ぼっちの俺がギャル風美少女に好かれた件について
第4話 莉沙のお見舞いは俺の貞操危機!
「39度か……凄い熱だね」
「妹よ……滅茶苦茶しんどいぞ」
金曜日の朝、俺は高熱を出し死にかけていた。
妹に朝起こされたが体が熱くて頭もまったく働いていなかった。
そんな俺をベッド横で心配そうな顔で立っているのは妹の竹澤結衣。黒髪ショートに可愛い人形みたいな顔立ちで笑うと八重歯が見えるのが特徴。男子からの人気も高いらしくよく告白されるみたいだが全て断っているらしい。
「まあ、おにぃなら大丈夫でしょ!じゃあ、学校行くから朝ごはんのカップラーメンは机の上に置いてあるを勝手に食べて。あと薬は食器棚の上に置いてあるから。くれぐれも私に移さないでね」
そう言うと結衣は部屋から出て行こうとする。
「いや、ちょっと待てよ。俺、39度の熱が……」
俺は引き留めようとするが残念ながら既に結衣は部屋から出た後だった。
心配な顔をしてたのは一体なんだったんだよ……。
俺は再び寝付こうとしばらくベッドの中で目を閉じる。しかし、10分経っても全然寝れなかった。
「仕方がない。食欲ないけど何か食べて薬でも飲むか」
俺はそう思いしんどい体を起こし立ち上がる。フラフラするけどなんとか1階のリビングまでは辿り着けるだろう。
自分の部屋を出て階段を下りてリビングに入る。
「ん?なんだ?」
カップラーメンを探そうと台所に向かおうとするとリビングのテーブルにお茶碗一杯のおかゆとスプーン、風邪薬が置いてあった。よく見ると置き手紙も置いてあり俺はそれを見る。
『世話の焼けるおにぃのためにおかゆ作ったから食べて薬飲んでゆっくり寝て早く治してよ。
P.S.食器は帰ったら洗うから置いといて』
「なんだかんだ優しい妹だな。あいつ」
俺はイスに座り茶碗に巻かれたラップを外しスプーンでおかゆを食べる。
「さすが妹。料理は完璧だな」
結衣は調理科を学校で学んでおり料理の腕は凄いらしく家にもいくつか表彰状まである。
そんな妹の料理はただのおかゆでさえめちゃくちゃ美味しく感じた。現に食欲がなかったはずなのだがすぐに結衣特製おかゆを食べきってしまった。
「ごちそうさまでした」
俺は手を合わせ薬を飲んで再び自分の部屋に戻る。すると、部屋に置いてあったスマホが通知を知らせる緑色のランプを点滅させていた。不思議に思いスマホを手に取ると莉沙からメッセージが入っていた。
「20件!?」
俺はメッセージの件数を見て目を見開き驚く。
最近では毎日のように莉沙とメッセージ交換している。学校でも莉沙といる時間が長くなり休み時間の度に引っ付いてきたり何かしら俺に構ってくる。
俺は莉沙から届いているメッセージの内容を確認するためアプリを開く。
『なんで?学校に来てないの?』
一番最初のメッセージはそんな感じから始まっていた。受信時間が朝の8時なのを見ると授業が始まったばかりの頃か。
俺はさらにメッセージを読んでいく。
『休み?なんで?』
『大丈夫?風邪引いた?』
『佑介居ないと学校つまんない!』
『佑介会いたいよ(´・ω・`)』
『佑介分が足りない……』
「なんだよ。佑介分って」
俺は苦笑いして一番最後に送られたメッセージを見る。
『もう我慢できない!佑介に会いに行く!!』
最後のメッセージはそんな感じで終わっていた。受信時間が8時30分で授業中って所か。ちなみに今は9時を丁度回ったところだ。というか30分間で20件って凄すぎだろ!
「そもそも俺の家あいつ知らないだろが……」
まだ俺と莉沙はお互いの家を知らない。これからも知ることはない気がするのだが。まあ、なんせ知らないはずの俺の家にたどり着くことなんて出来ない。
……と思っていたのだが家のインターホンが鳴ったことでそんな考えは撤回することになった。
「い、いや待て。まだ莉沙が来たとは限らない」
もしかしたら郵便や勧誘かもしれない。きっとそうだ。
「佑介!いるんでしょ?」
しかし、その考えとは裏腹に俺の部屋からでも聞こえてきた莉沙の声。俺はため息を吐いて自分の部屋から出て玄関に向かいドアを開ける。
「あんまり大声出すな。頭に響く」
「佑介!」
莉沙は俺の名前を叫び抱き着いてくる。しかし、普段なら支えられるのだろうが今は風邪を引いており熱がある。抱きつかれた俺はそのまま押し倒される形で後ろに倒れる。
「痛っ」
「あっ、ごめん。大丈夫?」
「大丈夫な訳ないだろ。俺は風邪引いてんだよ」
「風邪!?熱はあるの?」
莉沙はそう言いながら俺のおでこに自らのおでこを当てる。莉沙の顔が目の前いっぱいに広がり俺は凄くドキッとする。
「かなり熱いよ……。家に誰かいるの?」
「いや、誰もいない」
「ならあたしが看病してあげる!」
「は?どういう」
「いいから!早く立って病人は自分の部屋で休む!」
莉沙は俺から離れる。そして、無理矢理に俺を立たせると部屋に案内しろとせがんでくる。
俺はなんか1つ文句を言ってやろうかと思ったがしんどく頭が働かないので大人しく莉沙の言うことに従う。
「ここが佑介の部屋か」
俺の部屋に案内すると物珍しそうに莉沙は周りを見渡していた。
俺はしんどいのでベッドに横になっていた。
「所でどうやって俺の家が分かったんだ?」
「ん?1回だけ佑介をつけたことがあってそれでね」
「は?」
こいつ、さりげなくストーカ発言したぞ。まあ、別に家を知られて困ることはないから別にいいのだが。
「それより休むなら休むで連絡ぐらいしてよ。心配するじゃん」
「悪い。朝起きたら39度の熱があってな」
「大丈夫なの?」
「ごはん食べて薬飲んだからそのうち下がると思う」
「……ならいいんだけど」
莉沙は少し安心したような表情を見せる。
「ありがとな。心配してくれて」
「お礼なんていらないよ。あたしも佑介の顔を見れて嬉しいし」
そう笑顔を見せる莉沙。本当に莉沙の笑顔は可愛いなと思う。
「すまん。少し眠たくなってきたから寝ても良いか?」
「いいよ。なんなら添い寝してあげようか?」
言いながら俺の布団に入ろうとする莉沙。しかし、それを全力で阻止する俺。
「俺が寝れなくなるからやめろ」
「ちぇ、わかった。じゃあ、近くにいるから何かあったら言って」
「わかった」
本当のところ莉沙が来てくれて有り難かった。風邪を引いたせいか知らないが少し心細かったし少し安心感も出来た。
そのおかげか目を閉じた俺はすぐに眠りついた。
それから一体何時間寝たのだろう。次に目覚めた俺は驚きのあまり固まってしまった。
だって目の前に莉沙の顔があるんだもん。少し顔を突き出せばキス出来る距離に。
「おい、莉沙」
俺はとりあえず呼びかけてみる。
しかし、全然起きない莉沙。
「はぁ、仕方がない。少し寝かしといてやるか」
俺は布団から出ようと起き上がった。
しかし……。
「ちょっと!」
そんな声と共に腕を掴まれ布団に戻され仰向けになった俺の体の上に莉沙が乗っかかってくる。
「普通、こんな可愛い女の子が近くにいるんだから男なら手を出すでしょ!あんな顔近いんだからキスぐらいしてくれてもいいじゃん!」
「な、なんでお前怒ってんだよ!それから退けよ!」
俺は体を起こそうとするがマウントポジションを取られているため動けない。
「いやだ。もうあたしが佑介に手を出すから」
そう言いながら俺の着ているパジャマのボタンを左手で外し始め右手で自分の服を脱ぎ始める莉沙。
(やばい。俺の貞操の危機だ)
そんな事を思いながら莉沙を止める方法を考える。
そんな時だった。
「おにぃ!熱下がった?」
部屋をノックしながらそんな声が聞こえた。
どうやら結衣が帰ってきたみたいだ。時計を見ると午後4時半を回った所だった。
「入るよ!おにぃ」
そして、ドアが開き結衣が入ってくる。しかし、そこにはマウントポジションを取られパジャマを脱がされている俺の姿と薄着になった莉沙がいた。
「はぁぁぁ!?」
それを見るなり妹の驚きの叫び声が木霊した。そして、突然の妹登場で俺の貞操は守られたのである。
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