思いつき短編集

かなみん

『紙一重』

男がいた
仕事はクビになり妻には逃げられた
この世の底辺の様な男だ
俯きただ毎日路上を歩くだけ
そんな男の前に1人の青年が現れた
白髪で白い服を着た青年だ
青年はまるで初めからそこにいたかのように
何事もなく全てを包むような笑顔で
男に声をかけた
「あんたお金、欲しいか」
「あ、あぁ!あんた天使か?!まぁいいそんなこと」
「あんたの残りの寿命を金に換算してやる」
「じゃあ!ありたっけ!できる限りの金をくれ!」
「いいだ…」
青年が言い終わる前に音が聞こえた
クレーンに吊ってある鉄塊を固定するロープが
切れた音だ
ガン!ゴン!グシャ! 
肉の潰れる音と共に悲鳴が充満する
「あ…ちっ少し長かったか…いくら暇だとはいえ
こんな手間のかかる遊びも考えものだな…」
青年は手の中に握った一円玉を握り潰すと
世界そのものを否定するかのようなおぞましく醜く
歪な真黒の翼を広げてまた残りの寿命が
10分以下の玩具を探しに出た。
「誰も俺が天使なんぞとは言ってないのになぁ」
心底不思議そうな顔を浮かべながら。

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