前はバルト様にいくら魔法を撃たれようが動いてはいけぬぞ」
そして気持ちの悪い笑みを浮かべながら僕の髪を掴むグルッカス。僕はあまりの痛さにグルッカスを睨むと
「何睨んでやがるクソガキがっ!」
そして僕のお腹を蹴るグルッカス。
「げほっ! げほげほ、おえっ、げほ」
「ちっ! こいつ吐きやがった! 汚えんだよ!」
それから何度も何度も踏まれる僕。……くそ。僕に少しでも力があれば。こんな奴らに馬鹿にされないくらいの力があれば。
そんな有り得ない事を考えながらグルッカスの暴力を耐えていると
「何しているの、あなたたちは!」
と鈴の音色の様に綺麗な声だけど、怒っているとわかる声が聞こえる。僕はあまりの痛さに起き上がる事は出来ないけど体を少し動かす事は出来た。なので声のする方に頑張って体を向けるとそこには
「バルト! あなた何をしているのっ! こんな酷い事して!」
「あ、姉上。こ、これは、その、躾と言いますか……」
「ふざけないで! こんな酷い事して何が躾よ! グルッカス! あなたも何同じ様にしているのよ! 本来なら止める役のあなたまで!」
「も、申し訳ございません。エリシアお嬢様」
俺をかばってくれる姉上、エリシア・グレモンド。今年11歳になる女性で、この家唯一の燃えるような紅色の髪をしている少女だ。
属性は火、水、風、光が使え、将来は魔法師団に入団する事が約束されている。本人もかなりの努力家なのでかなりの実力を持っているし、上の侯爵家との縁談が来る程。この家ではゲルマンですら余り口を出せないぐらいだ。
「大丈夫なの、レディウス!?」
そう言いながら俺の体をペタペタと触る姉上。痛っ! 余り触られるとそれが痛いのだけれど。僕の顔が痛みに歪んでいるのがわかったのか姉上は触るのを止め
「体を癒せ ヒール」
と魔法をかけてくれる。すると、先程まであまりの痛さで動かす事の出来なかった体を少しずつ動かせる様になってきた。
「ありがとうございます、姉上。痛みが引いてきましたのでもう大丈夫です」
「あっ……」
僕は体が動ける様になったら直様姉上から離れる。ケリー夫人から姉上とは余り話すなと言われているからだ。あまり仲良くしているところを見られると、また母上が虐められる。この家でも発言力のある姉上とは仲良くなって欲しくないのだろう。
僕が離れた事に姉上は悲しげな表情を浮かべるが、それすらも、虐めの理由になる。だから僕は正直に言うと関わりたくない。僕のせいで母上が虐められるのは嫌だからだ。
「僕は失礼します」
だから直ぐにこの場を去る。バルトやグルッカスが後ろから僕を睨んでいるのはわかるけど気にせずその場を去る。
……情けない。自分の力では自分すら守れないなんて。僕は悔しい思いで、歯を食いしばりながらその場を後にした。
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コメント
ほんしんとう25
センテンスがまとまってて読みやすくていいですね!成り上がりは大好きなので楽しみです!
ウォン
いいんでない?