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勇者の魂を受け継いだ問題児

ノベルバユーザー260885

*決別*

「…………」


 センリは、先程カグラから貰った紙の束を広げ、寮の規則ルールとやらを確認する。




           *




――― 前略。 中略。 以下省略。 ―――




           *




「……ふむ。なるほどな……」


 センリは一通り目を通し……顔面蒼白のクロードの首に、刀の切っ先を向けたまま問いかけた。


「なぁ、お前ら……。 ここに、『どのような理由であれ、利用者の許可無く部屋に侵入する行為の一切を禁ずる』と書いてあるんだが……お前らは "寮則違反者" ってことでいいんだよな?」


「…………」
「…………」


 黙り込む二人。
 しかし、センリが無視して続ける。


「お前らも似たような事言ってたが……寮長曰く、数年前に規則ルール違反者が出て以来、誰一人として寮則を違反するヤツはいなかったんだよな?」


「…………」
「…………」


「やったな! 数年間、誰も成し得なかった偉業を達成したじゃねえか!」


「嬉しくねえよ、そんな偉業ッ!?」


 そう声を上げたのは、センリに刀の切っ先を向けられたままクロード。
 こんな状況で声を上げるとは、随分と肝が太いんだなと感心していると、そんなセンリの表情を見て何を勘違いしたのか……ムカつく笑みを浮かべながら、クロードが反論してきた。


「……それより、いいのかよ? お前こそ、寮則を違反してんだぞ?」


「……あ?」


「そいつには、『寮内での魔法、及び武器の使用を禁ずる』とも書いてあるだろ? 武器を使ってるからお前も寮則違反だ!」


「…………」


 などと、こんな状況で子供のような戯れ言を言い放つクロードに、センリが素直に感心していると、クロードが続けて要求してきた。


「さぁ、分かったらさっさとこの刀を―――」


「不法侵入者に対する正当防衛だ。何も問題ないだろ」


「……うっ……!?」


 遮って言い放ったセンリの正論に、クロードが押し黙る。


「……とにかく、お前らもう帰れよ頼むから……。俺は本当に疲れてんだ……」


「……そうなのか?」


「ああ……この一週間、学院に編入する準備とか色々あって、ろくに寝てないんだよ」


 刀を鞘に納めながらそう言うセンリの顔色を窺ったクロードが、心配げに言ってくる。


「大丈夫かお前……よく見たら、本当に顔悪いじゃねえか!」


「だから、さっきからそう言ってんだろ! ……明日の昼以降だったら来ていいから、今日はもう帰ってくれ……」


「……まぁ、そういう事なら仕方ねーか……」


「…………」


「じゃあ、俺はもう帰るわ……じゃーな」


「……ああ」


 そう言って、部屋を出て行くクロードを見送るセンリ。
 その後、センリはベッドに腰掛けて、ソファーのある方を睨み付けて言った。


「……この流れ的に、お前も "帰る" べきだろ?」


 するとそこには、ソファーの肘掛けに寄り掛かっている銀髪の男。
 その男がこちらを見据えて、相変わらずのへらへら顔で言ってきた。


「いやー、確かにこの "流れ" はそうかもねぇ~」


「……分かってんならお前も帰れよ」


「ああ。……じゃあ、そうさせて貰うよ」


「…………」


 そう言うと、ソーマはソファーから離れて歩き出す。
 しかし、ソーマが向かったのは玄関ではなく、センリのいるベッドの方だった。
 ベッドに腰掛けたまま、ソーマを見上げてセンリが問う。


「……なんだよ?玄関はあっちだぞ?」


 その問いに、ソーマが苦笑して応える。


「知ってるよ、そのくらい……」


「……じゃあ、何だ?まだ何か―――」




―――まだ何か用があるのか?
 そう問おうとしたセンリの側頭部に、一瞬の衝撃が走った。




「―――ッッ!!?」


 するとその衝撃により、そのままセンリの身体は吹き飛んで壁に直撃。


「……ぐ、は――ッ!!?」


 センリが短い悲鳴を上げて、床に倒れる。
 今ので脳にもダメージがあったのだろう。体が痙攣して動かない。
 一瞬、意識も飛びかけたが、何とか踏み止まった。


「……っ……」


 センリは目だけを動かして状況を確認する。
 そこで初めて、自分はソーマに蹴られたんだと理解する。


「……っ、ッッ……は――ッ!」


 センリが精一杯の力で体を起こそうとするが、すぐに倒れてしまう。
 そんな時に、ソーマはこちらを冷たい目で見下ろしていた。
 センリがソーマを睨み付けながら、言った。


「……て、め…………に、しや…………る……!」


 センリは、精一杯声を振り絞って言ったのだが、うまく喋る事も出来なかった。
 そんなセンリを無視して、ソーマが冷たい目で見下ろしながら、低い声で言った。


「……なんで避けねえの?」


 その時のソーマに、いつものへらへら顔は無い。
 今のソーマは、今日の教室で見せた "ソレ" だったのだ。
 ソーマが続ける。


「お前……今、僕の攻撃見えてたろ?」


「…………」


「君は今、自分が何をされたか分からない―――みたいな演技してるのかもしれないけど……僕の目は騙せないよ?」


「……な、の……こと……だ……?」


 冷や汗を浮かべ、センリが言う。
 すると、ソーマがゆっくりと此方に向かって歩いてくる。
 そして、センリの目の前で立ち止まる。
 そのまましゃがんで、センリの髪の毛を掴み、持ち上げた。


「……く、っ……!?」


「朝も言ったろ。下手なえんぎすんなって」


「……てめぇ……なにが、目的だ……?」


「目的……?んー、そうだねぇ……目的……」


 そう言って、センリの髪の毛を掴んだまま考え込む、ソーマ・クリーヴランド。
 そして、数秒思考した後、いつものへらへら顔に戻って言ってきた。




「……君を殺す事・・・・・、だったらどうする?」




「―――ッ―――!?」


 センリがそれを聞いた瞬間、ありったけの力を振り絞り、ソーマの手を振り解く。
 そのまま近くにあった刀に手を伸ばし、抜刀。
 そして、ソーマに斬りかかった。


―――だが、その動きは遅い。


 すぐにソーマに腕を掴まれて、今度は顔面に蹴りを食らった。


「……ぐは、っ……!?」


 悲鳴を上げて、吹き飛ぶセンリ。
 再び、壁に背中をぶつけて倒れてしまった。


「……まだやんの?この茶番……」


 呆れたようにそう言うソーマ。


「いい加減、本気出しなよ?……じゃないと今度は本当に―――」


「…………」




「―――死ぬよ・・・?」




 殺意の込められた言霊。


「―――クソが―――!!」


 センリは動く。
 刀を捨て、右掌をソーマに向ける。
 そのまま魔法を発動。
 センリの腕がメラメラと燃え上がり、掌に炎の球体が生まれる。


「…………」


 だが、それまでソーマは動かなかった。
 つまらなそうに、ただただ此方を見下ろしている。
 しかし、センリは無視して魔法を放った。




「《火の玉ファイアーボール》ッッ―――!!」




 火の玉が、ソーマの顔面目掛けて、真っ直ぐ飛んで行く。
 そして、直撃する―――ギリギリのところで、ソーマが言った。




「……いい加減にしろよ・・・・・・・・




 ソーマが火の玉を手で軽く払う。
 それだけで、火の玉が消えてしまった。


「……な、っ……!?」


 センリが一瞬、驚いたような表情になる。
 だが、すぐに二発目を放つ準備をする。
 再び、センリの腕がメラメラと燃え上が―――ったところで、センリの腹部をソーマが蹴り飛ばした。


「―――か、はぁ―――ッッ!?」


 三発食らった蹴りの中で最も強い衝撃だった。
 倒れ込むセンリを見据えて、ソーマが呆れたように言った。


「お前、どんだけ強情なの? それとももしかして、本当に弱いのか……?」


「……だから……最初からそう、言ってんだろうが……っ!」


「……はぁ……」


 つまらなそうに、ため息を吐くソーマ。


「……普通、ここまでされたら本気になってやり返すだろ?」


「…………」


「それとも、今のがお前の "本気" だったのか?」


「…………」


 センリは俯いたまま、喋らない。反論しない。
 それを見たソーマが心底、呆れ果てたように言った。


「なんか、本当につまんねぇ奴だな、お前……」


「…………」


「この学院に編入してくる奴がいるって聞いて期待していたんだが」


「……最初に言っただろ。俺に力なんてない。……今までだってずっとそうだったんだ。自分の弱さをどれだけ呪った事か……」


 それは本当だった。
 あの時、自分に力があれば―――この1週間、ずっとそんな事を考えていた。


 ソーマが、相変わらず冷たい目でこちらを見下ろし、言った。


「……それで?自分の弱さを呪ってお前はどうしたの? 強くなるために、少しでも努力した?」


「…………」


「はぁ……。もういい。力も無い上に努力もしない……本物のクズに期待していた僕が悪かった」


「……勝手に期待すんな」


「ああ、そうだね。僕は完全に君への関心も興味も無くなった……。もう、二度と僕に話しかけないでね」


 そう言うソーマに、センリが反論する。


「先に話しかけてきたのは、お前だろうが……」


 すると、ソーマが此方を冷たい目で見下ろして、


「ああ……そう言えば、そうだったな……」


「……分かったならもう、帰れ……俺は疲れてるんだ……」


「あっそ……じゃあ、僕も帰るわ……バイバイ」


 そう言って、センリに目を合わせる事なく、ソーマも部屋から出て行った。


「…………」


 センリが、ソーマが消えた玄関の方を暫く見つめる。


「……はぁ……ったく」


 そして、センリは何事も無かったかのように立ち上り、愚痴る。


「あの野郎……散々俺を蹴り飛ばしやがって……」


 乱れた制服を整えてから、そのままベッドに寝転んだ。


「……だが、まさかこんなに上手くいくとはな。あっちから離れて行ってくれたから、かなり手間が省けた」


 そう言って、一週間ぶりのふかふかベッドを堪能する。


「……にしても……さすがに痛ぇな……」


 ダメージを受けないように、衝撃を受け流す事も出来たのだが……そんな事をすればバレる可能性があったので、敢えてまともに食らってやったのだ。


「…………」


 だがどちらにしろ、計画通り事が進んだのは良い事だ。
 しかし、今はそんな事よりも……。


「……眠い……」


 一週間の疲れと眠気に負けてしまい、センリはそのまま目を閉じた。



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