勇者の魂を受け継いだ問題児

ノベルバユーザー260885

*侯爵家の従者*

―――試験はどんどん進んで行く。


 ルシウスの次に名乗り出たのは、アイシャ・ルルフォニア。
 セレスティーナの後ろに静かに控えていた、茶色の髪を無造作に束ねた少女だ。
 ソーマ曰く、ルルフォニア家はレインフォード侯爵家に代々仕えてきた家柄なんだそうだ。
 随分と物知りなんだなと密かに感心しつつ、俺は再びアイシャに目を向ける。


「(……さて、侯爵家に仕える従者の腕前、見せてもらおうか)」




「それじゃあ、始めてちょうだい!」


「……参ります」


 ロゼリアの言葉に短くそう応じると、突然アイシャがしゃがみ込んで右掌を地面につけた。
 一体なにが始まるのかと暫く眺めていると、突然、ゴゴゴゴ……と、地鳴りようなものが聞こえてきた。
 そして、その地鳴りの音はどんどん大きくなっていき、遂には地面が揺れだしたのだ。
 一応立ってはいられるが、そこそこ大きい地震だ。


「(……ふむ。どうやら地属性の魔法のようだが、一体なにをするつもりだ?)」


 そんな事を考えていると……今度は、バキバキバキ――ッと、突然地面が割れた。


「……ッ……!?」


 そしてアイシャを中心とし、四方八方に亀裂が走っていく。
 当然、その亀裂はこちらにも向かって来る。その一つが俺の足元を通過した。
 センリはすぐにその場を離れる。


「……おいおい、マジかよ……」


 そして自分がいた場所に生じた一筋の亀裂を見下ろし、頬を引き連らせながらそう呟いた。


 しかし当然、これで終わりではないだろう。


 さらに地面に力が加わり、結晶の左右で地面が亀裂に沿ってズレ、数メートル隆起する。


 そして―――。


 地震を起こした張本人、アイシャは地面から右掌を離して立ちあがり、結晶を睨み付けて―――


「―――《大地衝破アース・インパクト》!!」


 広げていた掌を、一気に握り締める。
 すると、それに同調するかのように、結晶の左右で隆起していた大地が、結晶を巻き込んで激しく衝突した。


―――大地と大地が正面衝突クラッシュ


 西エリアは、激しい衝突音と衝撃波に襲われた。




 そして、それから数十秒後。
 砂埃などが舞っていた西エリアがようやく落ち着きを取り戻し、俺はアイシャの記録を確認する。


―――【7450】。


「…………」


 まさか、セレスティーナの『爆風魔法サイクロン・ブラスト』を超える記録を叩き出すとは……。
 隣のソーマも驚いたような表情をしていた。


 そして、試験を終えたアイシャはロゼリアを見つめて、


「……よろしいでしょうか?」


「ええ。アンタも『魔法威力』の試験は終わりよ。他の試験も頑張んなさい!」


「……はい」


 そう言って会釈し、アイシャも西エリアを去っていった。
 ……まぁ、恐らく南エリアに行くんだろうな。


 そんな事を考えていると、再びロゼリアが例のセリフを口にする。


「……それじゃあ、次に試験を受けたい人は名乗り出なさい!」



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