勇者の魂を受け継いだ問題児

ノベルバユーザー260885

*剣聖からの伝言―2*


「おや……?随分と早起きなのですね。てっきりまだ寝てるのかと思ってましたが……」

「…………。てめぇ、なんでここにいる?」

「そう言えば、男子学生はベッドの下にエロ本を隠しているそうですねぇ~。どれどれ……」

「おい」

「……あれ?ない……?」

「んなもん無ぇよ!」

 いきなり人の部屋のベッドの下を覗き始める人物に対してセンリが怒鳴る。

「……なんでお前が俺の部屋ここにいるのかって訊いてんだよ!」

 そう問いただすと、センリの部屋でエロ本を探す不法侵入者が半眼で答えた。

「なんでって……私が貴方の監視役だから・・・・・・ですよ?」

 白々しくそんな事を言い放ったセンリの監視役、リリアナ・クリシュトフ。
 センリはこれ以上の問答は無駄だと判断し、ため息をついて質問を変えた。

「……お前、何しに来たんだよ」

 センリがそう問いかけると、へらへら笑うおふざけモードのリリアナが、急に普段の無表情に戻り真面目なトーンで言った。

「……ユリウス様から伝言を」

「ユリウスから?」

「……ええ。ですがその前に、無断で貴方の部屋に上がった事については謝罪します。すみませんでした」

「…………」

 素直に頭を下げるリリアナに少々拍子抜けしたが、一体どんな手を使って侵入したのか……まぁ、今はそれはいい。

「……そんな事より、あいつから伝言だと?」

「……ええ。事が事なので大至急と」

「…………」

「貴方もご存じかと思いますが、先日からユリウス様は貴族定例会に出席する為、帝都ミッドガルドにおりました。そこで聞いた話なのだそうですが、貴方、どうやら魔王軍の幹部に目をつけられているそうですよ?」

「…………。はぁ!?なんだよそれ?魔王軍の幹部だと!?どうしてそうなった?」

「私も詳しくは知らされていないので何とも言えませんが、恐らくユリウス様自身も同じ事を考えておられると思います。……どこで、なぜ貴方の存在が魔王軍に知られてしまったのか……」

「…………」

「……ですが、問題はそれだけではありません。貴方にはこの世界の常識を教えた際、【十二将魔】の事も話しましたね?」

「……あ、ああ。魔王軍幹部、通称【十二将魔】。その名の通り、魔王を守護する12体の最上位悪魔……だろ?」

「ええ、よく出来ました。……そして、第二の問題というのが貴方を狙っている悪魔です」

「……どんなやつなんだ?」

「魔王軍幹部【十二将魔】の『第二位』。時の将魔ヴィーデ」

「……時の、将魔……?というか、第二位って……!?」

「ええ。ユリウス様は、第一位から第四位までの将魔は特に危険だと仰っておりました。少なくとも、今の貴方にどうこう出来る相手ではありません」

「……で?俺にどうしろと?」

「そこで、貴方に渡す物があります」

 そこで、リリアナが自分のポケットに手を入れ、取り出した物を俺に渡してくる。
 それを受け取り見てみると、それは不気味な形をした指輪だった。

「……これは?」

「《封印の指輪サプレス・リング》。悪魔たちは私たち人間には見えない魔力の流れを見る事が出来るといわれています。その指輪は、身に付けている者の魔力……オドを封印する為の道具です。貴方の魔力は常人より少々高いと思うので、もしヴィーデが近くにいたらまず最初に怪しむでしょう。なので、貴方にはそれを身に付けていて貰います」

「……ちょっと待て。話が飛躍しすぎて着いていけないんだが?理由は分からんが、俺がそのヴィーデとかいう悪魔に狙われてる事まではわかった。だが、こんなリングを付けていたところで、俺の顔を知られていたら元も子もねぇだろ?」

「……そうですね。私個人としては貴方には外出などせず、学生寮ここに引きこもっていて貰いたいのですが……」

「俺は構わんぞ?」

「流石に厳しいですよね……。明日からは『模擬決闘』もある事ですし……。いくら貴方はどれだけ成績が悪くても退学になる事はありませんが、あまりサボりまくると他の生徒から反感を生みます。それは帝国一の名門校である聖グラムハート学園にとっては由々しき事態です」

「……構わんぞ?」

「駄目です」

「…………」

「…………」

―――両者、暫し沈黙。
 そしてその沈黙を最初に破ったのはセンリだった。

「なんでだよ!?俺と試験どっちが大事なんだ!!」

「心身追い詰められた人妻みたいな事言わないでください。それと大事なのは試験ではなく学院の評判です。名門校である学院の評判を落とす訳にはいかないのです。この地位と名誉による盾があって初めて、貴方を学院で匿う事が出来るんですよ」

「……いや、どうせもうバレてんだろ?」

「…………。……それもそうですね。ですが、取り敢えず《封印の指輪サプレス・リング》は付けててください。ユリウス様の指示です」

「……なんだよ、それ。納得いかねぇ……」

 とは言いつつも、渋々自分の右中指に《封印の指輪サプレス・リング》をはめる。

「……ふむ。特に変化はないな」

「まぁ、本来《封印の指輪サプレス・リング》とは、奴隷や罪人の手錠などで使うために、『封魔石』という特殊な石から作られた物です。罪人はともかく、貴重な労働力でもある奴隷に弱体化のような効果があっては効率が悪いですからね」

「……ふぅん?まぁ、要するに自分の魔力を封印し、悪魔からバレにくくなるというわけか……」

「まぁ、簡単に言えばそうですね。……っと、言い忘れてましたが、そのリングは一般で出回っている訳ではありません。出来ればあまり公にしたくないので、ご学友の方たちに訊ねられたら……そうですね、オシャレとでも言って誤魔化してください」

「別に友達なんかいねーよ。というかこれがオシャレって……どんだけ痛いヤツだよ」

「まぁ、そういう事なので……。くれぐれも、十二将魔に出会しても戦わないように。もう一度言いますが、貴方がどうこう出来る相手ではありません。……それだけは・・・・・忘れないでください・・・・・・・・・

「…………。忘れないでって……」

「私は確かに伝えましたからね。……さて、いつまでも男子寮にいるのはアレなので私はここら辺で失礼します。……それでは」

 そう言った後、リリアナはセンリの目の前から姿を消してしまった。
 幻術魔法の一種なのか、それともまた違う魔法なのかは分からないが……

「あいつ……また言いたい事だけ言って帰りやがって……」 

 そもそも、俺が相手の事を何も知らないんじゃ、対策のしようがねぇだろうが。

 それに、昨日この部屋に入ったばかりで日用雑貨品もロクにない。
 今日は少し外に出て、生活する上で必要最低限の物を買って来ようと思っていたのだ。
 そんな時に限って、これだ……。

「……はぁ。全く……」

―――嫌な予感しかしねぇ……。

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