勇者の魂を受け継いだ問題児

ノベルバユーザー260885

*人間の失敗作*



「…………」


「…………」


 学院を後にして帰路に就く、黒髪の男子生徒と銀髪の女子生徒。
 今、二人が向かっているのは家ではなく、繁華街にあるファミリーレストランだ。


 そして、そんな二人が歩いているところを、同じく学院を後にした帰宅途中の生徒たちが、センリたちを遠巻きに見つめてコソコソと話している。


「……なあ、もしかしてアイツら、付き合ってんのか?」
「はぁ?私が知るわけないでしょ、そんな事!」
「……で、でもあの銀髪の子はフィリシアだよな?二学年、座学トップの……!!」
「……ああ。そして男の方は、あの噂の編入生だろ?」
「……編入生?なんの事だよ?」
「はぁ?おま、知らねえのか!?編入早々、あの深窓の氷姫グレイシアに手ェ出した身の程知らず!」
「マジかよ!?……あのおっかない副会長に手ェ出す馬鹿、まだこの学院に健在してたんだなぁ……って、編入生だから仕方ねぇのか?」
「だが、深窓の氷姫グレイシアの方も満更でもなさそうだったって聞いたぞ?」
「うっわ……最っ低!深窓の氷姫グレイシアに手を出してからすぐに、他の女に手を出すとか……男として以前に、人として終わってるでしょ」


「…………」


 ……まったく、好き勝手言ってくれる。
 つーか、後半話していた内容に心当たりが無いんだが?
 グレイシアがどうとか、手ェ出したとか、人として終わってるとか……。
 どうして、付き合っているかどうかという内容から、人間性の話になるのだろうか。
 取り敢えずあそこにいるやつら全員、丸焼きにしてやろうか?


 だが、『実力を隠せ』というユリウスの言葉を思い出し、センリは自分の理性を働かせて何とか感情を押し止めた。


「…………」


 そして、隣にいるフィリシアをチラリと一瞥。
 すると、色白だった顔が今では夕焼けのように真っ赤にし、恥ずかしそうに俯きながら歩いている。
 会話の内容までは分からなくとも、自分たちが会話のネタにされているという事は分かるのだろう。


「……う、ぅ……」


「…………。はぁ……」


 そんなフィリシアに少しばかり同情するも、自業自得だと心の中で告げてやり、二人は早歩きでファミレスへと向かった。




           ※




―――ファミリーレストランにて。


 センリとフィリシアは、一番奥にあるテーブル席に腰を掛けた。


「……はぁ、疲れました……」


「……だから嫌だったんだ。俺みたいな奴が何か一つするだけで、すぐに噂になる。……お前も変な噂を流されたくなかったら、二度と、俺には関わらないようにするんだな」


「あはは……」


 フィリシアは曖昧に笑ってから、あからさまに話を逸らす。


「でも、センリさんの事……最初は凄く怖い人なのかなって思っていたんですけど、こうして実際に話してみると、とても優しい方でホッとしました」


「……はっ。俺が優しい、ね」


 皮肉染みたその言葉に、センリは鼻で自嘲した。
 しかしフィリシアには聞こえなかったのか、メニューの一覧表を開いた。
 そして、暫くメニューの書かれた一覧表と睨めっこしていたフィリシアがこちらを見据えて言ってくる。


「……センリさん。何か食べたい物はありますか?」


「あ?……んなもん、ねえよ」


 フィリシアの問い掛けに首を横に振るセンリ。
 すると、フィリシアが眉を顰めて言ってきた。


「せっかく来たのに何も食べないというのは勿体ないですよ!……さあ!私はもう決まりましたので、センリさんも選んでください!」


 そう言って、一覧表をぐいっと押し付けてくる。


 俺はやれやれと思い、その一覧表を受け取ってメニューを見てみる。
 カレーやオムライス、ケーキやアイスの描かれた一覧表を一通り見て、何かいい物はないかと探してみる。


 俺はユリウスから普通に生活できるくらいの金は貰っているが、別に食いたくない時に食いたくもない物を食いたいとは思わない。


 それに、今まであまりファミレスに入った事などなかった。
 それは、一緒にファミレスに行く友人がいなかったのもあるが、一番の理由は、店内の雰囲気が嫌いだからだ。


 むさ苦しいほど人で溢れ反り、静かに食事も出来ない連中が彼方此方で囀り回した挙げ句、注文した時に来る店員が「ファミレスに一人で来たのかコイツ……?」みたいな視線を一瞬見せてくる。
 まあ、確かにファミレスは家族や友人、恋人などでお喋りしながら食事を楽しむところだという事くらい、流石の俺でも分かっている。


 だが俺にとって食事とは、静かに摂るものであり、誰かと喋りながら摂るものではないのだ。
 だから、俺は敢えてファミレスでは食事せず、わりと静かで落ち着いた雰囲気の喫茶店へ向かうのだ。
 ちなみに、この世界に来て喫茶店巡りをし、お気に入りの喫茶店を見つけたので今はそこに通っている。
 その喫茶店は俺の空腹を満たしたり、リリアナとの特訓の疲れを癒す休息の場にもなっている。
 当然、喫茶店は軽食を摂る場であって、心身を休めたりする場でない事は知っているのだが、その喫茶店のマスターは快く受け入れてくれた。
 まあ、何かを注文してしっかりと金さえ払えば気にしないような人だったが。


 そして、一通り確認したセンリが、一覧表を閉じてそれをフィリシアに返す。
 フィリシアが一覧表を受け取って、こちらを見つめながら訊ねてきた。


「……何か食べてみたいものはありましたか?」


 その問い掛けに、再び首を振って応じた。


「……いや、なかったよ。今はあまり腹減ってなかったから食べられないな。また今度来た時にでも注文してみるよ」


「……そうですか」


 すると少し残念そうに頷くフィリシア。


「…………」


―――はっ。どうだ?
 これが姐さんから教わった、敢えて『また今度』という言葉を使い、さりげなくその場を凌ぐ方法だ!
 今は無理だという事を相手に伝えれば、しつこく追及する事も出来ない。
 そして次の機会も適当な理由をつけて断ればいいのだ。


 だが、いつまでもその手を使っていれば、いずれ人間関係が崩れて一人になるぞ、と忠告されたのだが………


―――そんなの俺の知った事か!


 むしろ、俺は一人になりたいのだ。
 相手から離れて行ってくれるのなら、これ以上望むものはない。
 まさに一石二鳥、完璧な断り方だ。


―――だが、次の瞬間。
 何故かフィリシアが嬉しそうに笑みを浮かべて言ってきた。


「……ですが『また今度』という事は再び私たちと・・・・ここへ来てくれる、という事ですね?」


「…………」


―――ああ、完全に墓穴を掘った。
 そうだった。
 この方法はフィリシアに対してはこれ以上ない有効な手だ。
 そう、フィリシアに対しては。


 あの直情一辺倒で、ロクに人の話も聞かない青髪女がいる事を失念していた。
 あの女はこちらの事情などそっちのけで、自分の感情だけで勝手に物事を進めるクセがある。
 何よりたちの悪い事に、それを一切悪びれる事なく、素で周りを引っ張りまくるという事だ。


 仮に俺が「悪い、今日は用事があるんだ」と言っても、「そっか~。じゃあその用事は後回しにして、皆でファミレス行こうよ!その方が絶対に楽しいって!」とか何とか言ってくるに違いない。


 クソ!何が完璧な断り方だ!?
 全然使えねーじゃねえか!!


「……それにしてもシャノンさんたち遅いですね。何かあったのでしょうか……?」


「…………」


「皆が揃ったら注文しようと思っていましたが、注文もせずに席に座っているだけでは店員の方々にも迷惑ですよね……?」


 そんな事を一人で言っているフィリシアをセンリが一瞥して訊ねた。


「……なあ、シャノンが連れてくる奴ってどんな奴なんだ?」


「……え?サヤさんの事ですか……?」


 センリからの突然の質問に一瞬キョトンとしたフィリシアだったが、人差し指を顎に当て、斜め上を見上げながら答えてきた。


「そうですね……強いて言うならば『気が強くて素直じゃない』でしょうか。まあ、生い立ちが生い立ちなので仕方無いとは思いますが……。あ!でもでもっ、時々、口調がアレになる事はありますが、根は正直で良い子なのでセンリさんも仲良くしてあげてください!」


「…………」


 仲良く、ねえ……。
 あの青髪やコイツは、一体何を勘違いしているんだ?
 俺が今、青髪の提案に乗ってこんな所に来てやったのは、コイツに借りがあるからだ。


 友達だの友情だので、こんな面倒に付き合っている訳じゃない。
 コイツらの中での俺は、どんな扱いされてんのかは知らねえが、俺にとってコイツらは『他人』から『同級生』に上がった程度の存在だ。


 これ以上、関係が深くなる事など有り得ない。
 仮に、これ以上関係が深くなったとしても、俺には何の利益メリットにもならない。


―――なら、こんな不毛で無駄な友情ごっこに、一体何の意味があるのだろうか。
 ……答えは既に分かりきっているにも関わらず、そんな事を考えてしまう。


「…………」


 するとその時、少し離れたところから青髪の声が聞こえてきた。


「ああっ!いたいた!……ほら、サヤっちも早く早く!!」


「……はぁ?ちょ、ちょっと待ちなさ―――」


 青髪が赤髪の腕を引っ張りながら、こちらへ向かってくる。


「えへへ~。今日はね~、フィリス以外の友達も誘ったんだよ?」


「それ、さっきも聞いたわよ!……それで?その友達って一体誰の―――こ、と……?」


 そして、センリたちが座っている席へと辿り着いた赤髪の少女が、センリを見つめて固まった。


「……な……な、な……ッ!!」


「…………?」


 赤髪の少女がわなわなと震える指でセンリを指差す。
 センリはその仕草の意味が分からず首を傾げるが―――次の瞬間。


 ここがファミレスだという事を完全に忘れて、大声で絶叫する赤髪の少女。


「……なんで……なんでりに選ってコイツなのよーーーッ!!」




           ※




「最悪……ほんっと、マジ最悪……ッ!!」


「……サ、サヤさん……!」


「……サヤっち、セッちんに聞こえたらどうするの!?」


「知らないわよそんな事……ッ!!」


「「…………」」


 今、少女三人はセンリが座る席から少し離れたところで、なにやらコソコソと密談を交わしているようだ。
 フィリシアとシャノンは声を潜めて『サヤ』という少女を宥めようとするが、サヤは声を抑えようともせず、センリを指差しながら二人に訴える。


「……そもそも私、朝言ったわよね?アイツには――アイツにだけは関わるなって!……なのに、どうしていつもいつも私のいないところで勝手にダメな方向へと物事を進めるの!?」


「…………」


「…………」


 そしてサヤが、黙る二人を細目で見据えて問い掛けた。


「……ちなみに、こんな無駄な交流会を発案したのは誰……?」


「……あたし、です……」


「……はぁ。聞いた私が馬鹿だったわ……」


 サヤの問い掛けに、目を逸らしながらも正直に手を挙げるシャノン。
 それを見たサヤが、自分の頭を押さえて嘆息する。
 そして今度はセンリを睨み付けながら言ってきた。


「ねえ、あんた……センリ、とかいったっけ?」


「……あ?だったらなんだってんだよ?」


「私はあんたみたいな人間が大っ嫌いよ!」


「…………」


 いきなりそんな事をストレートに言ってきやがった。
 別に俺は誰かに好かれたいわけではないのだが……それを言おうか言うまいか悩んでいると、サヤが続けて言ってきた。


「あんた、今日の朝の自己紹介で言ってたわよね?『俺に関わるな』って。……それ自体は別にいい。世の中にはいろんな人がいるもの」


「だったら別にいいじゃねえか。……ほっといてくれよ」


 サヤの言葉にため息を吐いて答えるセンリ。
 しかし、サヤが遮って言ってきた。


「私が気に入らないのは、『陰で何と言おうと知ったことじゃない』っていう発言よ!」


 その言葉に、今度はセンリがサヤを睨み付けて問い掛ける。


「……何か問題でも?」


「あんた、クラスメイトになって言われているか知ってる。『人間のクズ』とか『出来損ない』とか言われてんのよ?……本当に悔しくないの?」


 サヤからのそんな問い掛けに、センリがへらへら笑いながら肩を竦めて答えた。


「……悔しい?別に悔しくなんてねえよ。言いたい奴には言わせておけばいいだろう?」


「……っ……!!」


 実際に俺は出来損ないのクズ野郎だ。
 それは、シルヴィアが殺された時も実感した。


 俺を庇って逃がそうとした女の子を、「戦う力がないから」などと言い訳をし、俺はシルヴィアを置き去りにして自分だけ逃走した。
 そして、シルヴィアは殺されそうになり……俺はエルフたちに八つ当たり。
 その後、シルヴィアが俺のせいで死ぬ羽目になった。


―――それからの記憶はない。


 まあ、恐らく思い出したくない、自分に都合の悪い記憶だけを消去して、ストレスを抑えようとした俺の本能が働いたのだろう。


 そして、そんな自分自身の価値の無さを思い知らされたのは、シルヴィアの時だけではない。


 そう、あの時も……俺は―――。




―――そんな事を考えていた―――刹那。


「―――!?」


 いきなり、サヤに胸倉を掴まれた。
 そして、そのまま俺を無理矢理引き寄せてから、低い声で言ってくる。


「……あんた……ちょっと私に付き合いなさい……!!」


「…………」




            ※




 サヤに連れられ、センリが薄暗い路地裏に入る。
 そのまま路地裏を抜け、さらに進み、進み、進み……。


 繁華街の賑やかさはどこへやら。
 いつの間にか人の気配がなくなり、声もどんどんと小さくなっていく。
 同時に町並みも急激に様変わりし、気がつけば辺りはほとんどが崩れかれた廃墟ばかりになっていた。


 さらに進んで行き、廃ビルに囲まれているちょっとした広場に辿り着くとサヤが振り返り、こちらを睨み付けながら言ってきた。


「……ここは廃墟街。今は使われなくなって整備なんてされてないから、足下には気をつけなさい」


―――廃墟街。


 繁華街にあるファミレスを後にしたセンリたちは廃墟街へとやってきていた。


 時刻は既に6時を回っている。
 まだ視界が利くものの、辺りに灯りなどがないためか、薄暗い。
 足下には沢山の資材やガラクタが転がっており、気をつけて歩かなければ転んで怪我をするだろう。


 そして、センリもサヤを睨み付けて、問いかける。


「……なぜ、俺をこんなところに連れて来た?
趣味の悪いデートスポット、なんてレベルの場所じゃねえぞ?ここ」


「はっ、冗談!誰にも迷惑をかけない為に、こんな人気のないところまで来たのよ」


「……迷惑?」


「ええ、そうよ。……ねえ、あんた。あんたは決闘デュエルのルールは知ってる?」


 そんな事を訊ねられた。
 もちろん、知るわけがない。
 だがルールは知らなくとも、決闘デュエルというものがどんなものなのか、くらいは想像できる。


 そして、センリが知らないと答えようとした……、その時―――。


「―――ちょっと待ってください!!」


「……ああ?」


「……え?」


 センリとサヤが声のした方を同時に見る。
 声を上げたのは、フィリシアだった。
 シャノンもフィリシアの隣に立ち、不安げな表情でフィリシアを見上げる。
 そして、フィリシアの声に最初に応じたのはサヤだった。


「……なによ、フィリス?」


「なによじゃありません!こんなところに来るくらいなので大方予想はしていましたが……サヤさん!いきなり決闘デュエルだなんて……貴女、正気ですか!?」


 フィリシアの言葉に、躊躇なく頷くサヤ。


「……ええ。貴族の間では決闘デュエルなんて、日常茶飯事…って訳ではないだろうけど、一度や二度くらい経験あるでしょう?」


「……そ、そうかもしれませんが……。センリさんが貴族の方かも分からないのに……」


「……ねえ、あんた」


 サヤがこちらを振り向いて言ってくる。


「……なんだよ」


「どうせあんた貴族、なんでしょ?」


 どこか確信めいた表情で訊ねてきた。
 センリはその質問には答えず、サヤに質問する。


「……どうしてそう思ったんだ?」


「そんなの簡単よ。こんな時期に編入できる奴なんて余程の実力者か、大貴族のぼんぼんくらいだもの」


「……へぇ。じゃあ、なんで俺が後者だと?
俺がこの学院に編入できるだけの才能がある、とは考えなかったのか?」


「ええ。……態度を見てればわかるわよ。コイツは努力してこなかった怠け者だなって」


 サヤの言葉に、センリが思わず吹き出しそうになる。
―――何の努力もしていない。
 全くその通りだった。


 努力せずに、楽して生きてきた人間。
 そして、その結果が自分の無力さを骨の髄まで知る事になり……そして、それを何度後悔したことか。


 自分には実力も才能もない。
 それでも努力しようとしない奴を、世間では何と言うのか……。


―――クズだ。


 人間の失敗作できそこない
 誰がそんなあだ名を付けてくれたのかは知らないが、なかなか分かってるじゃないか。


 そしてそこまで言われても尚、悔しいとも思わない自分は、やはり狂ってるのだろうか?


 そんな事を考えていると、サヤが呆れたように言ってきた。


「否定は、しないのね……」


「……事実だからな」


 センリがそう答えると、サヤは既に呆れを通り越し、微笑する程にまでなっていた。
 ……いや、嘲笑か?


 そんなサヤが、嘲笑しながら確認してくる。


「……あんたが貴族ってんなら、決闘デュエルのルールくらい知ってるわよね?」


 それに、センリが首を横に振る。


「……知らねえよ。大体、俺がいつ貴族だなんて言った?」


「……え?」


「ちなみに、実力もねえぞ?お前の言う通り、俺は努力してこなかった人間だ。そんな奴を相手に決闘デュエルを申し込むなんて事をするのが、お前ら貴族のやり方なのか?」


 そんな事を言ってやると、サヤが少し戸惑いの表情で訊ねてくる。


「貴族じゃない?じゃ、じゃあ、あんた……。
どうやってこの学院に編入したの……?」


「ああ?そんなの、強制的に編入させられたんだよ。……大体、俺みたいな奴が、望んで学校に来たがると本気で思ってたのか?」


 自分で言うのも難だが……断じて否!


 センリがそんな事を言うと、サヤがますます分からなくなったのか、一人で煩悶しだす。


「……まあ気になるのは分かる。『誰が俺に投資しているのか』だろ?……悪いがそれは答えられ―――」


「こんな失敗作できそこないにわざわざお金をかける“価値”なんてあるの?」


「―――そっちかよ!?」


 センリが突っ込みを入れると同時、フィリシアが言ってきた。


「サヤさん、もういいではありませんか。サヤさんは彼が同級生に馬鹿にされるのが見ていられなくて、心配していただけなんですよね?」


「……は、はぁ!?そんなわけ―――」


 フィリシアの言葉に、サヤがほんのり顔を赤くし、慌てて否定する。


「……わ、私は単に、自分が他人に馬鹿にされても、努力して見返してやろうって気がない愚か者が嫌いなだけで―――」


 そこで、シャノンが追い撃ちをかける。


「……でもサヤっち、始業式が始まる前に言ってたよね?『あんな奴とは関わるな。自分の力だけで馬鹿にしている奴等を見返すくらいの度胸と誇りがなければ、この学院では生き残れないんだから。あんたたちは余計な手助けはしなくていい』って。……それってつまり、遠回しに『セッちんが退学になって欲しくない』って言ってるんだよね?」


「ち、違うわよーーーーッ!!!!」


 先程までの冷徹なサヤはどこへやら。
 現在は耳まで真っ赤にして、今にも泣き出しそうな表情だった。


「…………。もう俺、帰っていいよな……?」


 ……そして、一人。
 少し離れた位置で仲良し三人組が騒いでいる様子を見守りながら、そんな事を呟くセンリだった。



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