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勇者の魂を受け継いだ問題児

ノベルバユーザー260885

*深窓の氷姫―2*



「……うっ……グス……ッ……う、うっ……」


 あまりにも唐突すぎる無慈悲な別れに、嗚咽しながら、変わり果ててしまった両親の隣にへたり込んでしまったルセリア。


「…………」


―――どうしてこんな事に?


―――誰がこんな事を?


―――一体、なんの為に……?


 つい、そんな事を考えてしまう。


 だが、答えなんて分からない。
 理解できない。
 したくもない。


「……お父様……お母様……。……姉さん……」


 遣り切れない思いに浸ってしまい、ルセリアはそう呟いた。
 しかし、そこである事に気づく。


「…………。……姉、さん……?」


 ……そう。
 ここにいるのは、両親と使用人だけ。
 ルキリアの姿がない・・・・・・・・・


「……っ……!」


 瞬間―――力の抜け落ちた脚に再び力を込めて立ち上がる。


「……ルキリア姉さんっ……!!」


―――これが、最後の希望だった。


 ルセリアは両親たちのいるダイニングルームを飛び出して、2階へと向かった。


「…………」


 恐らく "アレ" をやったのは、財産目当ての "賊" か何かだろう。


―――けれど、姉さんは強い。


 ルキリア姉さんの "強さ" は、誰よりも私が一番よく知っている。
 ならそんな奴等に、あの姉さんがやられる筈なんてない!


「…………!」


 ルセリアは階段を駆け上がった。
 そして、階段を上りきって2階へ到達したルセリアが最初に目にした光景は―――


「……う、ッ……!!?」


―――まさに "地獄" だった。


 視界を埋め尽くすほどの、"血" と "屍" 。
 もう、誰なのか判別出来ないくらいに惨殺されていた。
 それを見たルセリアは、手摺りを掴んでいた手とは反対の右手で口元を押さえ、その場にしゃがみ込んだ。


「……ッ……、ハァ……ハァ…………」


 それから暫くして、ルセリアはゆっくりと立ち上がり、口元を押さえたまま再び歩き出した。


「…………」


 そして、角を曲がったところにある部屋……ルキリア姉さんの寝室のドアノブへと手を伸ばす。


 そしてドアノブを回し、ルキリアの部屋の中に足を踏み入れようとした、瞬間。




「―――くたばれ・・・・




「……っ……!!?」


―――それは一瞬だった。


 瞬きより短く……。
 悲鳴を上げる間も無く、
 死を覚悟する暇も無い《神速の一閃》。


 唯一分かったのは、何かが光った・・・・・・、という事だけ。


 ルセリアは何もせず……いや、何も出来ずにただ立ち竦んでいると、一瞬だけ光った何か・・が、ルセリアの喉仏でぴたりと止まった。


「……ルセリア……?」


「…………!」


 暗闇から声が聞こえた。
 自分の名を呼ぶ声。
 間違いない。
 それは、ルセリアが最も信頼する者の声だった。


「……姉……さん……?」


「…………」


 恐る恐る目線を上げて、ルセリアが声の主を確認する。
 するとそこに立っていたのは、ルセリアやその両親たちの黄金色の髪の毛とは正反対の、白銀色の髪の毛の少女だった。


 すらりと伸びた肢体。
 長い白銀色の髪の毛を左右で三つに編んだハーフアップは、お淑やかなどこかのお嬢様のよう。
 実際に公爵家のお嬢様ではあるのだが、真紅の鋭い眼光とその口調が、彼女に『お淑やか』という言葉が合わない理由だろう。


「―――姉さんっ!!」


 声の主が自分の姉だと気づき、ルセリアはルキリアに飛び付いた。


「……お前……どうしてここに……?」


 ルセリアをしっかりと受け止めたルキリアが、右手に持っていたナイフを下ろしてそう訊ねた。
 ルセリアはそれに、涙をボロボロと流しながら答える。


「……ううっ……帰ってきたら、お父様やお母様……皆があんな事になっていて……ッ!」


「…………。……そうか。すまない。……私も、何も出来なかった……」


「……姉、さん……?」


「…………」


 こんなにも悔しそうに顔を歪める姉を初めて見た。
 いつも、何をしても完璧だったあのルキリアでさえ、『何も出来なかった』と言ったのだ。


 一体、何が起きたというの……?


 その疑問を口にする前に、ルキリアが真相を話し始めた。


「襲撃された……。理由は分からんが、奴等の狙いは恐らく、私だ・・


「……っ……」


「……時間がない。一度しか言わないからよく聞け……!」


 そう言ってルキリアが声を潜めて話そうとした瞬間―――。




―――ドオォォォン!!!




「……ッ……!?」


「……チッ……!」


 隣のルセリアの部屋から、壁を破って何者かがこの部屋に入ってきた。
 細かく砕けた壁の残骸がパラパラと床に落ち、宙を舞う埃の中から、何者かが姿を現した。


 鮮血を連想させる真っ赤な長髪に、人には珍しい黄色の双眸。
 可憐でありながらも高貴な印象を感じさせる、透き通るような白い肌。
 髪の毛からはみ出ている、人間離れした鋭い耳。
 そして何より額には、短くも、鋭く尖ったツノが二つ付いていた。


―――悪魔。
 それは『冥界』に君臨し、人間に最も恐れられている種族である。


 その悪魔が、妖しい笑みを浮かべながら言った。


「ほう……。 あとはお主一人だけかと思っておったのじゃが……まさか、もう一人残っていたとはのう……」


「……クソが!もう見つかったか!」


 ルセリアの部屋から現れた赤髪の悪魔に、舌打ちをしたルキリアが再びナイフを構え直す。
 しかし、ルセリアはまだこの状況に付いていけてなかった。
 何がなんだか分からずにただ立ち竦んでいると、ルキリアが此方を振り返らずに叫んだ。


「ルセリア!逃げろ―――ッ!!」



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